IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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予定は未定でした。


第63話

1週間後、俺の頼みを聞いた2人は、俺の望み通り、戦いに必要なものをすべて揃えてくれた。

 

戦いの場所である、いつもの、IS学園の武道館。

 

授業中の時間に行うことと、武道館の改修、という名目で、滅多なことがない限り、俺の望む人以外にこの戦いを見られるのを防止した。

 

来てもらう人の一部に、その日、俺と戦う旨を話し、その日のために準備をしてもらった。

 

俺は、自分の準備をした。

 

 

 

そして、その日は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠…………」

 

来たメンバーは、心配そうに俺を見るボーデヴィッヒちゃん、戦う気満々という感じの鈴ちゃん、その身に張り詰めた空気を醸し出している箒ちゃん、面白そうに見るシャルロットさん、なにやら緊張しているセシリアさん。

俺がこの機会を作ってくれた織斑先生と、束さん。

 

 

そして、柔らかな笑みを浮かべる、一夏くん。

 

俺は、最後の仕事である、道場の掃除、物資点検を終え、俺は、みんなの前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラったら、朝から用務員さんがいなくなっちゃうんじゃないかー、みたいなこと言ってて、心配してたの」

 

シャルロットさんがニヤニヤしながら言うのに、ボーデヴィッヒちゃんはシャルロットさんをひと睨みして、

 

「いや、これは、その、勘というかなんというか……。

 でも、嘘ですよね?」

 

振り向いて不安そうにこちらを見るボーデヴィッヒちゃん。

俺はなんと勘が鋭い子なんだろう、と心の中で苦笑いを浮かべながらも、ポーカーフェイスを装い、

 

「心配しすぎじゃないか?」

 

と、yesとははっきり言わない、そんな、ずるい大人の言葉を使った。

 

「あ、いや、その…………」

 

俺はこのメンバーの大人以外には、この学園を去ることを言わないでほしい、と伝えている。

君たちにはまだまだ先がある、だから俺のことは気にしないで欲しい…………というのが建前だが、実際には、ただ言いづらいだけなのだ。

ただの大人が、別れを。

 

だから、いつも通りに、みんなとは戦いたい。

 

まぁこの状況の時点で、いつも通りではないけど……。

 

俺はその疑問を解消するため、

 

「いやぁ、復帰祝い、ってことでちょっと体を動かしたいんだよね。

 俺は立場上みんなと公式に祝えないし、パーティなんて柄じゃないから、こんなことしてみたんだけど、どうかな?」

 

「私は十分に準備出来てるわよ」

 

「師匠に勝てるよう、技を磨いてきました」

 

「初めて見るから、私はラウラのこと見届けていたいなぁ」

 

「私も、用務員とはあったのは2度目ですが、その戦いを見てみたいですわ」

 

「俺も、生身で戦ってみたっていう話を姉さんから聞いて、気になってたんだよね」

 

「勝ちます」

 

みんなのいつも通りな返事が来た、と思ったら、箒ちゃんだけ、その声に宿っている覚悟が違った。

 

「ほ、箒?」

 

鈴ちゃんがなにやら心配しているが、箒ちゃんはそれに目を向けずに、俺のことを見つめ、

 

「私は、今日、あなたに勝ちます」

 

俺の最後の戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はできた?」

 

「はい、準備できました、師匠」

 

俺の最後の戦いは、一対一の連続だ。

 

最初に、弟子であるボーデヴィッヒちゃん。

 

次に、鈴ちゃん。

 

その次に、一夏くん。

 

最後に、箒ちゃん。

 

という順番だ。

 

戦いは、相手が降参をするまで。

極力寸止め、といういつものルールだ。

しかし一本勝負。

 

この一本しかない戦いで、俺は、この戦いすべてで、俺の伝えたいことを伝える。

 

まず、ボーデヴィッ…………いや、ラウラには、

 

「俺の弟子として、死ぬ気で来い」

 

医者によると、3分以上の息切れの状態が続いたら、体が思うように動かなくなるらしい。

 

だから、そうなったら即座に休憩を取りなさい、と言われた。

 

3分、という皮肉な数字に俺は口角を上げる。

 

普通の人からしたら、3分という数字は、かなり無常に見える。

だってカップラーメン待つのに携帯に手を伸ばしたらいつの間にか過ぎてた、なんて話、よくあるだろ?

