チューボー戦隊 ファミレンジャー 紅一点は狙われっぱなし!? 作:邪道切支丹
そしてそんな妹に想いを寄せつつ、闘いの日々を送る少年戦士がいたら…。
そんな願望と理想のヒーロー像を織り交ぜた小説を書いてみました。
南関東地方のとある住宅街に佇む、梨本家。瀟洒な一軒家では、朝のドタバタ劇が繰り広げられている。この家に住むのは中学生が三人だ。一月前、中学に進学したばかりで、ぎこちないブレザーの制服の上にエプロンをかけたポニテの似合う少女が朝食の支度に追われている。朴訥で純情そう、そして家庭的な穏やかな表情だ。ほっぺの赤みが幼さも醸し出している。
「よっし。出来たっと」
少女は皿に盛りつけたスクランブルエッグと野菜サラダを前に可愛くガッツポーズを作ると、二階に向けて呼びかけた。
「純兄ちゃーん、優兄ちゃーん、朝ご飯出来たよぉ~~」
返事の代わりに、運動会でも始まったかという様なドカドカという足音が響き渡り、少女の兄二人が洗面所とトイレの順番を巡って争いをはじめる。
「俺の方が下りたのは先だろ、優!!」
「起きたのは僕が先だよ、純兄ちゃん」
双子の十四歳、同じ英聖学園中等部に通う兄弟だが、精悍な顔つきでいかにもスポーツ少年という純と、いかにも現代っ子的な草食系文学少年らしい優は対称的だ。しかし、揃って朝が弱い点だけは共通しているのだ。
「もおーッ、毎朝の事なんだから、早く起きれば良いのに」
二人の妹である少女、沙羅はあきれ顔だ。
「ほんとだぜ、沙羅なんて毎朝、食事まで作ってくれてんのに。反省しろよ、優」
「順兄ちゃんこそ」
まだ争いつつも食卓に着く二人を促し、微笑ましく見つめる沙羅。
「いいから、早く食べよっ。遅刻しちゃうもん。はい、いっただっきまーす!!」
なんだかんだと言いつつも、仲良しな三兄妹。そんな三人は昨年、とても大きな悲しみを経験した。両親の事故での他界…。平凡ともいえるが幸せな家庭は一変した。科学者だった父のおかげで、暮らしてゆくことに不自由はない兄妹だが、この三人はもう一点だけ、ほかの中学生とは異なる事情を抱えていた。
午後四時。ピンク色のレオタードに身を包み新体操部の練習に励む沙羅のピンクの石の手首飾りが、警告するように赤く光る。
「はッ、またノーマーシーが現れたわ」
リボンを投げ捨てた沙羅は手首飾りを操作する。小型通信機に早変わりした綺麗な石に話しかけた。
「純兄ちゃん、優兄ちゃん、すぐに変身よ!!」
ラグビー部の練習に興じていた純。そして、天文部で太陽の黒点観察をしていた優。ともにハッと表情を引き締める。異なる場所にいた三人は同時に同じ言葉を一斉に叫ぶ。
「ファミレン、チェーーンジ・アップ!!」
眩い光に包まれる三人。そう、梨本兄妹の「異なる事情」それは戦隊ヒーローだという事…。
秘密結社ノーマーシー。ここ一年の間、日本各地でテロ、要人暗殺、金融機関襲撃などで騒がす謎の組織だ。人間とは思えぬ妖魔人と名乗る化け物を送り出し、国民を恐怖のどん底に陥れている。この日、狙われたのは帝都銀行の巨大金庫。某アメリカ映画の蜘蛛男の様なスーツを着込んだノーマーシーの奴隷戦闘員が、破壊した大金庫の大扉をこじ開け、麻袋に札束を放り込む。
「ふひひひひひ、我がノーマーシーの活動資金だ。一円たりとも盗り逃がすなよ」
ノーマーシーのボス、ゲスキラー総統が部下を叱咤する。
その時だ。漆黒の闇の中、まばゆい光が、ポーズを決めた三人の戦士のシルエットを形づくる。
「いつの世にもはびこる悪をッ」
「退治するは、我らが務めッ」
少年二人の言葉を紡ぐ少女の声。
「チューボー戦隊、ファミレンジャー見参よッ」
「うぬっ、また出たな、ファミレンジャー!! 今日は我が戦闘員がお前たちを血祭りにあげてやるぅ」
明らかに狼狽するゲスキラー総統。かくして三人の正義の少年少女と、悪の組織の闘いが始まった。
少年戦士二人はフルマスクにシルバーのメタリックのスーツ姿。それぞれのカラーが右半身にラインを描いている。
「喰らえ、ファミレン・レッドの爆裂トライを!!」
ラグビー部の主将も期待されている純が扮するファミレン・レッドが戦闘員たちを粉々に粉砕すれば、ブルーに変身した優が神秘の技を披露する。
「受けろ、星々の怒りッ!! スターダスト・パンチ――ッ!!」
流星の様な閃光を放ちながら、無数の拳が悪を打ちのめす。
そして、顏の上半分だけをゴーグルマスクで覆い隠し、ピンクのレオタードコスチュームに、白いブーツが似合うファミレン・ピンクも負けてはいない。
「お金は働いて得るものよ。無実の人たちから力ずくで奪い取るなんて許せないッ。さぁ、体罰の時間よッ、リボン・スパンキングーーーッ!!」
鮮やかな虹色の鞭が、悪の戦闘員たちを打ち据えてゆく。勇敢な初年戦士と、可憐な少女戦士の共同作業で、ノーマーシー戦闘員は瞬く間に滅ぼされてゆく。
「お、おのれぇ、この借りは必ず返してやる。覚えていろよぉ~~」
捨て台詞を残しつつ、戦利品を諦めた悪のドンは逃げ去るのだった。