冒険者タドコロ   作:じるすしもん

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迫真空手奥義

「タ゛ト゛コ゛ロ゛! そっちにいったにょ!!」

「オォン!」

「ココアライオン!」

「これこそ戦闘だな!」

「何するのさ!」

 

 戦いは膠着状態となった。

 邪剣でも中々仕留められない、マヒロもかなり強い

 問題は悪魔ヒデの魔法がどれだけ続くかだ。

 ジュンペイは町の人間から力を吸収している、ほぼ無限と言って差し支え無いだろう。

 

「痛゛い゛ん゛だよォ!!」

 

 一方悪魔ヒデには疲れが見える、禁断魔法と言う位なのだから体に相当の負担がかかっているのだろう。

 俺達は焦り始めた、それでは勝てないと分かっていながらも。

 

「ヴ゛ォ゛ェッ!」

 

 ヒデがえずいた。

 

「誰がえずいていいと言いました?」

 

 まずい……そろそろ限界だ。

 俺達は焦燥感に駆られマヒロに飛びかかろうとした

 

――人影?

 

 俺とマヒロの間に何かが割って入った、この人は!

 

「マヒロ!もうやめてくれ! 本当の心を取り戻してくれ!!」

 

――礼二さんだ。

 

「礼二さん!下がるゾ! 危ないダルルォ!?」

「……マヒロ!思い出してくれ、君が俺に言った言葉を。君は天使なんだろう?」

 

 (知ら)ないです。

 するとジュンペイが高笑いをしながらこちらを向いた。

 

「ハハハハ! 無駄ですよ。彼は天使などではなく私の魔術によって創られた存在。その壺が壊されれば命も果てます。守るのは当然でしょう」

 

 マヒロは何も言わない、表情は固まっている。

 

「人間の屑がこの野郎(ゾ)」

「いいや……君は天使だ、俺を救ってくれた。」

 

――――仕事を失い、恋人に見捨てられ、すべてに失望したあの日・・・

  自ら命を捨てる事すら考えたあの日・・・

 

   『僕はマヒロ天使だよ。お兄さんが何か悩みを抱えてるようだったから声を掛けたの。何か悩みでもあるの?』

 

 君の声が・・・俺の暗い心を溶かしてくれた――――

 

「マヒロ……」

 

 礼二さんがそっと歩み寄る。

 

「……来ないで下さい」

 

 歩みは止まらない。

 そしてマヒロを優しく抱きしめた。ヴォエッ!!

 

「君を愛している、君は僕の天使だ……」

 

 ファッ!?

 これって俺の憧れゲイ告白シチュエーション第3位の場面じゃないか!?

 見とけよ見とけよ〜

 

「礼二さん―――僕もあなたを愛してます」

 

 アーハキソ

 

「有難き幸せ、天使様、有難う御座います」

 

 礼二さんはカマホモの告白を形式ばった回答で返した。

 

「マヒロ、何をしている! 全然ダメだな!」

 

 ジュンペイが取り乱しながら叫ぶがこの2人には聞こえてないみたいだ。

 

「チャンスだゾ!」

「ウン、おかのした」

 

 壺にめがけて突進!

 喰らえっ!

 俺とミウラの連携技。

 邪剣『夜』と迫真空手を掛け合わした。

 

――迫真一刀流《保羅(ほら)》!

 

「ホラホラホラホラ」

「ホラ、見ろよ見ろよ。ホラ」

 

     砕!!!

 

 暗黒の壺は、音も無く砕け散った。

 その瞬間壺が割れ暗黒の魔力が吹き出す、黒煙が辺りまで広がり視界が悪くなる。これで町の呪いも解けるだろう。

 

「礼二さん……お別れの時です、私もあなたに救われました」

「うわ!? そんなの嫌だ!」

「頭が寒いです……本当に、ありが……とぅ…」

 

 マヒロの体は霧となり消えてしまった、やったぜ。

 

「ン゛ーッ!マ゜ッ!」

「ああーすわわぁー!」

 

 魔力が霧散した後にそこから我修院とトクガワが現れた、無事だったのか(困惑)。

 そうだっヒデっ、ヒデは無事か?

 

「ヒデ! 返事をしろ! ジュンペイを倒せたか!?」

 

 しじまからヒデのか細い声が聞こえた。

 

「倒せませんでした……」

 

 オォン!?

