〜〜〜ここはイキスギの宿場
「イ〜ナ〜リ、イ〜ナ〜リ」
「フフッ。カアリさん毎日イナリ食べてるじゃないですか。まだ朝にもなってないんですよ」
「だって美味しもん、(食べ)終わっても(満足感が)残ってるやん」
仲良さげに会話するアーキソとカアリ。すべてタドコロ達のおかげだ。
そこに血相を変えたヤンホヌが入ってきた。ヤンホヌどうした!?
「おっ、お姉ちゃん大変だよ!?王都の方角の空が真っ黒になってる!」
「ヤンホヌ落ち着きなさい! 今はカアリさんが食事中なんだから」
「……」
「カアリさん、どうしたんですか?」
カアリは頭を抱え、ブルブル震えている。
「カアリさん大丈夫ですか!? サングラスにヒビが入ってますよ」
「……や、野獣や」
「どうしたんですか?」
「タドコロが……伝説の野獣が目覚めてしもうた」
ヤンホヌは事態が飲み込めなかった。ただカアリの迫力と言葉から、タドコロ達に何か良からぬ事が起きているのは理解できた。
―
――
―――
ついにアキヨシの望んだ展開になってしまった。
タドコロは怒りの余りに、邪剣に巣食う魔獣に飲み込まれてしまったのである
「ア゛タ゛マ゛きますよ〜」
「面白ぇ、こいつがあの『伝説の野獣』か、ククク」
――さあかかって来やがれ。
体長4m、全身を体毛に覆われ、今にも破裂しそうな膨れ上がった筋肉。
『野獣』だ。
《野獣センパイ》だ。
「イ゛キ゛ますよ〜イ゛キ゛ますよ〜イ゛ク゛イ゛ク゛」
『野獣』は全身に力を込めた、そして……
――消えた!?
轟音! その後大地が裂け!……
アキヨシの腹に『野獣』の右腕が――
恨みを込めて打ち込まれた。
深く・・・深く――――
「…うごがぁぁあ!!!」
体躯が空間を切り裂くがごとく弾き飛ばされる!
アキヨシの体が一陣の暴風となり、真後ろに吹きとばされた。
「ぇぅぅがぁぁあ!!」
口から大量の血を吹き出しながら、その体はあ(、)る(、)物(、)体(、)に直撃して動きを止めた
「――がっ、あ゛あ゛」
「ホ゛ラ゛ホ゛ラ゛ホ゛ラ゛ホ゛ラ゛」
『野獣』だ。
「頭゛い゛き゛ますよ〜。」
『野獣』はアキヨシの頭をつかみ、持ち上げた。
【火属性古代魔法LV6アッツゥー】
「があ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!」
頭が黒炎で焼かれる、地獄の苦しみだ。
「あぁぁぁ……」
叫び声が途絶えると、体を無造作に捨てた。
「白゛菜゛かけますね〜」
【闇属性古代魔法LV6ハクサイ】
『野獣』が掌を天に向けると、闇の力が球状に集まった。雷鳴のような音が轟き、周囲を威嚇する。
もう『野獣』の心には一辺のタドコロも残されてはいなかった。
――――あるのは憎しみのみ
「ア゛ーイ゛キ゛ソ゛」
その右腕から放たんとした時、『野獣』の足に何かがしがみついた。
「・・・タドコロっ、タドコロっ・・・」
――――それはローズだった。
今にも泣きそうで、震える体で、目を閉じながら懸命にしがみついた。
「シ゛ュ゛ー」
『野獣』の黒く、暗黒に犯された瞳が少女を捉えた。
「・・・タドコロっ、タドコロっ」
恐怖を抑えるように彼女は力を込める。少女とは思えない程の強い力が『野獣』を苦しめる。
「オ゛ン。ア゛オ゛ン」
「タドコロ・・・。こ・・・こ・・・ひぐっ・・・」
少女が懸命な、涙で潤んだ瞳で『野獣』を見た。
「ン゛ーッ」
「こ・・・こ・・・こ↑こ↓。・・ぇぐっ・・」
「ヌ゛……」
「・・・・まず・・・まず、うちさぁ・・・・っ・・」
「フ゛ァ゛……」
「・・・・ア、・・アイスティーしか・・・・っ・・」
「パ゛ッソ゛……」
「っ・・・わたし・・・、うれしかったん・・だよ・・・・・・だから、もとに・・・ぇぐっ・・・」
「ア゛ア゛ア゛……」
――――
『こ↓こ↑』
『おまたせ!アイスティーしかなかったけどいいかな?』
『まずうちさぁ』
『イキスギィ!イクゥ、イクイクゥ!!』
『ブッチッパ』
――――
「・・・・・・ぅぐっ・・・・・・えぐっ・・・っ・・・」
「……なんだよ。ローズ、お前―――」
「・・・ぅっ・・・・ぇぐっ・・・」
「―――しゃべれるじゃ…………ないか」
タドコロの目には涙が溢れていた。
伝説の野獣編 ―完―