宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》 作:ココナッツ・アナコンダ
宇宙人ジョーンズ:調査員
──この惑星には、強力なバリヤーによって隔離された『幻想郷』と呼ばれる空間がある。
──そこは、『人間』と『人間ならざる者』たちが手を取り合い、共存して生きる世界だと言い伝えられている。
──さらに、聞くところによると『幻想郷』は、閉鎖された空間であるが故に、独自の文化を築き上げた場所でもあるのだとか……。
──それ以上のことは、情報の真偽が曖昧であり、詳しく調べることは出来なかった。
──それが意図して隠されているのか、はたまた『幻想』であるがために不明瞭なだけなのかは分からない。
──どちらにせよ、この惑星の中でも、特に異質な場所であることに間違いはないだろう。
──『一見の価値あり』。私は調査員として、その『幻想郷』の調査に乗り出した。
──とは言え、やることは外の世界と変わらない。
──各勢力の下に労働者として潜入し、その内情と『幻想郷』の実態を
──『幻想郷』の象徴である神社、真紅の館、冥界の管理所など、多くの場所を見て回り、記録を残してきた。
──そして今、私は調査を終えて報告書をまとめている。
──多少の想定外はあったものの、調査は概ね成功と言える成果を挙げられただろう。
──そして、各地を転々とした調査の末に導き出した結論が──。
──『まったく……どこへ行っても、相も変わらずろくでもない惑星だ』
──この一言に尽きる。
──結局のところ、この地も結界の外の世界となんら変わりはなかった。
──過酷な労働、耳障りな喧騒、勝手気ままな住人たち。
──不便で、忙しなく、どうしようもないくらいに住み辛い。
──閉ざされた世界で、独自の文化を持つなどと銘打っていても、見えてくる景色は同じものでしかなかった。
──それが、『幻想郷』の各地を見て回り、調査して出した私の結論だった。
──……そう。私はそう結論付けたはずなのだ。
──なのに何故、私はまだ『幻想郷』に留まり、調査を続けているのだろうか?
──もうこの地に留まったところで、新しく見えてくるものも無いだろう。
──この惑星の住人たちの傾向を測るなら、この場所よりも外の世界の方がいいはずだ。
──ここに留まり続ける理由など、どこにも無いというのに……。
『貴方も気をつけておいた方がいいですよ? 貴方と私はよく似ていますから、下手するとどっぷり浸かってたなんてことになりかねません』
『私もだいぶ──ここに染まってきちゃったなぁ……』
──楽しかったというのだろうか? この地の調査が……。
──スカーレットやクロウのように、同じ穴の狢になったというのだろうか?
──しかし、目を閉じ、この空間での体験を思い起こしてみても、脳裏を過ぎるのは面倒な記録ばかりだ。
──ならば私は一体、この『幻想郷』の何に心を惹かれたというのだろうか?
「……ワカラナイ」
──答えは……出ていない。
──ただ…。
「ハイ! お待ちどーさま、外の世界で流行ってるっていう『ケーキ』ってお菓子だよ! 種類は──何つったっけな? アハハッ、忘れちまったよ!」
「アリガトゴザイマス」
「飲み物は……要らないんだったね?」
「持参シテキマシタ」
「はいよ。そんじゃ、ごゆっくり〜」
「イタダキマス」
──この惑星の、缶コーヒーだけは……。
「────フゥ──」
──私の心を、掴んで離さない。
『このろくでもない、すばらしき世界』
ほんの軽い気持ちで始め、5,6話くらいで終わらせようと思っていたこの作品も気付けば15話……最初はこんなに続ける気はなかったんだけどなぁ……(´−ω−`)
高評価に浮かれて、ネタも無いのに続けたせいで後半はかなり無理があったと思います。にも関わらず、温かい声援を送って下さった皆様方、本当にありがとうございました。
『宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書』
これにて完結とさせて頂きます。もしかしたら、ネタが思い付いて更新されることがあるかもしれませんが、その時、お暇であれば目を通していただけると幸いです。