ゼロのヒカセン   作:MKeepr

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お待たせしました。少し短いです。

ワルドに蒼流砲を見られてない描写にするのを忘れていました。修正いたしました。


五話

空を疾走するグリフォンに追いすがるのはメーメーだ。地上の悪路をものともせずに走っている。既に半日以上が経過しているが、グリフォンもメーメーも共に休むことなく、全力疾走を続けているのだ。共に馬とは比べ物にならないタフさである。このペースで行けば夜までには港町であるラ・ロシェールに着くはずである。

 だが悲しいかな、メーメーは二足歩行で走る関係上、馬以上に揺れる。二足歩行で走れるゆえの小回りの良さは利点であるのだが、長距離移動に関して言えば揺れが激しいというデメリットも目立ってしまうのだ。そのためエオルゼアで生まれたチョコボを利用した長距離移動の手段が気球を引っ張るチョコボだったりする。

 その被害が直撃しているのは、目下ギーシュである。初めの町で馬を交換する際、メーメーに乗ればいいんじゃとクリンセに提案されて、後ろの鞍に乗る形で乗ったのだ。だが馬以上の揺れと、自分が操縦しているわけでは無いせいでとんでもなく疲れている。クリンセにもたれかかるような形で見るだけで疲労困憊なのがわかる。なお残念ながら背中にあるデルフリンガーのせいで背中自体にもたれかかれていない。憐れギーシュ。

 ちなみにルイズも第一の町で疲労していたので、飛ぶことで揺れの少ないワルドのグリフォンに乗せてもらっている。さらにギーシュにつらいのは、馬が居なくなったので道を無視してメーメーを走らせ始めたことだ。しかも時折飛ぶ。飛んでいる最中は揺れがなくなるので、数少ないギーシュの休憩時間となっていた。

 風脈がなく、空間エーテルの恩恵を受けられないので、メーメーが完全に地力で飛んでいるだけのため長距離移動で飛行しっぱなしというのができないのだ。

 それを駆るクリンセはというと、ルイズとワルドを眺めっぱなしである。

 肩を触ったりしてるのを見てルイズが嫌がってる素振りが無いか監視しているのである。婚約者話はルイズの言葉から信用したが、ワルド本人を信用していない。アレは純情な婚約者の目ではない。なにか不審な目、つまりセクハラ野郎の目をルイズや、時たまクリンセに向けているからだ。

 嫌がるそぶりを見せたらメーメーが疲労度外視で飛翔してそこからクリンセがグリフォンに飛び乗る算段である。

 

「ク、クリンセ、もう半日以上走って跳ねっぱなしだ……君や魔法衛士隊はどうなってるんだ連中は化け物か」

 

「ギーシュが体力ないの忘れてた……ごめんね?」

 

ガフゥ、とギーシュが白眼を剥いて吹き出した。彼だって最近頑張っているのである。ドットメイジどころかラインメイジに届きそうな勢いで。それを(自分と比べて)体力ないねと言う光の戦士は時に残酷である。

最初を除き馬を変えずに道なき道を最短ルートで疾走した結果、日が落ちて少したった時間にラ・ロシェールが見えてきた。

 

「うわあ、イシュガルドみたいに山だ」

 

「そ、そうとも、ラ・ロシェールは浮遊大陸アルビオンに通じる空の港なのさ」

 

 息絶え絶えのギーシュの必死の解説で、クリンセの内で皇太子含めた人々がバヌバヌ族と化した。陽気にダンスを踊っていそうであるが、現実は国家がやばいという修羅場だ。いやある種状況としては一致しているのかもしれないが。

 つまりアルビオンとはアバラシア雲海に暮らすバヌバヌ族の一族なのか、と勝手にクリンセが納得していると、ふと殺気を感じた。グリフォンも何かに気付いたのか急激に高度を上昇させる。

 火の玉が突如飛来した。それはしかし魔法のそれではない。薄暗い中に松明が複数投げ込まれたのだ。

 メーメーの綱を引くとメーメーが急ブレーキをかけながら地面を走り体をスライド移動させる。二足歩行で小回りが効くのが役に立ったである。先ほどまでクリンセ達が通過予定だった道に矢が風切音を立てて突き刺さる。

 

「奇襲だ! ワルキューレ!!」

 

