宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》   作:ココナッツ・アナコンダ

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宇宙人ジョーンズ:庭師手伝い


調査記録:白玉楼

 

 

 ──この惑星の『冥界』という場所では、死して魂のみとなった住人たちが、新たな生を得る『転生』の順番を待っている。

 

 

 

「幽霊さん、次の料理運んで下さい!」

 

《はい、いってきます!》

 

《こっちも唐揚げ揚がりましたぞ!》

 

「ありがとうございます──よし! このペースなら、変な注文さえ来なければ無事終われそうです」

 

 

 

 ──その順番を待つ間、魂たちは『幽霊』という形態を取り、生前の肉体を再現して、冥界の主の下で働かなくてはならない。

 

 

 

《妖夢さん! 春巻きと炒飯のおかわり注文が入りました! 至急とのことです!》

 

「えぇ!? 炒飯はともかく、春巻きはもう作り置きないのに……。どうしよう、また作らないと──誰か手の空いてる方はいませんか!?」

 

《こっちは手一杯です!》

 

《むしろ手を貸してほしいくらいっすよ!!》

 

《ちょいと忙しいが、炒飯なら何とかやれそうですぜ!》

 

「なら炒飯はお願いします!」

 

《ガッテンでさぁ!》

 

「春巻きは────えぇい、仕方ない。ジョーンズさん、分身お願いします! 出てきた一人は私の半霊と春巻きを作って下さい!」

 

「ワカリマシタ」

 

《妖夢殿! 空いてる皿が無くなりそうです!》

 

「あぁ……手が……手が回らない」

 

《妖夢ちゃん大変! 買い溜めしておいた豚肉が切れたわ!》

 

「嘘……」

 

《妖夢さん! 追加で回鍋肉(ホイコーロー)の大盛りもお願いします!》

 

「イヤァアァァ────!!?」

 

 

 

 ──定年の後どころか、死んだ後にまで働かなくてはならないとは……まったくご苦労なことだ。

 

 

 

「──ご馳走さま〜、今日の晩ご飯もとっても美味しかったわぁ〜」

 

「やっ……やっと終わった〜」

 

《つ、疲れた……》

 

《幽々子さま……ここ最近、一段と食べられるようになりましたね》

 

「んん〜、なんでかしらね〜? ひょっとして最近涼しくなってきたから、暑くて食欲減ってた分が繰り越してきたのかも〜」

 

「えぇ……」

 

《……冥界って基本、涼しいっすよね?》

 

《まぁ……そうね》

 

《体温の低い幽霊や霊魂が集まってる場所だものね》

 

「あらあら、そうだったかしら〜?」

 

「……もういいです」

 

 

 

 ──そして転生した後もまた、きっと今と同じように働かなくてはならないのだろう。

 

 

 

「それじゃあ、ご飯も終わったことだし──」

 

「あっ、お風呂に入られますか? 多分、そろそろ沸いてる頃だと思いますので──」

 

「──食後のデザートを所望するわ」

 

「…………え"!?」

 

《冗談でしょ?》

 

《あんなに大量に食べたのに……》

 

《まだ食べるっていうのっ!?》

 

「ほら、『デザートは別腹』って言うじゃない?」

 

「確かにそうですが……」

 

《あと4日は持つ備蓄を平らげたあとにデザートは……》

 

「常識外デス」

 

「あらあら、フフッ……おかしなことを言うのね? 幻想郷では常識に囚われちゃいけないのよ? 目に優しい方の巫女さんだってそう言ってたじゃない」

 

 

 

 ──最早この惑星の住人にとって、『労働』こそが『存在意義』なのではないかとさえ思えてならない。

 

 

 

「いや、でも……」

 

「どうしたの? 早くデザートを……あっ、分かったわリクエストを待ってるのねっ!」

 

「いえ、そうではなくて……」

 

「今の気分はそうねぇ────白玉を使ったお菓子! 善哉とかお団子なんかがいいかも」

 

「だからですね? その……」

 

「いや待って……ここ最近マスターしたって言ってた和風ケーキなんかも捨てがたいわね…」

 

「あの、私の話を……」

 

「う〜ん……決められない。まぁ、いいわ、作れるだけ作ってきてちょうだい」

 

《……諦めましょう、どっちみち私たちには最初から作るという選択肢しか無かったんですから》

 

「…………はぃ……」

 

《お気を確かに……では幽々子様、しばしお待ちを──》

 

「行キマショウ」

 

「……はい」

 

「なるべく早くお願いね〜」

 

「……ハァァ……」

 

 

 

 

 

 ──しかも…。

 

 

 

 

 

「…………ぁぁ……星が……」

 

「オ疲レ様デス」

 

「あっ、ジョーンズさん……お疲れ様です。他の皆さんは?」

 

「帰ラレマシタ」

 

「そうですか……まぁ、最後の方は死屍累々でしたからね。早く帰りたかったんでしょう」

 

「……」

 

「……私もそろそろ休みたいです」

 

「……ドウゾ」

 

「え? あっ、お饅頭だ。ありがとうございます!」

 

「……」

 

「それにこの虹色の筒は……以前、幽々子様に奪われていた缶コーヒーというものですね? 記憶にあります」

 

「……」

 

「なるほど、缶コーヒーは飲み物だったんですか…。甘いような苦いような……よく分からない感じです」

 

「……」

 

「でも人心地つくには丁度いいですね……」

 

 

 

 

 

 ──この惑星の住人は、どう足掻いても……。

 

 

 

 

 

「フゥー……いい感じに休めた気がします。ご馳走様でした」

 

「ハイ」

 

「疲れた身体には甘いものが染み渡りますね〜」

 

「ワカリマス」

 

「…………さて──」

 

「……」

 

「身体も休まりましたし、お腹も少しですけど膨れました……」

 

「……」

 

「それでは、そろそろ──」

 

 

 

「──明日の朝食を採りに行ってきます」

 

 

 

「オ願イシマス」

 

「はい、お留守番は頼みますね?」

 

「任セテクダサイ」

 

「多分、丑の刻前には戻れると思いますので──」

 

「ハイ」

 

「では──いってきます」

 

「……イッテラッシャイ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「…………あ〜あ、この時間でも人里の市がやってたらなぁ……」

 

 

 

 

 

 ──働くことから、逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 





あぁ^~心がみょんみょんするんじゃぁ^~。

あっ、次回最終回です。




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