街から北へおよそ20分、シャブレヨ湖が見えてきた。
自然と俺達4人の足が速まる。釣りをするのなんて何年ぶりだろうか、この時はそんな呑気な事を考えていた。
瘴気を放つ湖。異臭で鼻が曲がる。
「ヴォエッ、なんか(空気が)犯されてるよ」
「ポッチャマ・・・」
「クサスギィ!!」
「………」
この中でお魚は街の人間、ヤンホヌ君の匂いが分かるのか?。
隣を歩く少年に目をやる。
かわいいヤンホヌ君、お姉さんの力になりたくて見ず知らずの冒険者に手を貸すなんて……、アーナキソ。
「……僕もシャブレヨ湖に来るのは初めてなので、イナリも分からないと思います」
匂いと恐怖を我慢する姿。オマエノコトガスキダッ(高音)
年季の入った桟橋、ここのボートはまだ使えるようだ。だが乗れるのは3人が限界だろう。
大蛇について街の人間から集めた情報、それはクッソ汚いものだった。
アナルコノンダはその名の通りアナル(ケツの穴)を好んでおり、特に野郎尻を執拗に狙うのだという。汚物や排泄物を好む悪趣味極まりない魔物だ。
しかしケツの穴を攻められる行為は俺達ホモにとっては日常茶飯事である。大蛇はこの4人にとっては脅威になり得ない。
俺達4人はすっかり大蛇を倒す気になってしまっていた。
「ヒデとヤンホヌ君が街で買ったこやしでヤツをおびきよせて、オレとタドコロがボートからソイツをやっつけるゾ」
「ウン」
「うー☆うー☆」
「はい」
俺とミウラがボートにまたがる。
すっかり匂いは気にならなくなった、こやしが桟橋から撒かれる、神経を研ぎ澄ます……。
…………………………………………………………………………来た!
湖の奥からゆらゆらと影が近付く。……タイミングをうかがう。
――今だッ!
俺が合図をすると手筈通り桟橋から酒の瓶が投げ込まれる。アナルコノンダは下戸なのだ。
たまらず大蛇がその全貌を現す。
全長9〜10メートル、白と灰色の模様にぬめりとした体。
こいつが元凶か、ミウラが腰を落とし大蛇に飛びかかった、ボートがひっくり返りそうになる。
「ミウラ迅いっすね」
思わずつぶやいた。
ミウラの廻し蹴りが大蛇の喉元に命中する、渇いた鳴き声が響き巨体が揺れる。
俺は剣に手を伸ばす、が、……抜けない。気まぐれな邪剣だ。
仕方なしに俺は火属性魔法LV2アツイッスを両手に纏う。
胸の前で十字を切る、狙いはヤツの喉元。
【†悔い改めて†《聖炎獄十字崩》】
炎に包まれた十字炎は大蛇に直撃、聖なる炎は邪悪を焼き尽くす、ヤツは体を強張らせ湖に沈んだ。……死んだな、俺は確信を持った。
ミウラが泳いで桟橋へ向かう、笑顔が見られた。
「FOO↑気持ちいい〜」
「タドコロの魔法はやっぱりすごいゾ」
「早く帰って報告しなきゃ」
「お前もそう思うだら?」
ヤンホヌ君に問いかけた、返事は無い。俺は彼の視線の先に目をやった。
………そこには。
体長15メートル程の、一回り大きい大蛇が湖から体を覗かせをこちらを睨みつけていた。
言葉を失った、一匹だけじゃないじゃないか!
大蛇は湖の奥へと姿を消した。――クーン(昏睡)
―――
――
―
俺達4人は水面から少し離れて知恵を絞った、もうこやしは無い、しかしこのまま帰るわけには……。
「今から俺達でウンコを捻り出して誘い出すゾ」
「いえ、あれは恐らく親のアナルコノンダでしょう。少量ではやってきません」
「早く帰って宿題しなきゃ(現実逃避)」
「だいぶ冷えたゾ〜」
あぁ早く問題を解決してヤンホヌ君とイチャイチャしたかったのに。
ヤンホヌ君に良いところを見せたい俺は額に手を触れ懸命に考えた。
汚物が無いなら何か他の物で代用すれば良い――
汚物の代わりになるもの
要はウンコみたいなもの
臭くて汚くて誰からも嫌われるもの。
茶色、くさそう、きたない……。
駄目だ……どうしても思い付かない。
「何かウンコの代わりになるものがあれば……」
途方に暮れた俺はそう呟いた。
するとなにかが弾けたようにヤンホヌ君が顔を上げる。あぁ、そんな綺麗な瞳で俺を見つめて、彼はきっと名案を思い付いたに違いない。
「そうです代わりです!! ウンコの代わりにタドコロさんで大蛇を呼ぶんです!!!」
――は?
