冒険者タドコロ   作:じるすしもん

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大蛇アナルコノンダ

 タドコロの生まれ育ったウンコクセー村から南西へ30キロほどの所にあるイキスギの街、小汚ない3人組の話声がする。どうやら無事到着したようだ。

 

「まったくミウラが干からびた時はどーなるかと思いましたよー。ま、夜には到着したからいいんスけどね」

「おい、タドコロ。ミウラさんと呼べゾ、オレのほうが年上だゾ」

「はいはいミウラさん」

「……川に突き落としたら元に戻るなんて、ミウラは体の構造もバカだにょ」

「おっ、待てい(江戸っ子)、聞き捨てならないゾ」

 

 夜の街は旅商人や冒険者なんやらで賑わっていた。

 

「こっから港街ホアァーを通ってパイパイ山を越えればもう王都に着くゾ〜」

 

 人をかき分けながらも会話は続く。

 

「そう言えばなんスけどミウラさんはどうして王都に行きたいんっスか?王都は3人1組の冒険者しか入れないみたいっスけど」

「僕はお金持ちになりたいんだにょ。」

 

 ヒデ、お前には聞いてない。

 

「……トッチャマに、トッチャマに認められて、世界中の人達を助けたいんだゾ」

 

 ミウラがポツリと言う。雑踏の中でもハッキリと聞こえた。

 俺が王都を目指すハッキリとした理由は無い、ただその方が目的を達するのが早いと思うからだ。

 目的は一つ、――

 

「やっと着いたぞ、これで休めるゾ〜」

「ほんとぉ?」

 

 街の一角、宿場が集う場所に着いたようだ。だが俺達3人の金は少ない。

 

「はぇ〜スッゴい大きいゾ」

「うー☆うー☆」

 

 テンションが上がってるお二方には悪いが、俺達が泊まれるのはあの家畜小屋みたいなトコだな。

 外れにある幽霊がコンニチワしそうな宿に目をやる。

 

「そんなトコに泊まれる身分じゃないっスよ」

 俺はボロ宿へと足を進める。

 

「おっそうだな」

「ヤだヤだ、小生ヤだ」

 

 後ろ2人は文句を垂れながらもついてくる、なんで俺がこいつらをエスコートしなきゃいけないのか、

 

「ん? あれは……?」

 

 宿に近付き目を凝らして見る、店先で4人ほど集まっている、揉め事か?――

 

「今ならここの土地を14万3000オォンで買い取ったるいうとるんや、ぼったくりやで?」

「そ、そんな値段で、……私たち家族にの垂れ死ねって言うんですか!」

「おーおー、ええの? そんな口の聞き方をして」

「もう私たちに構うのはやめて下さい」

 

 高圧的な態度の男が続ける。

 

「それにこんならクッサイ宿、泊まるアホもおらんちゃう?」

「そのアホならここにいるゾ」

 

 女性を囲む3人の中にミウラが割り込んだ。

 

「うせやろ!? なんじゃいお前は?」

 

 サングラスを掛けた、変な訛りをみせる男がこちらを見る。

 男は俺達を一瞥し一瞬の間を開けたあと言った。

 

「ま、まぁえぇわ。今日のところはこの辺で勘弁しといたるわ。オイ! 行くぞ!」

 

 男はそう怒鳴り手下とおぼしき2人を従え町へと去っていった。――なんなんだ? あいつら。

 ボロ宿の娘だろうか、さらりとした淡い黒色の髪、痩せた体からは苦労がうかがえる。しかし、かろうじて清潔感を保った衣服にてたたずむ彼女からは不思議な魅力が感じられた。

 

「あの、……助けていただいてありがとうございます」

 

 声が震えている、やはり怖かったのだろう。言葉に詰まったのか、彼女が地面に目線をやる。

 ミウラが沈黙を破った。

 

「心配はいりませんよ、俺達3人があの悪党どもを懲らしめてごらんに入れます。………ゾ」

 

 ミウラが精一杯の爽やか笑顔で女性をみる。俺は思わず「お前ノンケかよぉ!」とツッコんだ。

 

   * * *

 

 くたびれたカーテン、歩くたびに軋む床、今にも壊れてしまいそうなベッド。

 

