ゼロのヒカセン   作:MKeepr

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暗黒騎士のジョブクエ良すぎじゃないですかね(影響)
誤字を修正いたしました。


七話

 ここは、どこだろうか。

 確か、クリンセに投げられて、キュルケのあの憎らしい胸に飛び込んだはずだ。

 ならばここはどこだろうか。

 

 ルイズが立っていたのは木々生い茂る森。うっそうと苔や草が生い茂る森の中に、赤子の鳴き声が響いていた。

 声に惹かれて行くと、朽ちた遺跡のような物の元、そこに布にくるまれた赤子が泣いていた。生まれてから一か月経っているか、純白に薄く青を足した髪の毛を持つ、頭部に猫のような獣耳を持つ赤子。

 鳴き声に惹かれるように、暖色の毛色を持つ、大きなネズミのような獣が集まってきている。赤子を襲う様子はないが、赤子は泣き止むことは無い。さらにズシン、と木のような謎の生き物が赤子に向かって来る。こちらは明確に敵意を持ち、赤子を殺そうとしていることは明らかだった。

 

「だめ!」

 

 ルイズが立ちふさがるが、その木のような生き物はルイズをすり抜けて赤子へ進む。

 もうだめだ、そう思いルイズが目をつぶると、大きな音がした。

 恐る恐る目を開けると、そこにいたのは弓を持った女性だ。木のような生き物が穴だらけになって倒れている。

 顔に鮮やかな化粧を施した、獣耳を持つ女性。

 

『こんなところに捨て子とはね、このあたりのサンシーカーは■族か、髪と肌の色が違いすぎたんだね可哀そうに』

 

 女性が赤子を抱きかかえた。

 

『それじゃあ、今日からあんたは私の子だ、名前は……クリンセなんてどうだい? おい気に入らないのか? なんで余計になく―――』

 

 クリンセ……?

 

 ルイズの疑問を背に景色が急速に崩れていく。驚いたルイズはあたりを見渡す。

 空が、燃えていた。何だあれは、巨大な竜が流星を伴い空を舞っている。降り注ぐ流星は大地を焦がし、夜空を紅く染め、爆音が響き渡る。そのうちの一つがこちらに向け飛んでくる。爆音、煙。

 隣を見れば、傷つき、すこし年老いたあの女性を庇うように抱える、少女となったあの赤子が居た。

 

 そうかこれは

 

 また移り変わる。石造りの町にメーメーのような鳥に引かれる気球に乗ってやってきた所、セクハラジジイに拳を叩きこんでいる所。共に暴漢を撃退したところ。

 クリンセの言っていた、ミコッテというのは男もいるらしく、厳つい獣耳の男と死闘を演じる姿。様々な場面が光のように早く流れていく。

 クリンセには仲間がいた。彼女が助けた仲間たちだ。人々に尊敬され、頼られる。英雄の姿がそこにはあった。

 

『さすがは光の戦士だ』

 

『英雄殿ならやってくれると信じていた』

 

『彼女のお陰だ』

 

 有象無象の顔のない大小様々な人がクリンセをただ、称賛する。

 

 だが突然場面は変化する。

 倒れるのは、高貴な印象のある小人。飛び散ったのはワインか。それを理由に拘束されるクリンセ。彼女の目の前で飛び散る鮮血。彼女を守るため身を挺す仲間たち。

 雪の中をぼろ布を纏って歩くクリンセ。あのころの栄光はどこへ行ったのか、こんな理不尽があっていいのか、とルイズは憤った。

 煙を切り裂き現れるドラゴン。タバサのそれと違う、明確な害意を持って迫るドラゴンに拳のみで立ち向かうクリンセと、彼女を助けた、ドラゴンの意匠を持った槍の騎士。

 人を助けた。竜を助けた。人を倒した。竜を倒した。神をも倒した。

 

『彼女はエオルゼアを救った』

 

 誰かが、クリンセの声で呟く。

 

『だけれどエオルゼアは彼女を救わなかった』

 

 

 これが、あのクリンセが辿ってきた道だとでもいうのだろうか。不条理、理不尽、クリンセの優しさは彼女への牙として突き立てられた。

 あんなのほほんとしているには、あまりにも険しい道のりだったのではないだろうか。なぜ笑っていられるのか、ルイズにはわからなかった。

景色がまるで暗黒の闇に包まれるように暗くなる。しかしそんな内に輝くものがあった。

 

