年上少女の軌跡より   作:kanaumi

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 そろそろ原作軸に行きたいので、だいぶ時間が飛びます。


9冊目 p322 11月21日 雨音のクロスベル

  

  七耀歴1201年 

 ガイさんが死んだ

 

 

 

 ここ最近、連日の様に雨が降っている。なぜだか嫌な感じが朝からしていた。雨の影響だろうか?何事も無いと良いけども。それはそれとして、今日もサンサンの家に遊びに来ていた。サンサンと遊ぶ日は雨が多いのだが、誰かの体質だろうか?いつもの様に遊ぶも雨が酷くなって来たので、そろそろ帰ろうかと言う所で、ロイドが傘を持って迎えに来た。どうやらお母さんが心配して迎えに寄越したそうだ。サンサンはもう少し遊びたいと愚図ったけど、嫌な感じが消えなかったからその好意に甘える事にした。サンサンにまた遊ぶ約束を取り付けて帰路につく。ロイドとの道中は特に会話する事は無く、ザーザーと傘を打つ雨の音だけが響いていた。だからだろう、本来なら拾えていた甲高い発泡音を聞き漏らしたのは。

 

「…ロイド、今日ってガイさんの仕事はやいんだよね」

「そう聞いてる。アリオスさんに会うんだって朝聞いたし、夕食には間に合わせるとは言っていたな」

「雨、止まないね」

「……ああ、更に強くなるそうだ」

「あっ、エルちゃんにロイドも此処にいたのね。…ちょっと、私これから外に出て来るから二人は家にいてね」

 

 家に帰った僕がロイドとゆっくりしていると、傘を2つ手に持つセシルが部屋の扉から外に出るなと忠告を告げ、部屋を後にした。

「あっ、姉さん。…行っちゃた」

「…だいぶ急ぎだった、兄貴の迎えか?…それにしては」

「ロイド、気になるならこっちにも話して」

「ああ、気になったのはセシル姉の表情が険しかった事と傘を2つ持ってた事だ」

「そうだね、ガイさんが傘を忘れたから届けにって感じじゃ無かったね」

「それに兄貴は、傘を差すよりも走るからわざわざセシル姉に頼んだりしない」

「じゃあ、ガイさん以外の用事かな?お父さんとお母さんは家にいるし、…お友達?」

「…考えてもしかた無かったかも、ごめん」

「いや、良いよ。僕も気になったから」

 

 姉さんの様子を気にしつつも出来る事は無かったので、夕食までロイドと部屋で過ごしてた。夕食に姉さんとガイさんの姿は無く、お父さんもお母さんも姉さん達の用事を詳しくは知らない様子だった。ただ、ロイドは今日家に泊まる事になっているそうだ。何かがあった様だけど、わからないまま今日は寝る事になった。結局、姉さん達に会えずじまいだった。

 

「姉さんが出たのってガイさん関係だよね?」

「ああ、マイルズさんも言っていたからな。…ただ、兄貴に会いに行ったって事だと良いけど…」

「姉さんの様子を見るに、何も無かったって感じじゃあ無いよね」

「…朝からのこの嫌悪感が嘘だと良いな」

「…ロイドもかんじてたの?…僕もサンサンの所で遊んでる間、ずっと感じてた」

「…」

「ガイさん、大丈夫かな」

「…」

 

 眠りに着いた私は夢を見た。帝都でエリオットとロイドが私を追いかける。私は逃げている?髭が私の前を塞ぐ。私は急停止から向きを替えて逃げる。住宅街の公園に出るとセシル姉がベンチに呼ぶ。逃げてる私はセシル姉に謝りながら道を進む。髭達は変わらず私を追う。次に出たのは水路沿いの道で通行人が疎らに歩いている。お父さん達が私を見て微笑んでいる。何故私はこの夢を見ているのだろうか。逃げている私はカトラムの駅を越して大通りに出た。いつの間にか髭達は見えなくなっていた。ようやく巻いたのかと私は歩みを緩めた。旅行で見た大通りに比べて古い様に感じる。なんとなくだけど。改めて周りを見渡すと特に懐かしく感じる物を見つけた。それは、……?なんで拳銃?

 

「はっ!…部屋?…夢から冷めた?」

「…起きたか、エル。着替えてリビングに来てくれってセシル姉が呼んでるぞ」

「うえ、ロイドか。…うん、解った」

「セシル姉は急いでるみたいだから早く」

 

 そう言って、ロイドは部屋を出て行った。ロイドを見送った僕だけど、姉さんが待ってるみたいだから手早く着替える。着替えながら僕はあの夢について考える。ロイドに髭に登場するのは僕の知り合いばかりだった。…その割にはガイさんがいなかったな。それに最後のは見た覚えは無いよな?

