Fate/Meltout -Epic:Last Twilight- 作:けっぺん
使命感か何か知りませんが、執筆を始めてから四年間、ずっとこの日に更新してるみたいなので死に物狂いで終わらせました。
色々忙しかったです。更新遅れてすみませんでした。
ってか四年も続いてるんですね、これ。
さて、FGOでは遂に、念願のCCCイベントの開催が発表されました。
BBちゃんの実装が確定。そして、メルトやリップも期待が高まります。
彼女たちのために貯め込んでいた素材や種火、聖杯にQP、そして石と呼符。
それら全てをもって挑む戦いが、刻一刻と近付いてきています。
彼女たちの扱いについて、やや不安もありますが、大きな期待をしつつ待つことにします。
――ハクト君がまた出立したと聞いてから、数時間経った。
どうやら、また独断で行動し、ローマへと向かったらしい。
同盟の敵であるラーヴァナの討伐に打って出たとか。
……いい加減、頭にくる。
一体どれだけ独断を積み重ねれば気が済むのか。
あの時とまったく同じではないか。
私たちはサポートだけしていればいい、とでも思っているに違いない。
月のトップに立っているのだから、もう少し指揮能力というか、自分が前に出る癖を治すべきではないか。
そんな苛立ちに熱くなる体。
それをどうにかすべく、手に持った缶の中身を喉に流し込む。
『えっと……どうですか? 指定されたメーカーのものを用意しましたけど……』
「……ん。間違いないわ。地上でこれくらい便利な自販機でもあればいいのに」
『でも意外です。凛さんが缶コーヒーなんて……』
「まあ、そこそこ飲む機会が多かったから。ちゃんとしたのよりこっちの方が飲み慣れてるのよね」
この、必要以上に甘ったるい味は集中しなければならない場ではありがたい。
やや入れすぎな砂糖の甘さは眠気を払い疲れの溜まった頭を回復させる。
西欧財閥を相手にしていた時は何かとお世話になっていた代物だった。
勿論、そんなものが紀元前三世紀のマケドニアにある訳がない。
これはサクラにムーンセルの機能を使って用意してもらったものだ。
食料等の支給品を送れていた以上、こんなことも出来るのではと聞いてみた甲斐があった。
既に地上にないメーカーでも簡単に用意出来るのは、ムーンセル様々といったところだろう。
「マスター、集中したまえ。私は戦闘特化のサーヴァントではない。不測の事態の際に最低限の自衛も出来なければ困る」
「分かってるわよ。でもアンタの不測の事態なんてまずあり得ないでしょ」
「そうでもない。寧ろ、軍師は不測をどう乗り切るかこそ重視される。無論――無いに越したことはないのだがね」
用意した遠見の術式を眺めながら、相も変わらず不機嫌そうな表情のキャスター。
サーヴァントではあるが、このキャスターは戦闘に向いてはいない。
ある程度魔術での迎撃は出来るものの、その真骨頂は指揮にある。
自軍と敵軍の位置、戦力を把握し、最適解を見出す能力は、流石諸葛孔明と言えるか。
「しかし……厄介なものが攻めてきたものだな」
「ええ。これもラーヴァナの作戦でしょうね」
「まったく、まさか手駒にあんなものを用意しているとはな」
ハクト君出立の知らせを聞いてすぐ、入れ替わるようにこのバビロンに大軍が攻めてきた。
軍の指揮をしているのは、ラーヴァナではない。
そして、その軍は人で構成されたものではない。
骨だった。
人の形を成しているだけの骨の兵は、秩序なく雪崩れ込んでくる。
それらを映す複数の術式のうち、キャスターが注目したのは敵の首領と見られる者の姿。
「……三メートル以上はない?」
「あるだろう。まあ……人類史の中にはそんな大男が一人や二人いるだろうさ」
「流石にいないでしょあんなの……ラーヴァナが召喚した羅刹かなんかじゃ……」
「いいや。君はあの征服王が矮躯として伝えられていた理由を知っているかね?」
