IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第61話

「福音」

 

俺は、歩く。

決着を早くつけたい、という気持ちは十分にあったが、俺は歩く。

 

「俺は最強だ」

 

福音は俺の接近に対して、刀を構える。

 

「だけど、正義のためにこの力を使っているわけじゃない。

 俺は、この力に"意味"を与えてやりたい、そう思っているだけなんだ。

 だから、お前がどう思って今、最強の目の前にいるのかは分からない」

 

俺は、歩みを止め、息を少し吐き、体から力を抜く。

福音との距離は、2、3メートル。

俺や福音であれば間違いなく1歩でたどり着ける距離だろう。

 

「最強の力。

 それはな、思っているほどいいもんじゃないぞ」

 

俺はその二つの刀を、逆手に持つ。

 

「積み上げることの出来ない力。

 

 意味の見出すことの出来ない力」

 

そして、歩みを再開する。

だが、その歩みは先程のものと違う。

 

「だから、俺は今、嬉しい」

 

ゆったりと、しかし確実に。

その動きは、まるで流水のように。

 

「この最強に意味を与えてくれた」

 

揺らぐ自分の体。

 

「しかも、その意味は一つだけじゃないんだ。

 それにその一つ一つに、信念が込められている」

 

そして、

 

「これほど嬉しいことがあるか?」

 

俺の姿は、消える。

 

流水の動き。

 

静のない動き。

 

そこから放つ技は、俺が今まで練習してきて、1度しかできなかったもの。

 

今ならできる。

 

そんな確信があった。

 

「回転剣舞六連」

 

俺は流水の動きで近づき、福音にその両の刀を振るう。

しかし、福音が諦めているわけもなく、待ち構える福音は、抜刀術の構えをとっていた。

 

おそらくそこから放たれるのは天翔龍閃。

 

 

天翔龍閃と回転剣舞は相性が悪い。

それは回転剣舞は、回転の向きを間違えれば相手の抜刀術をより早くくらってしまう可能性があるからだ。

しかし、マンガの四乃森蒼紫は、左からの回転剣舞という天翔龍閃の性質を考えれば、最も遅くなる方から攻撃をしたのに、負けた。

 

つまり、回転剣舞六連は、天翔龍閃よりも遅い、ということになってしまう。

 

皮肉な状況に微笑みそうになってしまうが、俺は信じている。

 

俺の目指したものを。

 

俺はあえて、四乃森蒼紫のように、左からではなく、右からの回転剣舞を仕掛ける。

 

当然、天翔龍閃の性質である、左の踏み込みの抜刀術である天翔龍閃を早くくらってしまうことになるが、知ったことではない。

 

 

 

なぜ俺がもう1本の急造の刀を注文したのか。

 

 

 

俺が勝つためにすべきこととは。

 

 

一、二、三、四、と俺は、福音の刀(・・・・)に攻撃を加える。

そして、左の急造の刀の、五回目の攻撃を加える時、俺はあえて福音の刀と密着した状態にしておく。

 

ここからは俺のオリジナル。

 

回転剣舞六連は、その手数の多さから、一撃の重さがない。

だから、俺は四乃森蒼紫のもう一つの技を使って火力をカバーする。

 

 

その技とは。

 

「陰陽交叉」

 

陰陽交叉とは、つばぜりあっている武器に対して、もう1本の小太刀をぶつけることで、さらなる衝撃を与え、武器破壊をする技なのだが、回転剣舞六連とこれを組み合わせることで、

 

バキンッ

 

福音の、真っ白いその刀は、折れた。

 

その折れた部分からは月の光に反射する破片がキラキラと、美しい風景を生み出していた。

 

「ありがとう」

 

俺は、そんな美しい風景に目もくれず、左手の刀に目を向ける。

その刀は、刀身がぼろぼろに崩れさり、地にその破片は落ちる。

 

当然だ。

 

俺の最大の一撃をした挙句に、その上から本気の1発をさらに食らわせたのだ。

 

福音の刀のように、美しくは散ることは無い。

 

だけど、その散り方の方が俺は好きだった。

 

それはまるで、醜いながらも、勝とうとするみんなの姿を見ているようであったし、

 

力を使ってない俺も、こんな感じだから。

 

強いのに、弱い。

 

強さと弱さを同時に持って、気づくこと。

 

それは、

 

「"意味ある強さ"を持っている人間は、強い」

 

俺は、体制を立て直す。

福音は折れた刀を振り上げ、左上からの袈裟斬りで切りつけようとしている。

 

「今は弱くても、"意味ある強さ"を持っている人間は、強くなる」

 

彼らのように、という言葉を俺は飲み込む。

その最中、俺は構えない。

自然体になる。

福音の一撃は、間に合わない。

俺はそれを悟る。

 

しかし、福音は最後の力で、間に合わないはずだったその一撃を、間に合わせようとする。

 

その執念に、俺は、"意味ある強さ"を感じた。

 

だから、

 

「そして俺は今、俺は本当の最強になる」

 

最大の敬意を持って。

刀は肩に食いこむ。

そこで、俺は、放つ。

 

 

自然体から放たれる、最強の一撃。

 

 

その恐ろしさ故に、零の名をつけられた一撃。

 

 

 

 

 

「牙突、零式」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、決着はついた。




福音編は、あと一話で終わります。
その後、エピローグで、最終回となります。
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