IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第59話

「行くわよ!セシリア!」

 

「分かりましたわ!」

 

ボーデヴィッヒちゃんが小島の上まで持ってきてくれた福音は、ボーデヴィッヒちゃんを弾き飛ばし、追撃を仕掛けようとする。

 

鈴ちゃんたちはそれを止めるべく福音に迫った。

 

福音は速いが、この距離なら、

 

「無視してんじゃ……」

 

鈴ちゃんは、自分の持つ双竜刀を福音の横腹に叩きつける。

しかし、福音はそれも先読みのうちにあったのか、刀の腹を使って防ぐ。

 

ギャリギャリとならず二人の武器。

 

そんな拮抗が生まれたと思いきや、福音の力は予想外のものだったようなので、

 

「っあぁ!」

 

鈴ちゃんは弾き返された。

しかし、それに反して鈴ちゃんの顔は至って普通のものである。

 

『さっきもやってたけど、無駄に馬鹿力ねこいつ。

 セシリア!救助した?!』

 

『ボーデヴィッヒさんは大丈夫でしたからここからもう攻撃を行いますわ!』

 

『さっき言ったとおりにお願いね!』

 

『…………本当に知りませんからね!』

 

『はいはい落ちないから私は』

 

鈴ちゃんのパートナーであるセシリアさんの報告に安堵した。

その後のやり取りに俺はどうしたと思うが、鈴ちゃんの様子から、心配する必要はないな、と思う。

 

鈴ちゃんは弾き飛ばされてからすぐに立て直し、福音へと迫る。

 

福音はボーデヴィッヒちゃんのことは諦め、もう既に福音のターゲットは鈴ちゃんへと変わっている。

 

迫る鈴ちゃんを迎え撃つ福音。

 

 

バンッ!

 

 

いきなり福音から聞こえる衝撃音。

福音はどうやら羽で防いだようだが、おそらく着弾したのであろう場所から煙が上がっている。

 

今のはセシリアさんの援護射撃だろう。

 

鈴ちゃんは援護射撃でやられているのに目もくれず、福音に襲いかかる。

 

右上からの袈裟斬り。

 

煙で姿が見えないが、ISのハイパーセンサーで場所は把握しているのだろう、攻撃に迷いはない。

 

『なっ?!』

 

だが、そんな攻撃すらも、福音には届かない。

福音は鈴ちゃんの右上からの袈裟斬りを受け止める。

 

『ビクともしない……』

 

鈴ちゃんの双竜刀は福音の刀を少しも動かすことは出来ず、福音は鈴ちゃんの双竜刀を思い切り弾く。

 

先ほどと同じなら、凛ちゃんは吹き飛ばされるだろう。

 

『知ってんのよ!その馬鹿力は!』

 

しかし、鈴ちゃんは吹き飛ばされることなく、お得意の円の動きでその場を動かず、半回転で後ろ向きのまま双竜刀の後ろで左下からの袈裟斬りをする。

 

鈴ちゃんのその攻撃は普通の人ならば対応出来ないだろうが、福音ならば、その先読みで、後ろに下がり、その驚くほどの速さで鈴ちゃんの左に回り、右からのなぎ払いをしてくる。

 

ガンっ

 

その瞬間、正確な援護射撃が福音の頭を撃つ。

 

福音はエネルギーのバリアで防ぐが、その一瞬で鈴ちゃんは攻勢に移れる。

 

回転の勢いで福音の首元に迫る左からの双竜刀。

 

福音の読みの些細なズレは、一撃分の時間を生み出す。

 

が、福音の先読みは、俺らの思っているもの以上らしい。

 

福音はスっと、後ろに下がる。

 

避けるつもりがないように思える後退。

 

しかし、その後退は、

 

『はぁっ?!』

 

鈴ちゃんの攻撃を紙一重で躱す。

 

緊張状態なのにそんなことをやってのける福音に純粋に俺は賞賛の気持ちを送った。

 

そんな鈴ちゃんは驚いたせいか防御のことを考えていなかったのか、福音の動作についてきていない。

 

福音が繰り出すのは左下からの袈裟斬り。

 

鈴ちゃんは予想外のことに頭が回っていない。

 

流石に長年付き添っていた予想外への対応力のなさは取り払えなかったか。

 

俺はそう思い、鈴ちゃんが助かってほしいと祈るが、

 

そこで、福音と鈴ちゃんに何発もの援護射撃が当たった。

 

 

 

「え?」

 

 

そう、もう一度言おう。

 

福音と、鈴ちゃんに、援護射撃が当たったのだ。

 

フレンドリーファイア?

 

ISはゲームじゃあるまいし、フレンドリーファイアオフ、とかの設定はできない。

 

つまり、あの援護射撃は直撃したわけで、

 

『っナイス!セシリア!

 助かったわ!』

 

『私としては不服極まりないですけど……仕方がありませんわ』

 

だがしかし、それも2人にとっては計算の範囲内だったようで、ふたりのいる煙から、二つの影が飛び出してくる。

 

福音と、鈴ちゃんだ。

 

しかもふたりとも無傷である。

 

『私は予想外のことに対応出来ない!』

 

鈴ちゃんは、誰に話すわけでもなく、話し始める。

 

『今もそれは変わっていない!』

 

鈴ちゃんのいつもと変わらない、その場を動かず、相手の力を受け流し、利用し、反撃する円の動きで、福音からの攻撃に対応すると同時に、反撃する。

 

『だから、私はセシリアに頼んだ!』

 

何回も、

 

『えぇ、言われた時は驚きましたよ。

 なにせ危なくなったら福音の頭めがけて360度から撃て、と言われましたもの』

 

何回も、

 

『えぇ!

 今私はこいつの攻撃を防がなきゃならない。

 だけど予想外のことに対応出来ないなら。

 セシリアに私を挟んで攻撃させ、それを防御すれば、自ずと反対も防御できる!』

 

何回も。

なんでそんな作戦でこんなに戦闘できるのかってくらいに、この作戦はハチャメチャすぎる。

 

『セシリアからの射撃だったら、それを防ぐのは危ない時。

 そしてそれは私にとっては予想内(・・・)

 つまり、私に死角はなくなる!』

 

ほんとにハチャメチャすぎる。

 

が、

 

『私は、才能なんかに!最強なんかに!限界なんかに!

 絶対に負けてやらないんだから!』

 

そんな鈴ちゃんの表情は、俺が見てきたどんな鈴ちゃんよりも、輝いていた。

 

『鈴、セシリア。

 ありがとう』

 

福音が円の動きの反撃さえも先読みし始め、鈴ちゃんが攻勢に移ることができなくなってきたその時、声が聞こえた。

 

俺ではない。

 

だが、その声は、まるで、

 

『俺が行く』

 

最強()のようだった。

 

 

 

 

 

……今日が終わるまで、あと1分。




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