誤字修正いたしました。
一話
その日、平和なエオルゼアのとある場所。
冒険者、クリンセはフィールドをチョコボで走り回っていた。
でこぼこした大地は整備された道など存在せず、徒歩なら走りにくいことこの上ないが、ここイシュガルド原産ワイルドチョコボの野性味をそのままにマウントとなったクリンセ渾名メーメー(本鳥から不評)には造作もない。
メーメーは二人乗りも可能な大型チョコボだ。今はたった一人を乗せているのだから機動力もそれより高い。
それに股がるクリンセはボロボロの地図を広げ、少し使い古された地図と見比べながら進路を微修正して手綱を引き、走る方向を調整していた。
走り、揺れる度彼女の双丘も揺れるが気にするものはいない。
地図と周囲を見渡しておおよその予測地点にやって来ると、メーメーから降り神経を集中して回りを見渡す。
彼女の力の一端により、隠蔽魔法で隠された宝箱が姿を現した。
見つけたことにピョンピョン跳ねて喜びながら宝箱に触れると、ボシュリ、と煙が吹き出した。
「ぬあ! くっさいっ!!」
鼻をつまんでその場で悶絶する。彼女は種族的に鼻が敏感なので堪ったものではない。
ふわふわとした彼女の尻尾の毛が全力で逆立ってぼわりと太くなっている。
メーメーに襟を加えられる形で無理やり起こされつるし上げられた彼女の頭の耳がピクリと動く。
ペシペシとメーメーの嘴を叩いて地面に降りると、いつの間にか周囲にモンスターが集まっていた。
周囲のモンスター達が出す音に反応して無意識に耳がピクピク動いていた。
先程の煙は臭いでモンスターを集めるもの。
詰まる所罠である。
周囲をモンスターに囲まれているのにも関わらず、匂いのせいで出た涙を除いて、―――それのせいで台無しになっているが。
澄ました顔で回りを見渡す。
この罠は多くの冒険者を脱落させた信頼と実績ある罠だ。
しかし悲しいかな、脅威度は周辺に生息するモンスターに依存している。
周辺モンスターを数値的に表せば52程度、たいしてこのクリンセ。
60である。
しかもただの60ではない、激戦を潜り抜け、特製の防具、―――布だが、防具を身に纏ったエオルゼア最上位の冒険者なのである。
手甲を纏った拳を握りしめ、周囲のモンスターに殴りかかって全滅させるまで十分とかからなかった。
モンスターをボコボコにしたあとは念願のお宝タイムである。
メーメーは巻き込まれるのが嫌で少し離れた所を飛んでいた。
念願の宝箱を開けようとするが、がきんと何かが引っかかって開かない。
最後の抵抗と言わんばかりに鍵が掛かっている。
が、ただの鍵など蹴り一発でフリーパスだ。つま先がヒットし、ガキンと鍵の砕ける音と共に宝箱が開く。
中に入っているのは綺麗な宝石、マテリアと布である。
一見すると宝石の方が価値がありそうだが、ただの布と侮るなかれ。
これは特殊な服を作るために必要な布で、極めた裁縫士でさえ作ることのできない耐水布なのである。マーケットを探すとお高い。
やったーと喜びながら宝石も布も質量を無視と言わんばかりにポケットに突っ込み、メーメーを呼ぶ。帰るつもりである。
と、背後に謎の穴が出現した。時空間に穴を開けてるのか縁に稲妻が走っている。
これは! とクリンセはひらめく。
冒険者の間で噂される謎の転移門、罠が盛りだくさんだが貴重な物資が眠っているとされる宝物庫、アクアポリスへの入口なのでは!? とクリンセは思いいたった。
いつもならリンクパールで呼んで仲間と行くところだが生憎今は深夜。
仲間はサンシーカーが多いので深夜に活動しているのはクリンセ位だ。
だがクリサンセには頼れるワイルドチョコボメーメー(本鳥から不評)がいる。
野生溢れるチョコボキックはクリンセにもちょっと効くほどだ。
行くしかねえ!このビッグお宝に!! と言わんばかりにメーメーに飛び乗り意気揚々と転移門に入り込んだ一人と一匹だった。
次元や時間を含め、ところ変わってハルケギニア大陸、魔法学院トリステイン。
歴史ある魔法使い養成所の一角にて二年生へと進級した魔法使いの卵達の一大イベントが行われていた。
使い魔の召喚。その後の一生を共にするパートナーの召喚である。
すでにけっこうな生徒が召喚を終えており、続いて順番が回ってきたのは綺麗なストロベリーブロンドの髪をした少女だ。
緊張からか少し瞳孔が開き気味な可憐な少女の名前は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
トリステイン王家の血筋に連なる公爵家の三女である。
なるほどその佇まいは緊張しているとはいえ貴族と言ってふさわしい品格と気品を漂わせて、杖を構える様は偉大な魔法使いの卵を思わせる。
しかし、それを見る周囲の生徒たちはなぜか召喚するルイズからじりじりと離れ、使い魔をすでに召喚した生徒はさらに遠くへと離れていた。
