今回も町中にプレイヤーの姿は見当たらない。
ホッとしながら鍛冶屋に加工を依頼していると
「もうアイアン分の鉱石はあるから、やめよっか…」
少し俯いたリーテンがボソリと言った。
「うーん、どうせなら持ってこれるだけ持って来ようよ?」
「でも…」
「さっきのは私が不注意すぎたんだって!ここで攻撃受けてもそこまでHP減らないんだし気にしないの!」
「う、うん…」
「それにキッチリ守ってくれたじゃない、それより運ぶ方法考えよ?」
「うん…」
加工を依頼する間に、リズは食料と飲み物を調達してリーテンに手渡す。
「お腹空いてたらいい考えも浮かばなそうだしね」
「そういえば、お腹空いたね…え、もうお昼なんだね、全然時間の感覚がないなぁ」
鍛冶屋の前で、軽い食事をとりながら運搬方法を考え続けた。
「そうか…これなら…」
あれこれ思考を巡らせていたリズは閃く。
「何か思いついたのリズ?」
「ふふ、まだ確信はないから向こうで上手く行くか確認してみよう」
「どんな案?」
「うーん、地形とかあんまり見てなかったから、とりあえず向こう着いてからね!」
「んぅー、りょーかい」
加工を終え宿屋から圏外へ。
今回は戦闘もなく順調にたどり着いた。
「さてと…」
鉱石が積んである周囲の地形を見渡す。
小さな谷の奥に鉱脈ポイントがあり、谷の先は少し開けているが何もない空間だ。
谷の手前は幾つかの小さなテーブルマウンテンの様な岩が数個点在し視界は悪い。
小さなテーブル状の岩を見ていたリズがおもむろに登り出した。
「り、りず!?」
「ちょっと…待ってて!」
3mほどの高さの岩になんとか登り辺りを見渡す、4畳ほどのスペースがある岩上は、周囲を他の岩で囲まれており、プレイヤーに見られる事もなさそうだ。
ここなら地上のモンスターを回避する事が可能だろう。
上空を見ても飛行型モンスターも居ないようだ。
岩を降りリーテンに告げる。
「よし、上手く行きそうだからやってみよう!」
「やるって?」
「あの岩の上は周りから死角になってるから、一旦あの上に鉱石全部運んで、一人があそこで待機するの」
「待機って…それじゃ運べる数が減っちゃうじゃん」
「ふふーん。運んだ後、あの上でストレージに全部しまって移動しないで待機するのよ!そしたら耐久値は減らないし、あそこなら安全でしょ?」
「お、おー、なるほど!それなら時間かかっても全部運べそうだね!」
「ね!良い案でしょ?あと二回は二人で運べると思うから、急いでやっちゃお」
「あったまいいリズ!そんな事全然思いつかなかったよ!」
急いで一旦ストレージに入れ、余分を置いて移動を開始する。
もう考える事はないのでモンスターに不意打ちを食らうことも無く二度運び終えると、宿屋のチェストボックスは二人とも限界だった。
ボックスから武器を出して装備し、飲み物を買い町を出てた。
鉱石をお互いストレージに入れて岩の前に立つ。
「とりあえず、私が登るからリーテンはちょっと待ってて」
そう言ってリズは岩を登る。
登り終えたリズが上から顔を覗かせるとトレードウィンドウが表示された。
リーテンは鉱石をリズの受取り欄に移動させる、しかし何度やってもアイテムが移動しない。
「リズ!アイテム移せないよ!」
「えっ、そんな…あっ、ちょっと待ってて!」
ウィンドウを一旦消し、しばらくすると再度トレードウィンドウが表示される。
今度はアイテムトレードが上手く行く。どうやら所持容量をオーバーする状況でのアイテムトレードは出来ないらしい。
「リーテン、鉱石取ってきて!」
「わかった!」
その後八回往復して全ての鉱石の移動が完了した。
リズは全く動かずに全ての鉱石をストレージに入れれる様に工夫しながら鉱石をオブジェクト化していた。
「さてと、誰が町まで往復する?」
岩から降りてリーテンに尋ねる。
「うーん、戦闘もあるし、私が移動担当するよ」
「お、じゃあ任せるね!」
と言って再びトレードをし、リズの持っていた鉱石を受け取るとお互い「気をつけてね」と言い合い別れる。
リズは岩を登り、一旦野積みしておいた鉱石をストレージに格納した。
「おっもっ……」
飲み物を買ってきたはいいが、それを飲むのも億劫だ。
この世界はどんな体勢でいても現実世界の様に身体が痛くなったり、痺れたりしない事に感謝しつつ体勢を低くしてリーテンの帰りを待った。
二話前が職人クラスだったので一話前を戦闘クラスとし、今話は運搬方法として別にしました。
書きたい事があって、どうやってそれを入れるか考がえてます。もしかしたらSAOクリア後の話しになってしまうかもしれません。