ゼロのヒカセン   作:MKeepr

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4.0ではモンクが主役な予感。 ジョブ的にモンクなクリンセさんの明日はどっちだ。


八話

 学院長室で、おそらくこの学園で最も偉いであろうオスマンが襟首を掴まれて宙に浮いていた。

 

「ミ、ミスロングビルガツチクレノフーケジャッタトハーマッタクキヅカナカッタノー」

 

 本来であれば全員が全員で制止するところなのだが、誰も止めてくれないあたりにオスマンのスケベ方面での仁徳の無さが見て取れる。

 

「尻を撫でて採用されるんだースゴイナー魔法学院……ハッ私が格闘士ギルドに誘われたのってまさか」

 

 その襟首を掴んで持ち上げているクリンセは何かに気付いてしまったのかぶつぶつと呟きはじめ停止した。どこか遠くで次元やらいろいろ超越して某ハモンが謎の寒気を感じた。

 

「どうして尻を撫でて怒らなければ採用なんですか?」

 

 コルベールは何言ってんだこのジジイともはや敬意の念ゼロの目線をオスマンに向けている。

 

「カーッ!! うぐうっ!?」

 

 目剥いてコルベールに怒鳴る迫力は年寄りのそれではないが、それをさらに締め上げるクリンセの迫力は獣耳付いた可愛らしいミコッテのそれではない。どこかの宗教のジジイが何者だお前と恐怖の表情を浮かべそうなレベルである。

 そんな状況でもなぜかオスマンは抵抗することもなく締め上げに甘んじている。

 

「オールド・オスマン! いつまで獣人に締め上げられているのですか!!」

 

「ギドー君、君は大局が見えてなくていかん。こういうものは私が責任を持って受け止めるべきものなのじゃ」

 

 獣人に締め上げられるオスマンの様子がメイジの誇りに障ったのか教師の一人ギドーが抗議の声を上げる。だがほかの教師たちは何も言わず、ミセスシュヴルーズに至ってはクリンセの行動を肯定している様でさえある。責任逃れができるのである。そりゃ応援する。

 

「今思えばあれも魔法学院に潜り込むための罠、学院長は男前だといい、酒をすすめ媚を売り、しまいにゃ今この感触に匹敵する尻の撫で心地と撫でても怒らない。惚れてると思うじゃろ?」

 

「今この感覚?」

 

 コルベールは何言ってるんだこのジジイ酸欠でおかしくなったか、というニュアンスを含んでいた。

 

「カーッ!!」

 

 再びオスマンがキレた。

 

「私の腹に当たるこの双房のことじゃ馬鹿者が! ……あっ」

 

 クリンセの締め上げ方の都合上、オスマンはクリンセにもたれかかるようになっている。そしてオスマンの腹には丁度クリンセのツインマテリジャが当たっていた。甘んじて受けていた理由は之である。

 クリンセが顔を紅くしながら放り捨てたオスマンの腹に優しく双打掌を叩きこんだ。

 

 

 

「さて、フーケは城の衛士に引き渡した。そして破壊の杖は盗まれず、一件落着じゃ」

 

 すこし前かがみになっているが、オスマンが総括するように話を進める。もう少し追求したいところもあったがコルベールが話を先に進めようと言い出したのでお流れとなったのである。

 オスマンがルイズの頭を撫でた。

 

「君を含め、あの場の三人には『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷にだしておいたから追って沙汰があるじゃろう」

 

 クリンセがなにかもらえないかなーといった目でオスマンを見ているので、ルイズが代わりに聞くことにした。

 

「オールド・オスマン、クリンセには何もないんですか?」

 

「何もないもむしろ、何もなかったことになんとかしたのじゃ」

 

 ガンダールヴにして獣人の使い魔クリンセという存在を表に出さないためオスマンは手を尽くした。それゆえのあの場の三人、つまりルイズ、タバサ、キュルケの三人が力を合わせ土くれのフーケを破ったというシナリオを構築したのだ。

 

「ミニオンオスマンくらいは欲しい……いややっぱいいや。なにもいらないよ」

 

 嫌な予感しかしないとクリンセは一瞬思ったことを撤回して何もいらない宣言する。

 それに嫌そうな顔をするのはルイズだ。

 

「ご褒美、と言えるかは微妙じゃが、明日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。しっかり着飾るんじゃぞ、主役は君たちだからのう」

 

「オスマン、オスマンにだけ聞きたいことがある」

 

 退席を促そうとしたとき、クリンセがそう言った。ルイズはクリンセを見つめる。あの夢のように何か抱え込もうとしているのではないかと。

 

「先に行ってるから。あとでいろいろ聞かせてもらうわよ」

 

 ルイズはクリンセを信じた。そう言って退出する。

 

「皆、悪いが退出を」

 

 ギドーが噛みつこうとしたがそれを手で制し、コルベールも含めしぶしぶ退室していき、最後クリンセとオスマンだけが部屋に残った。

 