「さっきの気取ったミウラは傑作だったにょ」

「おっそうだな」

「ぬわぁぁあぁぁん疲れたもぉぉぉぉおぉん、辞めたくなりますよ〜」

 

 荷物を置き一息つこうとした時、扉が嫌な音をしながら開いた。

 

「失礼します……」

 

 そう言いながら少年と先ほどの女性、アーキソさんが入ってきた。

 

「それで、何があったんスか?」

「タドコロはせっかちだゾ、お話はゆっくり聞くもんだゾ」

 

 せっかちは悪い事じゃない。

 少年はアーキソさんの後ろに隠れている、警戒されているのだろうか。

 

「ヤンホヌ、挨拶しなさい」

 

 年齢はヒデと同じくらい、10歳ほどだろうか。帽子を深く被っており顔は(んにゃっぴ)良くわからなかったです。上目遣いでこちらを見る焦げ茶色の丸い瞳。どうやら警戒してるのではなく、ただの恥ずかしがりやさんのようである。

 少年はペコリと一礼してまた隠れてしまった。

 

―― か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛ヤ゛ン゛ホ゛ヌ゛く゛ん゛

 

 アーキソさんの話はこうだった。

 2人は8歳年の離れた兄弟で両親が亡くなったあと2人でこの宿を切り盛りしていた、町の北にあるシャブレヨ湖の魚イナリをふんだんに使った魚料理は評判だったらしい(ホントかよ)。

 しかし1年前シャブレヨ湖にてアナルコノンダと呼ばれる大蛇が出現した、これにより魚を仕入れる事が困難と化してしまったのである。

 この町一番の宿の経営者カアリ(さっきのサングラスの男)は看板料理を出せなくなった彼女を用済み扱いしたという。

 カアリは数々の嫌がらせをして宿から客足を遠ざけた、この民宿の土地を格安で買い取り自分の事業を拡大するために、……

 

「そのアナルコノンダを倒して、カアリってのもやっつければいいんだゾ」

 

 それまでおとなしく聞いていたミウラが声をあげた。こいつに長い話は無理らしい。お前もせっかちじゃないか(困惑)。

 

「いえ、カアリはここ一帯のボス、数多くの部下がいます。それにアナルコノンダ討伐に数多くの冒険者が挑みましたが……いずれも失敗しています」

「ダイナマイッ!!」

 

 ヒデが驚く。

 

「オレ達になにか出来る事があるなら言って欲しいゾ」

 

 アーキソさんがさらに神妙な顔をして言う。

 

「旅の方にこんな事を頼むのは非常に恐縮ではありますが……イナリを捕ってきていただきたいのです、一匹だけでよいので。その一匹で必ずカアリを納得させる魚料理を作って見せます」

「一匹だけならなんの解決にもならないゾ」

「実はカアリは私のイナリ料理を一度も食べた事が無いんです。そこでカアリは1つの提案を出しました。私のイナリ料理で彼を満足させれば嫌がらせをやめて協力する、と」

 

 話に退屈した俺はヤンホヌ君を眺めていた。良いねぇ〜

 

「タドコロ! ちゃんと話を聞いてたのかゾ、頬杖ついてキモイ顔すんなゾ」

 

 お前には顔について言われたくない。

 

「失礼な! ちゃんと聞いてましたよ。魚を獲るくらい知り合いに頼めばいいじゃないすか」

「実は、イナリは町の人間の匂いを記憶する事が出来るんです。アナルコノンダにより従来の収穫法が

出来なくなってしまって……。町の人にはどうすることも出来ないんです」

 

 それからアーキソさんは俺達に数多くの注意点を説明した。アナルコノンダに遭遇しないため、イナリの姿形、などなど。道具は向こうで用意するようだ。

 彼女は助けてください、なんでもしますからと最後に言った。

 じゃあその可愛らしい少年を俺にくれ、と思った。

 結局俺達はその依頼を引き受ける事になった、ミウラが「大蛇をやっつけるゾ」とかアホをぬかしてたが相手にしなかった。ワルガキ並の作戦会議をしたあと俺達は眠りについた。

 横になった際、初めて町に来たのだからふらりと出掛けたい衝動にかられた。やっぱり僕は王道を往く、ソープ系ですかねぇ。 しかし睡魔には勝てなかった。

 こうして俺の長い1日が終わった。

 

 

 

 

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