アクセル・ワールド -群青の軌跡-   作:根津

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第六話です。もう少しレクチャーが続きます。


第六話

目の前に【FIGHT!!】の文字が踊る。

 

何かを持っている感覚を感じたため見てみると、両手に二振りの鎌を握っていた。

 

「ふーん。それで"マンティス"ねぇ」

 

声のした方を見てみると、10メートルほど先に黄色い小柄なアバターがいた。

 

「もしかして、マキか?」

 

「そうよ。次からこの姿のときは"ボマー"と呼びなさい」

 

「は、はい」

 

「じゃあ説明を始めるわよ。まずこの対戦フィールドに居られるのは1800秒、30分ね。現実時間に換算すると1.8秒になるわ。上を見てみなさい」

 

マキ―ボマーが指さした方を見ると、1730のカウントが目に入った。

 

「それが残り時間になるわ。そしてその両側にあるのが自分と相手のアバターネームとレベル。その下がそれぞれのHPゲージね。それが0になったら決着。タイムカウントが0になったら残ってるHPが多い方が勝ち」

 

「その下にある空のゲージは?」

 

「必殺技ゲージね。ちょっとあたしを攻撃してみなさい」

 

「えっ?」

 

「早く」

 

僕は言われるままボマーに近寄り、持っていた鎌を一振りした。

するとボマーのHPゲージが1割ほど削れ、僕とボマーの必殺技ゲージが少しずつ溜まった。

 

「おお」

 

「必殺技ゲージを見てみなさい。あたしとアンタのが少しずつ溜まってるでしょ。こんな風に相手にダメージを与えるか、逆にダメージを受けると必殺技ゲージが溜まるわ」

 

「なるほど」

 

「あとはそうね、そこにある岩を壊してみなさい」

 

僕の背丈の半分くらい(感覚だけれど、僕の背丈は現実とアバターでさほど変わりがないようだ)の大きさの岩をたたき割るようにして壊す。

するとまた僕の必殺技ゲージが少し溜まった。

 

「おお。物を壊しても必殺技ゲージが溜まるのか」

 

「そうね。ただしアバターによって壊せる物は異なるし、ステージによっても壊せるオブジェクトは異なるわ。あと、破壊不能オブジェクトもあるから注意しなさい」

 

「アバターにも個性があるのか」

 

「そうよ。詳しくはあとで説明するけど、基本的にアンタの色は近接戦闘型。あたしのは遠距離攻撃型。だからあたしじゃ直接オブジェクトを壊すのは難しいわ」

 

「ステージっていうのは?」

 

「この対戦フィールドのことよ。何種類もあって、様々なギミックが仕掛けられてるステージもあるから注意しなさい。ちなみにここは<荒野>ステージね」

 

「ほうほう」

 

「次は必殺技ね。自分の名前をクリックしてみなさい」

 

言われたとおりにクリックすると、インストが開き僕の通常技と必殺技の一覧が表示された。

 

「必殺技には発声とモーションが不可欠だからよく見ておきなさい。多分もう少しゲージを溜めれば必殺技が撃てるわ」

 

僕はさっきと同じように周囲の岩を壊し、必殺技ゲージを溜めていく。

 

「こんなもんかな」

 

「そうね。じゃあ必殺技を撃ってみなさい」

 

僕はもう一度インストを開いてモーションを確認しなおす。

そして、今まで壊したのよりもさらに大きな岩の前に立ち、1つ深呼吸をする。

モーションを頭の中で思い起こし、構える。

深く息を吸い、発声。

 

「<クロスラッシュ>!」

 

僕の持つ鎌から放たれた斬撃は、巨大な岩を一撃で砕いた。

 

「アンタねぇ、ここは対戦フィールドなのよ。対戦相手(あたし)に撃たないでどうするのよ」

 

「えぇ!?…でもこれレクチャーでしょ?」

 

「だからこそ、よ。アンタの必殺技の威力を確かめたかったのに」

 

「ああ、そういうこと」

 

「ま、レベル1でこれだけのオブジェクトを破壊できるなら、必殺技の威力はそれなりにあるんでしょうね」

 

ふむ。僕のアバターはどうやら攻撃力が高いようだ。

 

「次はアビリティね。さっきのインストをもう一度確認してみなさい」

 

インスト画面を開いて確認してみる、が

 

「…それっぽいのが何もないんだけど」

 

表示されていたのは、通常技と必殺技<クロスラッシュ>のみ。

 

「なんだ、あんた何もアビリティ持ってないのね。まぁその分強力な必殺技を持ってるなら妥当か」

 

「じゃ、じゃあお前は何かアビリティとかいうのを持ってるのか?」

 

「ええ。あたしのアビリティはコレね」

 

ボマーはそう言うと、手のひらから1つの球体を出現させ、それを放り投げた。

球体が遠くの岩石オブジェクトに当たると、激しい音をたてて爆発した。

 

「<爆弾生成(ボンバープロダクション)>アビリティよ。あたしはこのアビリティに特化させてるおかげで様々な爆弾を生み出すことができるわ」

 

「す、すっげぇ……。ていうかお前だって僕に攻撃しないんじゃないか」

 

「あのねぇ、こんな至近距離で爆発なんてさせたらあたしもダメージ受けるじゃない」

 

「あ、そっか」

 

「それに、あたしのアバターはさっき言ったようにこのアビリティに特化してるの。爆発に巻き込まれたら今のアンタよりもあたしの方がダメージ受けるんじゃないかしら」

 

「そっか。それがさっき言ってた"アバターの個性"っていうのにつながるわけか」

 

「そういうこと。ブレイン・バーストは基本的に同レベル同ポテンシャルの原則があって、どこか1つのステータスに特化していれば、それ以外の部分が平凡になりやすい。もちろん、そうでないバランス型もいるけどね」

 

「つまり、僕のアバターはボマーみたいな派手なアビリティを持っていない代わりに、攻撃力が高くて、強力な必殺技を持っているっていうこと?」

 

「そうよ。そしてレベルが上がれば上がるほど、その特徴は顕著になりやすい。あたしはレベルアップ時のボーナスのほとんどをこのアビリティにつぎこんだわ。おかげで、レベル8となった今では6種類の爆弾が使えるようになった代わりに、アバター本体の攻撃力や防御力が貧弱になった、ってわけ」

 

「なるほど……。でも、このアバターはそもそもどうやってつくられたんだ?アバター作成パートみたいなのもなかったし、かといって完全にランダムっていうわけでもないだろうし」

 

僕が素朴な疑問を投げかけると、ボマーの様子が少し変わった。

さっきまでと違い、なにか言いよどんでいる感じだ。

 

「……このデュエルアバターを作ったのは自分自身の心よ」

 

「自分、自身の、心…?」

 

とはどういうことだろう?

 

 

「ブレイン・バーストはあたしたちの心を読み取って、心的外傷(トラウマ)や恐怖心、劣等感といったものを元にこれらのデュエルアバターを作り上げている、そうよ」

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