12/20 前話について気になる点があったので一部変更しました。
カーテンからこぼれる朝日の起こされて、年の開けた寒い1日が今日も始まった。でも、今日は非番なので二度寝に移行する為に再び目を閉じるのだった。ちゃんちゃん。
「いや、もう昼前になるから起きろ」
「…久しぶりの再開がこれの扱いとかお姉ちゃん泣いちゃうよ?」
「エルの事を姉と思った事は無いから、むしろ手のかかる妹と思っているから」
「…相変わらずのようで安心したよ」
僕の安眠を妨げるのは3年前にカルバートに向かった弟分のロイドだった。今日はどっちも非番だった事で、会う約束をしていた。まあ、チラッと時計を見るに集合時間はとっくに過ぎてるので家に来たのだろう。相変わらず僕に対して遠慮が無い。いや、遠慮されても困るのだけど。そんな事を思いつつも、ロイドを部屋から追い出して出かける準備を行う。服は、テキトーで。髪は、寝癖を整えて。化粧、無し。よし。
「おまたせ~」
「ん、早いな、ちゃんと準備したのか?」
「うん、オケーオケー」
「…まあ、言っても聞かないか。わかった、行こうか」
アパルトメントの前で待っていたロイドにそう言うと、ロイドは驚いた様に確認してきた。まあ、女性の準備と言ったら時間もかかると相場が有るらしいので仕方無し。でも、僕は準備する事が無かったから早い、それだけだ。そんな僕を見て、ため息混じりに告げるロイドはゆったりと歩き始めた。
「うんうん、どこから行くの?」
「ああ、最初は兄貴のお墓に行く予定だ。クロスベルに帰ってから時間が取れなかったからな。」
「ふーん、支援課だっけ。頑張ってるみたいじゃん?」
「まあ、まだ市民には認められてない感じだけどね」
「あー、新聞にも書かれちゃったもんね」
「遊撃手の真似事、厳しい評価だよ」
そう言ってロイドはため息をこぼす。この前のクロスベルタイムズでの記事にはなかなか厳しい意見が書いてあった。あと、支援課よりもアリオスさんの方が大きく取り上げられていた。これは知名度もあるから一概にそうと断言は出来ないけれども。
「僕はそうとは思わなかったけどね?比較相手は悪い気がするけども」
「そうなのか?」
「だって、ガイさんがやって来てた事じゃない?市民の悩みを聞いて解決する事なんて。だから、僕は帰って来たんだって思ったよ。そりゃあ、遊撃手と似たような事をしてるけどね?でも、第一に動いてたガイさんの背中を追うんでしょ?なら、やっぱり違うよ。少なくともロイドは」
「…そっか」
「うんうん、お姉ちゃんらしい事を言ったから褒めて良いよ」
「それは無理だな」
「なんで!?」
僕が珍しく長文を喋ったのにロイドが冷たいよ。
「でも、ありがとう。応援してくれる人がいるから頑張れる事も有るだろうから」
「ふふ、ロイドの周りにはそういう人が沢山いるんだから頑張ってね!」
「ああ、そうだな」
少し先を歩いていた僕は、ロイドへ振り向きエールを送る。それにロイドは頷き返した。
そして、僕達は大聖堂の裏へと足を進めた。ガイさんの墓はそこに有る。お墓は、僕や姉さんが定期的に来て掃除を行っているので、近くのお墓よりもずっと綺麗な状態で有る。お供え物は昨日ロイドに言われて用意していた。それを供えて、二人で祈る。ロイドは帰省と支援課の報告等だろうか?僕は去年の報告だ。僕の事も姉さんの事もクロスベルの事も報告する。最近のクロスベルは1年でも直ぐに形を変えるから毎年報告しても尽きる気配が無さそうだ。それが良い事なのかは定かでは無いが、きっと良い事も有ると締めくくった。ロイドも終わったのかジッと墓石を眺めていた。僕も顔を向けると、冷たい石の材質から微かに温もりを感じた。それは、ガイさんが僕達に笑いかけてくれてる様に僕は受け取った。
お墓参りも終わり、クロスベル市街に戻って来たが、これからどうするかをロイドに訪ねた。
「さて、これからどうするの?」
「昼時ではあるから何か食べるか?」
「何かかぁ、この辺りなら麺?」
「少し歩く事になるぞ?」
「うそうそ、あっ、モルジュ行こうよ!せっかくオスカーがやってる店だし!」
「ああ、そういえば俺も結局の所まだまともに行ってないか」
「じゃあ、決まりだね」
そう言って、僕を先頭に西通りのモルジュに向かった。
〜クロスベル市・西通り〜
モルジュを目指して歩く僕達は西通りまでやって来ていた。
「あれ?あそこにいるのって、支援課の人達じゃない?」
「ん、ああ、エリィ達だ。3人共いるのは珍しいのかな」
そこでモルジュのテラス席を囲んでいる3人組を見つけた。長身の男性がランディ君だっけ?で、綺麗な長髪の女性がエリィさんね。ティオちゃんは以前病院で出会っているから知っているね。こう思うとランディ君以外は知人って事になるのか。世間が狭いのか、僕が広いのか疑問になるね。
「ん?おお、ロイドじゃねーか、昼飯か?」
「ああ、3人もか?」
「ええ、偶々だけれど」
「はい、ランディさんが奢ってくれるらしいので」
「ハハ、そんな事は一言も言っちゃあいないんだがな」
「あら、両手に花だって喜んでいたじゃない」
「…まいったね、ロイド助けちゃあくれねーか?今、懐が寂しいんだよ」
「…賭け事は程々にな」
「ありがたいぜ…と、そうだロイドよ。そろそろそっちの嬢ちゃんを紹介してくれよ」
