チューボー戦隊 ファミレンジャー 紅一点は狙われっぱなし!?   作:邪道切支丹

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第三章:可愛い妹には、兄しか知らない秘密アリ

トコロ変わって梨本家。夏休みを間近に控えた三兄妹はそれぞれの青春を謳歌すべく胸を膨らませていた。が…。

「あー俺は、することないやー。県大会もあっけなく予選敗退だったし~」

と純。

「僕も、八月の山合宿までは部活が休みだ。学校で補修でも受けて二学期に備えるよ」

と、優も成績優秀者らしい大人しい夏休みになりそうだ。

 

と、一人だけ明日から忙しいのは沙羅だ。兄二人がくつろぐリビングに愛くるしい貌だけ覗かせた妹が尋ねる。

「ねー、兄ちゃんたち。晩御飯とか、自分でしたくできる? 明日から、私、海でボランティアしなきゃだし」

真面目かつ正義感の塊の沙羅は、将来は人の命を救う仕事に就きたいという夢もあり、その第一歩にライフセーバーの実習を始めたのだ。

「ああ、大丈夫だよ、沙羅。それよりも夏休み早々にボランティアなんて大変だね。いつでもなににでも一生懸命だからね、沙羅は」

名前の通り優は、優しげな表情で妹を慮る。勉強部活に精一杯の現役中学生、甲斐甲斐しく兄の面倒を見る一家の主婦替わり、そして、スーパー戦隊の紅一点という三つの顏を持つこの少女。いずれも完璧にこなす頑張り屋さんだ。

 

「ううん、平気だよ。わたし、後悔とかしたくないから、いつでも全力投球で頑張ろう、って決めてるの」

「お前みたいに頑張ってたら、高校に入るまでに過労死しちまいそうだぜ。俺くらいのんびり構えろよ」

「純兄ちゃんはのんびりし過ぎですッ。あんまり気を緩めていると、ノーマーシーが悪いことをしたときに平和を守れないじゃない!」

微かにほっぺを膨らます沙羅。いつでも戦隊ヒロインとしての心構えを忘れないのだ。

「それに…私たちが精いっぱい生きている方が、天国のお父さんとお母さんも、安心できると思うし」

そう、ファミレンジャーに変身するきっかけを作ったのも、父の研究だ。父はある政治家に依頼され、民間レベルでもテロを繰り返す犯罪組織を制圧するためのファイター・スーツを制作していた。不慮の事故はそれが完成した矢先の事だったのだ。平和を愛した父の遺志を継ぐべく、三兄妹は戦隊ヒーローの担い手となったわけである。ちょっぴり、しんみりしてしまった空気を換えるべく、純がおどける。

「お前、ちっちゃい頃はプールとか行くと怖がって泳げなかったのに、カナヅチは克服できたのかぁ? なんだったら保護者としてついていってやろうか?」

優しくも意地悪い長男の言葉に、負けず嫌いな気持ちを逆撫でされた沙羅はプンとさらにほっぺを膨らませる。

「結構でーすッ。私、水泳とか大得意だもん。水着も新しいの買って来たんだ」

 

貌だけ覗かせていたドアから、ピョンと弾けるようにリビングルームに入ってきた沙羅は鮮やかなスクール水着姿だ。ワンピースタイプの典型的な学校用水着だが、こんがり日焼けした素肌と、ブルーの布地が対照的で、どこか艶めかしい。

「なんだよ、旧スクじゃねーか。だっせーぞ」

純の突っ込みに、貌を赤らめて水着に包まれた思春期特有の丸みを帯び始めている体躯をもじもじさせる沙羅。

「…だって、売れ残りなんだもん。家計を節約しなきゃ、だし…」

「普通の」スーパーヒロインに比べ、家を預かる少女としては、苦労が遥に多いらしい。

「目立ちすぎる水着じゃなきゃいーって、講師の先生に言われたんだもーんッ、いいでしょ、別に!!」

と、しまいにはむくれてしまった沙羅だ。

「と、とにかくッ、行ってきますから、良ぃ~子にしていてよね、兄ちゃんたち!!」

 

沙羅が出て行った後の兄弟の会話…。

「なぁ、優。……沙羅の奴、最近めっちゃ可愛くなってね?」

「何言ってるんだよ、純兄ちゃん。沙羅は…俺たちの妹だぜ」

兄を嗜めながらも、妹が「可愛くて」仕方ないのは次兄の優も同じ様子だ。

「いや、誤解するなって…。だんだん俺たちも大人になるっつーの? 女の子を意識するわけじゃん。いつかは‘本当の事’をアイツにも知らせないとって思ってさ」

「でも、兄ちゃん。俺たち、今最高に愉しいじゃん。中学生としても、家族としても、戦隊ヒーローとしても。もう少し、仲良しの梨本三兄妹で、僕はいたいんだよね」

二人の意味深な会話からは、「可愛い妹」への兄としての愛情と、思春期真っ盛りのオトコノコとしての感情が交錯している。それもそのはず、純と優二人の兄と、一つ年下の沙羅には血縁が無い。二人の父が、かつて雇用していた後輩研究者の娘なのだ。両親の突然の失踪で置き去りにされた三歳の沙羅を不憫に思った梨本家が、幼女として彼女を迎え入れたのだった。そのことを沙羅本人は知らない。純としても、また優も、沙羅に対し「妹への愛情」以外の複雑な感情を抱きつつある。だが、お互いの関係や気持ちを打ち明けてしまえば、家族としての絆だけでなく、ファミレンジャーとしての闘いにまで支障をきたしかねないことが分かる二人は、そんな感情を押し殺しているのだ。

 

「ま、俺としては沙羅が幸せならいーんだけどさ」

おちゃらけてはいるが、妹の事を誰よりも大切にしている純だ。

「それにしても、さ」

「うん、それにしても?」

さらに言葉を紡ぐ、兄の顏を生真面目な優がのぞき込む。

「アイツのスクール水着姿って、なんかエロくね? 中一にして、早くも膨らむとこ膨らんでるし、さ。不覚にも思わず…勃っちまつたよ、俺」

「純兄~ちゃん!!」

「あ、安心しろッて。手は出さねーって」

血縁の無いチャーミングな妹の水着姿に、思春期特有の甘酸っぱい気持ちを抱く兄弟。だが、そんな沙羅に悪の魔手が迫っていることなど想像もしない二人だった…。

 

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