 事態を察したギーシュがとっさにワルキューレを召喚する。花弁から生れ落ちたのはミスライトの盾を持つワルキューレ。意図を察したクリンセがメーメーをその後ろに滑り込ませる。滑り込んだ直後に再び矢が飛来した。だが、ギーシュは疲労のせいでタンクのワルキューレを制御するので精いっぱいと言っていい。精神力に余裕はあるが判断をミスすれば即自身とメーメーが矢に貫かれるからだ。

 その様子をワルドは興味深げに眺めている。

 

「クリンセ!」

 

「ルイズのそれは目立つ、今はやめておくんだ。それにしても、夜盗や山賊の類いか?」

 

 ルイズが杖を引き抜くが、ワルドがそれを制止した。ワルキューレが邪魔なのを嫌がったのか矢が上に放たれ曲射のような形で降ってきた。ワルキューレの体を前方の盾にしつつ、盾自体を傘にして矢宿りをする。そしてメーメーの背中にはもうクリンセはいなかった。

 

―――速い!

 

 それは騎士団長のワルドでさえ目を見張る速さ。ムーンキーパー、月の守護者の名を冠するミコッテ族の一人、クリンセは夜の闇をものともせず矢の発射元と思わしき崖へでっぱりをとっかかりにして駆けあがった。生成中のゴーレムを駆けあがれるのだ。動かない崖を上ることなど造作もないことだった。

 空を飛ぶワルドの方にも矢が飛んできたため、風で防御をしつついったん退避する。ワルドとしてはクリンセの顛末よりルイズの方が大切である。

 退避するグリフォンを背に勢いのまま空中に飛び出したクリンセを迎えたのは驚愕に顔を歪ませる男達。だが数名はすぐさま立ち直って矢を再びつがえるか剣を手にしようとする者もいた。

 この数を倒すならば、とクリンセが取ったのはまるで何かを貯め込むかのように手を後ろにやり、そのまま地面に向けて突き出すという動作だ。

 不可視エーテルであるチャクラの奔流が両手から走り、碧い激流となって夜盗たちを襲った。モンクの間では『蒼気砲』と呼ばれる技だ。なお知り合いの殴り合いエオルゼアをした仲であるモンクのウィダルゲルトはトリステインで言うと半径5メイルの範囲攻撃ができるのだが、クリンセの最大半径はなんと15メイルである。不可視エーテルの保有量もクリンセは頭おかしいのである。具体的に言うとエーテルを注いでと頼まれたので全力で注いだらアリゼーにちょっと待って! となって二回に分けてゆっくり注がされた位には。

 夜盗たちが悲鳴を上げて倒れる。だが一人、偶然にも蒼気砲の範囲から逃れた夜盗が居た。矢をつがえて狙うはクリンセ。丁度背を向けている。矢が放たれるのとその夜盗が小さな竜巻で吹き飛ばされるのは同時だった。

 

「クリンセ!」

 

 ルイズは叫びながらも目をそらさなかった。それはある種信頼であった。

 振り向きざまに矢を掴んでへし折るクリンセの姿がそこにはあった。

 

「助かったよ」

 

「何、間に合わなかった。すまないね、どうやって一度に夜盗を倒したんだ?」

 

 グリフォンから降り立ったワルドが興味深げにクリンセを見る。退避していた故にクリンセがいかにして傭兵を倒したか見逃してしまったのである。

 

「一度に薙ぎ払った」

 

 得意げに言うクリンセに、ワルドは背中の大剣で薙ぎ払ったのだと解釈した。

 さて、と言わんばかりに意識のある夜盗一人を掴みあげる。こんなになってもクリンセやルイズたちへの罵声を言えるあたり胆力はあるのだろう。しかしそれもクリンセの拳が鼻先を掠めてからは無くなった。

 

「ねえ、何の目的でこんなことした?」

 

 生憎、意志薄弱なのかなんなのか、超える力が発動しなかった為にクリンセはクリンセ式尋問術を行うことになった。

 夜盗たちは自分たちはただの物取りだ、の一点張りで、怪しいものの逆にそれも正しいように感じられるため、後からシルフィードに乗ってキュルケとタバサがやってくるまで夜盗たちにクリンセはお仕置きして二度と夜盗できないようにしておくのだった。




蒼気砲
モンク誰もが横に打ったらどうなるんだこれと思うインスタント技。大変お世話になる。

アリゼー
バハムートをやってないとアルフィノと別れたあとこの子何してたんだと思われてしまう子。彼女のお陰でエンベラーニューシールドの可能性を感じてしまう。
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