「そうね、多分だけど初対面になるのよね?」
「…私は会った事があります」
「ああ、そうだった。こっちは俺の幼馴染になるのかな?」
四人で話している中、急に僕の紹介シフトした様子に支援課開始からそんなに経って無いのに仲が良いんだなと思いつつも、僕はロイドの発言を訂正する。
「…ロイドの姉貴分のエル、エル・エルフィミンです。ティオちゃんはこの前にあったね。えっと、エリィ、さんは初めましてだね」
「はい、この前振です」
「やはりそうですよね、エリィです。あと、呼び名はお好きにどうぞ、よろしくお願いします」
「じゃあ、エリィちゃんで、よろしくね」
訂正のついでにエリィちゃんとティオちゃんに挨拶をしておく。エリィちゃんは初めましてだけど、ティオちゃんはガイさんが亡くなる前に1度と病院で働き出してから度々顔を会わせている。
「…姉貴分?」
「ランディ、これでもエルは俺よりも歳上でランディと同じ位だ」
「マジか」
「これでもは余計かな、背丈以外は歳上だよ」
男子組の発言は、訂正箇所が多すぎるからいけない。背丈以外が歳相応の雰囲気を放っているじゃないか。
「3年で伸びなかったものな」
「大丈夫です、女性の成長期はきっともう少し在るはずです」
「ティオちゃん、それは望み薄かな…。でも、ありがとう」
「大丈夫ですよ、エルさんは可愛らしいですから」
「うん、出来れば美しい評価が欲しいな僕」
二人のフォローは嬉しいのだけど、違うんだ。そうじゃ無いんだ。
「えーと、エル、坊よ」
「何かな?タメらしいランディ君?」
「…君付けはいらねーかな。っと、それじゃあなくてな。様子を見るに昼飯だろ?せっかくだし一緒にどうだい?ロイドもさ」
「ああ、そうだよ。ロイド、昼御飯だよ!」
ムカッとしたがランディの言う通りで僕達は昼御飯で此処に来ていた。もろもろ合って忘れていた。
「…そうだな、エリィとティオもそれでいいかい?」
「ええ、大丈夫よ。元々、ランディの奢りだった訳だし」
「はい、そうですね」
「………おう」
そういう事で僕達はオスカーおすすめのパンをいくつか頼んで席に着いた。席はオスカーに椅子を出して貰い、5人座りにした。気持ちランディが狭そうだったが、本人は諦め気味だった。
「それにしてもランディが誘ったにしても、休暇日に3人で揃っているなんて思わなかったな」
「あら、別にランディの事が嫌いという訳では無いから誘われたら誘いに乗る事だってあるわよ?今回はタダって事も有る事ですしね」
「私も何も無しに断りませんよ。今日は予定も無かったので」
「…ランディ、貴方少し可哀そうね」
「あー、パンが美味しいな~」
ランディはそう言って、手元のパンに齧り付く。哀れ、きっと心では涙を流している事だろう。
「…んぐ、そうだ、ロイド達はどうしたんだ?向こうから来ていたが」
「ん、ああ、少しお墓参りにね。最近は忙しかったからこういう時に行って置かないと行けないから」
「……そうですか」
「…そうよね、特務支援課発足から駆け足で廻っていたものね」
「ああ、足がくたくただったぜ」
タイムズやロイドから簡単に聞いていたが、余程大変だった様子がそれぞれの表情で想像できた。特務支援課発足から直に、ジオフロントに潜り迷子を救助しに向かい。次の日から街中から寄せられた依頼をこなして廻り、旧市街で喧嘩の仲裁を行ったとか。世間では遊撃手の真似事と揶揄されるが、此処までしているならそのうち評価も変わりそうで、心配だけど安心も出来る。皆、何かしらを抱えていると想うけど、この4人ならやってのけるだろうと漠然とした想いが浮かんで来る。そんな気がした。
七耀歴1204年 1月10日
今日はロイドと僕の休暇のタイミングが一致したので、予てから予定していたガイさんのお墓参りに行った。ロイドも特務支援課発足でバタバタしていてゆっくり出来ていないと言う事もあって、気分転換等の意味も有るお出かけだ。
ガイさんのお墓には毎回の事として、僕や姉さんの様子を報告している。本当は、義兄さんとして夫として過ごしていたはずの出来事を共有したいという僕のエゴで始めた事だ。3年も続けると同じ様な内容も言っているかも知れないけど許して欲しいな。
その後は、ロイドの幼馴染のオスカーの店で昼御飯を食べた。その時に、ロイドの同僚である支援課の3人もそこで昼食を取っていた。エリィちゃんにティオちゃんで、ランディ、個性的な人に囲まれてロイドは大変ながら楽しそうにも感じた。ガイさんの様に周りの人に恵まれている。血筋かな?だから、ガイさんも安心して見守って欲しいな。僕も見守るから。この支援課はガイさんが残した形見みたいな物。それを弟のロイドが受け取った。運命かもしれないし、偶然かもしれない。これからどんな形になるのかは解らないけど、姉としてそれを応援しつつ見届けたいと願ってる。
だからって、私は何もしないじゃない。
男子陣
「で、彼女とのデートはどうだったんだよ」
「彼女?ああ、エルとのか。あれはデートというよりも妹の荷物持ちの方が近いよ」
「おいおい、背は低いが立派なレディだぜ?そういうのは無いのかよ」
「うーん、…難しいな」
「枯れてんのか?でも、興味はありそうだしな…」
「そこっ、男子陣は変な話で盛り上がるな!」