年上少女の軌跡より   作:kanaumi

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あけましておめでとうございます、今年も出来るだけ投稿して行きたいと思っています。

零の軌跡を電子攻略本を見ながらプレイしてますが、誤植が酷いですね。特にキャラの立ち絵関係が。零ではエステルの立ち絵がアリオスになっていて、碧ではイリアの立ち絵がアリオスになってましたね。初め見た時は笑いました。


10冊目 26p 1月26日 呆れる事は沢山有る

 

「エルちゃん、ヨアヒム先生は見つかったかしら?」

「うんん、何処にも見当たらないよ姉さん」

 まだまだ寒い今日も僕は看護師見習いとして聖ウルスラ医科大学病院で研修兼雑務をこなしている。今だって行方不明の准教授を捜索していた。最近になってから起きている病院での事件に対する大事な会議なので、欠席されると困る為捜索しているのだが、見つからないのだ。研究棟の方廻ったが見当たらず、あとは院外の方を残すのみだった。

「…そう、困ったわね。もうすぐ会議の時間になるのだけど…」

「やっぱり外かな?」

「そうね、有るかもしれないわね」

「なら、また僕が外で探して来ようか?」

「…街道なら、いえ、危険なのは変わらないわ」

「うーん、でもなぁ、探せる所は探したよ?」

「そうなのよねぇ…困ったわね。対策会議にはヨアヒム先生にも参加して貰わないと、研修医さん達に伝達が行き届かないのよね」

「…うん、やっぱり僕が行って来るよ。もしも、途中で魔獣に出会っても、エオリアさんに習ったナイフ術で牽制して逃げるから」

 病院に勤め出してから、此処までの通院で魔獣に襲われる事が増えていた。タイムズでも一時期取りあげられていて、都市や近郊部の発達や増えた導力バスの騒音より、導力灯の無い場所での魔獣の生息域に変化が起きている様で、あぶれた魔獣が導力灯がある道路に出現していると。小さい魔獣であれば、導力バスにビビり逃げるのだが、大きいのではそうはいかずに襲う事件が起こっていた。其の為に、遊撃手が定期的に調査、討伐を行って対応している。

 それでも漏れは有るもので、僕も一度その場に出会ってしまい、バス内に入れば少なくとも無事であったが、やんちゃな子が一緒に乗っており、その子が飛びだしてしまったのだ。そして、運の悪い事に魔獣はその子を見つけ、手を振り上げた。それを見た僕は咄嗟にバスを飛び出して、その子を抱いてかばった。魔獣の振り上げた手は僕の背中を切り裂いた。後で聞いたが、骨まで見えていたそうだ。その時の僕はその子を助けるしか脳に無く、必死にその子を抱きしめた。しかし、魔獣からの二撃目は無く、その代わりにズウゥゥンと魔獣の倒れる音が響いた。思わず二度見した僕は、倒れた魔獣の向こうに、人影を見た。それは、クロスベルタイムズで見た、女性遊撃手であり、医師資格を持つ僕が知ってから密かに応援していたその人だった。だが、此処で僕は安心して気を失ってしまった。

 その後、僕は駆けつけた救命員に病院へ運ばれた。治療が行われ、少し跡が残るが問題無く復帰出来るようだった。それでも、何週間かの入院があり、その時に救命員が駆けつけるまでの間、遊撃手が応急処置を行っていて、それが無かったらもう少し酷い状態だったそうで、それを聞き、僕は見舞いに来られたエオリアさんに開口一番にお礼を言った。エオリアさんは僕が無事で良かったと駆けつけるのが遅くなってごめんなさいと頭を下げて謝られた。恩人に謝られたら僕も困るので、謝らないでと言うと、エオリアさんは遊撃手として譲れないと再び頭を下げた。そこまで言われると受け入れるしか無かった。その後、何か出来ないかと言われたので、ダメ元で護身にナイフ術を習いたいとお願いしてみた。実は、クロスベルタイムズで見てからエオリアさんのナイフ術を習ってみたいと思っていた。記憶を無くす前もナイフを使っていたようなので、やったら何か思い出さないかと言う裏もあったが。それを聞いたエオリアさんは、暫く悩み、時間のある時のみで、一人での練習は素振り等の基礎のみと言う条件で許諾してくれた。

 それから、エオリアさんとの特訓が始まった。エオリアさんは特訓になると中々厳しい人の様で、何回もボロボロになった。その度に治療もしてくれたが。そして、最近になってやっと及第点を頂いた。それでも、魔獣と正面から戦える力では無いと強く言われている。

