これからも気ままに頑張ります。
モンクの聖典装備は完成したんですが暗黒騎士にまわせてません。暗黒騎士はまだ伝承で我慢なのだぁ……
誤字修正いたしました
朝、目を覚ましたクリンセの目に入ってきたのは、いつも通り、場所が違うが、いつも通りのルイズの寝顔だった。
あの後キュルケ達と合流した後、さあアルビオンに行こうとなったのだが、出るのが明後日という事が判明して哀しみを背負った一行だ。そればかりはどうしようもないため、ラ・ロシェールで一番お高い宿『女神の杵』に泊まったのである。その際もワルドとクリンセが喧嘩になったが、クリンセのセクハラする気でしょ変なことする気でしょの言葉に一同に引かれてワルドが引き下がることとなった。だが、実は夜の間にこっそりルイズと会っていたりする。
決して逢引ではないとクリンセに釈明して許可を取って部屋から出て行ったので、あえてクリンセも追及しなかった。ちなみにワルドと相部屋になったギーシュは着くなり死んだように寝ていた。
そんなわけで今日一日やることのないクリンセはとりあえず背伸びしてベッドから這い出る。
ミコッテらしく背伸びしていると、部屋の戸が叩かれた。
(ギーシュかな? いやどうせルイズに用のあるワルドかな?)
そんなことを思いながら、耳を隠すようにバンダナを装備する。
「はい、ちょっとまってね」
戸を開けると案の定、頭にはね帽子をかぶったワルド子爵だった。クリンセより頭一つ分でかいので自然と見上げる形となる。だがワルドはあえて見下ろさないようにした。服装の関係で谷間がもろでそれで難癖付けられると思ったからである。
「おはよう、使い魔君」
「おはよう、ルイズはまだ寝てるけど、起こす?」
「いいや、まだいいんだ。まずは君に用があるんだ『ガンダールヴ』君」
「は?」
クリンセは頭をかしげた。バンダナの中で耳もピコピコと動いているが、バンダナでそれは見えていない。
オスマンあたりが口を滑らせたか、などと考えながらワルドを見つめると、どこかワルドはバツが悪そうに言い訳のようなことを言い始めた。
「いや、その、僕は歴史と兵に興味があってね、フーケの一件で彼女を捕まえた君のことを彼女自身の口からきいたのさそうしてそこから探った結果、ガンダールヴに行きついたんだ」
「ああ、なるほど」
フーケはロングビルだったのだ。つまるところオスマンあたりから先にガンダールヴの情報を聞いていても不思議ではない。
「それで、僕としては、そのガンダールヴの力にとても興味がある。あの土くれを捕まえるほどの腕を、見せてくれないかい?」
「つまり手合せ?」
「そういうことだ」
ワルドは笑みを浮かべながら杖を引き抜く。
「君もあの剣を持ってきたまえ、介添え人は……ルイズにやってもらおう」
「えっ」
クリンセが驚いたような声を上げて、ワルドは一瞬疑問に思ったがすぐに納得した。
「大丈夫だよ、ルイズも僕の頼みなら手合せをするだけで君を咎めたりしないさ。だから安心して剣を使ってくれ」
「いやルイズの方じゃなくて」
「? ガンダールヴは武器を使うんだろう? 剣がなくてはどうしようもないだろう?」
「あ、はい、ソウデスネ」
ガンダールヴ未満の光の戦士はしぶしぶ剣を持って、ルイズを起こした。
剣を持ったクリンセにルイズがビビって取り乱し、それをワルド子爵に見られてクリンセを抓るなどの悶着があったが、宿にある修練場にやってくることができた。
ルイズは心配そうな目でクリンセを見てきたが、クリンセもなんか表情が苦い。
「ねえ、ワルド。その、剣使わなきゃだめ?」
「ハハ、手加減は不要さ。君の実力を試したいんだ」
「わかったよ」
クリンセが左肩から右の腰に回されたベルトに吊るされたデルフリンガーを右手で引き抜く。長さゆえにこうしないと引き抜けないのだ。
ワルドも杖を抜いて構える。
クリンセが跳んだ。一足でワルドとの距離をゼロにし、切りかかる。
ワルドが杖で剣を受け止めようとするが、杖が軋むのを感じ取って受け止めず受け流す。勢い余ってクリンセは地面に剣を叩きつけた。地面に突き刺さったのも気にせず、近くにあった樽を粉砕しながら横薙ぎに剣を振る。デルが小さい声で「いててててて」と言ってるがクリンセも必死なのでそれどころではない。
横薙ぎの剣を余裕を持って躱すワルドだが、内心舌を巻いていた。
クリンセはクリンセでこれは強い、と確信できるだけのものがあった。
余裕を持って躱さなければ風圧だけで切られてしまいそうな速さがクリンセの剣にはある。だがワルドからしてみればそれだけが脅威だった。まるで剣を棒のように振り回すだけなのだ。そこに技術はなく、あるのは力強さだけだった。
