二人なら一往復に40分ほどかかった工程を、リーテンは30分ほどで往復してみせる頑張りを見せ、およそ4時間後、8往復を終えたリーテンと一緒にゆっくり町まで戻り、加工を終えて宿屋に入った。
リーテンは宿の部屋をもう一つ追加し、残りは二人のストレージ入れ、リーテンの部屋でそのままベットに倒れこんだ。
「うへぇ、疲れたー」
「うん、もう、超疲れたねー」
「しっかしリーテン、移動早かったね」
「モンスターいても、ある程度無視して移動したからね」
「やっぱリーテンに移動任せて正解だったね!私だったら往復50分以上かかったかもしれないよ…」
「えへへ…リズ…今日はありがとね!」
「いいって!でも今度ご飯でも奢りなさいよ?」
「もちろん!好きなのなんでも食べていいよ!」
「おー言ったね?」
「うん!もう何度でも奢っちゃう!」
「あはは、何度も奢ってくれなくていいけどさー、ありがとう」
「あー…ううん、えっと…」
言葉を濁したリーテンを見ると、困ったような顔をしていた。
「どうしたの?」
「う、うん、ちょっとお願いがあって…」
「ん?どうしたのよ?遠慮しないで言いいなさいって」
「そ、そう?じゃあ…」
数秒の沈黙の後
「私の防具作って下さい!」
ベッドの上で正座したリーテンがペコリと頭を下げた。
「ちょっ、えっ?私こないだスキルとったばっかだから、まだ熟練度足りないと思うよ!?NPCに頼んだら…そりゃ結構なお金掛かるかもだけど、失敗なく出来るから…」
「うん、それはわかってる…でも…でもやっぱり、リズが作ってくれた防具で戦っていきたいの…リズみたいに何があっても諦めない様に…みんなを守れる様に…リズが作ってくれた防具なら…そうゆう風に戦って行ける気がするの…」
リーテンは強い眼差しでこちらを見ている。
リズはそんな瞳を受け止めつつも予期していなかった作製依頼に戸惑っていた。
「だから…お願い」
再び頭を下げるリーテンに
「顔上げて」
慌てて言う
確かに、なんの迷いもなく新しく増えたスキルスロットを埋めたのは、目の前のリーテンの防具を作る為だ。
ここ数日、我武者羅に鉱石を掘りスキル値を上げ続けたのは、この日を少しでも早く迎える為だった。
予定よりかなり早くなってはしまったが…
たった1日で鉱石が全て揃うという
そんな風に考えていると自然と体が動きだしていた。
スキル値を確認し、作製可能の防具一覧を見る。
「何とか作製は出来るから…やってみる。でもあんまり期待しないでね?もし無理だったら、その時はNPCにお願いしよう、いい?」
「うん!ありがとう!お願いします!」
満面の笑みを浮かべ再度ペコリと頭を下げた。
その作業は、思わず何度もうへぇと言いそうになった。
ハンマーを振り上げ作製に挑戦。
ハンマーを振り上げ不良品を叩いて鍛え直す。
何度目かの作製に挑戦する。
「またダメかぁ……あっ!」
リズはウィンドウを開き何かを探しているようだった。
「どうしたのリズ?」
「すっかり忘れてたけど…あった、これこれ」
リズがオブジェクト化して見せたアイテムは、木の葉のレリーフのネックレスだった。
「かわいいネックレス、だね」
「かわいいだけじゃないのよ!作製の成功率がUPするっていう多分レアアイテムなんだから!」
そう言って自身の装備欄にアイテムを移し装備すると、胸に木の葉のネックレスが現れる。リズはそのネックレスを一撫でして作製作業に取り掛かった。
しかし、元々のスキル熟練度が低すぎたせいか、その後もなかなか成功はしない。
確率の問題だと思い、連続で作製に挑戦するも全て失敗。