『あんたになら背を預けられる。行くぞ、クリンセ』

 

 黒い鎧を纏った騎士が。

 

『友だ。そうだろう? クリンセ』

 

 少し耳の長い、男。クリンセと仲良さそうに拳を着きあわせたり、筋トレをしている。

 その彼が、腹から血を流し、命を終えようとしている。涙を流すクリンセは必死で笑顔を作り彼を見送る。

 その彼が、こちらを見た。ここにはいないはずの、ルイズを見て、微笑んだ。

すべてが消え、暗闇の中、その男とクリンセだけが輝いている。

 

 その男は光の粒となって消えていった。クリンセだけが残される。

 こんなことは、知らない。クリンセからルイズはこんなことを聞いていない。

 

『君には聞こえる?悲鳴が。僕には聞こえる』

 

 暗闇に声が響く。

 

『君は救える?』

 

 ルイズにそう問うのはうつむいたままのクリンセだった。

 無表情を貼り付けたその顔は、造型こそ同じはずなのに全く別人の顔を想起させ、ルイズに嫌悪感さえ引き起こさせた。

 ルイズは負けじと大きく胸を張って、それに宣言する。

 

 

「当たり前じゃない‼私を誰だと思っているの‼ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール、貴族にして、クリンセの主人よ!!」

 

 

 意識が覚醒する。揺れるそこはウィンドドラゴン、シルフィードの背。抱えられるようになっているキュルケの腕を押しのけ立ち上がる。タバサは魔法を行使するためにルイズが起きたことに気付いていなかった。

 ゴーレムが動けないクリンセに迫っている。あれだけ大口を叩いておきながら、などとは思わない。夢の中で見たあの巨大な竜や、あの巨人のような化け物に相対していたクリンセが負けるはずはない。だが、あの夢の中では彼女に仲間がいた。その役割を今、自分が果たさずして何がクリンセの主人か!!救う、救われるでない。おかしな言い方かも知れないが対等な主人と使い魔として、ルイズはクリンセを助けなければいけない。いや、助けるのだ。

 感情が滾る、持つ杖に力がこもる。あの巨体だ、あの爆発が起きても何ら問題は無い。ためらうことなくルイズは爆発を起こした。

 着弾点はゴーレムの背中。爆発がゴーレムの腹を抉る。固定化の魔法の掛かった壁に罅を入れ、石を砂に変えた爆発が近距離で炸裂しゴーレムが大きく傾いた。

 いける! とルイズは確信し続けざまに二度、『ロック』という名の爆発を叩きこんだ。ゴーレムの上半身が消し飛び、上に居たフーケが投げ出される。

 

「何ですか!? これは!!」

 

 危なげなく着地したフーケを尻目に声が響く。

 クリンセの近くに現れたのはルイズに授業を爆破されたミセス・シュヴルーズである。

 彼女、まさか学院に盗賊やら敵襲やらがあるなどと思っておらず、当直をさぼって自室で安眠をむさぼっていたのだ。それがどうだろうか、ルイズのやらかした爆発音とクリンセのゴーレムを殴る連続爆音でたたき起こされ、何事かと急いでやってきたのである。

 

「ねえ! 土の先生! これ取れる!? 動けないんだけど!!」

 

「土の先生ってわたくしですか!?」

 

 正拳突きの姿勢で鉄に拘束されたクリンセを見て引き気味のミセスシュヴリーズである。特に鉄がメキメキと悲鳴を上げているあたりに。

 フーケが地面に着地すると同時に再びゴーレムが形成されはじめる。

 させまいと追撃を加えようとするルイズだが、爆発でローブが千切れたのか、その顔が見えた。思わず、攻撃することを忘れる。

 

「ミス・ロングビル……? ぐ……」

 

 途方もない疲労感がルイズを襲う。怒りが冷め冷静になり、爆発の使い過ぎの影響を自覚したように体が重くなった。

 

「はやく! はやく!!」

 

「ええいわかりましたよ『錬金』!」

 

