それは、冬も寒さも過ぎ、外の陽気も暖かくなってきたころのことだ。
僕の家は今の時代には珍しい一軒家だ。
珍しい、といってもこの近所では珍しいことではなく、現にうちの隣にも一軒家があり、幼馴染というやつが住んでいるのだが……。
「ハルキ!ちょっと話があるわ!」
このように、我が物顔でうちに侵入したあげく、僕の部屋にまで入ってくるのが僕の1つ年上の幼馴染、
本当見た目は可愛いんだから、僕を下僕のように扱うその態度だけは勘弁してほしい。
「なんか失礼なこと考えてない?」
「い、いえ。めっそうもございません!」
あとナチュラルに思考を読むのもやめてほしい。
「まあいいわ。アンタ、確かニューロリンカーは小さいころからつけてたわよね」
「あ、ああ。母さんが仕事に行ってることが多かったから、物心つくころにはつけてたと思うけど」
「じゃあ多分OKね。はいこれ」
と言って差し出してきたのはXSBケーブルだ。
「えっ??」
「早くつけなさい」
マキは自分のニューロリンカーにプラグの片方を挿入しながら僕にそう促してきた。
つまり
「お、お前なにしようとしてるのかわかってんのか!?」
「わかってるに決まってるでしょ。いいじゃない、ここアンタの部屋なんだし」
この僕が異性と直結とかできるわけないじゃないか。
そう訴えようとするが……
「ああもう、じれったいわね」
そう言うとマキは僕の頭をわしづかみにし、(その際に「ヒィッ」という中3になろうという男子らしからぬ声をあげてしまったことは内緒にしておこう)僕のニューロリンカーに無理やりプラグを挿入してしまった。
「今からアプリを送るから、インストールしなさい」
〈ワイヤードコネクション〉の警告表示が出たのもつかの間に、マキが言う。
そして1つのアプリケーションが送られてきた。
僕はアイコンに触れ、それをインストールする。
「〈ブレイン・バースト〉?」
少し長めのインストール画面が終了すると、オレンジ色の文字が表示された。
〈WELCOME TO THE ACCELERATED WORLD〉
「インストできたみたいね。んじゃあたし帰るわ」
「はぁ!?」
「明日もまだ休みでしょ。明日また来るから、それまで外に出るんじゃないわよ。あとニューロリンカーは死んでも外さないこと。いいわね」
という風にその日は過ぎていってしまった。
その夜、僕は夢を見た。
小学生の僕が、同学年の女子にちょっかいを出されている。
その行為は次第にエスカレートし果てには僕のことをからかったり、持ち物を女子トイレに投げ入れたり……。
家に帰っても、安息はできず、2人もいる姉と1つ下の妹にあれこれと指図をされる。
僕の周りは完全な女性社会だった。
いつしか僕は女性に対し恐怖心を抱くようになっていた。
身体の成長と共に、いじめも過激なものになっていった。
時には暴力を振るわれることもあったが、それでもマキは、マキだけは僕を守っていてくれていた。
僕は、そんな僕を情けなく思っていた。
いつか、いつかは僕もマキを……
『――それが、君の望みか?』