 ヒデ死にそうな声じゃないか。

 

「ガキが、毛が生えてる奴ぁ大ッ嫌いなんだよ」

 

 声を荒げたのはジュンペイだった、態度が豹変している。

 先程までの紳士的な姿はかりそめ、これが奴の本性だ。

 風が巻き起こり視界が晴れる……すっげぇ怒ってる、ハッキリわかんだね。

 

「じゃあ罰としてウンコ食うか!」

 

 何か茶色い物体をこちらに飛ばしてきた、避けなきゃ(使命感)。

 俺が我修院をミウラがトクガワを抱いて回避した

 

「なんで、なぜ動けもしない私たちを助ける?……」

 

 我修院が問いかけてきた

 

「――ま、多少はね?」

 

 当然の事だからだ。

 

「ぼくもしゅる〜〜、つんつん」

 

 ヒデもこちらにやって来た、まだ動けるじゃないか

 

「禁断魔法の代償で、向こう1週間は魔法使えないから助けちくり〜」

「ファッ!?」

「ポッチャマ・・・」

 

 奴の禁断魔法フンニョーは破った―――だがこちらも消耗しきっている、どうする?

 

「ン゛ン゛ッ! 本当の痛みを教えてやるよ!」

 

 ジュンペイが雷の魔法を発動させ攻撃してきた、クソッ! 奴の魔法力は切れてないのか!

 

「邪剣『夜』! ちょっと刃あたんよ〜」

 

『夜』が雷電を切り裂く、魔法の威力は随分衰えたようだ。

 

「タドコロ! お前ボロボロだゾ、無理すんな!」

「ま、多少はね? ミウラさんの方こそ立ってるのがやっとって感じじゃないすka〜?」

 

 ミウラの拳は固まった血に覆われていた、目は虚ろで照準が合っていない。――って普段もか。

 

「絶望とさー、一体になってみろよ」

 

 ジュンペイが追撃の準備をする、いったい――

 

「タドコロ、一瞬だけ奴の動きを止めてくれ。そしたら迫真空手の奥義で仕留めれるゾ」

「ファッ!? 奥義があるなら早くやってくださいよ」

「まだ完全に習得できて無いんだゾ、今やってもアイツの魔法で防がれちゃうゾ」

 

 ミウラは分かっていた、ジュンペイは魔術師でありながらも接近戦において高い戦闘力を誇る事を……

 

「ウン、おかのした」

「ほら。もっと良い顔をしろよ。――死ね!」

 

 放射状の炎が放たれた、コイツ防ぎきれない攻撃に切り替えやがった!

 

「邪剣『夜』《魔宵音(ましょうね)》!!」

 

 邪剣から魔方陣が出現、広範囲の防御を目的とする技だ! アーイキソ。

 魔法を防ぎきり、炎が晴れた、最後のチャンスだ!

 自分の手首を邪剣で斬る、青い光が剣に宿った。

 

   【封治覇(ぶっちば)】

 

 タドコロ君最速の業だ! 狙いは奴の足下!

 魔力を宿した邪剣で、奴の脚を斬り裂いてやる!!

 

「――残念、君たちの狙いは非常に分かり易かったよ。ケツマンパワーを溜める時間は充分にあったしね」

 

――何?

 

 剣を振りかざした瞬間、ジュンペイは後ろに1歩だけ下がった。

 まるで力の差を見せつけるかの様に、その1歩でかわしてみせた。邪剣が空を切る。

 

「剣筋が止まっ――て見えるのは、私だけでしょうか?」

 

 目が合うと奴はそう言ってみせた、深い眼差しが俺を見つめる。

 

――負ける……のか?

 

 背後でミウラの圧を感じた、閣下モードだ。やめろっ!失敗だ!

 

「フム、あれはヤバそうですね」

 

 ジュンペイは逃げる気だ。ミウラ、ヒデ…すまない。

 

――希望は、無いのか……

 

   『アバレンナヨッッ!!』

 

 タドコロの視界を絶望が塞ぎかけた時、ジュンペイの体を風の魔法が拘束した

 

「なっ!?」

 

 ジュンペイ渾身の力で束縛を解こうとする、だが解けない。内臓まで縛られている感覚だ。

 

――――バカなッ!?

 

 身を悶えるジュンペイ、生々しい歯ぎしりが響く

 

――――ありえないっ

――――私が敗北などとは絶対にあり得ない!!!

 

 にわかに受け入れがたい現実。ミウラ、ヒデ、タドコロは虫の息なのだから、この事象は起こり得なかった筈だった。

 

――――いったい誰が!?

 

「もう待ちきれないよ、早く倒してくれ!」

 

「――我修院(呼び捨て)!!!」

 

 ミウラの体から莫大なケツマンエネルギーが吹き出る。波動が空を裂く。

 

   【迫真空手奥義『也体逝(やったぜ)』】

 

 ジュンペイが最期に見たもの、それはこの世の全てを凌駕する圧倒的強者。その片鱗だった。

 

「ぎにぃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!」

 

 声にもならぬ断末魔を上げ、ジュンペイは弾き飛ばされた。

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