IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第9話

俺は一日を終え、 部屋に戻り、一言も話さないまま、布団に飛び込み、寝てしまった。

 

まぁ、その2時間後くらいに起きてしまい、いろいろやってないことを片付け、日記へと向かいあう。

 

「ふぅ、今日はホント災難だった」

 

日記のために、今日1日を思い返し、ため息をつく。

 

いや、今俺は嘘をついた。

 

ほんとは今日はいい日だったはずなのだ。

 

昨日のことが、幸いなことに、会場のカメラはハッキングされており、映像は残っていない。

それに、敵ISは大部分が消滅していて、そこらじゅうに散っていた部品から見るに、どこの国のものでもないことだけがわかった、ということだ。

 

そして最後に、その場にいた当事者からは、

 

『侵入者とは善戦したが、ある程度傷をつけたら、自爆された』

 

と証言していたのだ。

その証拠と言ってはなんだが、周囲の地面はべっこべこに凹んでいた(俺が走ったせい)おかげで、まるで本当に爆発があったかのようになってるし、会場は結構ボロボロになっていた(最後の俺の一撃でつけた傷)ので、学園側も証言が正しい、というふうに捉えたようだ。

 

一命をとりとめた。

 

ほんとに。

 

ほんとによかった。

 

それを昼休みに中林さんから聞いた時、本気で涙を流しそうになった。

 

まぁ泣いてはないけど……

 

まぁ、どう考えても、そこまではよかったのだ、そこまでは。

 

 

俺はその時に今日の夜のようなことになると知っていれば、おとなしく家に帰っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、昨日道場行ってないから、篠ノ之さん怒ってないかなぁ……」

 

俺は思い足取りで、道場に向かう。

今から俺は道場に行くのだ。

まぁ毎日の日課をしに行くということなのだが。

 

ちなみに、力を使ったあとは、後遺症は全くと言っていいほどない。

 

つまり、昨日道場行かなかったのは、完全にテンパっていたからであり、ちょっと篠ノ之さんには申し訳ないことをしたかもしれない。

 

そんな気持ちで、道場に向かい、俺が準備体操をしていると、

 

ガラガラ

 

お、篠ノ之さんが来たようだ。

 

「あ、用務員さん、こんばんは。

 今日もよろしくお願いします」

 

「あー、昨日、なんだけどさ」

 

俺は長引かせるより、早めになんとかしよう、と思い、早速話を切り出す。

昨日、という言葉に反応する篠ノ之さん。

俺はその反応に気づき、さらに罪悪感が掻き立てられ、

 

「道場行かなくて、ごめんなさい!」

 

謝った。

もうそれは腰を90度にしっかりと曲げ、頭を下げた。

ちょっと傍から見たら怪しい図であったが、今は誰もいないので関係ない。

 

「あ、あぁ、そのことですか……」

 

篠ノ之さんは、その言葉にちょっと期待はずれのようなトーンで話す。

 

「それなら心配いりません。

 偶然ですが、私も昨日は行けなかったもので、こっちも申し訳ないことをしてしまったと思いましたが、用務員さんも来ていないなら、どっちもどっちですね」

 

俺は影でホッとしてしまう。

が、悪いことをしたのには変わらないので、気を引き締める。

そして、

 

「あ、それと今日はもうひとり来るそうなので、その人も混ぜてもらえないですか?」

 

あ、これは断れない。

瞬時に察した俺は、

 

「ア、イイデスヨ」

 

もう諦めた。

 

ま、いいだろ、篠ノ之さんの性格上、悪い人はこなさそうだし……。

 

 

 

「あ、どうも」

 

空いた口が塞がらない。

いやほんとこれはちょっと偶然にしてもひどすぎないか?

