鉱石を詰め込み終わりこちらを振り返ったリズを見て、リーテンは慌ててストレージに鉱石を詰め込み移動を開始した。
先頭を走りながら後方のリズの様子も確認し、周辺警戒も怠らない。
リズは難しい顔をして必死に考えているようだ。
リズの思考を止めない為にも、モンスターが現れたとしても、不安を与えるような戦いはできない。
サクッと素早く安全に。をモットーに全力で戦おうと誓う。
町まであと半分ほどの距離を移動した時、前方に二匹の牛モンスターが視界に入る。
雄叫びを上げようとしている牛に素早く近づき、通常攻撃をそれぞれ当ててタゲを取ると大きくバックジャンプ。
着地する直前、なぜか背筋がヒヤリとする様な感覚に襲われた…
後ろを振り返ると、リズも後方を振り返ろうとしていた。
「どうしたの…?」
リズには届かないであろう小声を無意識に漏らす。
その時、リズの後方の岩陰から、すでに突進のモーションに入っている新たな牛モンスターの姿が見えた!
リズまでの距離は7mほど、リズと牛は3mほどしか離れていない、そう脳が認識するよりも早くリーテンの体は動いていた。
「リズ!避けて!!」
リズは左に倒れるように回避をする。
7mの距離を1秒も掛からず駆け、なんとかリズの前に飛び出す事に成功する。
ガイィン!
牛の突進を空中でガードし勢いは止めたが、踏ん張る事が出来なかったせいか、後方に大きく飛ばされる。
まだタゲを取れていないかもしれない!このままではモンスターの攻撃をリズが受けてしまう危険がある!
瞬間的思考がリーテンの視界に青白いスパークとなって弾ける!
「はぁぁぁっっ」
リーテンは空中で体勢を制御する。
なんとか体勢を整え盾挑発初期技《シールド・ロアー》を発動する事に成功する。
左手の盾が大きな音を立て眩く発光し、一瞬視界を染め上げる。
うまく効果範囲に捉えたようで、リズを見ていた牛がこちらを向いた。
硬直が解け、ストンとその場に着地したリーテンは、肩越しに後方を見た。
後方の牛二匹はすでに突進体勢で5.5m後方、前方の敵は4m、今まさに再度の突進に入ろうとしている。
グッと奥歯を噛み締め、ギリギリまで前後の敵を引き付ける。
「リーテン!!!」
鋭く叫ぶリズの声が聞こえた。
運搬方法をあれこれ考える余り、周辺警戒を怠り、あろうことかモンスターを引っ掛け、気付いた時には、もう目の前にモンスターが迫っていた。
「リズ!避けて!!」
リーテンの声が後から聞こえ、なんとか左に飛び退こうとしたが、脚が
倒れる刹那、リーテンの姿が視界に入り自分に向けられていた攻撃を防いだ。
そのままリーテンは視界から消えたが、後方、やや上方から気合いの声が聞こえる。
地面の岩肌に強かに体を打ち付け、リズのHPが微減少。
「くっ」っと声を漏らしながらも何とかリーテンの方を振り向くと、前後をモンスターに挟まれたリーテンの姿がわずかに見える。
「リーテン!!!」
思わず叫んでいた!
モンスターでリーテンが見えなくなった瞬間、ドガガン!と大きな音が聞こえる。
リーテンは無事なのか!そう思った時、甲高い音が空間を震わせリズの耳に届いた。
ギリギリまで敵を引きつけ、右に飛び退き攻撃を回避したリーテンは、すぐさま《フルスイング・ブロー》を発動した!
甲高いサウンドエフェクトが空間を震わせ
「はぁぁぁぁあっ」
自身の気合いの声と共に右手の武器を振り抜き三匹全ての敵を吹っ飛ばす。
技後硬直が解けるとすぐさま通常攻撃で二匹を屠り、スキルに依るダメージが余りなかったモンスターに、素早く《クラッシュ》を発動させトドメを刺す。
リーテンはスキルを出し切ったままの姿勢でしばらく動けずに立ち尽くしていた。
「リーテン!大丈夫!?」
慌ててリーテンに駆け寄る。
「よかった…リズが無事でよかった…」
そう言うと、リーテンは力が抜けたのか座り込んだ。
HPはフル状態だ、あの状況で攻撃を躱し切り反撃に成功したのだろう。
「ごめん、リーテン。周り注意するのすっかり忘れた」
「ううん、私がもっと注意深く警戒してたら気づけたはずなのに…」
「岩ばっかりで死角多いんだからそれは仕方ないよ!私が不注意すぎたの…ごめんね…攻撃も受けなかったし…ありがとうリーテン、守ってくれて」
「ううん、大丈夫だった?」
「うん!転けてチョットHP減ったけど全然大丈夫!それより、すごかったねリーテン!カッコ良かったよ!」
エヘヘと微笑む顔を見て、お互い無事でよかったと安堵しリーテンの隣に座る。
しばらく休憩を挟み、リズも周辺警戒をしながら町に戻った。
内容が少し変わるので一旦ここで区切って次話を続けて投稿します。