「オレはミウラって武闘家だゾ、悪いけど魔法は使えないんだゾ」
「ぼくヒデ、僧侶だにょ。回復魔法は任せて」
「……俺はタドコロ、24歳です。天職はまだ決まってない」
俺達男3人組は王都を目指す途中今さらながらに自己紹介をした。
こうなってしまったものは仕方が無い、王都に着くまではこいつらで我慢だ。
「あれーおかしいねー。24も生きて天職が分からないなんて、……うー☆うー☆」
ヒデが俺を挑発する。
この世界に生まれてくる人間はみな天職を持つ、天職は先天的な物であり生まれる前から決定される。戦士、僧侶、魔法使い、武闘家、盗賊、etc……。
魔法を使ったり、身体機能を向上させたりできる振り幅はほぼ天職によって決まる。
それらすべての超自然的力はケツマンと呼ばれるエネルギーによって生じる物だと本には書いてあった。
「心配すんなゾ、タドコロ。魔法なんな無くたって立派に戦えるゾ」
魔法が使えない、それは冒険者として失格の烙印を押されてるようなものだ。
「俺は魔法使えるっスよ、ただ天職が分かって無いだけっす」
「ポッチャマ・・・」
ミウラがまた両手で顔を覆う。
こいつらと出会ってまだ3時間たらずだが色々分かった事がある。まずミウラについて、コイツはアホである、会話が噛み合わない事も数多い、都合が悪くなると「おっ、そうだな」と言って話を逸らそうとする。
「速く歩くにょ、急いぢくりー」
次にこのヒデ、見た目は可愛らしい少年だが、中身は生意気なんてものじゃない。竹刀でぶっ叩いてやりたい。
コイツらに仲間が出来なかった理由は十分理解できた。
「だいぶ村から離れたからな〜、そろそろ魔物が出るかもしれないゾ〜」
「ヤダ、ヤダ、ねぇちょっとヤダ。魔物なんてヤダ」
しかし一つ疑問が残る、それはなぜ俺がヒデをおぶって歩かなければいけないのか。
「タドロコ揺らし過ぎだにょ、速ければ良いワケじゃないにょ」
俺は怒るのもアホらしくなってしまっていた、疲れた、ただそれだけだ。
じゃり、じゃりと足音を立てながら俺たちは王都コオトへ向かう見晴らしの良い街道を歩いていた。
「ぬわぁぁあぁぁん疲れたもぉぉぉぉおぉん」
「タドロコ、それ言うの5回目だゾ」
「マジすかぁ?」
「うー☆うー☆」
「……」
その時ミウラの顔つきが変わった、
「魔物だゾ!」
道の脇からぬらりと影が現れた。
「気持ちの悪い魔物だゾ」
現れた影は体を揺らしながら間合いを詰める。
「吸血液体生命体チカレタみたいっすね」
「おっ、そうだな」
口癖かっ、とツッコミたくなるが我慢。
「ミウラ! 早くその気持ち悪いうねうねをやっつけるにょ!」
背中でヒデが叫ぶ
「そうだな」とミウラが呟くと真っ直ぐチカレタに向かって突進した、かなりのスピードだ、……だが。
「バカ! やめろ、そいつは」
遅かった、ミウラの正拳突きはチカレタの体を貫いた。しかし奴は液体生命体、物理攻撃など無意味だ。そして……
「ニュワチュカ〜〜〜」
ふざけた声をあげながらチカレタの体がミウラを包み、体力と血液を同時に吸いとる。
「ヴッッ!?」
ミウラの表情が驚きから苦悶に変わる。俺は既にヒデを背中から降ろしていた。
「ミウラ、そのまま動くな! ヒデ、遠距離魔法で援護を頼む!」
「はーい、わかりましたぁ」
ヒデが緊張感の無い返事をする。
俺はチカレタの背後に回り込み、火属性魔法レベル1アツイを生成。火はチカレタの弱点属性だ。
「ミウラ! 熱いが我慢しろ!」
右手からアツイが放たれる。
「ニュワニュワ〜〜」
たまらずチカレタがミウラを放した――「ヒデ! 今だ!」
「……ホントぉ?」
ヒデがすっとんきょうな顔でこちらを見る、コイツに期待した俺がバカだった……。
「ニュワチュカ〜〜」
怒りを纏った液体生命体が唸りをあげてこちらへ向かってくる、逃げられない。
「しょうがねえな〜」
俺は体を捻り右手を剣に添えた、………瞑想、、、その間1秒!
邪剣『夜』――――――――――逝きましょうね。
瞬間チカレタの体が弾け飛ぶ。砂ぼこりが周囲を包む。
………
俺は剣を鞘に納めた、あまりこの手は使いたくなかったがしょうがないね。
視界が晴れてきた、ヒデが目を光らせながらこちらへやってくる
「すごいにょ。見えなかったにょ」
チカレタの体は霧散しそこにはタマしか残されていなかった。これで今晩の宿代は足りるかな?
魔物を倒すとタマと呼ばれる宝石を手にいれる事ができる、タマを買い取ってくれる施設が都会の方にはあるらしい。
ふと体がケツマンパワーによってふんわり包まれるのを感じた、ダイナモ感覚だ。
冒険者は倒したモンスターの強さに応じてダイナモと呼ばれる力の作用を受ける、これにより冒険者はケツマンパワーを上げる事、いわゆるレベルアップをする事が出来る。
――おーレベル上がったかな、これであいつらも態度を改めるだろ。……あれ、そう言えばミウラは?
ヒデが顔を強張らせ指を指す。「ミウラか?」と聞くが返事が無い。
視線をやるとそこにはミウラがマンドラゴラのように干からびていた。
手足をパタパタ動かしている。
「ウーン」
俺は今度こそ本当に昏睡してしまいたかった。