感想を貰えて、僕はまだやれる!! となりましたガンバリマス。
「……やったね」
「やったねじゃない!!」
ルイズが切れ長のネコミミを引っ張って泣きそうな顔になるクリンセ。殴ろうものなら外聞が悪いし、逆にこちらが怪我をする。だがこれならクリンセにも効くと気付いたルイズである。
その様子をいい笑顔で眺めているのはこの学院で一番偉い人。オールド・オスマンである。そのいい笑顔は耳を引っ張られて痛がり、抵抗して揺れるクリンセの胸元に注がれている。それを絶対零度の目線で見るのは普段からセクハラまがいというよりド直球セクハラをされているミス・ロングビル。
一番教師っぽいのはその様子にため息をついて制止しようとするコルベールである。頭の毛の薄さは伊達ではない。
ようやく収まったルイズから隠れるようにロングビルの後ろに隠れてみるクリンセである。おい学院長顔の向きがルイズに向いてるのに目線がロングビルとクリンセの胸に向いてるぞ。
「落ち着きんさい、今回、お主は規則を破っておらぬ。それはグラモンが言っていたことじゃろう?」
「けれど……」
「学院に甚大な損害が出たわけでもあるまい? 今回は、たかが広場に人一人分の穴が開いただけじゃ」
それを聞いたルイズが少しむくれた雰囲気を醸し出す。
貴族としてのプライド故か自己の失態に食い下がってしまうルイズに、オスマンはうまいこと別方向の誘導をかけた。
言外に『普段の損害が甚大だし別に穴程度イイよ』という事である。たとえばクリンセを召喚した場所は芝生がめくれ上がるわクレーターができるわの甚大な被害である。
そもそも、こんなことで罰をやろうものなら、学院とヴァリエール家とで大喧嘩になる危険もある。トリステイン最高クラスの家柄に血筋の公爵家、ヴァリエール家の三女に対して『ゼロ』なんてあだ名をつけて嘲る行為自体、トリステインの貴族同士の大事件発生不可避の行為である。そしてそれを放置していたのは学院だ。
ルイズが違う意味で『正直』だったならば今頃学院は大変なことになっているだろう。ルイズが貴族らしくあれ、この程度のことで、と耐え忍んできた故に問題となっていないだけで、一部の学生貴族は自分が遊びで蹴っているのが巨大な竜の尻尾の様なものと気付いていない。
「……では、なぜ私たちが呼び出されたんですか?」
「そこのおっぱ……君の使い魔についてでじゃよ」
ルイズがロングビルの方を見ると、いつの間にかくっついていたはずのクリンセが居ない。
いつの間にか学院長室の調度品をもの珍しげに見て回っていた。
「……クリンセ」
小さくつぶやいただけでクリンセがビクリとしてルイズの脇にやってきた。刷り込み効果とは恐ろしい物である。
コルベールが神妙な顔で眼鏡の位置を調整し、ルイズを見据える。よく見ると目の下にクマができかけていた。
主にオスマンによってルーンを徹夜で調べる羽目になったからである。
おかげでクリンセの馬鹿げたパワーもオスマンと共に無理やりながら納得できたのだが、それはまた別の話。
「ミス・ヴァリエール。あなたの召喚したのは、獣人です。あと鳥が居ますが、ルーンが彼女に刻まれていることからも、彼女が使い魔という事は間違いないでしょう。突然の事態と混乱であの場では見送られてしまいましたが」
「???」
脇のクリンセが頭上にクエスチョンマークでも浮かべたような姿勢を取っているので脇で小突く。
「獣人は、エルフと並んで恐怖の対象です。そしてそれを召喚してしまった以上、東の地でなにか諍いが発生する可能性も十二分に考えられます」
現状、東の地で表だって敵対しているのは、エルフである。強力な先住魔法で恐怖の対象となるほどのそれと並んで存在しているのが獣人だ。