 クリンセを拘束していた鉄が土砂に戻り、込められていた力が弾けるようにクリンセがその場で土砂を弾き飛ばしながら一回転した。回転した時に手がシュヴリーズの顔を掠ってシュヴリーズは冷や汗を垂らした。当たっていたら顔面複雑骨折と挫傷であった。

 だが謝っている場合ではない。これはルイズが作ってくれたチャンスだ。無駄にするわけにはいかなかった。

 地面を砕くように一足急加速して生成中のゴーレムに攻撃を叩きこむ。昔は跳ね飛びながらできたのでフーケに直接攻撃できたのだが今はできなくなってしまった。

 ルイズが居なければ今頃クリンセは憐れ踏みつぶされていたことだろう。クリンセはルイズに感謝しながら攻撃で出来た穴に足を掛けて飛び上がる。

 生成中のゴーレムを登り切り、上にいるフーケに拳を叩きこもうとするが足場の不安定さから力が上手くはいらず躱され空を切った。しかしクリンセの真骨頂の連続攻撃は終わらない。ゴーレムの上から叩き落とすため双竜蹴を繰り出す。一の型からしっかり繰り出したわけでは無いためただの蹴りだが、はじき出すには十分な威力だ。

 

「しつこいわね!!」

 

「っ緑髪の先生!?」

 

 迫ってみればルイズから隠れるように盾にしたあの先生であったことに驚き、ためらいが生まれた。故にクリンセの攻撃はフーケ本人ではなくその手に持った『破壊の杖』へ軌道がずれた。

 破壊の杖が弾け飛び、クリンセがそれを追うようにゴーレムから飛び出し空中キャッチをした。

 

「そ、それは破壊の杖!?」

 

 後ろでミセスシュヴリーズが顎がおちそうな位大きく口を開けて驚いている。そして思わず感謝した。クリンセやルイズが居なかったら当直サボって破壊の杖盗まれた間抜け認定である。弁償しろなどと言われた日にはもうどうしようもなくなっていた。家買ったばかりであるし。

 

「どうしようっていうの? そんな使い方もわからない杖を」

 

 ゴーレムが再び完全状態で復活した。もうクリンセへの対策も完璧だ。足を殴ろうものなら飛び散った破片が即時同じようにクリンセを鉄の拘束状態にする。そして持っているのは振るだけで破壊をもたらすと言われたのにもかかわらず何も起きない破壊の杖。

 

「これの使い方はよく知ってるよ!!」

 

 この杖は、クリンセはある種、死後の彼と出会ったのみであるがその人物の杖である。石の家に飾られていたそれはしかし、この杖と違い折れていたはずだ。

 だが使い方は一緒だ。杖を構える。

 この杖、トゥプシマティは周辺エーテルを強制徴用することが可能な杖だ。これを利用してエーテルの刃を作ることもできる。

 しかし杖は反応しない。それはつまるところ、周囲にエーテルが無いという事だ。無い物を強制徴用することはできない。だがそれがどうした。周囲に無くとも自身にエーテルはある。

 エーテル刃を作るのが下手で時間のかかるクリンセの補助を杖が行う。その身に宿すエーテル量はもはや蛮神に匹敵するのではとアルフィノにビビられたクリンセの全力が杖に込められる。

 結果として生まれるそれは条件さえ整えば闇の使徒さえも消し飛ばすエーテルの刃。

 まるで拳を振り抜くように杖を振るう。

 

 放たれたそれは夜に輝く星の光。

 

 ゴーレムをたやすく両断し、その程度なら再生するはずのゴーレムはまさに糸の切れた人形のように形を瓦解さした。操るフーケでさえ呆気にとられ、土砂の山の上で立ち尽くす。

 そのエーテルの刃は夜空を駆け、二つの月に溶けるように霧散した。

 

「綺麗……」

 

 それを成したのが『破壊の杖』などと呼ばれる物騒な物なことも、フーケがロングビルだったことも一瞬忘れ、そのエーテルの軌跡を見たルイズは呟いた。

 




トゥプシマティ
割と重要な感じを醸し出す杖。折れても使えるあたり本体はおそらく石と角笛。新生エオルゼアから始めた人間はなんだこの杖って思いながら進行することになる。

クリンセ・マム
お人よし。割と人生経験苦労してる。

土くれのフーケ
初めてゼロの使い魔を呼んだ時は二章に合わせたぽっと出キャラだとばかり思ってた。
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