宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》 作:ココナッツ・アナコンダ
宇宙人ジョーンズ︰家政夫
──この惑星には、『拳で語る』という変わった会話の方法がある。
「死にさらせ輝夜ぁ!!」
「消し飛びなさい妹紅ぉ!!」
「……」
──両の拳に言葉、思想を込め、相手を殴打することで直接的にそれらを伝達するのだそうだ。
「クソッ……左の腕と足やられちまった…!」
「ハッ! こちとらアンタに両目焼かれてんのよ? そんなの軽いモンじゃない」
「……」
──そして拳で語り合った後には、『真の友情』なる絆が結ばれるのだという。
「まだまだぁ!!」
「終わらないわよぉ!!」
「……」
──分からない。ただ殴り合い、傷つけ合うだけの行為に、会話の特性など含まれているはずがないというのに……。
「そろそろ……限界じゃ、ないの……?」
「何言ってやがる……それは、そっちの方じゃないか……?」
「……」
──この惑星の住人には、拳に伝達機能が備わっているのかとも思ったが、そうではないらしい。
「……」
「……テイ!」
「……!?」
「ありゃりゃ、やっぱりバレたか──やぁ、ジョーンズ。久方ぶりだね」
「随分ナ挨拶ダナ、ラック」
「その名で呼びなさんな。この惑星では『因幡てゐ』って名で通ってるんだから」
「コレハ何ダ?」
「今アンタに投げたやつかい? お師匠様が作った薬だよ」
「……」
「そんな目で見るんじゃないよ。大丈夫さ、別に変な効果のある薬じゃないさね」
「本当カ?」
「勿論さ」
「……ナラ良イ」
──この方法でなければならない、何かしらの意図があるというのだろうか……?
「しっかし、毎度毎度派手だねぇ。ちょっと前に暴れ過ぎてお師匠様に怒られたばかりなんだから、もう少し力抑えりゃいいのに。おっ、いいのが入った……こりゃ今日は妹紅の勝ちかなぁ」
「何故コンナコトヲ?」
「これがあの二人のコミュニケーションの取り方だからだよ。憎んで疎んで罵って、衝突して何時しか認め合った。そうやって培ってきた繋がりを絶やさないためには、同じ方法で繋ぎ止めるしか無い。だからあの二人は今でもああやってじゃれ合うんだよ」
「……」
「解せない──って顔だね。ま、分からなくても仕方ないさ。アンタはこの地球に染まってきてるとはいえ、まだ来て日が浅い。そういうのを理解するにはまだまだ見聞が足りてないんよ」
「ソロソロ10年経ツガ?」
「それでもさ。生まれた時からそういう感性に触れていく地球の住人とは違い、ワタシたちはすでに確立した別の感性を持ってここに来た。それが、理解したいのに理解する邪魔をするんだよ」
「……難シイナ」
「他を理解するってのはそういうもんさ」
──この惑星の中でも、特に不可解なものの一つだ。
「あ"あ"〜、疲れた〜」
「あっ、帰ってきた。二人ともお疲れ〜」
「お、てゐもいたのか? おい見てたか、私のベストショット!」
「見てたよ〜、アレで決まったと思ったね」
「へへっ、だろぉ?」
「全くっ! 根無し草のアンタと違って私は絶世のお姫様なのよ? 加減をなさい、加減を」
「絶世ってかただの世捨て人じゃないかお前は……しかも悪い意味の。おいジョーンズ、こいつみたいなやつのこと外の世界じゃ何ていうんだっけ?」
「あら妹紅知らないの? 私みたいな存在はモデル、女優、プリンセス、エンプレス、あと──」
「ニートデス」
「それだぁ!!」
「違うわよ!!」
「馬鹿なこと言ってないでサッサと帰るよ〜? もう鈴仙が夕飯作って待ってるんだから」
「はぁ〜い。妹紅、アンタ今日どうすんの?」
「あっ、今日は食ってくわ。昨日、慧音と飲みに行って懐が寂しい」
「貧乏人は辛いわね」
「ほっとけ穀潰し」
「仲良シデスネ」
「「断じて違う!!」」
──ただ…。
「お帰りなさい姫様、てゐ、ジョーンズ。それといらっしゃい妹紅」
「おっ邪魔っしま〜す」
「ただいま〜。えーりん、負けちゃった〜」
「あらあら、よしよし。今日は竹林を燃やしたり、半径数十mのクレーターを作ったりしてないでしょうね?」
「今日は大丈夫でしたよ〜」
「そう、ならいいわ。さ、ご飯の用意は出来てますよ〜」
「えーりん、今日なに〜?」
「炊き込みご飯と唐揚げです」
「マジで!? っしゃあ、いただき!」
「あっ、待ちなさい妹紅!!」
「落ち着きがないねぇ〜、ワタシも行こっと」
「……」
──この惑星の、『薬剤師』という存在は……。
「あなたは待ちなさいジョーンズ」
「……?」
「てゐから渡された薬を出しなさい」
「ハイ」
「──ねぇジョーンズ。この薬はね? 3時間以内にコーヒーを飲んだ人が触れると変色するようになってるの。しかも、身体の中の成分濃度によって発色も変わるから、3時間以内に何杯飲んだかも分かるのよ〜」
「……!?」
「貴方──この色、最低でも5杯は飲んだわね?」
「……スミマセン!」
「ダメよ。夕食後、医療室前まで来なさい。もし逃げ出したりなんかしたら──フフフ、楽しみね」
「……ワカリマシタ」
──やっぱり、容赦がない。
宇宙人ラック(地球名,因幡てゐ)︰居候
ジョーンズさんはマンモスが産まれる前から居たらしいですが、でもあの姿は現代の映画を見て真似たものだと言われています。
なのでジョーンズさんは『マンモスが産まれる前の時代にも地球に来たことがある』という体で話を書いていこうと思います。
そろそろネタ切れ。