宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》 作:ココナッツ・アナコンダ
宇宙人ジョーンズ︰通行人
──この惑星の住人は『珍しい』というだけで、やたらと過大な評価をつけたがる。
「この子もそろそろ──寿命かしらね」
「そうなの?」
「ええ。元から身体の弱い子だったから、そう長くはないと思っていたけど──最近の衰弱ぶりからして、あともって3日といったところかしら?」
「……治らないの?」
「……ええ。手は尽くしたんだけど、結果は見ての通り。葉っぱも茎も弱々しいままだったわ」
「……幽香、悲しそう」
「そう? ううん……そうかもしれないわね」
──例えそれが如何に
「この子はねメディ……ずっとずっと見てきた夢があるらしいの。周りの花を咲かせた子たちが教えてくれたわ」
「夢ってどんな?」
「『花を咲かせたい』……ですって」
「お花を?」
「『自分が見向きもされない雑草なのは分かってる。だけどせめて、自分が一番輝ける姿をほんの少し、ほんの数人でもいいから見てもらいたい』……悲しい話よね。この子の種なら決して難しい夢じゃなかったはずなのに……」
「そう、なんだ……」
──その裏では、価値あるはずの代物が多く伝播していることを理由に度外視され、日の目を浴びることなく劣化して消えていく。
「さて──そろそろお水をあげないと……」
「あっ、なら私がお水持ってくる!」
「あら、結構重いわよ?」
「大丈夫! 私もこの子には元気になってほしいから!」
「メディ……フフッ、ありがとう。じゃあ、お願いしようかしら?」
「任せて! 行ってくるね!!」
「あらあら──そんなに慌てると転んじゃうわよ〜?」
「へ〜きへ〜き!」
「もう……やれやれね」
──この惑星では『主役』は珍品であり、ありきたりは『脇役』でしかないのだ。
「──で? そこの貴方。いい加減、隠れてないで出てきなさい」
「……」
「人間……にしては雰囲気が独特ね。まぁいいわ、私は今、気分が落ち込んでいるの。失せなさい」
「……」
「聞こえなかったの? それとも意味が通じなかったのかしら──『見逃してやるからとっとと帰りなさい』と言っているのよ」
「……」
「……私を指差したりなんかして、何のつもり?」
「チガウ」
──ただ…。
「違うって、何が違──」
「ああ──っ!!? ゆ、幽香! 見て、見て!!」
「メディ? どうしたのそんなに大声出して?」
「は、花……お花がっ!!」
「花? 花がどうか……え?」
「この子、お花を咲かせてるよ!!」
「嘘……この子には花を咲かせるどころか、頭を持ち上げる力すら無かったはずなのに」
「でも咲いてるよ! スゴイスゴーイ!!」
「確かにすごいけど……でも、何で突然────まさかっ!?」
──この惑星では、主役になれない脇役だとしても……。
「──いない。まさか、私が気配に気付かないなんて……あら? これは……」
「どうしたの幽香? それ何?」
「これは……確か外の世界の飲み物よ。この上の栓を開けて飲むの」
「ふーん……それよりさ! 一緒にお花見ようよ!」
「……」
「……幽香?」
「……そうね、一緒に見ましょうか」
「うん! あの子のお花ね! 白くてちっちゃくて可愛いんだよ!」
「フフッ、最後まで諦めずに咲かせたお花ですもの。とっても素敵なお花に決まっているわ」
「うん!」
──脇役には脇役の、根強い『魅力』がある。
「ありがとね──不思議な人間さん」
「幽香? どうしたの?」
「何でもないわ。さぁ、いつまでも私たちが独占してちゃ勿体無いし、お家でおやつでもいただきましょうか」
「ワァーイ!」
太陽の畑の話も中々出てくれませんでした。
ネタは浮かんでも、文字にして表現するのが難しいです。
どうでもいい話ですが、私はジョーンズのCMでは『相撲』の話が一番好きです。