 

そんくらい、3分、ってのは短い。

 

だけど、俺にとっては、最高に長い時間だ。

 

だって、俺が本気出したら、3分で、大陸三つくらい消せるんだからな。

 

 

 

 

「あぁ、そうだ。

 ラウラ、俺は福音との戦いでも使った、最大威力の牙突を使う。

 師匠として、教えるべきなんだろうけど、俺はこの技は、あえて教えない。

 食らって、理解して、自分のモノにして欲しい」

 

 

その言葉は、ちょっと無情だが、俺からの最大の、最後のプレゼント。

だが、それを聞いたラウラ、強気な笑みを見せ、

 

「師匠、私はその技すらも超えます。

 だって私は、最強を目指しているんですよ。

 師匠の技、超えて見せますよ」

 

いい笑顔で言うようになったな。

短い付き合いだったけど、成長を感じるそんな笑みに、俺は内心で温かいものを感じながらも、それを表には出さず、

 

「じゃ、始めよう」

 

合図は、織斑先生。

 

「3」

 

俺らの武器は、木刀。

俺もラウラも、同じく木刀を使っている。

 

「2」

 

俺は、自然体。

零を放つために。

 

「1」

 

ラウラは、牙突の構え。

最強を目指すために。

 

「始め!」

 

瞬間、ラウラの姿を見失う。

俺はそこで、悟る。

 

彼女は最強を目指している。

 

それは、単純な力だけでなく、意味ある力もある、という意味での最強、だ。

 

牙突は、一撃必殺だが、必中ではない。

 

気をつけて入れば、ここにいるメンバーだったらかなりの確率で避けれる。

 

それを補うために、ラウラは、必中にする努力をしている。

 

つまりそれは、

 

「はぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」

 

単純明快。

 

後ろから、放つ。

 

そのスピードを生かして、

 

その小柄さを生かして、

 

死角に入り、

 

敵を突く。

 

「だが」

 

師匠を超えさせるわけには、まだ行かない。

 

見えないながらも、その場で時計回りに一回転。

右手の木刀が、ラウラの木刀に触れる。

 

逸らそうと力を入れるが、鍛錬の証なのか、なかなか逸れない。

 

だから、

 

零式。

 

自然体のまま放てるということは、つまり不利な体制でもある程度の威力で放てる、ということ。

 

左手で放たれたその牙突は、

 

俺の右手の木刀に放たれる。

 

右手の木刀は、俺の左手の弱いながらも牙突の力を受け、ラウラの牙突をそらすことに成功した。

 

 

俺はそこでラウラの瞳が、視界に入った。

 

そのラウラの瞳には、まだ敗北の闇は見えていない。

 

まだやるつもりだ。

 

だが、

 

俺の積み重ねた牙突は、俺を裏切らない。

 

滑らかに、自然に。

 

俺はラウラの目の前で、牙突の姿勢を作り、俺は右手の木刀を()()

 

「よくやった」

 

ラウラの頭にその右手を置いた。

 

「…………私の、負けです」

 

俺に頭を撫でられたラウラは俯く。

 

「悔しがることはないよ。

 死角に入る、っていう自分の利点を最大に生かした攻撃は、ヒヤッとしたし、技のキレも前より数倍良くなっている。

 それになにより、負けるのを諦めてなかったでしょ?最後まで」

 

「結局、あの技は使わなかったじゃなかったじゃないですか」

 

「いやいや、使ったよちゃんと」

 

「え?」

 

「うーん」

 

目の前でキョトンとするラウラに、俺は苦笑いを浮かべ、

 

「俺の牙突、零式は、いついかなる状態でも最大限の力の牙突を放つことに重点を置いてるから、まぁわかんなかったかな?」

 

「そ、そうなんですか。

 あの技は、そういう技だったんですか……」

 

ラウラは、キラキラとした目でこちらを見てくる。

俺はその表情に、言ってしまった、というやってしまった感を感じながらも、

 

「ま、最初に言ったように、この牙突は俺の牙突、だ。

 ラウラの牙突は、これから作っていってほしい」

 

と、ラウラに伝えたかったことを言う。

ほんとは伝えたいことは色々あった。

なんか色々あったけど、こんな姿を見せられて、俺は何も言えなくなった。

だが逆に、戦ってみて、弟子、っていうフィルターがあるせいで、少し余計に心配してしまった。

 

「はいっ!」

 

まったく、華の様に笑う人が俺の周りにいすぎるな、と臭いセリフを心の中にしまいながらも、俺はそのラウラの笑顔に、微笑みで返す。

 

 

 

 

 

そして感じる、息切れ。

時間は、案外少ないのかもしれない。




案の定ですが、まだ続きます。
案外思い入れが多すぎて幕を引くのが勿体なく感じてきている今日このごろです。
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