――確かに、私たちの生きる時代においては、征服王イスカンダルは小男であると伝えられている。
ペルシャ王ダレイオス三世の玉座に座った際、そのサイズが遥かに大きかったとかで……。
「……え?」
「英霊に昇華された彼ならば、この時代を攻める手駒としては最適だろう。かの暴風王――ダレイオス三世ならばな」
征服王イスカンダルの宿敵として生涯立ちはだかった勇猛なる王。
強大なるマケドニアに決して降伏することなく、幾度と戦を重ねた好敵手。
……ラーヴァナはなんと、悪辣なことか。
そのダレイオス三世をまさかバーサーカーで召喚するなどと。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――――!!』
術式を超えて私たちの立つ空間までもを震わせたと誤解させる、雄々しき咆哮。
黒い肉体の隅々にまで刻まれた白い刺青という姿は、人というより怪物だった。
三メートルを超える姿相応の豪快さと不相応の機敏さを両立させる巨人は荒々しく立ち回り、対処する兵士を軽く吹き飛ばす。
二本の戦斧は火を噴き、それを振るう両腕は暴風の如く。
「……典型的なバーサーカーね。それでいて宝具がこんなに対処しにくいんだから質が悪いわ」
「『
一体一体の能力は、人である兵士にも数段劣る。
だが、その耐久性は凄まじい。
砕いても砕いても、その場で次が現れる。
後年に伝えられたペルシャ軍の不死性が、あの宝具を昇華させているのだ。
「それで、こんなのでいいの? あんな軍勢に持久戦なんて、こっちが不利なのは目に見えてるけど」
「ああ、これでいい。あの骸骨兵共には意思はない。司令塔であるダレイオス三世は狂化している始末。此方も三国からなる別の思想を持つ同盟ではあるが、統率されていない雑兵など相手ではないさ」
戦場を俯瞰し、各所の将軍に声を伝えて指示を出すキャスター。
本来、このマケドニア軍においては新入りであるキャスターが、全体の指揮を執るということは考えられない。
そんな先入観を破り、ここで最重要ともいえる役目を任されているのは、ひとえにキャスターの能力がためだ。
しかし……凄まじいにも程がある。
大軍師諸葛孔明とは言え、主体となっているマケドニア軍をまるで「昔から見知っていた」かのように操っている。
ローマ軍やエジプト軍の把握には多少時間を掛けていたようなところが、ごく僅かに見えた彼の人間性と言えるだろうか。
「加えて、正面を守るのはあのレオニダスだ。ここまで攻め込まれる事はないだろうさ」
「それで、ダレイオス三世を倒すのは――」
「決まっている。あの王は、元よりそういう性格なのさ」
……軍勢が主体である戦いの筈なのに、本末転倒というかなんというか。
その型に嵌らない奔放さが、彼を英霊にまで押し上げたのかもしれない。
『――――AAAALaLaLaLaLaieッ!』
『――――イスカンダルゥゥゥウウウウウウウウウウッ!!』
轟雷を伴った戦車と、骸骨兵の山が形作る巨大な戦象がぶつかり合う。
体躯では遥かに劣っていると言えど、たったそれだけの理由で押し負ける征服王ではない。
その膂力はダレイオス三世と打ち合うに値する。
『ハハハハハッ! 貴様との真っ向きっての果たし合いとはな! 血が熱くなるのう!』
『■■■■■■■■■■■■――――!』
派手に、豪快に、周囲の骸骨兵を巻き込みながら二つの塊は幾度と激突する。
少し、術式を離した方がいいかもしれない。このままだと遠からず、あの戦渦に沈んでしまうだろう。
術式の操作をする。
――やはり、気になる。
今の、確信を持ったような言い分。
軍の特性だけでなく、このサーヴァントは征服王の性質をも完全に理解しているような気がした。
「キャスター。貴方、あの征服王の事知ってるの? いつかサーヴァントとして出会ってたとか……」
「……そう、だな」
