Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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Q.更新遅れすぎじゃね?
A.スパロボやってた

最新作発表おめでとうございます。
Gガン参戦にテンション上がってます。
ガオガイガーやマイトガインと共演で既にうるさいです。


第一節『月の長い夜』

 

 

 ピアノが歌を紡いでいた。

 音の一つひとつが巧妙に重なり合い、絶世の調べを生む。

 音楽を嗜む者であれば、感動に涙を流すだろう。

 そして、その音に込められた想いがわかる芸術の徒であれば、恐怖のあまり口もきけなくなろう。

 たった一つの執着で以て唄われる曲は、恐ろしく純粋だった。

 尤も――その芸術を解せるほど音楽に精通した者は、この場にいないのだが。

「……それで? 旦那、そろそろ教えてくれんだろ? オレらを呼んだ理由」

 外から入ってくる光のみが照らす部屋で、フードの男が軽い調子で問う。

「ここに来てもう何日か……そろそろ散策も飽きたんですがね?」

「だろうな。とはいっても、話は簡単さ。この夜を明かそうとする連中を一人残らず殺す――それだけだ」

 答えたのは、その部屋の奥――窓際に置かれた高価な椅子に深く座った男。

 室内だというのに黒いソフト・ハットを深く被り、顔色は伺えない。

 葉巻を吹かし片手で銃を弄りながら、問いを投げた男に笑みを向けた。

「へえ。制約は?」

「この部屋にいる者たちを互いに殺さないこと。それ以外はなんでもありだ。あるものは何でも使って構わねえ。テメェらが協力するしないも自由だ」

 室内にいる者たちを見渡し、そう返す。

「それなら重畳。オレは協力なんてタマじゃねえからな。好き勝手やらせてもらうぜ」

「そうかい。アンタらはどうだ?」

「……私は、皆様に合わせようかと。必要な話があれば、どうぞお申しつけを。私には……それしか出来ないので」

 この場唯一の女が、その身を委縮させ、震えながら答える。

 ハットの男にではない。どうやら彼女は、男の持つ銃に対し恐怖しているらしい。

 別に怖がらせるつもりはなかったのだが……と、それに気付いた男は肩を竦めて銃を置いた。

「オレも独断で動かせてもらおう。どうやら彼女以外、この場には協調を必要とする者はいないらしい。オレは不器用でな。慣れぬ共闘を行っても邪魔なだけだろう」

 そしてまた一人。

 この場で誰よりも強い存在感を放つ男が、どこまでも実直に言った。

 その尖った物言いに眉根を寄せるフードの男。

 だが当の本人は気付いた様子もなく、心からの本音を訂正することもまたなかった。

「アンタも、それでいいよな?」

 ハットの男は先ほどからピアノを弾き続ける者に問いかけた。

 肌の一片も見せない、仮面の男は首を僅かに向けることもなく、旋律を奏でたまま、言う。

「……我は、貴様の方針に従おう。死に対する覚悟で以て、命ずるがいい」

 如何なる思いも籠っていない言葉だった。

 彼の心の全ては、今目の前のピアノに向けられている。

 憎悪、憎悪、憎悪、憎悪、憎悪――

 力強く、もの悲しく、愛おしく。

 矛盾する多くの思いが綯交ぜになった音は、彼の全てと言えた。

「……だが、たった一人。奴がもし、現界し我の前に現れたならば――我は何より、奴を優先させてもらう」

「そいつが契約だからな。構わねえよ」

 彼が執着するたった一つ。

 存在意義と言っても過言ではないそれに、ハットの男は許可を出す。

「あぁ……神に愛された男(ゴットリープ)、我は今度こそ、貴様を殺せるのか。貴様の全てを奪えるのか。貴様が我の前に現れた時、その時こそ、貴様を殺してやろう。今度こそ――今度こそ」

