宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》 作:ココナッツ・アナコンダ
宇宙人ジョーンズ︰参拝客
──この惑星の住人は、『食』というものに本当に貪欲だ。
「ちょっと魔理沙! それ私が狙ってたお肉じゃない返しなさいよ!!」
「お断りなんだぜ。鍋ってのは戦争なんだよ、強くば食い弱くば悔う。ここはそういう領域だろ?」
「そのとおりだぞ〜霊夢。つまり、今みたいに隙だらけだと……こうだ!!」
「ああ〜っ!? また私のお肉が……萃香!!」
「ま、まあまあ霊夢さん。落ち着いて……」
──特に『鍋物』と呼ばれる料理に対して、その傾向がより顕著になる。
「せっかくの差し入れなのに……アンタら、許さないわよ〜!!」
「そうカッカすんなよ。ほれ、これやるから」
「いらないわよキノコじゃない!」
「そうだぞ魔理沙、霊夢にやるならこれだろ?」
「違うわよバカ! 豆腐なんてさっきから食べてるわよ!!」
「あの、霊夢さん……私のを差し上げますから……」
「ありがとね針妙丸。でもね、アンタに取り分けたやつは私には小さすぎるの」
「あぅ……」
──ただ水で食材を煮ただけのものが、何故こうも奪い合いに発展するのだろうか?
「……」
「あっ、うるさくしてごめんなさい。具材はあなたが持ってきてくれたものですし、遠慮なさらず食べて下さいな」
「イタダキマス」
「具材は私が装いますね──二人共! お客様のぶん取るんだから大人しくしてなさい!!」
「やなこった」
「酒出したら考えてやる」
「本っ当にアンタらいい度胸してるわよねぇ……!」
──質がいいわけでもなく、別段味がいいわけでもない。
「マダマダ有リマスカラ」
「だってさ、なら遠慮しないぜ」
「……ハァ〜、もうため息しか出ないわ」
「ほう、二言は無いな霊夢? よし魔理沙ぁ! 針妙丸ぅ! 霊夢は食欲も出ないみたいだから鍋全部三人で食っちま──」
「え? ごめんよく聞こえなかった」
「ごめんなさい冗談ですから封魔針でグリグリしないでくださいお願いします」
「ったく……お酒持ってくるわ。魔理沙と針妙丸は飲む?」
「勿論!!」
「私は止めておきます」
「そう……ジョーンズさんはどうなさいます?」
「遠慮シテオキマス」
──なのに、競争のように取り合う価値があるというのだろうか?
「持ってきたわよ〜」
「うひょ〜、酒だぜ酒!」
「霊夢、早く早くぅ!」
「急かすんじゃないわよ。──はい」
「待ってましたぁ!」
「よぉ〜し、それじゃあ──」
「「「かんぱぁ────い!!!」」」
──実に不可解だ。
「……グゥ〜……」
「すぴー……すぴー……」
「さ……さけぇ……まてぇ……グヘヘ……」
「……皆さん、騒ぐだけ騒いで寝ちゃいましたね」
「……」
「もう少しお話したいですけど……起こしちゃ悪いですし、縁側まで移動しましょう」
「ワカリマシタ」
──ただ…。
「ん〜、夜風が気持ちいい〜。雲もないから星も綺麗に見えますね」
「……」
「あれ、それは何ですか?」
「缶コーヒー」
「へぇ……これが話に聞く……美味しいんですか?」
「オヒトツドウゾ」
「え、いいんですか!? あっ、でもそのままだと量が多いので、この椀にお願いします」
──満天の星を眺めながら飲む缶コーヒーは……。
「エヘヘ、ほろ苦い……でも、何だか優しい味がしますね」
──格別の味がする。
──このろくでもない、すばらしき世界。
このキャッチフレーズって本当にカッコイイですよね。流石サ○トリー。