年上少女の軌跡より   作:kanaumi

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久しぶりになりますが、かけたので投稿しました。


3冊目 p360 12月24日 ウルスラ・クリスマスパーティーⅡ

 

 

「エル、起きてくれ朝だ。」

 気持ちの良い朝なのに、遠慮のない揺さぶりが僕を微睡みから目覚めさせた。

「・・・・ふわぁ。・・・・・・・・おはよう。」

「ああ、おはよう。それから朝ご飯は出来てるって、レイテさんが。それと、着換え置いておくから着替えろよ。」

「わかった。・・・・ふわぁ。」

 ロイドはお母さんが用意したのだろう着替えを置いて部屋を出ていった。

 

 

「おはよう・・・・。」

「ァム・・・・おはよう、眠そうねエルちゃん。」

 リビングに行くと姉さんはパンを食べていた。挨拶すると姉さんは食べながら挨拶した。

「あら、凄い眠そうね。エルちゃん、顔でも洗ってきたらどうかしら?」

「ああ、そうした方が良いと思うぞ。」

「・・・・ん、そうする。」

 ロイドもスクランブルエッグを食べながら言ってきた。

 洗面台の鏡の前に立ち鏡に映る自分の姿を見ていた。

「……そういえば、何の夢だったかな?何か大事な事だったような気がするけど・・・・。」

 バッシャっと顔に水を当てる。

「・・・・思い出せないなぁ。」

 バッシャバッシャっと顔に水を当てる。

「・・・・まあ、良いか。」

 顔をタオルで拭き、リビングに向かった。

 

 

 

「エルちゃん、食べ終わったら病院に向かうわよ?」

「うん、・・アム・・・ン・・・わかった。」

 朝ご飯のパンを口に運びながら僕は姉さんに頷いた。

「・・・・ン・・・・ごちそうさま。」

 朝食のパンとご飯を食べ終えて僕は一度部屋に戻り身支度を済ませた。

「・・・・・・・・ふぁぁ、ぁ・・・・」

 起きてからそんなに時間が経っていないためまだ眠い。頭に血が巡って無いのだろうかぼーとする。

「・・・・・・・・ふぁぁ。」

 

 

 なんだかんだで準備を終え、リビングに戻るとロイドと姉さんが待っていた。

「あら、エルちゃん準備は終わったのね?」

「うん、終わった。」

 そう言うと姉さんは微笑み、ポンッと手と手を合わせ言った。

「じゃあ、行きましょうか。」

 

『本日は聖ウルスラ医科大学病院行きバスにご乗車ありがとうございます。只今午前9時30分です。到着予定時間は午前10時10分でございます。では、発進いたします。』

 

 運転手のアナウンスが終わるとバスはゆっくりと動き出した。窓から見える景色がバスのスピードに合わせて流れて行く。街道に出るとバスはスピードを上げた。それに合わせて流れるスピードも速くなっていった。流れていく景色には小さい魔獣が映ったり、釣り人が竿をたらしているのが見えたりした。何度も通る道でもちょっとした変化があると嬉しいものだ。

 ・・・・・・・・長々言ったがバスの中は面白くないって言うことを言いたいんだ。スッゴくつまんない。早く着かないかな。・・・・あっ、ポムだ。光ってるよ、珍しいな。

 

 

 

『まもなく聖ウルスラ医科大学病院に到着いたします。お忘れ物のないようご注意ください。』

「やっと着いたよ。」

「言ってないで準備してくれ。」

 そう言って、ロイドは読んでいた雑誌で僕を叩いた。

 ロイドは発進してから雑誌をずっと読んでいた。タイトルは『釣りの基本《上級者編》』だ。以前は《中級者編》を読んでいたが《上級者編》にグレードアップしたようだ。基本が終わったら応用《初級者編》のようだ。基本に三冊も使っているのに書くことが有るのだろうか?因みに一冊100ミラだ。愛読者は多いのだそうだ。

「叩かないでよ。痛いなぁ」

「もう、降りるから準備してくれ。」

 こいつ年上を何だと思ってるんだろうか。身長とか見たらどっちが年上かなんて分かり切ってるのに。」

「・・・・口悪いぞ。」

 ロイドがこっちみてるけど何だろう?