 圧倒的な憎しみが、零れ出した言の葉に乗っていた。

 ハットの男でさえ、軽く身震いした。

 フードの男が頬を引き攣らせながら、しかし調子を崩さず言った。

「おーおー……アヴェンジャーってのは恐ろしいねぇ……」

「アヴェンジャーといえば……あとお二方、召喚を確認したとのことですが……」

「いや、アイツらは駄目だ。一人はどこにいるか知れたモンでもねえし、もう一人はよりによってあの嬢ちゃんに引き抜かれたからな」

「あー……そりゃ無理っすわ。弱っちろいって分かってんのに、なんでか勝てる気がしねえ。アンタ――っつーか、スポンサー? の目的より、オレはあの嬢ちゃんのが気になるぜ」

 彼らは思いだす。あまりにこの夜に似付かわしくない少女のことを。

 この中では正面きっての戦闘能力は大したことがないと自認しているフードの男も、戦えば百に一度の負けもないと言い切れる。

 だが、それでも勝てない。

 というよりも――そもそも勝負にならない。そんな確信があった。

「まあ、あの嬢ちゃんはオレたちの敵じゃあない。何かしだすまでは、放っておいていいさ」

「そうかい。ならまあ、オレはその敵さんに集中しますかね」

 不敵に笑い、フードの男は部屋のドアに手をかける。

 それを戦いの始まりだと悟り、ハットの男は窓の外を見た。

 窓がまばらに光を灯す摩天楼。

 そこに巣食う(ヴィラン)たちは、知らない。

「――――」

 部屋の暗がりでソファに腰掛ける“スポンサー”の目的。

 存在を確立できない不安定な霊基を、その存在意義に注力することでどうにか維持する脆弱なサーヴァント。

 そのあまりにも儚い、吹けば飛ぶほどの妄執を。

 それが齎す絶対的な災厄をも度外視した、最後の願望を。

 

 

 +

 

 

