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私の1日はルイズを起こすことから始まる。下着姿で寝ているルイズにあの手この手で起床を促すのだ。
だが、このご主人、あのジジイがやらかす前までの三闘神並に起きない。しかも起こし方間違えるとセフィロトかなと思うほど怒るのだ。
そんなわけで今の私のトレンドはメーメーなのだ。
意外にもメーメーの鳴き声で起こすと、まあ動物のやったことだからと許される。やったね私許された。
なのでいつも通り日の出と同時に起きると言っても過言ではないメーメーにシルキスの野菜をご褒美に鳴いてもらう。
「クエエーーー!!」
部屋に響く大音響に思わず耳を伏せちゃうが不可抗力なのだ。
ルイズにメーメーと共にひっぱたかれた。どうしたメーメー私に見せたあの反骨精神はどこ行った。まあいいやとシルキスの野菜出したら手ごと食べられた。解せぬ。
人に服を着せるというのはあんまりやったことがない経験だったけど、エオルゼアの服に比べるとこの世界の服の着せやすいことと言ったらない。さっさと昨日洗濯しといた服を着せて送り出す。同時に行っても私が結局ミコッテ山の幸風焼きを食べる羽目になるので、あとでマルトーの所に行くことにしてる。
そんなわけで食堂へ行くのを見送って、脱ぎ散らかされた服を回収してメーメーの背中に乗せる。メーメーも外に出さないと鬱憤がたまるようなので、洗濯の時くらいは外に出してあげることにした。もしかしたらルイズとまたどこかに行くかもしれないし。
水の出ている場所で水を汲んで丁寧に洗って干す。ついでにメーメーに水をぶっかけて洗う。布が薄く耐久性が低い普通の布なので、何時もの装備を洗う感じでやると破ける。破いてこっそり補修したパンツは今頃ルイズが履いているだろう。
洗濯が終わったので、ご褒美にメーメーにいつものシルキスの野菜をあげる。種があるので後でどこかで栽培許可を貰わないとメーメーへのご褒美が尽きそう。シルキスの野菜以外を上げてみたら頭からくわえられて振り回された。
私自体別に平気だけど、厨房の前でそれをやられてて、出てきた女の子が本気で驚いてしまっていた。どうやらシエスタという名前らしい。私のミコッテ耳にびくびくしてしまっていたので、バンダナを付けてみている。尻尾を隠すのは断固拒否なのだ。かゆい。
そんなわけでマルトーのご飯をメーメーとドラゴンと一緒に食べて腹ごなしになぜかメーメーに振り回されていると、ギーシュがやってきた。
ギーシュもなかなか情熱にあふれている。最初こそいけ好かない男だと思ったけれどなかなかどうして、芯となるものは持っている様だった。
ただギーシュは私を木人か何かと誤解しているのではないだろうか。わたしだって怪我はするはずなんだけど。
「いくよクリンセ! 僕の成果を見てくれ!!」
会えば訓練アドバイス訓練アドバイスである。ハウジングで時折殴ってた木人もこんな気分だったのかな。
だだ、ハイミスライトを教えてから、ギーシュの出すゴーレムにも少し変化が出てきたのは分かる。
たとえば今私の真正面で視界を塞ぐ盾を持ったワルキューレ、本体こそいつもの青銅の色だが、盾は青色をしている。
私の見せたハイミスライトを真似して錬金したら、これになったと言っていた。たぶんイコンミスライトが蛮神の影響受けてる金属だから錬金で作れなかったんだろう。錬金があればエオルゼアで便利だと思う。ハイクオリティ作れないけど通常品の金属量産できるし。ハイクオリティじゃないから自分で使ったり誰かにあげるときは信用できないけど。
殴り付ける良い音を立てて拳が弾かれる。手加減してるとはいえ盾をうまく使っている。
連動するように盾の脇から二体のワルキューレ、これは武器が青くなっている。が攻撃してくるのでかわしつつ、カウンター気味に拳を叩き込む。
大きくひしゃげたワルキューレを庇うように盾のワルキューレが動き、ひしゃげたワルキューレをギーシュの出した花弁のようなものが修復する。
私がギーシュに教えた『ロール』の考え方をギーシュなりに再現したのだろう。最初十分かけて全部ミスライト製のワルキューレを見せてもらった時に生成遅すぎて役立たなくない?と言って白目向いたところからかなり成長した。
武器や盾だけに使うことで動かしやすさと強度の両立を図ったのだ。
ギーシュ本人は錬金された椅子のようなものに座って必死でワルキューレを操作している。あの椅子も私がワルキューレ無視でギーシュに突っ込んでいった後追加されたものだ。私が近寄ると椅子が走って全力で逃げる。
司令塔にして心臓なのだ。心臓をさらして戦うのは馬鹿のすることだ。