「それで、聞きたいこととは?」

 

「あの杖、あの『破壊の杖』はどこで手に入れたの?」

 

 目上もなにもないため口だが、どこか気安く喋りやすい印象がクリンセからはある。

 

「あの杖は……三十年前ほどじゃな。持ち主は消えてしまったよ」

 

「どういう」

 

 オスマンは語り出す。

 三十年前のある日、森を散策していたところをワイバーンに襲われたことを。迫りくるワイバーンの爪を光の膜が守ってくれたことを、それを生み出した持ち主の老人が、ワイバーンをその杖を振り一撃で吹き飛ばしたことを。

 そしてその杖を残して、その老人が光となって消えてしまったことを。

 

「私は、その遺品を『破壊の杖』と名付け宝物庫に仕舞いこんだ。恩人の形見としてな……」

 

 その眼はスケベ爺のそれではない、思慮深い賢者の目として、どこか遠くを眺めていた。

 

「その老人の名前は?」

 

「わからん、言葉を交すこともなく、ワイバーンから儂を守って、満足げな笑みを浮かべ消えて行った」

 

 おそらく、クリンセの知っているあの人物なのだろう。消えたのは、もしかしたら、残滓だったのかもしれない。

 

 

「ありがとうオスマン。あと、このよくわからない字なんだけど、これ何?」

 

 クリンセが籠手を外し、左手の甲を見せる。オスマンがクリンセの手を掴んだ。手の甲に刻まれたルーンの内、二文字だけが発光している。

 

「これなら知っておるよ、ガンダールヴ、伝説の使い魔のルーンじゃ。先ほど君の存在を隠そうとしたのも、これが原因じゃよ」

 

「伝説?」

 

「そうじゃ、ありとあらゆる『武器』を使いこなす。君がその肉体を『武器』として操り、『破壊の杖』を使えたのもそれが理由じゃろう」

 

「えっ自前だけれど」

 

「えっ」

 

 オスマンが白目をむいた。

 

「そのルーンの力であのような大立ち回りを演じていたわけでは無いのか?」

 

「そんなバフ一つであんなに動けるようにならないよ普通」

 

 ガンダールヴのルーンはバフじゃないがクリンセの中ではもうバフの一種である。

 

「と、ともかく」

 

 オスマンがクリンセの頭を撫でた。抱きしめなかったのは抱きしめたら死ぬ危険があったからである。

 

「よくぞ破壊の杖を守ってくれた改めて礼を言うぞ。お主がどういう理屈でこっちの世界へやってきたのか調べるつもりじゃ、でもわからんでも恨まんでくれよ」

 

「そんなことで恨まないよ。ただ、オスマン『アシエン』って言葉を聞いたら、気を付けて」

 

 アシエンという聞きなれない言葉に首をかしげるオスマンが、意味を聞こうとしたが、クリンセはそれを言うつもりはないと言った顔だったためオスマンはあきらめ『アシエン』という言葉に気を付けることにした。

 

 

 その後、ルイズの部屋に戻ったクリンセはルイズから自分の冒険の話をせがまれることとなった。ベッドに寝転がるルイズに語りかけるように、縁に腰を下ろして身振り手振りで自分のやってきたことを話す。

 

「それで、突然ナンパされたから鉄拳制裁しようとしたんだけどその人がどうやら暁のメンバーだったらしくてね」

 

「ナンパされたからって鉄拳制裁はどうかと思うわよ」

 

 突然壁に立てかけてあった剣がカタカタ揺れ出した。メーメーが藁から起き上がって、剣を銜えてベッドに放り捨てる。すると衝撃で少し抜けた剣が大声を上げた。

 

「くおうらああああ!!てめ!! 俺のこと忘れてただろ!」

 

「だって使えないし!! というかでかいでしょ片手剣の大きさじゃないよ両手剣じゃないかドルフィンガー!!」

 

 片手剣なら、友の使い方を見よう見まねできるかもしれないが、デルフリンガー、結構でかいのである。

 

「ちげえデルフリンガー様だ! てめなんだその違う生物は!」

 

「ええいうるさい!! クリンセの話を大人しく聞きなさい!!」

 

 迷惑そうに翼で頭を覆って藁で寝るメーメーを尻目に、夜二人と一振りは次の日の舞踏会より騒がしく、話をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 フリッグの舞踏会当日、ダンスを踊り注目を集めるクリンセを引っぱたくルイズの図が見られた。その背ではデルフリンガーが愉快そうに笑っていた。




Chrysthe Muhmはゴールデンダンスを踊った。
Chrysthe Muhmは豊穣の舞を踊った。
Chrysthe Muhmは宮廷の舞を踊った。
Chrysthe Muhmはステップダンスを踊った。
Chrysthe Muhmはサベネアンダンスを踊った。

Louise ValliereはChrysthe Muhmを平手打ちした。
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