ソフィアをなぜか作業で狩り続けてます。
誤字を修正。投稿すると誤字が見つかる。
王族と絡むとろくなことにならない。
クリンセの経験則であり、実際それは正しい。
だからと言ってクリンセが王族を嫌いなわけではない。大体は王族自体がやらかした訳ではなく、王族を取り巻く環境がろくなことになっていないせいで王族に発言できる領域のクリンセも巻き込まれる図が大体だ。
ナナモ殿下も未来を憂い、マウント・ラウバーンに乗りつつクリンセや暁のメンバーを心配してくれた。
クリンセが指名手配された際に所属するフリーカンパニーがお取り潰しにならなかったのはグリダニアの指導者カヌエのお陰だし、イシュガルドに逃れてから資金調達ができたのは、疑いが晴れるまで市場を解放し見て見ぬふりをしてくれたメルウィブ提督のお陰だ。
だが騎神ジジイは許さん。
まあ、この世界は何処か緩いし王族も何か問題抱えたりしてる訳ではないだろうとクリンセは緩く考えていた。
トリステインと言う国の小ささは頭の中から放り投げた。
件の姫殿下のおなーりーには当然のごとく出席せず、部屋に引きこもってメーメーに香水かけて毛並をブラッシングしつつ過ごしていると、ルイズも戻ってきた。
だが、ルイズの反応がおかしい。
ボー、とどこを見ているのかわからない感じで不動と化しているかと思うと、クリンセの胸が視界に入るたびまるで時計の針が急回転するかのように別方向を見てまたボーとするのだ。
「ルイズ? どうしたの?」
この様子にはクリンセもたじたじだ。突っついてみても、ためしに髪の毛を三つ編みにしてみても、暇なので偽ネコミミ付けて顔にムーンキーパー謹製戦化粧を施してみても反応しない。いつの間にか偽ミコッテが誕生していた。
これ以上やることが無くて、あとこれ以上やって後で怒られると怖いので放っておこうとクリンセが心に決めたとき、ノックの音が響いた。
コン、コン、コンコンコンと叩かれたノックを聞いてルイズはハッとして立ち上がり、ドアを開いた。
ドアを開けると、そこには黒頭巾の少女がいた。ルイズを見てびくりとしてからあたりを見回してから急ぐように中に入ってきて扉を閉めた。
少女は確認もせず杖を引っ張り出すとルイズに向けて杖を振るう。すると光の粉がルイズを含めて部屋を舞った。
「ディティクトマジック?」
「ルイズ・フランソワーズ? その格好は魔法で何かされたわけでは無いのですか?」
頭巾を取ると現れたのは気品ある顔立ちと薄青色の瞳、齢十七歳ほどの美女だった。クリンセはこんな生徒いたっけなぁなどと呑気に二人の様子を観察している。だが、次のルイズの一言でいろいろ察した。
「姫殿下!」
クリンセはまあ王族に関わらなければ特に問題はないだろうと思っていた。
ただ王族がこっちにやって来るとはクリンセは想定していなかったのである。
まあしかし、王族に関わらないというのは無理な話で、ルイズの家、ラ・ヴァリエール家自体が王家に連なる公爵家、つまるところ王族の一種であることを考えれば面倒事に巻き込まれるのは最早摂理である。
と、トリステインでの自分の立場を思い出してとっさに耳を手で隠すクリンセに、この姫殿下、アンリエッタは微笑を見せながら不要の意を示した。
「大丈夫ですよ、ルイズ・フランソワーズの使い魔さん。獣人の使い魔であってもしっかり使役できているはずです。隠す必要なんてありません」
どうやら、異文化交流もしている様ですし、と言われてルイズは自分の状態に気付く。頭に付けられたネコミミモドキを外して三つ編みをほどいて、あとでお仕置きすると決めてからアンリエッタの話を聞くことにした。
そこで聞いたのは、この平和で暢気な様子の学院の外の話。アルビオンの貴族派が王立派を追いつめているという事、てっきりルイズに頼みごとをするこの姫殿下が王立派を貴族派から助けてくれとでも言いだすのかと思えば、そうではなかった。ただ、アルビオンの王子から手紙を受け取ってきてほしいとのことなのだ。
ルイズも話を聞いているが、顔が険しくなってきている。
ルイズとて貴族としてだけではなく、この姫殿下の友人として、手紙を奪還したいとは思う。クリンセと二人ならばあるいは、と可能性を考えてる時ふと―――
『彼女はエオルゼア救ったけれど、エオルゼアは彼女を救わなかった』
無機質なクリンセの声が脳内で再生された。エオルゼアが何なのかわからない。だが、これはこのトリステインの私情だ。そしてルイズは無意識のうちにクリンセを頼ろうとした自分を恥じた。クリンセを巻き込む訳にはいかない。何とかしてしまいそうな感じはあるが巻き込む訳にはいかない。大事なことなのでルイズは脳内で二度反復した。
「私が行こうか?」
「クリンセ!」
そんなルイズの葛藤など知らんとばかりに、まるでそのあたりに散歩に行くような気軽さで依頼を受けようとするクリンセをルイズが諌める。だが、姫殿下には優秀な使い魔が主人に代わって話を受けてくれたと取ったようだった。
「まあ、優秀な使い魔さん」
アンリエッタは目をキラキラさせてクリンセを見ている。