 

「エル、着替えたか?」

「うん、早く行こうか」

「待ってたのは俺だからな」

「細かいよ」

「…」

 

 着替えたのを確認に来たロイドと軽口を交わしつつ、僕は部屋を後にした。リビングまではすぐなので此処も会話は無かった。リビングに入るとすぐに姉さんの姿が入って来た。姉さんは昨日に比べて、少しやつれた様子だった。僕らが来たのを見て、姉さんは椅子へ座るように促した。椅子に座った僕等の顔を見て、姉さんは口を開いた。

 

「…二人共、心して聞いて欲しいの。………昨日、ガイが亡くなったの」

「え」

「!」

「はじめは雨の中、市内で倒れているのが発見されたの。そこで、病院に運ばれたのだけど手遅れだったみたいね。私が駆けつけた時にはもう…」

「あ、っ」

「…セシル姉」

「…フフ、ごめんなさい。私も整理がついてないの。ガイには昨日の朝もあったから、余計に考えれないの」

「……」

「でも、朝になったら少し落ち着いたのよ?だから二人にこうして話せているのだけれどね。」

 

 突然の事に僕はうまく反応出来なかった。ロイドは姉さんの心配をしてたけど、痩せ我慢に近い気がする。話した姉さんも多分痩せ我慢で、涙は出さなかった。この後、お父さんとお母さんと一緒に病院に向かった。そして、ガイさんの姿をこの目に刻みこんだ。淡い思いは冷たい体身を貫く事は無かった。だから、刻む。あの右手の温もりと共に。

 

 葬式はすぐに行われた。葬式には沢山の警察関係者に加えて、遊撃手協会からも出席者がいた。というか、髭が来ていた。ガイさんの人脈の広さは凄いのだと感じた。…でも、アリオスさんの姿は見えなかった様な?気の所為かな、一番の相棒だって言っていたあの人が来ない事は無いだろう。お髭の上司さんは来ていたし。

 式は人数の割に静かに終わった。お墓も大聖堂裏に作られた。この頃には、ロイドも姉さんもガイさんの死を飲み込めたようで、下を向く回数も減っていた。前の日常には戻れないけど、近づける位にはなって来た。家の雰囲気が明るくなりだして僕は隠れて安堵していた。

 

 

 僕の日常が前に近づいている頃、僕の周りは着々と変わりつつあった。ガイさんの相棒のアリオスさんが警察をやめて、遊撃手になった事やロイドが警察になるため学校に行く事を決めた事等、身近の変化に市内でも大小の変化があった。そして、僕の生活も変化している。

 

「エルちゃん、またで悪いのだけどこれらをお願い出来る?」

「えーと、了解!すぐに行ってくる」

 僕は病院側のご厚意で資格が取れるまで見習いとして働かれて貰っていた。

「くっ、相変わらず、高い、なぁ!!」

 医療品の補充なりを日夜やっている。いずれは資格を取って姉さんみたいに働くのだ。下積みって奴だけど背丈が伸びてくれないとずっと苦労するんじゃないだろうか。

 

  

 七耀歴1203年 11月21日

 

 ガイさんが亡くなってから2半年が経つだろうか。亡くなったと聞いた時は誰もが傷つき、癒えぬまま半年が経った。僕もまだショックは残ってる。なにせ大切に思ってた人が亡くなったのだ。でも、誰よりも前を向いていたのは姉さんだった。誰よりも悲しいはずの姉さんなのに。それを見たロイドは警察学校への進学を口にした。ガイさんのような立派な警察官になると。反対意見などは無いが、大丈夫だろうかとロイドを見つめた時のロイドの目はとても強い意志を感じた。だから心配はしてないけど弟がこんなに大きく見えるとは思わなかった。

 ロイドに続く様に僕も聖ウルスラ医科大学病院にアルバイト的に職についた。今は雑務に勉強に二足三足の草鞋を履いている。忙しい中でガイさんへの気持ちを誤魔化していた。

 そういえば、警察官になるためカルバートで生活しているロイドが来年帰って来るそうだ。手紙なんかはやり取りしていたけど会うのは久々だ。立派になったであろう弟の姿を姉としてしっかりと見なければなるまい。楽しみである。

 

 

 

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