 

「あ、こっちの方は凰鈴音。

 今日混ぜて頂きたい人です」

 

「あ、あぁ、よろしくな」

 

「…………お願いします」

 

じっと睨んでくる小さい少女。

篠ノ之さんと話してからしばらくもしないうちに、その人物は、道場に来た。

 

まぁ、俺としても篠ノ之さんはいい子だから、その友達も多分いい子なんだろうなぁ、と思い、それだったら、まぁ俺としても邪魔にはならないだろうし、寧ろ篠ノ之さんみたいに練習になる人が来てくれればなぁ、くらいの気持ちでいたが、現実はそうは甘くない。

 

 

まぁ、結論から言うと、昨日の俺が戦っていた現場にいた子が、道場に訪れたのだ。

 

 

驚いた、いや、驚いてる。

それに心の中ではどうしようかと頭をフル回転させている。

 

だが、いきなりのことで思考がショートしているのと同時に、その少女……凰さんからの多分何人かは余裕で射殺すことの出来るくらいの視線を受けて、俺に妙案と呼べるものは現れては来ず、

 

「ま、まぁ、上がりなよ」

 

なんか流れに任せて言ってしまった。

これで逃げる手段は限られてくる。

どうする、と考えていると、

 

「ねぇ、ちょっと用務員の人、話があるんだけどいい?」

 

「ん?なんだい?」

 

平然を装う。

流石に成人超えてしばらくしてくれば、ポーカーフェイスの一つや二つは余裕のよっちゃんだ。

だが、それとは反対に、俺の内心はもう冷や汗で滝が作れるんじゃないかというくらい焦っている。

 

「あ、ごめん、ちょっと二人だけで話がしたいんだ」

 

凰さんは俺の腕を取り、外へ出ようとする。

凰さんの真剣な様子を感じ取り、篠ノ之さんは頷いて道場の中に入ってしまった。

 

そして閉められる道場の扉。

 

外はまだ生温い空気で、暑くもなく寒くもなくといった感じで、ちょうどいい温度だ。

 

「ねぇ、IS学園に男っているの?」

 

点検中の看板に寄りかかりながら聞いてくる凰さん。

 

「えっと、生徒でってこと?」

 

「そんな事は聞いてないの。

 私はIS学園の中で、って言ったの」

 

ギロり、という擬音がふさわしい感じの睨みを聞かせてくる。

女の子に対してあまり経験が無い俺でもわかる。

これは不機嫌だと。

 

「えっと、それなら、俺みたいに用務員は、全員男が仕事をしているよ」

 

「ふーん。

 そうなんだ」

 

凰さんは身長に見合わないくらいの茶髪の長いツインテールの片方を指でいじりながら、聞いている。

そして、しばらく沈黙が続き、俺が中に入ろうか提案しようとしたところで、

 

「ねぇ、あんたさ、1年生のクラス対抗戦の、あの騒ぎの時、どこにいた?」

 

かなり確信をつく質問をしてきた。

 

しかし、冷静になる時間はさっきあったので、頭をしっかりと働かせる。

 

いま、凰さんの聞き方だと、いろいろな答え方ができる。

つまり、俺に聞いたのは、俺だから聞いた、というわけでなく、話の流れからして、2つ考えられる。

 

 

一つ、俺が男だと聞いて、聞いてきた場合。

 

もう一つ、ある程度の確信を持っているため、アリバイの確認という意味で。

 

そして、目の前の少女の顔を見て、前者だと確信する。

 

そう、凰さんの顔には、疑問の表情が浮かんでいたのだ。

 

だから、これは言い逃れできる。

 

と、俺の人生で1、2を争うような頭のフル回転で、その答えにたどり着く。

 

まぁ、力を抜いたら普通の人間なので、それが正解かは分からないが、こっちの方にかけてみるしかない。

 

 

俺が息を吸い、声帯を振るわせようとしたその時、

 

「素直に用務員さん、クラス対抗戦の騒ぎの時、あのISを倒したのはあなたですか、と聞けばいいんじゃないんですか?、と聞けばいいだろう」

 

 

その言葉は、俺の予想が外れていたことを証明するものであり、そしてこの場にいない第三者の登場を意味する言葉。

 

俺はその出処に顔を向ける。

 

凰さんも驚いたようにその方に顔を向ける。

 

俺はこの声に聞き覚えがある。

そう、この声は用務員からしてみれば、嫌な声であり、聞きたくもない声なのだ。

そして、この気配もなく現れるのは、俺が知る限り、IS学園では1人しかいない。

 

「まぁ、予想ですけどね、と付け足さないとダメだったな」

 

そう、織斑先生である。




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