不良品を鍛え直すのに時間がかかると判断したリーテンが、ストレージに詰め込み、手に持てるだけ持って鍛冶屋に加工を依頼しに行ってくれたかと思えば、あまりに帰りが遅いので見に行くと、自身の容量を考えずに全て加工してしまった為、所持容量オーバーになり、ほぼ身動きがとれずにゆっくりゆっくり宿屋に歩いてくるリーテンを見て爆笑したり。
それはそれでなかなか貴重で楽しい経験ではあった。
食事と休憩を挟みながら、何とか全ての部位を作製し終わった時には、午前2時を回っていた。
途中でリーテンが「NPCにお願いしてもいいよ?」と言ってくれたが、もう意地でも作ってやる!という気持ちになってしまって、結局NPCに頼む事はなかった。
他の装備より明らかにプロパティが劣る完成品をインゴットに戻し、再度、最後の作製作業に入る。
この数時間で上昇した熟練度の効果もあってか、運良く五度目の挑戦で成功し、光り輝き徐々に形を変えていくインゴットを見つめ必死に祈る。
『どうかステの高い防具ができますよーに!』
一際輝が増し、美しい兜へと姿を変えた装備をタップ。
恐る恐るプロパティを確認した二人は、顔を見合わせ両手でハイタッチしそのままお互いハグし合った。
実に、運搬作業よりも遥かに高難度のミッションを達成し、リズとリーテンは多いに喜び合うと
「お疲れ様!!」
「リーテン早速装備してみてよ!」
最後に完成した兜を手渡し、リーテンがストレージに格納する。
「どぉ?」
金属的なエフェクトのかかった声で、バイザー付きの兜をかぶったリーテンが言う。
「おぉー!かっこいいね!これでバリバリのタンクだね!」
「エヘヘ、でもこれ、視界がだいぶ悪いんだねー」
「大丈夫?戦えそう?」
「う、うん!左右の視界が狭いって感じじゃないし慣れれば大丈夫そう!」
「そか!これなら今からでも前線で戦えるんじゃない?」
「そうだね!さっそく明日から三層に狩場移してみるよ!」
装備を作り終えた充実感と、新装備を手にした高揚感でしばらく浮かれていたが、どっと疲れが押し寄せ、装備を解除し、お互いそそくさと泥のように眠りに着いた。
翌朝9時に起床した二人は、転移門のあるウルバスへと向かった。
道中リーテンのフルプレ戦闘を見る。
正直雑魚モンスター相手ではフルプレの良さが全て発揮されたわけではなかったが、視界の悪さや、聴覚の閉塞感に慣れるにはもってこいだったようだ。
「どうだった?」
兜のバイザーを上げながら
「ふー、結構慣れるの大変だったけど、安心感がハンパないね!」
「そっかそっか、頑張った甲斐があったね!」
「うん!ホントありがとうね!」
ウルバスの街にたどり着いた二人は、遅めの朝食を一緒にとってから転移門の前に立った。
「じゃあ、レベリング頑張ってね、リーテン」
「うん!リズもギルド、頑張って!」
「もちろん!メンテ必要になったら連絡してね」
「うん!ありがとうリズ!」
「無理しちゃダメだよ!じゃあね!」
「うん!またね!」
青い揺らぎに消えゆくリーテンを見送り、リズも一層に転移する。
そうして二人はそれぞれの道を再び歩みだした。
翌日、リーテンからメールがあった。
なんと、最前線で戦っているトップギルドから勧誘を受けたそうだ。
フロアボスと戦う事もあるだろうから危険は増えるのかもしれないが、あの装備達がきっとリーテンを守ってくれるはずだ。
リズは加入を勧めるメールを返信してスミスハンマーを手に取る。
『私もがんばるよ、リーテン!』
一応これで終わりというか、言わばリーテンとの出会い編は完結の予定です。
こんな駄作を読んで下さった方、ありがとうございます。
次話をどうするか悩み中です…