「ひとまずバス降りよう。セシル姉はもう降りてるから。・・・ほら」

 外を見ると、姉さんがこちらに手を振っていた。・・・・いや、よく見たら振っている手の反対の手で早く来いって合図してる。

「・・・・うん、行こう」

 運賃を払い姉さんの所まで走って行った。

 

 

「では、予定時刻になりましたので準備を再開します。昨日の続きになりますが。皆さん頑張りましょう」

 姉さんの開始の合図で準備が始まった。ロイドは昨日と一緒で机を運んだりしている。僕も昨日続きで調理をしている。昨日出来なかったピザやチキン何かを作っていた。準備中は特に話すこともなく、時間はあっという間に過ぎていった。今は手の空いた人で参加者を迎えに行っている。ガイさんやアリオスさん、ノエルちゃんも会場に来ている。今日の天気は快晴との事なので急遽外にも机を置いている。その関係で作る量が増えたけど、その分沢山の人が参加してくれるパーティーだ、楽しくない訳が無いだろう。だからそんなに苦じゃなかった。

 

 

「皆様今日は聖ウルスラ医科大学病院クリスマスパーティーにようこそおいでくださいました。今日は存分に楽しんでください。・・・・では、乾杯!」

 夕方、姉さんの乾杯の合図でパーティーは始まった。パーティーではビンゴ大会などのイベントも有るけど、基本的に料理を食べて楽しく話す事を中心にしている。患者さんが話す事で気分転換になったら良いという考えでこの形になった。僕も料理の補充をしつつパーティーに参加してる。

「おっ、エルか楽しんでるか?」

 休憩の合間に歩いているとガイさんから声をかけられた。

「はい、楽しんでますよ、ガイさんはどうですか?」

「ああ、楽しんでるよ。エルの作った料理も美味しいぞ。うまくなったな」

 ガイさんは僕の頭を優しく撫でる。ガイさんにはお母さんに料理を習ってる時にロイドと一緒に試食をしてもらっていた。最初は調味料を間違えたりして、苦笑いばかりだった。

「はい、頑張りました」

 だから、僕は少し胸を張りながら言った。それを見たガイさんがまた撫でてきたのはご愛嬌だ。その後も少し話してガイさんと別れた。

 

 

「あっ、ノエルちゃんだ」

 ガイさんと別れた後も、何人かの知り合いと会話をしながら歩いていると前方にノエルちゃんが料理を食べているのを見つけた。少し気になったので、知り合いと別れてノエルちゃんに声をかけた。

「ノエルちゃん?」

「・・・はい!?・・・・あっ、エルさん!」

 突然声をかけたからかノエルちゃんは驚いて持っていた箸を落としてしまった。

「あれま、ごめんね。驚かせちゃって」

「あ、いえ、えっと大丈夫です」

 ノエルちゃんはそう言うが、今のは僕が悪かった。だから近くにある箸置きから新しい箸を持ってノエルちゃんの所に戻った。

「はい、箸持ってきたよ。いやぁ、ごめんね」

「すみません、ありがとうございます。・・・・あっ、そうだ!」

 ノエルちゃんは何かを思い出したのか、車椅子にかけていた鞄から小さな箱を取り出した。

「これ、クリスマスプレゼントです。お母さんに頼んで買ってきてもらいました。開けてみてください。」

 そう言って、綺麗に梱包された箱を差し出した。開けてみると、赤色の綺麗な髪留めだった。裏面には『ERU』と彫られていた。

「うわぁーありがとう。つけてみていい?」

「はい、付けてみてください」

 そう言う事なので早速付けてみた。鏡が無いのが悔やまれるがノエルちゃんは似合ってると言っているので大丈夫だろう。まさかノエルちゃんから貰えるとは思ってなかったからとても嬉しい。

「エルさん、髪が白いから似合うかなって思って今日の午前中にお母さんに頼んで買って来てもらったんです。そのせいで、お母さんにもっと早く言いなさいって怒られましたけど、似合っていて良かったです」

