ゼロのヒカセン   作:MKeepr

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そろそろID風のサブタイトルネタが怪しくなってきた。


五話

 ルイズがクリンセの腹を殴り、逆に手首を痛めて更にキレる事態をどうにか頬を抓られることで打開し、昼と朝の丁度中間、おはようと言うかこんにちはというか地味に悩む時間に、広場へとやってきた。

 この広場―――正式にはヴェストリの広場と呼ぶらしいには、既に結構な生徒が使い魔と共に集まって円を作っている。生徒たちで構成されたコロッセオの中心にいるのは例のギーシュである。

 クリンセがルイズと共にやってくると生徒たちが割れ、入場するような形でギーシュと対面する。

 だが、その間に入るのはルイズである。

 

「ギーシュ、止めて! 決闘は禁止されているでしょう!?」

 

 クリンセを庇うように立つルイズだが、クリンセの方が背が高く、どこか情けない構図になってしまうのは御愛嬌である。

 

「ルイズ、貴族同士の決闘は禁止だが、この獣はその名の通り獣人だ。決闘を禁止する理由なんてない」

 

 ギーシュの『獣人』という言葉に反応するのは周囲の生徒たちだ。

 

―――そういえばあの尻尾は、

―――あの長い瞳孔は、

―――ゼロが余計なものを呼んだ、

 

 小さく囁き声のような物に、獣人はエルフと並ぶ恐怖の対象故に、小さな敵意がそれを召喚した『ゼロ』にも向き、それにはルイズはたじろいだ。

 

「それでも、私の使い魔の粗相なら私が謝れば済む話でしょう!?」

 

 ギーシュはやれやれ、と憐れみを込めた目でルイズを見つめる。

 

「あのプライドの塊のようなルイズが、そんなことを言うなんてね、実は獣人に操られてるんじゃないか?」

 

「そんなわけない!!」

 

 自身の心を、自身の魂を操られたものだと決めつけられること程、ルイズにとっての侮辱は無かった。あまりにもの悔しさに涙腺にゆるみが生じるほどだ。

 

 

 ふと、ざわめきが停まった。

 生徒の誰もが口を噤み、まるで時間が停止したかのような一瞬。

 

 頭に被っていた帽子を取りルイズの頭へ被せる。クリンセの耳を隠せるような大きめの帽子ゆえ、ルイズには大きすぎ、目元を隠してしまうほど深くかぶさった。

 その頭に生えるのはネコ科を思わせる耳。よく見れば、細かな装飾の施された耳飾りを付けている。

 ルイズが帽子を慌ててつばを掴んで持ち上げれば、いつの間にかルイズの前にクリンセが立っていた。

 

「一つ、確認していいかな。決闘、ってことだけど、ルールは?」

 

 声色は極めて穏やかだ。だが、誰だってわかる。

 

―――怒っている。

 

 ギーシュを見つめる目は細められ、尻尾は山を描くような形ですこし毛が逆立ち太くなっている。

 それにギーシュは気づかない。気分は既に蛮族獣人から公爵の姫君を救い出す勇者のそれである。

 

「ルールはシンプルだ。君が倒れて僕の勝ち……いや、それでは不公平だな、せめて僕を気絶させるか、まいった、と言わせれば君の勝ちにしてあげるよ」

 

「じゃあ、勝ったらルイズに謝ってね?」

 

「ああ、いくらでもあやまってやるとも」

 

 クリンセが拳を握り込むのを見て、ギーシュが嘲笑する。

 

「貴族相手に素手で挑むなんて、獣人は無知なのかい?」

 

 それを聞いてクリンセは逆に笑う。

 

「そうだね、思いっきり殴ったら死んじゃいそうだから、手加減してあげるよ」

 

「嘗めないでくれたまえ、戦うのは僕じゃない」

 

 そう言葉を切り、手にバラの花を持つ。それが振られれば、花弁が舞い散り、青みを帯びた緑金属が浮き出る。

 

「クリンセっそれは―――きゃっ」

 

 何かを言おうとしたルイズを手で制して後ろに押しやる。万一巻き込まれれば危険だ。

 

(色からして、ハイミスライト)

 

 この色合いの金属にはクリンセも覚えがある。職人の作る最上級の防具の材料にもなるハイミスライトだ。

 それが見る見るうちに形を変え甲冑を着込んだ女騎士のような形に変化する。手には槍を、

 

「君が戦うのは美しきゴーレム、ワルキューレ」

 

―――よもや不公平などというまい?