もし今回のことを原因として、争いの火種が芽吹くのでは、とコルベールは危惧しているのだ。
「あー、ねえ、一つだけみんな誤解してる気がするんだけど」
「なによクリンセ。実は男だとか?」
「その揺れる果実で男は無いじゃろう」
「オールド・オスマン?」
男という単語に反応してオスマンが反射的に口走るが、その理論だとミス・ヴァリエールは男に分類されるのではないだろうか、とコルベールは一瞬思い頭を振ってその考えを消した。
「私、獣人じゃなくてミコッテだよ」
一同がハテナを浮かべた。ミコッテだと一応聞いているルイズだけ微妙に反応が違ったが。
「獣人の、ミコッテっていう部族でしょ?」
「いやいや、ミコッテは人間だよ? 人間五種族の内の一種族で、部族的に言えばムーンキーパーだけど」
ネコ耳なのに人間とはこれいかに、と思う一同だが、クリンセの世界では自分の身長の半分もない成人ララフェルやら自分よりやたらでかい年下ルガディンとか居たりするので、エオルゼアの人間の定義は広い。
「……えーとつまり! 別に獣人関係なんて気にしなくてもイイッ!ってこと!!」
東の地とはまた違う未知の大陸から召喚でもされたのだろうか、クリンセの着る見たことない意匠の服と合わせあたりを付けて納得した一同だった。
「それに、私は半分流浪の冒険者みたいな感じだし、やっぱり未知の大陸とかはわくわくするし! このままルイズの使い魔で構わないよ」
「じゃが、その、みこってとやらでも、生活は人間と変わらんのじゃろう? 使い魔は人間なんて想定しておらんからの、どういう待遇で扱うべきかのう」
ここはあくまで『貴族』の通う魔法学院。いくら人間と言っても身分まで貴族になるわけでは無い故に、例えば朝のように食堂に入れない。みたいな事態も発生しえる。後寝床である。現状メーメーに占拠されている。
だがここに居るのは学院トップクラスに優秀な先生である。問題点の洗い出しと解決案もポンポンと提示されていく。
やれ食事はどうするのか―――料理長の協力を。
やれ寝床はどうするのか―――「ルイズのベッドか床で寝るからいいや」 「ベッドぐらいいいわよ……」
やれ人間としての待遇はどうするのか―――平民の召使いのような扱いでどうか。
さっさと決まっていく事柄に改めて目の前のオスマンの手腕に感心するルイズであった。
クリンセの扱いが決まり、校長室から解放されたルイズとクリンセはおそばせながら授業に参加した。
その授業は土系統の錬金。服を綺麗にしたギーシュもいる。
―――ここで、突然であるが、クリンセの『超える力』の一端を解説する。あらゆる攻撃には、その攻撃を行う存在の意志が介入する。そしてそれは、威力が高いほど大きな意志を持つこととなる。それが、クリンセの超える力の琴線に触れるほどの物だと、その意思が先んじて具現化し、どのような攻撃がどれほどの範囲で来るかをクリンセにわからせてしまうのである。
不意打ちのはずがテレフォンパンチのような隙だらけの攻撃となってしまう、クリンセの強さの一端である。
なぜこんな話を突然したか。
それはクリンセの視界にある。
ミスシュヴルーズに呼ばれ、教室の中央へ移動するルイズ。ルイズが魔法を使うのを始めてみるので楽しみにしていたクリンセであるが、ルイズがルーンと呼ばれる物を唱え出した途端。汗が噴き出た。
教室一杯に、例の、超える力で見える攻撃が来るという予兆と、その範囲が広がっていたのである。
どうなったかは言うまでもない。
クリンセ ルイズを中心にモータルレイでも起きるのかと変な汗が出る。
ルイズ 召喚ができたので行けると思ったが行けなかった。
オールド・オスマン 胸に目がいく 眼球が新たな胸をロックオン状態。