「ありがとう、とても嬉しいよ。・・・・そういえば、妹さんが来るって言ってたよね、どうしたの?」

「はい、えーと…。あっ、いました」 

 ノエルちゃんが指差した先には、背伸びして一生懸命料理を取ろうと頑張っている女の子がいた。

「フラン!」

「?・・・・あ、お姉ちゃん!」

 ノエルちゃんの呼びかけに辺りを見回していたが、此方に気づいて走って来るノエルちゃんの妹ちゃん。彼女の後ろで彼女の持ってたお皿がカチャンッと音をたてて、机の上に落ちたが、此方に走って来る妹ちゃんには届かなかったようだ。

「お姉ちゃん!」

「ちょっと!フラン!」

 ノエルちゃんに抱きつくが、ノエルちゃんは後ろが妹ちゃんの向こうの方が気になるようだ。仕方ない、片付けに行こう。

「…僕が片付けとくよ。」

「あっ、すみません。・・・もう、フランったら」

「えへへ、お姉ちゃん♪」

 入院してから会えていなかったようなので、とても甘えたかったのだろう。抱きつく妹をあやす姉の姿は周りの人達から微笑ましく見られていた。

 

 

「エルさん」

「ん、なに?」

「ロイドさんは一緒じゃないんですか?」

「えっ?」

 あの後もノエルちゃん達との会話を楽しんでいた僕は、ノエルちゃんの質問に僕は一瞬呆けてしまった。多分、口を半開きにして固まったはずだ。

「・・・ええと、今は別行動だよ。」

「そう、ですか・・・何処にいるのかってわかりますか?」

 ノエルちゃんは眉を少し歪めて少し困った顔をして、ロイドの居場所を聞いて来た。理由とかは解らなかったが、とりあえずロイドを連れて来た方が良いと僕は思った。我ながら思考の停止が早い物だと思うが、めんどくさかったのだ、考えるのが。ともかく、ロイドの居場所を捜そうと周りを見渡した。こういう場でロイドを捜すのはとても簡単だ。何故なら、ロイドはモテるからだ。学校での様子を見てもよくわかる。なので、パーティーでロイドが一人だと大抵、女性に囲まれる。年齢層は小さい子供から若い大人の女性までと幅広い。ロイドも嫌だと追い払う事はしないので、余計に女性が寄って来るのだ。今回も恐らくは一人での行動中のはずなので、大きな集団を捜せば見つかるはずだ。

「えーと、・・・あれかな?・・・なっ!」

 顔をキョロキョロさせて捜していると、一際大きい集団が目に入った。それがロイドのいる集団かと思ってよく見ると、その集団の中心にいたのはロイドではなくて、ガイさんだった。ガイさんは、若い看護士さんに囲まれていた。片手に飲み物を持って、楽しそうに話していた。忘れていた、ガイさんもガイさんで凄くモテるのだ。ロイドと良い、この兄弟は遺伝子レベルでモテるのだろうか?そんな事を考えながらつい、目的も忘れてその集団を強く見つめてしまった。ガイさんが誰と居ようと本人の自由だと思っているが、正直に言えば凄く気に入らない。姉さん以外の女性と話しているのを見ていると凄くやきもきするのだ。その事を本人に言うことは無いけど、ガイさんにはそうして欲しくないと強く思う。

「どうしたんですか?」

「あっ」

「あの、大丈夫ですか?」

「うん、ごめんね。呆っとしてた。」

 僕の様子を見たノエルちゃんが心配そうに声をかけてきた。その声に僕ははっとなって、ノエルちゃんに顔を向けた。ノエルちゃんはさっきとは違う感じの困った顔をしていた。心配させた事を謝って、改めてロイドを捜した。

 

 

 

 ロイドの居場所は探し始めてから、ものの数分で見つかった。やはり女性に囲まれていた。ロイドも飲み物片手に女性の話に相づちを打っていたりと楽しんでいるようだった。その光景は見慣れた物なので、特に思う事はない。本人しては友達と話す感覚何だろうが、周りから見れば女性に囲まれて楽しんでるチャラ男だ。その光景は女性の僕でも罰が当たればいいのにって思う程だ。

 何であれロイドの居場所がわかったので、ノエルちゃんに方向を指で指さしながら教えてあげた。それを見て、ノエルちゃんはロイドの方向に顔を向ける。すると、集団を見つけたのか固まってしまった。その様子を見て、だろうなと思いつつ、しまったとも思った。昨日の様子をみる限り、ノエルちゃんはロイドを少なからず思っていたのが何となく感じ取れていた。想いの相手が女性に囲まれて楽しんでたら、ショックをお受けるのは当たり前だ。・・・どうしよう。ノエルちゃんに抱きついていたフランちゃんも、ノエルちゃんが固まったのを見て心配している様子だった。

