神の落し物   作:松宗信次

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どうもです。一日一話投稿できればいいなと思っております。
感想、批評などは随時募集中です! 


夢から現実へ

風見洋一(かざみ・よういち)は、大きな広場にいた。

身体は無い。視覚だけが浮いている。

その視覚で見渡せば、広場の周囲を、石で造られた大きな建物に囲まれているのがわかった。頭上の空は暗く、建物の隙間を見ても、その向こうが全く見えない。光の灯らない建物を見たとき、洋一は初めて思考を走らせる。

 

……夢か?

 

夢だ。自分の思考が存在する、もう一つの現実のような夢。

この風景は自分の記憶によるものか、それともいろいろなものが混じって作られたものか。洋一には解らない。だが、夢では無い、と洋一は思う。風と空に、広場に置かれた花壇の花が常にざわめいているからだ。現実のものだけがもつ乱雑さがそこにある。

風を感じると言うことは、感覚があるということだ。

 

……では、喋れるだろうか。

「――」

声はない。だが、動くことは出来た。歩もうとするでもなく、視線を前に、体を傾けるような感覚を作れば、自分がいないままに、視覚だけが動く。

そのときだ。右手の方から音がした。

? という声にならぬ疑問とともに振り向けば、遠く、建物と建物の間から一人の 少女が飛び出していた。

歳はおそらく15か16だろう。髪は朗らかな金色。女性にしては長身、肌は陶器のようになめらかどこまでも透き通る白。瞳に晴天済み渡る青、華奢な体躯をドレスのような格好で走る姿はどこまでも美しい。

暗い夜の広場においても、彼女の美しさは微塵も霞む事はない。

彼女はドレスの裾を両手でしっかりと握りながら、走り出っていた。

こちらへと。まるで何かに追われるように。

口が開き、白い息が吐き出された。聞こえたのは、

「もう少し……、もう少しなのに!」

渇き切った、喉が涸れたような声だった。

彼女は、まろび、膝を着き、立ち上がり、何度も倒れながらも走ってくる。

だが、白い息を大きく吐きながら、幾度目かの膝を着いたとき、深い呼吸をした。

一度身体を倒し、右手を地面に着く。

立ち上がる。また走り出す。走り出して、そして走ってくる。こちらへと、一直線に。

手が届きそうな距離にまで近づいた。そのとき、洋一は二つのことに気がついた。

一つは、彼女が時節、背後を振り返り、何かが来るのを恐れていること。

もう一つは、彼女の纏うドレスが傷だらけということだ。

服の上から斬られたかのような裂傷があった。斬られたと思われる皮膚からは血が流れ、純白のドレスを少し朱に染めていた。

 

……この少女は誰かに襲われているのか?

 

そんな考えに至ったときだった。さきほど少女が飛び出してきた建物の間から、さらにもう一人の男が飛び出してきた。

中年と初老の間くらいの年齢。白髪混じりのガッチリとした体形、何かの紋様のような刺繍が施された古傷の目立つ小麦色の肌を麻布の民族衣装で包み、逆十字のマントを羽織った男。

男は、辺りを見渡し少女を見つけると、その顔を歪めた。

 

……笑っている?

 

否、と洋一は思う。笑いではない、あれは喜びだ。と、何かが叶えられたとき、何かが満たされたときに人が得ることの出来る表情。

思いと同時。少女と男が横をすり抜けていった。

視覚のまま、洋一は吐息した。もはや男の表情を見る気は起きない。男は通り過ぎ、自分が振り返ったところで背しか見ることは出来ないのだから。

だが、洋一は振り向いた。男が何を求めているのかを知るために。

背後に一歩下がりつつ、洋一は振り返った。

すると、男が少女の両肩に手をかけそのまま地面へと押し倒していた。

キャ! と少女の短い悲鳴が耳に届く。その時、トクン。洋一の心臓が鳴った。

 

……何だ? 身体が熱い?

 

おかしな事だ、身体は存在しないというのに熱いなどと。

男は押し倒した少女の上に跨り、唾を吐き散らしながら喚き散らす。

「どこにあるっ!? いえッ! 貴様が”原初の種”を持っているのはわかってるんだ!」

トクン。と、また心臓が鳴る。そのたびに沸々と怒りの感情が湧き上がっていくのを感じる。洋一自身、何故? と思う。

目の前で襲われている少女はまったく知らない他人。

他人が襲われる光景を見たくらいで危険に突っ込むほど俺は、正義感溢れる男だったのか? と洋一は思う。

 

……気付けば洋一は男の背後に視覚だけの状態で立っていた。ここからでは少女が何をされているかは見えない。

洋一は整理の付かない頭のまま、握る。形なき拳を握り締める。眼前にいる男に一撃を加えるために。

 

……そして、奇跡は起きた……。

 

 

男は歓喜に満ちていた。組み伏せた女が暴れるが、男にとっては何の障害にもならない抵抗だった。

男は暴れる少女の両手を掴み組み合わせ交差した手首を左手一本で掴みあげ拘束した。

両腕を拘束されても少女は身体を揺すり抵抗をやめない。

「重いのよ! どいて!」

「クク……ついに! ついにわが手に! アッハハハハ! 誰が、カイザルなんぞに”種”を渡すもんかよ! 俺が手にいれ、俺がこの世全ての森羅万象を従える王となるんだ!」

男の耳に、女の声は入らない。男は震えていた。圧倒的な興奮に、自分の身体に流れ震える血に。 

「よこせ! 早く貴様のもつ”種”を俺によこせぇぇぇえええ!!」

組伏せた女の純白のドレスを強引に剥ぎ取る。そのたびに外気に晒される発育のいい女の体。しかし、その美しい肢体も男の眼中にはない。男が望むは、また別のもの。

奇跡の力を内包した物質。それを手に入れる。その執念だけが男を動かしていた。

女の装束をビリビリに引き裂くと、男はおもむろに懐から小さな小槌を取り出した。男の体躯には不釣り合いな小さな武器だが、それでも十二分に凶器としての機能は持っている。

男は凶器を右手でしっかりと握りしめ振り上げる。そして、女の頭に真っ直ぐ手に持った小槌を振り下ろした……。

 

 

 




大体2000~3000の文字数で続けて行きたいと思います。
戦闘シーン入ったら増えるかもしれないけど……n。
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