いつか、私たちが経験した聖杯戦争のように。
英霊がサーヴァントとして使役された事例は幾度かあるだろう。
ハクト君が知っている様子が無かったことから、彼の管理下においてはないとしても、それ以前における可能性はゼロではない。
とは言え……次の召喚にサーヴァントが記憶を引き継ぐなど、あり得るのだろうか。
その辺りを知っているだろう月の管理者は、ここにはいない。
戦闘中の可能性も考慮すると、今連絡をするのは得策ではない。本人に聞くのが一番だ。
「ああ――知っているとも。少々なりとも縁があってね。向こうは憶えていないだろうが……」
その、遥か昔のことを懐かしむような表情は、少々の出来事によるものとは思えなかった。
まるでそれは、人生そのものに関わる物事のようで。
「……余計な感傷だな。今は彼ががあの正気とは思えん殴り合いで勝てるよう、補助をするだけだ」
「使うのね?」
「ああ。意思ある戦士なら、誰とて知っていよう。そして、意思なき死霊の兵には逃れ得ぬ絶大な効力を発揮する」
それは、本来守勢、撤退戦において敷かれ、本領を発揮するもの。
だが、彼の手腕を以てすれば、あの混沌の戦場でさえ猛威を振るう。
「奇門遁甲。六壬神課。物理で殴るだけが戦にあらず。勝利と人和、地式人式、我が智を以て天時を此処に」
能力も、スキルも、そして宝具さえも、この英霊は単独戦闘のためのものではない。
指示の出来る状況で、指示するに足る兵がいればこそ、その勝利を確たるものにする。
あの二人の王の邪魔をせず、骸骨兵のみに標的を絞った死への誘い。
「これぞ大軍師の究極陣地――――
+
「あちらは良いのかね? 正念場のようだが」
「キャスターが宝具を発動した以上、帰趨は決まりました。心配はいりません」
リンとキャスターは強い。
リンはサーヴァントを使役することは初めてではなく、勝手をよくわかっている。
キャスターの軍略もあって、軍を指揮している限り二人に危険が及ぶことはないだろう。
わたしの不安は、別にある。
「サクラ、お父さまとお母さまは無事ですか?」
『はい。断続的に戦闘状態ですが、目立ったダメージはありません』
目覚めた頃には、お父さまとお母さまは既に発った後だった。
リン程ではないが、不満はある。
何故二人とも、いつもわたしを置いて行ってしまうのだろう、と。
独断先行は、残された者の心配を生むというのに。
「視認は出来るのかい?」
「流石に無理だな。砂漠にポツンとある集落ならまだしも、あのような大都市では死角が多すぎる」
目を細めローマ領域の方向を睨みながらも、苦い声を上げるのは、アーチャーのサーヴァント。
簡素な外套に身を包んだ、白い老人。
後ろで纏めた髪は風に靡き、穏やかな瞳は、しかし遥かを見やり獰猛な性質を隠さない。
天をも穿つ極限の弓兵。
彼は此処――エサギラ寺院の頂上で、わたし達がこの特異点に降りるより前からずっと、守護者として在った。
この特異点に降り、戦いを終わらせるべく動いていた二人のアーチャー、その片割れ。
もう一人は、わたし達が降りる直前、道半ばにして果てた。
聞けばファラオ・オジマンディアスによる渾身の一撃を相殺し、三国の戦いを休戦に至らせ、死んだという。
名をアーラシュ。古代ペルシャの大英雄にして、西アジア世界では弓兵そのものを象徴する存在。
六十年にも渡って繰り広げられたペルシャとトゥラーンの戦いを一矢でもって終結させた、戦いを終わらせた英雄。
この羿はアーラシュの遺志を継ぎ、三国の戦いの再発が起こらぬよう見守っていたのだ。
「遠矢を放つことに自信はあるが、敵を射抜かねば意味がない。今は静観するまでだ」
言いながらも、羿はその手から弓を放さない。
いつでも、その時が来ればすぐに矢を放てるよう、用意は万全だ。
「まったく……あんな戦渦の中に自分たちだけで行くなんてね。僕なりカレンなりを連れていくべきだろうに」