「お姉ちゃん?」

「ノエルちゃん、大丈夫?」

「・・・・・・」

 呼びかけても反応は帰ってこなかった。これはとても重症だと判断できた。お門違いだけど、この状況を作った原因のロイドをとても恨みたくなった。やっぱり、ロイドは一回罰が当たれば良いと思う。

「・・・しょうがないかなぁ。」

「お姉さん?」

「っ・・・フランちゃん、ノエルちゃんを見ててね」

 一瞬、フランちゃんのお姉さん呼びに来るものがあったけど、フランちゃんにノエルちゃんを任せてロイドの所に向かった。

 

 

 近づくと、ロイドを囲む女性が年上ばっかりなのに気づいた。その事に思わず珍しいと思った。ロイドに集まる女性は年上もいたのだが、同い年か年下が多かった印象があった。今回は大人の女性の方が子供よりも多いのは知っていた。けれども、子供がいなくて大人ばっかりなのは不思議に思ったが、そこまで考えて・・・まあ、良いかと思考を完結させた。今は別に関係の無いことだから。

 ロイドを囲む人の壁を小さい体を使って、下から中に入り込んだ。

「ロイド」

「っと、・・・エルか、どうかしたのか?」

「ちょっと、こっちに来て」

「えっ、ちょっと!」

 ロイドを見つけたので、話もすぐに連れ出した。ロイドは少し痛がっていたが気にしなかった。

 

 

 

「えっと?」

 戻って来ると、ノエルちゃんは回復したのか僕の後ろのロイドを見つめていた。ノエルちゃんの前にロイドを連れてきたが、ノエルちゃんは見つけめたままだった。

「ノエルちゃん、ロイドに用があったんだよね?」

「・・・あっと、はい…」

 やっぱりノエルちゃんに先程の元気さは感じられない。これには、状況が理解仕切れていなかったロイドも気がついたようだ。

「えっと、ロイドさん」

「あ、ああ、何かな」

「・・・クリスマスプレゼントです」

 そう言って、ノエルちゃんは赤色の包み紙にくるまれた箱を渡した。ロイドはそれに少し驚いた顔をしたが、すぐにありがとうと言って受け取った。

「開けて良いか?」

「はい」

 ロイドは包み紙を丁寧に外した。中には黒に金色の模様がかかれた箱が出てきた。箱をあけると、赤色の腕輪が入っていた。良くわからないが、タイムズに売っていた物にそういうのがあった気がする。

「今日のパーティーに誘って貰ったお礼です。私が指定したのは色だけですが。ロイドさんには似合うんじゃないかと思って買ってきてもらいました」

「・・・ありがとう、凄く嬉しいよ。大切にする」

「・・・はい、そう言っていただけただけでも嬉しかったです」

 今日一の笑みを浮かべたノエルちゃんの顔はとても晴れ晴れとしていた。

 

 

 

 

 

 

 僕は夜道を進むバスに揺られていた。クリスマスパーティーも片付けも終わって、姉さんやガイさんにロイドと一緒にバスに乗っていた。姉さんとガイさんは今日のパーティーの感想や日頃の事を話していた。ロイドは疲れたのか座席にもたれて眠っていた。ロイドの右手首にはノエルちゃんに貰った腕輪がバスの照明に煌めいていた。

「・・・」

 あの後、ノエルちゃんはフランちゃんとパーティーを楽しんでいたと思う。ロイドにプレゼントを渡す前の様子は見受けられなかった。ノエルちゃんに何があったのかはわからない。悪い事だったかもしれないし、良いことだったかもしれない。わからないけれども、ノエルちゃんはスッキリとしていた。理由もないし、宛ても無いけどノエルちゃんにとってはあれで良かったのだろうと思っている。

 

 

 

 

 

 バスの車内は大小様々な寝息が反響しあっていた。後10分もすれば夜でも明かりが消えない街に着く。それまでは、寝息の合唱をBGMにバスを運転しようと運転手は思った。

 

 

 

 

 

 

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