目の前に【FIGHT!!】の文字が踊る。
何かを持っている感覚を感じたため見てみると、両手に二振りの鎌を握っていた。
「ふーん。それで"マンティス"ねぇ」
声のした方を見てみると、10メートルほど先に黄色い小柄なアバターがいた。
「もしかして、マキか?」
「そうよ。次からこの姿のときは"ボマー"と呼びなさい」
「は、はい」
「じゃあ説明を始めるわよ。まずこの対戦フィールドに居られるのは1800秒、30分ね。現実時間に換算すると1.8秒になるわ。上を見てみなさい」
マキ―ボマーが指さした方を見ると、1730のカウントが目に入った。
「それが残り時間になるわ。そしてその両側にあるのが自分と相手のアバターネームとレベル。その下がそれぞれのHPゲージね。それが0になったら決着。タイムカウントが0になったら残ってるHPが多い方が勝ち」
「その下にある空のゲージは?」
「必殺技ゲージね。ちょっとあたしを攻撃してみなさい」
「えっ?」
「早く」
僕は言われるままボマーに近寄り、持っていた鎌を一振りした。
するとボマーのHPゲージが1割ほど削れ、僕とボマーの必殺技ゲージが少しずつ溜まった。
「おお」
「必殺技ゲージを見てみなさい。あたしとアンタのが少しずつ溜まってるでしょ。こんな風に相手にダメージを与えるか、逆にダメージを受けると必殺技ゲージが溜まるわ」
「なるほど」
「あとはそうね、そこにある岩を壊してみなさい」
僕の背丈の半分くらい(感覚だけれど、僕の背丈は現実とアバターでさほど変わりがないようだ)の大きさの岩をたたき割るようにして壊す。
するとまた僕の必殺技ゲージが少し溜まった。
「おお。物を壊しても必殺技ゲージが溜まるのか」
「そうね。ただしアバターによって壊せる物は異なるし、ステージによっても壊せるオブジェクトは異なるわ。あと、破壊不能オブジェクトもあるから注意しなさい」
「アバターにも個性があるのか」
「そうよ。詳しくはあとで説明するけど、基本的にアンタの色は近接戦闘型。あたしのは遠距離攻撃型。だからあたしじゃ直接オブジェクトを壊すのは難しいわ」
「ステージっていうのは?」
「この対戦フィールドのことよ。何種類もあって、様々なギミックが仕掛けられてるステージもあるから注意しなさい。ちなみにここは<荒野>ステージね」
「ほうほう」
「次は必殺技ね。自分の名前をクリックしてみなさい」
言われたとおりにクリックすると、インストが開き僕の通常技と必殺技の一覧が表示された。
「必殺技には発声とモーションが不可欠だからよく見ておきなさい。多分もう少しゲージを溜めれば必殺技が撃てるわ」
僕はさっきと同じように周囲の岩を壊し、必殺技ゲージを溜めていく。
「こんなもんかな」
「そうね。じゃあ必殺技を撃ってみなさい」
僕はもう一度インストを開いてモーションを確認しなおす。
そして、今まで壊したのよりもさらに大きな岩の前に立ち、1つ深呼吸をする。
モーションを頭の中で思い起こし、構える。
深く息を吸い、発声。
「<クロスラッシュ>!」
僕の持つ鎌から放たれた斬撃は、巨大な岩を一撃で砕いた。
「アンタねぇ、ここは対戦フィールドなのよ。
「えぇ!?…でもこれレクチャーでしょ?」
「だからこそ、よ。アンタの必殺技の威力を確かめたかったのに」
「ああ、そういうこと」
「ま、レベル1でこれだけのオブジェクトを破壊できるなら、必殺技の威力はそれなりにあるんでしょうね」
ふむ。僕のアバターはどうやら攻撃力が高いようだ。
「次はアビリティね。さっきのインストをもう一度確認してみなさい」
インスト画面を開いて確認してみる、が
「…それっぽいのが何もないんだけど」
表示されていたのは、通常技と必殺技<クロスラッシュ>のみ。
「なんだ、あんた何もアビリティ持ってないのね。まぁその分強力な必殺技を持ってるなら妥当か」
「じゃ、じゃあお前は何かアビリティとかいうのを持ってるのか?」
「ええ。あたしのアビリティはコレね」
ボマーはそう言うと、手のひらから1つの球体を出現させ、それを放り投げた。
球体が遠くの岩石オブジェクトに当たると、激しい音をたてて爆発した。
「<
「す、すっげぇ……。ていうかお前だって僕に攻撃しないんじゃないか」
「あのねぇ、こんな至近距離で爆発なんてさせたらあたしもダメージ受けるじゃない」
「あ、そっか」
「それに、あたしのアバターはさっき言ったようにこのアビリティに特化してるの。爆発に巻き込まれたら今のアンタよりもあたしの方がダメージ受けるんじゃないかしら」
「そっか。それがさっき言ってた"アバターの個性"っていうのにつながるわけか」
「そういうこと。ブレイン・バーストは基本的に同レベル同ポテンシャルの原則があって、どこか1つのステータスに特化していれば、それ以外の部分が平凡になりやすい。もちろん、そうでないバランス型もいるけどね」
「つまり、僕のアバターはボマーみたいな派手なアビリティを持っていない代わりに、攻撃力が高くて、強力な必殺技を持っているっていうこと?」
「そうよ。そしてレベルが上がれば上がるほど、その特徴は顕著になりやすい。あたしはレベルアップ時のボーナスのほとんどをこのアビリティにつぎこんだわ。おかげで、レベル8となった今では6種類の爆弾が使えるようになった代わりに、アバター本体の攻撃力や防御力が貧弱になった、ってわけ」
「なるほど……。でも、このアバターはそもそもどうやってつくられたんだ?アバター作成パートみたいなのもなかったし、かといって完全にランダムっていうわけでもないだろうし」
僕が素朴な疑問を投げかけると、ボマーの様子が少し変わった。
さっきまでと違い、なにか言いよどんでいる感じだ。
「……このデュエルアバターを作ったのは自分自身の心よ」
「自分、自身の、心…?」
とはどういうことだろう?
「ブレイン・バーストはあたしたちの心を読み取って、