 それでも魔獣から逃げる事は出来るので、以前にも先生が外に行った時も僕は探しに行った。姉さんに相談も無く行ったから怒られたけども。

「…それは私も知っているけどね、心配なのよ。…でも、それしか無いのかしら、最近、警備隊の方に頼むにも手続きで時間がかかるし……」

「姉さん!」

「…はあ、そうね、エルちゃんにお願いするわ。でも、危険だと思ったら絶対に逃げる事よ、良いわね?」

「うん、大丈夫だよ」

「本当に気をつけるのよ?…行ってらっしゃい」

「うん!」

 姉さんに見送られ、僕は職員寮にある自分のロッカーに急いだ。流石にナース服での外出は、危険だし抵抗もある。だから、僕は及第点を貰った後、エオリアさんから貰った防御性能の高く収納もあるジャケットとスカートを身に着け、タイツとストレガーGと言うのを履き、服の収納に投擲ようのナイフにピックと腰に小振りのナイフを差して準備は完了した。出来るだけ戦闘は避けて行くので、回復薬は少なくて良いか、というかヨアヒム先生って良く外に一人で行くみたいだけど、特別運が良いか強いのだろうか?あいにく弱い僕には関係ないが、こういう事もあるので控えて欲しい物だ。掃除をしていたマローネさんに挨拶してから寮の外に出た。門まで行き、警備員のトニーさんを見かけた。

「うし、トニーさん、少し出て来ます」

「え、エルさんじゃないですか、外は危ないですよ⁉」

「ちょっと、先生を探しに行かないといけないので」

「ああ~、ヨアヒム先生ですね。そういえば、今日も釣りに行かれましたね。何やら楽しそうでしたが」

「ハイ、その先生が大事な会議をほっぽいて釣りに行ったので、連れ戻しに行きます」

「…ご苦労様です。自分等が行けたら良かったのですが、最近の方針でこの場から離れられないので、すみません」

「いえ、襲撃事件もありましたし、仕方ないですよ。それに先生もそんなに遠くには行ってないでしょうし」

「はい、おそらくはそうだと思います。お気をつけて」

 そう言って、トニーさんは僕を見送ってくれた。大袈裟かもしれないけど、一般人にはやっぱり辛い物である。ロイド達や遊撃手みたいに慣れている人には、そうでも無くても怖いや突発的な事は辛いのだ。僕も、特訓で強くなっても怖い物だ。

 

 

 先生を探す為に病院を出た僕はひとまず、街道沿いを歩く。導力灯のお陰で魔獣も小さいのが、ちらちらとこちらを見ているが寄っては来なかった。釣りという事なので、少し街道から外れた所の可能性もあるので、音を頼りに進む。昔から音には敏感なので、人が動く音なら逃さない自信がある。エオリアさんにもそれは褒められた。後、アーツの適性も高いみたいだけど、戦術オーブメントは流石に入らないかなと思い、持っていない。まさか、こんな形で魔獣のいる所を歩くとは思わなかったけど。

 街道から少し外れた川沿いを進む。釣りなら水辺なのでこうしているが、先生は見つからない。どこにいるのだろうか?先生は何処か掴み所がない人であったから性格で何処かとかは出来ない。だから、水辺なのだが、どこだろう?と、歩いていると、眼の前に魚型の魔獣、確かケサランだったはずだ。倒せるかもしれないが、エオリアさんの言葉を守り、迂回して戦闘を避ける。発見が早かったので向こうに見つからずに済んだ。遠くなったのを見て、安堵する。毎度、接敵すると緊張する。それを見つかるまで繰り返す。段々と何で僕がこんなに苦労しなきゃいけないんだと思いが出て来た。ヨアヒム先生は僕も前回の捜索からの知り合いだけど、何と言うかこう笑顔が胡散臭いというか、関わりたくないとか思うんだよね。まあ、こうやって捜索に出てるのだけど。

 

 と、探索を進めていると、木陰で呑気に釣り糸をたらしている件の御人がおられた。

「……ハァぁ」

「…(ムカッ)……テイッ」

 その姿にムカついた僕は、鞘に入れたナイフで先生の頭を軽く叩いた。

「イタァ!!」

 それに驚いた先生は何故か竿を後ろに投げた。

「な、何をするんだね⁉」

「いえ、先生があまりにもあんまりでしたので」

「…って、エル君じゃないか、君がどうして此処に?」

「先生、朝のミーティングをやって無いんですか?今日は先日の件で会議を行うと言っていたじゃないですか」

「会議……ああ、そうだったね」

「ああって、被害にあったリットンさんは貴方の所の研修医でしょうに」

「いやあ、今日は良い釣り日和だったからね」

「この前も同じ様な事を言ってましたよ」

「おや、そうだったかな」

「まったく、じゃあ戻りますよ。皆さん集まっているはずですから」

「わ、判ったから引っ張らないでくれ」

 まだ、動きそうに無い先生を引っ張って歩こうとすると、謎の悪寒を僕は感じた。咄嗟に振り返るとそこには竿を片手に持ち、怒った様な顔をした今にも襲って来そうなゴーディアンだった。手に持った竿はさっき先生が投げた物だ。クソ、油断した。先生が見つかって、こっちの苦労も知らずに呑気に釣りしていたからついやってしまったが、気を抜きすぎだ。