「状況がヤバそうだし、行くなら明日には出発したいねって……? ちょっとまってて」
アルビオンへの行き方を知らないためそのあたりの擦り合わせを行いたい様子のクリンセが、急にドアの方に忍び足で寄っていく。
ルイズとアンリエッタが怪訝な顔をするがドアの先を指差して首の所で指を横に切るクリンセの様子にルイズが察した。外に誰かいるのだ。そしてそれはもしかすればアンリエッタを狙った暗殺者かもしれない。ルイズはこくりと頷くとクリンセが安心させるようにウィンクした。ちょっとアンリエッタがドキっとした。
そうしてドアの前で拳を握ると、ドアに向けて拳を放った。丁度使用禁止にされたゴールドソーサーのパンチングマシーンを叩くような感じで。
「ガフゥ!?」
バキリと、ドアに穴をあけて拳が突き抜けた先で悲鳴が聞こえる。クリンセはしばらく待ってからドアを開け廊下の様子をうかがった。
「あれ? ギーシュ?」
「えっギーシュ?」
てっきり姫殿下のお命頂戴な暗殺者でもやってきたのかと思ったクリンセだったが、その勘は外れたようで、廊下で憐れ延びているのはギーシュである。
とりあえず話を聞かれていた可能性が高いので足を掴んで部屋に引きずり込んだ。
姫殿下がきている状況で暗殺者の可能性があったため、扉の穴の原因はあくまでギーシュであるとルイズの脳内で判決が下されたためクリンセはお咎めなしである。ちなみに女子寮に忍び込んでいるという意味でもギーシュの人生がやばい。
伸びたギーシュにクリンセがハイポーションをぶっかけて引っぱたくとギーシュが跳ね起きた。まるで何か世界の深淵でも見たかのような顔で恐慌状態である。
「うわああああ!? 手が! 手が!?」
「おちついてギーシュ、落ち着きたまえ」
ギーシュの頭を固定するようにクリンセが抑えると、ギーシュがすごく落ち着いた。と言わんばかりに停まった。
「というかギーシュ、どうしてここに?」
「ふっ、薔薇のように見た目麗しい姫様の後を付けてドアの鍵穴から様子をうかがったまでいだだだだだ!!」
クリンセが背後に回ってルイズが尋問をおこなったらそんなことをのたまう物だから即座にクリンセがチョークスリーパーでギーシュを締め上げた。丁寧に気管と血管を圧迫しないようにすることで純粋に首を痛めつける技と化している。なおギーシュ、首は地獄だが背中は天国である。まさしく天国と地獄。
「ひ、姫殿下! その困難なにん……むぐぐぐぐに是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」
ふとクリンセ、気付いた。ギーシュのこの状態、あの二股事件の時に近い。
「グラモン? グラモン元帥の?」
「息子でござい……任務の一員に加えてくだされば望外の喜びでございます!!」
締め上げを強めているのだがこのギーシュ、あきらめない。以前のクリンセメテオドライヴのせいで耐久力が上がったのかもしれない。
そしてそんな状況をスルーする姫殿下もなかなかである。
「では、お願いしますわ。ギーシュさん」
それを聞いてギーシュは喜びの歓声を上げると共に、限界が来たのか糸が切れたように動かなくなった。
だがその顔は満足げな笑みを浮かべていたのであった。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
クリンセがギーシュの後片付けをしているのを尻目に、ルイズにアンリエッタが手紙を差し出した。いわゆる密書なのだが、それを渡すさまはまるで恋文をしたためた少女のそれで、ルイズが何も言えずに手紙を受け取ると、さらに右手薬指の指輪を抜いてルイズに渡した。
「せめてものお守りとして……『水のルビー』です。お金が心配なら売りはらって旅の資金に充ててください」
ルイズは深々と頭を下げ、それを受け取った。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています……母君の指輪が、アルビオンに吹く―――」
「ルイズー! とりあえずギーシュメーメーに縛り付けといたからあの服以外に何個か装備作るよ!!」
後ろでメーメーの荷物を載せるであろうスペースにギーシュをしばりつけたクリンセが、いつの間にかクラフター装備になってルイズに声をかけた。ルイズが一足飛びで接近し頭を引っぱたいた。王族やらそういう宣誓やらに無頓着なクリンセにアンリエッタは苦笑しながらも、ルイズたちの無事を祈るのだった。
アンリエッタ・ド・トリステイン
姫殿下。原作では割とというかかなりアクティブなせいでロイヤルビッチなる不名誉すぎる呼ばれ方をしている。クリンセが女性なのでそういう事にはならない。
ギーシュ・ド・グラモン
見境が無いのかと誤解されがちだが、美人が好きなだけである(矛盾)
クリンセ・マム
チョークスリーパーはチュチュト直伝。相手を物理と精神同時に昇天させる。
ルイズ
エオルゼア住民の陥りがちなヒカセンに任せとけば何とかなる病からの脱却を図る。