「貴様が出向いても力にはなるまい。それとも余に剣でも持たせるか?」
「キャスターである君だと竜牙兵一体でも厳しそうだね」
「貴様やはり余を馬鹿にしていないか?」
同じく、エサギラ寺院の頂上に立つカリオストロとキャスターの掛け合いは、さながら漫才のようだった。
この特異点でも何度か見ているが……二人は、相性が悪いように見える。
お父さまとお母さまが用意したサーヴァントの召喚術式は、相性の良い英霊が選ばれる作りになっていた筈。
それを使ったならば、彼らはやはり、似通った部分があるのだろうか。
「……わたしも、力にはなれません」
わたしには、戦えるような力はない。
サーヴァントであるゲートキーパーも――
「……ん? どうかした?」
「いえ……」
まったくもって、戦う気がない。
結局、この特異点にやってきてからも、彼が戦うということは一度もない。
最初の特異点で、わたしは彼が戦ってくれるよう――認めてくれるよう、尽くしたつもりだ。
だが、まだ足りないのだろうか。
わたしは弱い。お母さまのように英霊を凌駕している訳でもなければ、お父さまのように英霊と戦える術式を持っている訳でもない。
これでは、お父さまとお母さまの役に立てない。
「そこまで気にすることはないんじゃないか?」
「え……?」
意外だった。
元よりその呟きは独り言であり、誰からの返答も求めていなかったものだ。
それを――愉快さを見せながらもどこか胡散臭いあのカリオストロが答えを返してくるなどと。
「君はその存在だけで、あの二人を奮い立たせている。君が危機に陥ったらどうなる? 君に応援されたらどうなる? どちらにせよ彼らは君のために全霊を尽くすだろうさ」
――そう、なのだろうか。
大事にされている。数字の世界で生きているからか、そうした事は如実に理解できる。
二人からの感情は悪いものではなく、それによってわたしの“心”が穏やかであることも分かる。
だが――だが。
わたしの為に、お父さまとお母さまが力を尽くす事は、あるのだろうか。
「君が何処まで良く出来た存在か、理解が及んでいるかは知らないけどね。僕は少なくとも、彼らをそういう性質だと判断した」
「たった……あれだけの会話、関わりだけで?」
「ああ。こう見えて見識は広くてね。色んな人に出会ってきたし、善も悪も、隆盛も退廃も、救いも滅びも見てきた。それでも、彼らほど分かりやすい者たちはそうはいない。いいじゃないか、善を見定め、悪を正す。緩やかな人間模様を愛する非人間。そういう存在は、僕は好きだ」
大げさに身振り手振りを交えながら、カリオストロはそう、二人を評した。
「まったく……それは本心か?」
「紛れもなく本心さ。キャスター、少しくらいは僕を信じてくれても良いんじゃないかい?」
「そうしたいものだがな。余は知っているぞ、貴様のような道化。気に食わんが書庫が如き知識人――最も厄介な輩ではないか?」
「確かに。気が合うかもだ」
英霊である、キャスターでさえもが彼を評価している。
ならば、彼の言うことは正しいのだろうか。
出来れば、わたしも敵と戦うことで、二人の役に立ちたい。
でも……今の段階で力になれているのならば。少しだけ……嬉しかった。
「……カリオストロ」
「なんだい?」
「ありがとうございます。少しだけ、気が楽になりました」
「どういたしまして」
彼は胡散臭い。底が見えないから、善人とも悪人とも言い難い。
それでも、今の言葉は信頼できるものだった。
彼のおかげで、ほんの僅かかもしれないが、成長できた気がした。
凛とカレン、二人の視点でお送りしました。メルトの誕生日なのに出てなくてすまない。
そして参戦、ダレイオスにオリ鯖であるアーチャー、羿です。
オリジナルサーヴァント候補としては、割とメジャーな方ですね。
カリオストロについても、少し掘り下げ。
自分で書いてて何ですが、胡散臭い。