初めに、ソレに気付いたのはクリンセだった。長く続けてきた冒険者としての勘、身体能力の高さから来る危機察知能力の賜物のソレに従い、振り返った。
それにつられるように振り返ったのはキュルケだそして、そこにいる、いや現れた巨大なゴーレムという現実感のないソレに大きく驚いた。
現れただけならまだしも、なんとこのゴーレムこっちに向かって歩いてくる。
多少悲鳴を上げかけたものの、ルイズの爆発を見ていたせいかそこまで動揺せずにすんだキュルケがタバサの所へ走ってゆく。
タバサが手を振るとウィンドドラゴンが急降下しタバサとキュルケを乗せた。ルイズもそれに続こうとクリンセを引っ張るが、ビクともしない。
「ちょっとクリンセ!?」
「アレの目的はわからないけど、何かする気なら止めないと」
その表情は、何時もの猫っぽさではなくまるで獲物を前にした獅子を思わせる雰囲気を醸し出していた。
ずしん、とゴーレムの踏み出す一歩で地面が揺れる。
ルイズは譲れない。使い魔を自殺させに行くメイジがいるものか、大きさとはそれすなわち強さだ。メイジなら話は別だが、クリンセは体術を使う。いくらギーシュのワルキューレと張り合えようがあの大きさのゴーレムに勝てるはずはない。
「何馬鹿なこと言ってんの!! まずは逃げるのよ!!」
「大丈夫!!」
ルイズを軽々と抱え上げると、まるで投擲でもするかのように振りかぶる。
「わっちょっと!?」
「お二人!! お願い!!」
まるでではなく本当に投げた。ちょっと槍術士をかじっていたときに習った槍投げの要領で狙いは見事キュルケの胸部にルイズが直撃し二人が気絶したが事なきを得た。
すでにゴーレムは眼前に迫り、クリンセのことなど見えていないかのように悠々と歩いてくる。その緩慢な動きに対して地面を踏みしめる振動はその質量を表していた。
クリンセに用はないと言わんばかりに悠々と歩くそれに向け、クリンセは構えをとった。
前に踏み出す為右足が上がった瞬間を狙い軸足である左足へ突貫。続けざまに拳を叩きつける連撃を繰り出した。
人が十人集まって手を繋ぎ、円を作るよりもに太い岩石の足が一撃ごとに抉れ砕ける。炸裂する爆音は空から様子をうかがうタバサをして『クリンセがゴーレムを殴る音』としか表現できないほどの連続破砕爆音をまき散らす。
続けざまに両手を上下に重ねるように同時に突き出すと面の大きな打撃で崩れ、細くなった足が自重を支えられず砕けた。
ゴーレムが体勢を崩したたらを踏む。上に乗るフーケが明確にクリンセを障害として排除にかかる。空を旋回するウインドドラゴンも鬱陶しいが、なにもしてこない以上気にする必要はない。
改めて相対すると、ゴーレムの巨大さが分かる。
岩でできているという意味ではどことなくタコタン、いやタイタンを思い出させるがタイタンほど生物的ではない。遺跡のゴーレムの頭をもぎ取って巨大化させたような感じだ。
強度に関して言えば通常のタイタン並みに柔らかい。
だがタコタンに比べればたちが悪い。砕いた足が修復されていることだ。フーケがいる限り小さな損傷は意味がない。
ゴーレムが動く、駆動と共に剥離した岩を撒き散らしながらその拳が横薙ぎに迫る。その拳は金属的な光沢に包まれる。錬金によって腕を金属化させたのである。普通の人間が当たれば即死も即死だ。
だがそれがどうした。ここにいる猫は普通の人間ではない。迫る金属の拳に合わせ崩拳を繰り出す。小さな人間の腕と巨大な金属の腕、競り合えば本来どちらが勝るかは明白。だが彼女はエオルゼアにおいても蛮神という不条理を不条理で破壊する金属の腕がまるで飴細工かガラスのようにクリンセの拳と衝突したところから砕け、ゴーレムの右腕自体が吹き飛んだ。
疾風迅雷、一の型魔猿からゴーレムの足に向け蹴りを繰り出す岩石が砕けると共に衝撃でその体を構成する魔法の力が弱まる。
片足を粉砕してなおバランスを取るゴーレムから越える力を通してこちらとどこかに向けての攻撃範囲が見える。
範囲から脱出しようにも動けばそれはこちらを追尾してくる、回避は不可能だった。ならば最低限のダメージでやり過ごすかない
ゴーレムが大きく腕を振り、同時に肘の部分から腕が外れる。さらに少しずれて方から肘の部分の岩も外れ、強力な質量弾として飛翔した。二つの内その一方がクリンセに迫る。
クリンセの身長より直径のあるそれがクリンセに迫る。今さらこんな攻撃を何故、とクリンセは考えたがまずは迎撃するしかないと正拳突きを岩石にぶつけようとした瞬間、拳が触れる前にまるで空気抵抗に負けた水のように岩石が飛び散った。土砂と化したそれをもろに被ったクリンセにダメージはない。だが、体に張り付いた土がつながりそのまま鉄にすぐさま変化した。俗にいうバインドに近い状態にクリンセは追い込まれた。
正拳突きを繰り出した姿勢で固められてしまったが為に抜け出そうにも力が入れにくい。突き出された右腕を拘束する鉄は軋みをあげるがすぐさま取れるものではない。
そうしてもう一つの岩石はヒビの入った学院の塔へ直撃し壁に大穴を開ける。消し飛んだ両手と片足を再生させながらその壁の穴にフーケは入ると目的のものを見つけた。
それは文字の刻まれた二つの石が取り付けられた杖。半ばから折れたのが修理されたような痕跡のある物で、少し大きめの杖だった。鉄のプレートで『破壊の杖、持ち出し禁止』と書かれている。
だがフーケにはほくそ笑む余裕さえなかった。急いで杖を振り『破壊の杖、たしかに領収しました 土くれのフーケ』と壁に書き残すと再生途中のゴーレムに再び飛び乗る。
下を見れば、少しずつ、フーケの錬金した拘束を破り始めているあの使い魔が居る。すべての誤算はコレのせいである。フーケもあの戦いを見てはいたが、まさかここまでの物とは思っていなかった。
破壊の杖はそれをふるうだけで大きな破壊をもたらしたという。試しにクリンセに向けて振ってみるが、何も起きない。目線だけを向けたクリンセが驚いているが、気にする必要はなかった。たとえゴーレムを打ち砕く力を持っていようが、土砂で埋めて窒息させてしまえばいい。貴族の使い魔故にあの籠手はマジックアイテムなのかもしれない。上手くいけばそれも手に入れることができて一石二鳥だ。
クリンセに迫るゴーレムに対し、タバサが竜巻を起こして攻撃する。しかし大質量故に効果がなく、鉄に地面に縫い付けられたクリンセも吹き飛ばない。
迫るゴーレムにバインドを解除しようとするクリンセ、どちらが先に目的を完了するかは明らかだった。
ゴーレムの背に巨大な爆発が顕現するまでは。
破壊の杖
独自設定を適応。わかる人にはめっちゃわかりやすい物。