 至高の天才。ムーンセルにもその智を刻まれた一世紀前の頭脳の怪物。

 情報に満ちた現代の世界の基礎を形作ったと言っても過言ではない、紛れもない英雄。

 星の開拓者――ジョン・フォン・ノイマン。

 それが、ムーンセルの一AIを器に現界した。

 しかも――

「……月に、挑戦?」

「そうだ。この月に特異点を発生させた。それを以て、このムーンセルへの挑戦としたい」

「……ふざけているの? さっさと元に戻しなさい」

 月を侵す者を名乗るトワイスに、メルトは怒りを隠さない。

 AIであれば、メルトの命令に拒否権を持たない。

 だが、トワイスはどこ吹く風。

 より眉根を寄せつつ、メルトはAI回収、そしてサーヴァント回収のコマンドを打ち込むも、それさえ効かない。

 器はAI・トワイスのものだが、その霊基はこれまでの特異点に召喚された敵サーヴァントと同じということか。

「残念だが、君たちの答えは聞いていない。私が挑戦するのはあくまで月。管理者はその一端に過ぎないからね」

「……挑戦とは? 生憎、今は月の機能全てを使って解決している事件がある。特異点を発生させた手段は今は問わない。どうか、今は止めてほしい」

 トワイスは一瞬の思案の後、答える。

「――そうか。確かにこれは過去現在未来、全てを観測しうる月が必要な事案だ。しかし、ゆえにこそ私が選んだ舞台とも言える」

「……なんだって?」

「それでは、君たちのやる気を奮起させてもらおう。そうだな……」

 まるで自分が、此方をその気にさせるような手札を多く持っているかのように、次の思考には時間を要した。

 そして――

「――では、これでどうかな。この事件の黒幕と、その秘密について」

「なっ……」

 僕だけではない。メルトもまた、瞠目した。

 突如として現れた彼が、この事件の核心を知っている、と。

 さも当然のように言ってのけたトワイスは、その手札で此方が勝負に乗ると確信しているように、手を動かして画面を表示させる。

 そして、その画面を僕たちの前に移動させた。

「……セラフ内の、地図」

「この、穴……」

 セラフ全域の縮図。

 その中枢、熾天の檻(アンジェリカ・ケージ)と呼称する部分に空いた、大きな穴。

 それは上空の太陽から広がる罅が集束している部分であり、そこから先の観測が不可能となっている。

「月の裏側に繋がっている」

「ッ――」

 月の裏側。この月を僕たちが管理するようになってから今回の事件が起きるまでの、最大の事件の舞台となった場所。

 ムーンセルに不要とされた悪性情報を保管する廃棄場。

 あの事件によって消滅したものの、その後修復され、一部を除いてこれまでと同じように使用されている空間。

 以前との違いは、全域の観測自体は可能となっていたことだが、それも今は不可能な状態だ。

「その中に、私は聖杯を埋め込んだ。現在この月全体が特異点と化しているが、その内部に悪性が集約している。それを解決できるか否かを勝負としたい」

 少なくとも、彼には特異点を作り出す力がある。

 この事件に最初から関わっていたのか、この事件を知ってから便乗したのか、それはわからない。

 だが、変えようのない事実として、この特異点を解決しなければその他の観測を保証できない、ということ。

 月を不完全なままにする訳にはいかない。

 どの道これは、解決しなければならない案件だ。

「……やろう、メルト。月をこのままにしておく訳にもいかない」

「……癪だけど、その通りね」

「承諾、感謝する。では待っているよ。まずはあの先の(ヴィラン)との戦いを、じっくりと拝見させてもらおう」

 表情を変えず、一つ頷くとトワイスは転移する。

「……何がなんだか、だけど。最優先は決まったってことかしら?」

 一緒に来ていたミコがそう結論付けると、メルトが彼女を睨む。

「睨まれても、付いていくわよ。私にも詫びたい気持ちはあるんだから」

 前の特異点での、アーチャーの行為。

 それをメルトは心底気にしているようだが、その申し出はありがたい。

 彼を信頼しきれない、というのは問題だが……裏切りがないことを前提とするならば、手札を多く持つ彼は大きな力となるだろう。

「此方に危害を加えない、というのはアーチャーに約束させてほしい」

「了解よ。補填はお願いね」

 一画では足りないと判断したのか、ミコは二画の令呪を用いてアーチャーに拘束を与えた。

 裏切りの防止。また、茨木童子との戦いのような、此方を巻き込む戦法の封印。

 彼自身は姿を現さないものの、令呪は確かに発動した。

「……まあ、これっきりというなら。それよりハク、まさかマスター二人、サーヴァント二人でって訳でもないんでしょ?」

「ああ。ちょうど各マスターが帰還している。何人かに同行してもらい、後のマスターはセラフで待機。有事の際に備えてもらう」

 何かの拍子に表側に影響が及ぶ、という可能性はゼロではない。

 その際のためにも、全員で向かうという選択は避けた方がいいだろう。

 ちょうど現在、特異点に赴いているマスターはいない。事件の解決に臨んでくれているマスターたちは全員月にいる状態だ。

 故にこそ、最大の備えで赴く。この月を守るために。

 

 

 +

 

 

 管理者が去った後の、ダヴィンチの工房。

 そこの主は月に異変が起きたことを感知しつつも、外に飛び出すことはなかった。

 自分が請け負った仕事を呑気にこなしている場合ではないことは百も承知だ。

 これは悪戯好きのAI共がノリで起こす事件とは一線を画している。

 月全域が“何か”に巻き込まれたという、大事件に属するものだ。

 これによって何が起きるか。それを調べるより先に、工房の主――ダヴィンチはやるべきことを手早くこなしていた。

「よし。ひとまず聖杯たちの保護は完了。後は私はこの工房を守ればいいだけ、だけど……」

 こんな事もあろうかと、用意していた聖杯の保護機構を一揃え起動し終える。

 自立とダヴィンチ自身の管理を自由に切り替えられるそれらは、たとえA級サーヴァントが襲ってこようとも異変を嗅ぎ付けた管理者なり何なり、戦える連中が誰かしら来るまでの時間は十分稼げるものだった。

