~~翌日
「もう顔中、糞まみれや」
一階の酒場で、クソドカタが相変わらずクッソ汚い事を言っている。
「国王様! アイテムの準備は整いました。」
「あ〜いいっすねえ〜」
大量の回復薬が並べられている。これ全部使う気か?
「大聖堂さえ取り戻せば勝利は目前です! みなさん頑張りましょう!」
キムラもなかなか、煽り方うまいじゃん。
「大聖堂はココから1km程の距離です!兵士は操り人形状態なので突破するのは簡単でしょう。」
「はえ〜、すっごい簡単そう。でもそこから魔帝を倒すのは骨が折れるでしょう。…それでもタドコロさん達なら必ず出来ると信じています。」
そこでトオノが決意を込めて「いざ鎌倉!」と言った。カマクラ?
* * *
王国の兵士達はガバガバ警備だった。リザード大聖堂の手前50mの所までは戦闘も無くすんなり来れた。
だが――
「兵士多スギィ!!」
大聖堂の前はヤケクソみたいに兵士でごった返している。逆に動きづらいと思うんすけど。
「これは戦闘を避けれませんね……できれば我が国の兵士を傷つけたくありませんでしたが」
「沢山いるからね、しょうがないね」
「では私達から行こう」
「え?僕もやるんですか?」
「今日は逆さづり、鞭攻めをしよう」
切り込み隊長はヒラノとキムラだった。
ヒラノの緊縛魔法は凄まじい、地面から超スピードで縄が伸び 兵士達を縛りあげた。
「これなら傷つけることもないじゃんアゼルバイジャン」
こちらに気付いた連中が襲ってきた 周囲を囲まれたが俺達の敵ではない。
「そうだよ!」
ミウラの拳が3人まとめて吹き飛ばした。
「ぼくもしゅる〜」
気合いの入ったダイナマイッが炸裂する。
「・・・・・・」
ローズの杖が唸りをあげる。
「ドロヘドロ!!」
ホリトールが馬鹿力で兵士を投げ飛ばす。
「ゲコー!」
ヨスマーデが稲光を発し、雷鳴が轟いた。
「ヌッ!」
邪剣を使うまでも無い。はっきりわかんだね。
実に簡単に大聖堂の中に入れた、中は人がおらず、閑散としていた。
外にはまだ50人程いるが、片付けるのは時間の問題だろう。
「みなさん! 今から僕が歌うので、その間この大聖堂への敵の侵入を許さないで下さい!!」
「バッチェ大丈夫っすよ〜。歌い終わる頃には敵は全滅してるって」
「そうだよ! 俺達なら楽勝だゾ」
トオノは大聖堂の中心、クリスタルで盛り上がった場所に立ち 『世界の歌声』で歌い始めた。
「アアンッアンッアンッ↑アンッ↓アンッ↓ア↑アンッ↓――」
歌?なのか?
大聖堂にトオノだけを残し、俺達は戦闘を続けた。
劣勢を察してか兵士達は距離を取るようになってきた。逃げんなよ〜
――げっ、増援が来やがった。
黒装束の10人ほどの集団が来た。たいした数じゃない。
するとそいつらが懐から小さい黒い壺を取りだし、地面に叩き割った――なにしてんだよ?
地面に黒い液体が広がってゆき…魔方陣を描いた。
ヌッ!?
魔方陣から右腕が飛び出した。
掌を地に叩きつけ、体をまるで地獄の底から這い出すかのように引きずった。
スカトロールだ!