といいつつ私も本来の役割としてはあの盾の後ろの武器もった奴であるDPSもしくはダメージディーラーに近いからロール的に考えれば失格だけどさ。
このロールの考え方がいつどこで生まれたかは知らないが、効率を追求しているのは分かる。役割を完璧に分けることでそれに特化したコトが出きるからだ。私としては相手をひたすら殴れるので便利である。
これをやる時のコツは、タンクが目立つ時に攻撃することだ。知り合いのナイトなんかはフラッシュの魔法を炊いて相手の目をくらませつつこっちの攻撃を見えにくくごまかしたり、戦士なんかだと斧をぐるぐる振り回したりしてた。新米の槍術士が目の前でナイトのフラッシュ見てしまって目ガァァァぁぁぁってなってたのは笑った。
ギーシュが今やっているのはいわゆるヒーラーの役目だ。ワルキューレが壊れてもすぐ修理できる。よほど大勢に囲まれない限りこの布陣は破れないだろう。
ただまあ
「なっ」
私がダメージディーラーを殴ったことでそちらに回復の意識が行き、タンク役のワルキューレが限界を超えて崩壊した。無事だった青色の盾が地面にからりと落ちる。ギーシュがすぐさま復活させようとするが、その前に私が羅刹衝で詰め寄ってチェックメイトである。ギーシュ本人を殴るとやばいので椅子を殴って弾き飛ばし、椅子抜きのようにギーシュが尻もちをついて終了だ。
「ん~、そうだなぁ、盾役のワルキューレに何か派手な攻撃手段を持たせるといいよ。その隙にダメージ役のワルキューレに殴らせればいいと思う。あと回復最優先は盾だから気を付けてね私やったことないけど」
―――タンクがつぶれるのはヒーラーの責任、ヒーラーがつぶれるのはタンクの責任、DPSがつぶれるのはDPSの責任ですしおすし。
キレると杖で殴り掛かってくるあの白魔さんは元気だろうか、とふと思った。
「クリンセ? どこか遠い目をしているが?」
「気にしないで」
「そ、そうかとりあえず、課題が見つかった。礼を言うよクリンセ」
そう言ってごそごそと取り出したのは香水の入ったビンである。何をどうやってそうなったのかは知らないけれど、あの頭に香水をぶっかけたモンモンランシーと仲直りをしたらしい。
彼女の特製香水、なんとチョコボ臭を消せるのである。しかもあまり強くない匂いで。
エオルゼアではチョコボ臭を消すには風呂にしばらく浸かっているか強い香りの香水をかけてごまかすかだったが、これもあくまでチョコボに乗っている人間の対策だ。チョコボ本人に香り強い香水をかけたりするとチョコボが体調不良になるためチョコボ本人のチョコボ臭は消せない。
私の場合はメーメーを定期的に川で洗ってやることでチョコボ臭を抑えていたけれど、ルイズの部屋でメーメーを飼うようになってからいつルイズに文句言われるか冷や冷やだった。一応水ぶっかけて洗ってはいたけど。
「モンモンランシーの香水ありがとう」
「誰だねそれは、モンモランシーだよ」
モンモランシーだった。ごめん。
そうだこんど木人殴ることがあったら後で何かお供えしよう。
そうしてギーシュとの殴り合いを終えるとやることないので芝生で寝る。冒険の感動は無いけど安らげる生活を提供されてる感じがするので、ルイズには感謝しかない。しがらみを忘れてのんびりできるというのはなかなかない。エオルゼアも帝国がいろいろ怪しげではあるものの、大きな動きを見せる様子は無いのでしばらくは大丈夫だろうし、この生活を満喫させてもらうことにしよう。
「あんたどういう状況で寝てるのよ……」
そう言って惰眠むさぼってたらいつの間にか夜で、帰ってこない飼い猫を探すルイズに叩かれて起こされた。
夜になっても寒くないなと思ったら、隣でメーメーが、前にサラマンダーが、後ろにドラゴンがくっついていた。
「シルフィード」
「フレイム」
後ろのドラゴン、そうだシルフィードは名残惜しそうに、フレイムはまたなと言わんばかりに私の方を見て、それぞれルイズの後ろにいたタバサとキュルケの所へ帰って行った。
残されたのは私とルイズだけだ。
この前までなら主人を忘れて寝てる馬鹿猫は飯抜きよ! と言われてたのだが
「疲れてるなら私のベッドでしっかり寝なさい! わかった!!?」
となぜか寝るならベッドで寝ろと言われた。ルイズ頭でも打ったのだろうか。あれか、私の作った装備による影響でもあるのか? いやいや、持ち主の性格変える装備があるんだったら今すぐハモンに着せて真人間に仕立て上げてるし、チュチュトも実行してるでしょ。
―――友よ、疲れているなら存分に休んでいくがいい! 今この瞬間は、ここがお前の家だ!
ルイズのその姿がふと、親友の姿とダブって見えて、笑みがこぼれた。
今日は良い夢でも見れそうな気がする。
メーメーを連れてさっさと寝よう。