 

 勝ち誇った瞳はそう語っていた。

 

「別に、これくらい慣れてるよ」

 

 クリンセが直立の姿勢から両足を広げ右手を引き絞り左腕を前気味に突き出す。

 この場でやけくそで取った構えではなく、言い知れぬ凄味を感じさせた。

 

「ッッ! やれ! ワルキューレ!!」

 

 ワルキューレが走り出す。その様を見ながら思い浮かぶのは、以前倒した白魔法で動く女神の石像。アレ相手にクリンセの拳は貫通しなかった。ハイミスライトの甲冑ゴーレム相手にどの程度通じるかわからないがその頃よりは強くなっている自信はある。

 突撃するワルキューレ相手に反撃の姿勢を見せるクリンセにギーシュが憐れみを込めた目で見つめる。

 

「素手で殴る気かい!? なんて馬鹿な真似を―――」

 

 だがそれは、結果によって驚愕へと変化した。

 拳が、ワルキューレの胴体をすり抜けるように貫通したのだ。これに驚いたのはクリンセ自身である。目の前の金属の強度が、ハイミスライトに比べて異常に低いのである。良くてミスリル、言い方は悪いが、銅を頑丈にした程度の強度に感じた。

 

「クリンセ!!」

 

 ルイズが叫ぶ。胴を貫かれたワルキューレはまだ動く。クリンセの右腕が突き刺さったまま、手にもった槍を突き立ててくる。その槍が、左手の籠手に弾かれ、鋭利な先端がまるで粘土か何かのように歪んだ。

 その隙にさらに盾でクリンセの頭を殴りつける。

 腕が引き抜けクリンセは吹き飛びながら、意識が暗転した。

 

―――そこは、見慣れたクリンセの深層意識にあるクリスタルと魔方陣。今はぶつかり合う謎の文字のせいでド派手だが、その文字のうちの一つが、ゆっくりと魔方陣の外側に降り、魔方陣と同調する様が見て取れた。

 

 意識が覚醒する。吹き飛んで居たところをすぐさま立ち上がる。

 距離を離した内にいつの間にやらワルキューレが増えている。だが、もうそれはクリンセにはただの障害物にしか見えなかった。

 拳の威力が高すぎる故に貫通して意味をなさないなら、横に薙ぎ払えばいい。

 盾を持ったワルキューレがクリンセに迫り視界を塞ぎ、その左右から槍と剣が突き出される。

 高度な連携、盾で視界を塞がれたことで反応が遅れ、槍の先端が肩に突き立つが、ただの布相手に刺さることはない。

 かつてニーズヘッグの牙さえ防いだこの服を、銅の槍で突き抜ける道理はない。

 飛び上がりながら一撃、蹴りを叩きこむと、盾ごとワルキューレの上半身を吹き飛ばし、次ぐ横薙ぎの蹴りでその後ろに控えていたワルキューレさえも砕き伏せた。

 今、ギーシュの前に盾となるワルキューレは居ない。

 そして、なんだか体が滾る。具体的に言えばダンジョンでリミットブレイクと呼ばれる技を使う時のような感覚だ。だがあんな蛮神をぶった切り竜の鱗を切り刻み妖魔の体をぶち抜くようなことをすればギーシュは死ぬだろう。

 あくまで彼に勝つためには気絶か、まいったを言わせなければいけない。

 だが、今ならあのリミットブレイクができる気がする!!

 莫大な破壊力を持ちながらも相手を絶対に殺すことのないあの技を!!

 ギーシュが新たにワルキューレを生み出そうとしているが、遅い!

 

「クリンセェェェェェェエ・メテオドライヴゥゥ!!」

 

 衝撃的な加速で生成途中のワルキューレを突き破りギーシュの背後に回ると、ギーシュの腰へ抱き着いた。

 

「な、何を!?」

 

 腰に柔らかな感触が当たり一瞬我を失ったギーシュだがすぐに復帰する。

 だがもう遅い。

 ギーシュの足が持ち上がり、そのままギーシュを抱えブリッジを行うように地面に向けぶち当てる!

 

 大きな土煙が上がり、コロセウムを形成していた生徒から悲鳴が上がる。

 煙が晴れると、上半身が地面に埋まったギーシュと勝利の舞をするクリンセの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 




クリンセ
 この世で一番恐ろしいのはジュリアンさん

ギーシュ
 二次創作で実験台にされる可哀そうな人。

ルイズ
実は美しいけど別に神聖でも強くもなさそうなの召喚したと思ってた。
 
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