「なるほど、確かに伝説の使い魔というだけはある」
クリンセの突撃を難なく躱す。デルフリンガーという大剣と言っていいそれが竜巻でも伴っているかのように風圧をまき散らす、それを見るルイズにさえ届く風に、ワルドはマントを揺らしながら、柳のようにそれを受け流していく。
「しかし、隙だらけだ、力任せの素人、それではルイズを守れない」
クリンセの突きに合わせて杖の一撃を叩きこもうとするが、それはクリンセの左手で弾かれた。その動きにワルドは違和感を覚えながらも、試合を終わらせるべくクリンセに畳みかける。
ワルドが攻撃に転じた。レイピアのような刺突がクリンセを襲う。攻撃の際には高い威力を発揮するリーチの長さも、接近され責められる状況では分が悪い。デルフリンガーで防げたのはたかが数回、あとは体を捻って躱すか手甲で弾くかしかできなかった。
「デル・イル・ソル・ラ……」
突きを繰り出しながら何かをつぶやきだした途端、クリンセの視界が横薙ぎの範囲攻撃の前兆を知らせる。
「相棒!!」
デルフリンガーも呪文に気付き警告しようとしたが、それよりも早くクリンセが大地を蹴って距離を取った。
先ほどまでクリンセが居た場所を鼻先掠めて空気の塊が通過した。クリンセが居た場所の近くにあった樽が突然潰れたようにばらばらになる。
「躱したか、すごい……な?」
クリンセの付けていたバンダナがずり落ち、そこにあるミコッテ耳を見た瞬間、ワルドの目が冷たく、鋭い物に一瞬変わった。
クリンセがバンダナがおちたのに気付いて頭に手を当てる。ワルドが再び詠唱を開始するのにクリンセが気付いて突進するが、ワルドの呪文が先に完成した。
「あぶねえ! 相棒!」
「『ライトニング・クラウド』」
ワルドの周囲から生まれた電撃がクリンセに殺到した。とっさにデルフリンガーで防ごうとしたが、電気故に貫通して体をしびれさせる。クリンセでなければ剣を持った右腕から大やけどをしていたことだろう。
痺れで足がもつれ、ワルドの前に転がって止まったクリンセに、ワルドが杖を突きつけた。その表情は元の自信ありげな微笑に戻っていた。
「勝負あり、だ」
「はいはい、私の負けだよ」
クリンセが剣を手放して降参の意を示した。これ以上となると本気で殺し合いになりかねないからだ。
ルイズが恐る恐ると言った調子で近づいてきた。
「ク、クリンセ? 大丈夫?」
ルイズが心配そうな声を出す。どう見ても電撃が直撃していたからだ。
「なんてことを!!」
ルイズがワルドに声を荒げた。それにはワルドも驚いたようで、少ししんみりとした声で、諭すような口調で喋り出した。
「すまない、魔法衛士隊をやっているとどうしても獣人やエルフの相手をしなければならないこともある、だからその、耳を見てとっさにやってしまったんだ。でもわかっただろうルイズ、彼女では君を守りきれない」
「そんなことは無い、クリンセは」
「君はアルビオンに行って強力な敵に囲まれたら、今みたいな状況になったら私たちは弱いです、だから杖を収めてくださいとでも言うつもりかい?」
地面に膝をついて両手を上げているクリンセを見る、電気のせいか髪の毛が逆立っているのと鞘を止めるベルトが焦げているくらいで何ともなさそうだが、ルイズは何も言えず黙ってしまった。
クリンセに頼らないようにしなくては、という思いがルイズの中には今もあった。
「行こう、ルイズ」
名残惜しげにルイズはクリンセを見ながら、ワルドに手を引かれて去って行った。
「いやあ、負けちまったな」
「まあそういうこともあるよ」
「おっ思ったより軽いな。どうしてだ?」
クリンセがデルフリンガーを鞘に仕舞いきらないように差して、大きく背伸びをした。電気の痺れも取れてきた。
「いや、あのワルドの行動がどう見ても好きな子にいいとこ見せたい男みたいな感じがしてね、あとデルフの使い方の練習にもなったし」
「おいおい、あの下手すりゃスクウェアクラスの使い手を練習台扱いかよ」
デルフリンガーは見ていないので知らないが、クリンセはパンチで岩のゴーレムを真っ向から破壊したりしている。今回はその筋力をそのままに剣を振り回しつつ、効率のいい振り回し方を模索したのである。
「なんとなくコツがつかめてきたような気がするし、しばらく素振りでもやってようかな?」
「いいぜ、付き合ってやろうじゃねえか相棒。……ただあんまり地面に叩きつけるのはやめてくれ」
「無理」
なにぃ!? と言いながらデルフリンガーとクリンセは二人、笑いながら素振りを始めるのだった。
その様子をギーシュが目撃してさしものギーシュでさえ真顔になるのだった。
ワルド子爵
クリンセの中で、ストーカーから、好きな子のためかっこつける男に評価がランクアップした。