 解体を命じられた以上、それを完遂するのがダヴィンチの矜持だ。

 盗まれる、壊されるといった外部からの干渉など、決して許容できるものではない。

 今用意できる限りの備えを動かし、後は精々自分が砦の一つとして立つだけ――ではあるのだが、果たしてそんな風にここに居座っていられる状況か。

「んー。白斗と今のマスターたちだけじゃ厳しいかもねー、これ」

「そう言いつつ寛いでいられる胆力は流石、というべきかな。最早キミにとってはどうでもいいことなんだろうけどさ」

 いつもよりほんの少し真面目に、自分を切り替えたダヴィンチは、いつの間にか工房に入り込んでスナック菓子を齧っているカグヤに呆れの言葉を返す。

 月の前管理者として、時々目覚めては月をしっちゃかめっちゃかに引っ掻き回していく台風の如きサーヴァントは、特に焦りを見せた様子はない。

 彼女が突然、当たり前のようにここに出現したことはもう突っ込まない。前々回の目覚めの際に懲りたのだ。

「それで? キミはこの件、何かわかってるのかい?」

「どうだろ? どうも今回は記憶が曖昧なんだよねぇ。誰かに記憶の操作とかされてたりして」

 ――曖昧なのはいつもの話だろう、とはあえて言わないダヴィンチは、それでも何か情報を聞き出せないかと粘る。

「この聖杯、特異点、冠位のクラス、カルキ。何かしらあるんじゃないか? この中で知っている情報」

 ひとまず、今重要であると判断する四つを提示する。

 聖杯については構成要素が分かった今、解体までにそう時間は掛からない。

 だが、誰が何のためにこのようなモノを作ったのかは未だに謎だ。

 これらの全部わかれば御の字、出来れば一つでも、何か情報が得られないかと期待するダヴィンチ。

「……カルキ?」

 対するカグヤは、最後の単語に僅か眉根を寄せた。

 ――ビンゴ、と確かな手応えを感じつつ、内心呟く。

 何を知っていて、何を覚えていて、何を忘れているのか、問い詰めることすら愚かしいカグヤが、確かな反応を示した。

 少なくとも、カグヤはカルキについて、明確に何かしらを知っているのだ。

「カルキ……ふーん……」

「何を知ってるんだい?」

「……知っていることはないよ。ただ……うん、黙ってた方がいいか」

「カグヤ」

 月に属する者として、何かを知っているなら黙らせたままにしておく訳にはいかない。

 ダヴィンチは語調を強めカグヤに迫るが、カグヤは何処吹く風。

「大丈夫大丈夫。そろそろアイツもボロ出すでしょ」

 答える気はないらしい。ダヴィンチの権限では、カグヤに吐かせることは出来ない。

 仕方ないと嘆息し、結局は役に立たないと断じる。

「いやー、相変わらずカグヤちゃんは秘密主義ですねぇ。ウチの穀潰しみたいです」

「私はその分、明かしているのだがね。それに私自身が秘密を抱えているということはないと断言しておこう」

「……で、キミらは何処から湧いて出たんだい……?」

 自身に悟らせずして工房に入り込んだ二人のサーヴァントにダヴィンチは頭痛を覚え、椅子に深く座り込む。

 知り合いらしく「ぃよっすー」なんて軽く挨拶するカグヤを一発引っ叩きたくなるのを抑える。

 もう追及も面倒臭いと、カグヤのスナック菓子を拝借する狐耳と尻尾のサーヴァントと、カレン愛用の椅子に座る痩身のサーヴァントを容認する。

 どうせ暫く居座るだろう、と直感スキルもないのに確信できるダヴィンチは、とりあえず月の管理者からの指示があるまで、この三人の相手をしておこうと気を入れなおした。

 ――数分後、そこに二名追加されることなど予想できる筈もなかった。




名前不明な面々の参戦です(一部バレバレ)
最初の彼らが敵となりそうですね。
五章は敵が強力な分、味方の戦力もかなり強めとなっております。
まあ上昇幅の差は全然違うんですけどね。苦戦は大事。
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