「…ヨアヒム先生、戦えますか?」

「無理ですね、僕は釣りはしますが研究の方が得意ですので」

「ですよね、そうだと思ってました。…先生、先に逃げてください。僕が、気を引きますので!」

「…判りました」

「では、僕がこれを投げますのでそのタイミングで、お願いします」

「判りました」

 そう言って、僕は服の収納から取り出したピックを先生に見せ、此方を見ているゴーディアンに投擲した。

「今です!」

 それに合わせて後ろの先生が駆け出すのを感じた。僕はそれを見ずにゴーディアンの行動に注視した。投擲したピックは、ゴーディアンの首元に当たった。顔を狙ったが、ズレたようだ。ゴーディアンはピック抜くと、此方を完璧に標的にした様で、鼻を鳴らして突撃してきた。僕はそれを横に飛んで回避する。そして、懐から取り出したエオリアさん特製の麻酔注射器をゴーディアンに向って投擲した。麻酔注射器は、物に当たると自動で中身を注入する便利な物だ。だが、ゴーディアンは落ち着かず、更に暴れ出した。麻酔が効かないとなると、次はどうするか、とりあえず、ゴーディアンが振り上げる腕を回避する。エオリアさんとの特訓で身体能力は向上していたお蔭で、何とかできている。でも、こっちの攻撃効いて無いし、ナイフで攻撃しに行ける程僕が強く無い。どうしよう。再び、ゴーディアンが腕を振り上げる。回避しようと横に目を向けると、そこには太い樹木があった。

「しま、グウゥ!!」

 回避が遅れてしまい、ゴーディアンの腕で僕の腹を横殴りに薙ぎ払われた。飛ばされた僕は背中から木に打ち付けられた。衝撃で意識が朦朧として状況が良く見えないが、ゴーディアンは此方を向いて歩いて来ていた。ちょっとすぐには動けない、かな。どうしよう。あー、腕振り上げてるよ。その時、

「…!エルさん、目を閉じてください!」

 僕は不思議とその声に従った。目を閉じた瞬間、弾けるような音が響いた。

「救助対象を確認!大型魔獣との接触により負傷!救助及び魔獣の駆除を開始します!状況開始(アタック)!!」

了解(ヤー)!!」

 その声に続き数名が此方に走って来る。銃撃の音の後に何かを振り降ろす音と鈍い音がした。その音の合間に僕に近づく音が聞こえた。

「エルさん!大丈夫ですか⁉」

「あっと、ノエル、ちゃん?」

「はい、ノエルです!目を開けれますか?」

 ノエルちゃんの声に目を開けて応答する。見えた顔は心配の色が強かった。

「良かったです、立てますか?」

「うん、何とかね。ありがとう、でも、どうして此処に?」

「はい、ご存知かと思いますが病院での事件の調査に来ていたのですが、途中でヨアヒムと名乗る医者から此処にエルさんがいると通報がありましたので、駆けつけた所です」

「そっか、先生が呼んだのか。来てくれてありがとうね」

「…本当に間に合って良かったです!」

「ノエル曹長、すみません!魔獣の撃退に成功しましたが、近くにまだ確認できますので巡回に行ってきます」

「…はい、深入りはせずに気を付けてください」

了解(ヤー)!!」

 そう言って、警備隊員達は周囲確認のち駆け出して行った。

「…さて、エルさん。歩く事はできますか?」

「……うん、大分回復した。後は手持ちの回復薬で何とかなるかな」

「…良かったです。……本当に心配しましたよ?」

「うん、ごめん。ちょっと油断しちゃった」

「…セシルさんにも報告しますね」

「あー、それは、ちょっとー」

「…いえ、報告させて貰います。以前のバスの件も心配をかけられましたから、少しは反省してください」

「あー」

「フフ、お願い死ますね」

「ノエル曹長!巡回、終了しました!」

「お疲れ様です!では、車両に戻り聖ウルスラ医科大学病院に救助者と共に向かいます」

「ハッ!」

 その後は、警備車両で病院に戻り、姉さんに報告され、姉さんの説教を受けながら治療を受けた。幸いに怪我は腹の一撃のみだから軽症と言えるな、うん。…ロイドには秘密にしとこう。

 さて、ノエルちゃん達クロスベル警備隊の調査もあり、会議が遅れたが無事全員参加で行われた。ただ、原因が不透明なので効果が有るのかは不明な点が気がかりかな。

 

  七耀歴1204年 1月26日

 今日は、自分の油断しやすい性格を矯正したいととっても思った。ヨアヒム先生が悪いとはいえ、警戒を解いた僕も悪いと言えば悪い。エオリアさんに鍛えて貰ったという過信もあったのかな。くぅ、気を付けなきゃだ。ノエルちゃんは車両に乗っている間はずっと僕に抱きついていた。うん、心配かけたね。会議の方は、警備隊の調査で魔獣の被害ではとなったので、研修医さんには夜の外出控えて貰い、患者さんには看護師付きでの外出とした。当たり前の対応しか出来ないのが歯がゆいけど、警備隊との話で、警備の増援を頼めたのは幸いだ。調査の方は警備隊で行いつつ、場合によっては、とある筋に頼むそうなので、解決する事を期待したい。

 

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