しかも1体じゃない。1、2、34…5。
5体だ。5体のスカトロールが低く息を吐きながら こちらにゆったりと向かってくる。
「や、やめたくなりますよ〜」
「タドコロ君、君はアイツを知っているのか?」
「バッチェ知ってますよ〜ヒラノさん。アイツら魔法が効かないんすよ。」
「やめてくれよ……」
「魔法はダメでも魔法を纏った物理攻撃なら効くわ」
「そうだよ!(便乗)」
「ファッ!? それってかなり高度な業じゃないっすか!」
「私とヒラノさんならできるだろうけど……」
「それなら、タドコロさん!僕が邪剣に魔法を乗せるのでそれで斬りかかって下さい!」
「体に当てんなよ〜キムラ〜」
「・・・・・・」
「馬鹿野郎お前俺は素手だぞお前!」
「ローズちゃんはオレの拳に魔法をかけてくれゾ」
「ミウラさん…魔法を乗せるのはかなりの難易度です。さらに彼女は魔法道具に頼っているので余計に難しいでしょう。おそらく彼女にはできません」
「・・・・・・」
「そんな顔すんなよローズ。お前は大聖堂の中に入って、どうぞ」
「・・・・・・」
「じゃあヒデに頼むぞ」
「うー☆うー☆」
「では行くぞ!」
ヒラノさんが先陣を切った。頼りになるなぁとタドコロ思った。
【土属性魔法LV5ダイチクン】
魔法の力で強化された鞭がトロールの黒い肉体に直撃!――だが。
「ヴォ……ヴ、ヴ…………」
肉は裂け、血は出ている。だが致命傷とまではいかないようだ。
トロールは鞭を掴み、ヒラノの体を仕返しと言わんばかりに叩きつけた。
「――がぁっ!!」
ヒラノが苦悶の表情を浮かべ、吐血する。
【聖属性魔法LV4ホナニー】
エナが聖なる力を集中して突進した。狙いは奴の傷口だ!
「やあぁぁぁぁ!!!」
槍がトロールの肉体に深く突き刺さり、鼓膜が破れるような断末魔が響く。
そのままトロールは息絶えた、黒い肉体が地面を揺らす。
だが、無理矢理に聖属性の上級魔法を使用した彼女には 周りのトロールの攻撃を避ける力は残っていない。
「――あ゛っ!!」
トロールの右腕が彼女の体を野麦のように凪ぎ払った。
家屋の壁を破り、中まで弾き飛ばされる。当然意識は無い。
その一連の行動の間、一同は動けなかった。スカトロールは以前戦った時より遥かに強くなっている。
「……ヒデ、エナを頼む! 俺はヒラノさんを助ける!」
だが遅い、スカトロールがヒラノの頭を潰そうと拳を振りかざした。
【閣下モード!】
ミウラが疾風の迅さでヒラノとトロールの間に入り込む。そして大木の様な腕から繰り出された殴打を両腕で受け止めた!!
「この畜生めがッ!(ゾ)」
巨体の体重が乗せられた一撃、激痛が走る。
身動きが取れないミウラを他のトロールが殴り飛ばそうとする。
「クソッ(ゾ)」
タドコロがすかさず、
「邪剣『夜』。【封治覇(ぶっちば)】!!」
ミウラを狙ったトロールの体を斬りつけた。奴の体は無傷だが体勢を崩すことには成功だ。
「じゃ、流しますね」
隙を見たキムラが魔法を発動。
【水属性魔法LV4ホモニーチャン】
水の波がトロール達を飲み込んだ。
スカトロール達はびくともしなかったが比較的体重の軽いヒラノ達は波に飲まれ流される、彼らを引き離す事に成功したというわけだ。
それでも劣勢である事に変わりは無い。ヒラノ、エナは既に倒れ、相手はまだ4体もいるのだから
「何でこんなキツいんすかねえ、やめたくなりますよ〜」
「タドコロさん!1体ずつ集中して倒しましょう」
「やはりヤバイ!」
「そうだよ」
――まずいこのままでは……
タドコロは死の恐怖を思い出していた……このままでは確実に殺されるだろう。
スカトロールがゆっくりとこちらに向かってきた。
暗黒の雲を背景に、邪悪な肉体が死神を呼び込む。
圧倒的戦力差、絶望的状況。
――もう……終わりなのか?
右手の力が抜けてゆく……
【アバレンナヨッ】
風の魔法がトロールに放たれた。だが足止めにもならない。
いや、足止めの為の魔法ではない。
「ミウラくん大丈夫か?(人間の鏡)」
「マ゜ッ!」
「「我修院!(呼び捨て)」」
「私達だけじゃないさ!!」
我修院の隣には大勢の仲間達がいた。
――タドコロの仲間達が……
「ニャーゴ!!」
「クォラお前〜。生きとったか!?」
「タドコロさんっ我々イモガオ族も助太刀に来ましたよ!!」
「ソーダゲコ」
「ゲコゲコ」
「ゲロゲロ」
「スケダチ、スケダチ」
「み……みんな」
「嬉しいダルルォ!」
タドコロの目に再び力が宿った。