「私タドコロさんを初めて見たとき服を着たウンコが攻めて来たと思いましたもん!!」
――ヌッ!?
「それはオレも通った道だゾ〜、最初はウンコが酒場のトイレに帰って来たのかと思ったゾ〜」
――オォン!?
「客が置き土産にデッカイウンコしてったのかとビックリしちゃったにょ」
――ファッ!?
「アアッー!ハァハァ、イキスギィ!イクゥ、イクイクゥ…ハァッ、ハァッ……ンアッー!!(迫真)」
* * *
(≧Д≦)
悪臭漂う湖、水面にはヒデ達が撒いたこやしが散布していた。
「ウーン(昏睡)」
仲間達にウンコ扱いされた俺は、穢れの中を漂っていた。
「ヒデ! タドコロになにかあったらスグ知らせるんだゾ! タドコロ! 命綱をボートに繋げてるから心配無いゾ!」
「……スタ丼」
「タドコロさん、親の大蛇には猛毒があります、気を付けて」
いったい何に気を付ければいいのか……空を見上げる
……でも、こうやって水面から空を見るのは子供の頃を思い出すな。
ミウラとヤンホヌ君はボートで周囲を警戒、ヒデはスキップをしながら歌っている。
あいつらは俺の事をウンコが擬人化した存在とでも思ってるのかもしれない、だがそんなバカげた話があるワケが無い。
ヤツは仲間を俺達に殺されている、姿を消したと言うのは警戒している証拠だ。そんな警戒心の強い野性の魔物がこの美形魔法剣士タドコロ様をウンコと勘違いして食らい付くだと? まったくバカげている。
――喰らいつくワケがない!!!
…………………
尻になにかが勢い良く噛みついた。
「オォン!!」
「………」
「……ヒデ、何か声がしたがタドコロに異変は無いか?」
「あれ〜おかしいね、誰もいないね」
「ちゃんと見とけって言ったダルルォ!」
ロープがピンと張られボートを引っ張る。湖の奥に向かって動き出してしまった。
「このままじゃひっくり返されちゃうゾ!」
2人は必死にボートにしがみついた。
「ッッオォン! 息継ぎィィ!!」
俺はやっとの思いで水中から顔を出した。
「タドコロ! どうしたゾ!」
「大蛇が腹に噛みついてます! 痛いっス。あと舌でメッチャアナル攻めてきます!!」
「大丈夫かゾ!」
「ま、多少はね(王者の余裕)。(ケツの穴に)いいよ!来いよ!」
「ケツの穴舐めろ。(命令)」
「タドコロさん! そいつはアナルに舌をいれて、そこから猛毒で相手を殺す習性をがあります!」
「オーソレミーヨ・・・」
大蛇の舌が337拍子でケツを攻め立てる。それに合わせて声が出る。
「オンオンオンッ! オンオンオンッ! オンオンアォンオンオンアォンオンッ!!!」
「タドコロ! 耐えるんだゾ! ヤツの侵入を許したら終わりだゾ!」
「おしりが、オマンコになっちゃう。」
「引き締めて! 穴を引き締めて下さい!」
「いやーきついっス」
大蛇軍が俺の第1次防衛ラインを突破する。
「オマンコこわれちゃぁ〜う↑」
「タドコロ、ケツマンパワーを集中させろ!」
「ファファファファファファ(野獣機関車)」
――お兄さん許して、お兄さん許して~!
「タドコロ、もう少しだけ耐えてくれ! だゾ」
「アーイキソ」
第2次防衛ラインを突破された。
もうダメみたいですね。
「どうやらこいつが最後の一頭みたいだゾ」
ボソリと言ったあとミウラが懐から何かを取りだした。
「これはさっきヒデの爆弾精製魔法ダイナマイッにより作られた爆弾だゾ」
ミウラが大蛇目掛けて爆弾を投げる、爆発。湖の怪物に確かなダメージを与えた(あと俺にも)。
たまらず大蛇が俺を放す。
ミウラが胸の前で腕を交差させた。
「ちょうど良い水の深さだゾ。……閣下モードでケリを……つける」
その拳を構えた男は普段のミウラからは想像も出来ない程の圧を放っていた。これが、これが本気のミウラか……。
ミウラがふわりと跳んだ。そして水面を蹴る。
まさに高速の技! 二度の大きな鈍い音の後、耳を裂くような断末魔。
大蛇は力無く湖に倒れこんだ。 波が湖へ広がってゆく。
ミウラが深い息をつき口を開く。
「迫真空手、第4之型の応用。相手の下腹部への高速蹴り、その刹那背中に回り込み腰への高速蹴り――
「対象の体を徹底的に破壊する、迫真空手の双竜蹴り……か」
ミウラがこちらへ振り返った。
「双だよ」
湖は静寂に包まれた。