なぜか。それは彼女の前に開いた謎の穴を見ればわかる。
そしてそれは彼女の魔法に由来する。彼女が行おうとする魔法はすべて爆発という結果に終わる。これに尽きていた。しかもそれは高度な魔法であればあるほど破壊力を増し、教室がぼろぼろになるなどの事態さえ起きていたのである。
彼らは二年生、それを一年間見せつけられれば嫌でも警戒する物だ。
「おい“ゼロ”! 今度は爆発させるなよ!」
そんな野次が飛ぶ。
ゼロ、とは彼女を指すかなり優しく見積もってあだ名。普通に言えば蔑称だ。
たとえば彼女が、ただ魔法が爆発するだけの落伍生だったならばこんなものは付けられなかっただろう。
見る者を魅了する容姿が、高貴な血筋が、実技を覗けば学院トップの明晰な頭脳が、そして貴族らしく、貴族であろうとする高潔な心を持っていた故に―――
―――嫉妬心からか、魔法がすべて爆発という結果に終わるというたった一つの欠点故につけられた蔑称。
そんなルイズを挑発的な笑みで見つめていたのは、紅蓮の髪を持つ豊満な体をした女性と言ってもいいかもしれない少女、キュルケである。しかしその眼は、他の有象無象のように蔑んだ物ではない。見下すものではない。
やれるものならやってみろ、と言わんばかりのルイズと対等に立つ貴族の目だった。その隣で本を読む青髪の少女、タバサも、興味ないという空気を出しつつも目線はルイズにくぎ付けだった。
既に繰り返すこと数回、サモン・サーヴァントを失敗するたび、爆発し、転げ、かすり傷を作ってもあきらめることなく立ち上がるルイズの姿に、何か思う所があるのかもしれない。
対照的に心配そうに見つめるのは担当教師であるコルベールだ。言っては悪いが頭のてっぺんが輝いている彼は、優しげな、それでいて辛そうなまなざしでルイズを見つめている。出来れば召喚できるまでやらせてやりたい。しかし、ルイズ自身に危険が及んでは、という苦悩がそのまなざしからはにじみ出ていた。
それを見て、ルイズが意を決したように口を開く。
「宇宙のどこかにいる私の下僕よ!」
「すべての世界で最も神聖で美しく強力な使い魔よ!」
「私は心より求め訴える!」
「わが導きに応えよ!!」
今までと違う、呪文と関係のない前口上が入った。気合故なのか、 その口上には彼女の貴族としてではない、素の性格が出ていた。
「わが名はルイズ。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!!」
最後に、サモン・サーヴァントの呪文が唱えられる。
ルイズは張り上げる声とは裏腹にとてつもない集中力を以て、杖を振り下ろす。
結果は本日最大、学院でルイズの起こした爆発すべての中でも最上位に入るであろう大爆発だった。
これには嘲り、笑っていた生徒達も絶句した。罵る暇もなく逃げ惑う。もっとも爆心地に近かったルイズは爆風で弾き飛ばされるようにキュルケ達の前に吹き飛んできた。何とか立ち上がり爆心地を見やる。
また、やってしまった。そんな絶望感がルイズに襲いかかる。彼女は折れない。折れはしないが、このままでは圧潰してしまいそうな雰囲気があった。
どしゃ。
爆心地の辺りで、何か異質な音がした。煙も、ただ沈むのとは違う揺らめきを起こしている。
何かが、居る。
爆発の規模に対して小さい何かがいた。
僅かに風が吹き、煙がゆっくりと横へ流れる。
煙が晴れた瞬間に悲鳴が上がる。教師であるコルベールは杖をとっさに構え、タバサとキュルケでさえ身構えた。
爆発によって抉れ、めくれ上がった芝生のに、一人と一匹が立っていた。
それは深い蒼の手甲と足甲を身にまとう。
それはハルケギニアでは見たこともないような意匠の服を纏った『女性』。
それは白髪のようで淡い水色を宿した艶のある髪をサイドを三つ編みに、周囲を見渡す瞳は血のような赤に縦長の瞳孔。
そして頭頂部ちかくに生えた耳ともふもふとした長い尻尾。
ここハルケギニアにおいてはエルフに並んで恐れられる『獣人』が鎧を着せられた見たこともない大きな黄色い鳥と共に呑気に突っ立っていた。
彼女、も困惑したようで周囲を見渡しているが、危害を加えてくる様子もない。
「■■■■■■?」
皆が身構える中、獣人が何か言うが、何を言っているのかわからない。
獣人は何かに気付いたようにポンと、両手を合わせた。
「【一緒にやりませんか?】」
拳を握りしめて構える獣人に全員が凍り付いた。
クリンセ・マム
ナンパしてきたサンシーカーの野郎を殴ったらそれ以来仲間との受け答えにイエスッ!!マム!!と敬礼されるようになって困っていた。
メーメー
本名ブルチョコボ。クリンセに襲いかかったところ返り討ちに会い、逃げていたら漁師に捕まったが、結局クリンセ以外背中に乗せない。