Fate/Meltout -Epic:Last Twilight- 作:けっぺん
ニコ生に小倉唯さん出演決定。
いい流れです。次の更新の時には、CCCイベントは始まっているでしょう。
いくぞFGO――ガチャの用意は十分か。
ローマの中心。
巨大な宮殿は、混沌に支配されていた。
「……これは」
死霊や影の英霊が跋扈する、かつて栄光の象徴であっただろう宮殿。
そこは最早壊滅しており、人の気配など微塵も感じられなかった。
「サクラ、中には……」
『英霊が三騎……いえ、四騎います。カエサルさん、クレオパトラさん、カリギュラさん……それから、凄く弱い反応が一つあります』
負傷している……のだろうか。
英霊とは言え、無敵というわけではない。
これだけの敵が大挙して押し寄せてくれば、不覚を取ることも十分にありうる。
「ラーヴァナはいないのか。ともあれ、まずはその者たちを助けるとしよう」
ラーマは先立って、エネミーの群れに切り込んでいく。
「私たちも行くわよ、ハク!」
「ああ!」
大軍との戦いは、メルトの戦闘方法からして向いたものではない。
だが、そこをラーマに助けられている。
伝説からして、万を超える羅刹を相手に単独で勝利を収めたこともある大英雄だ。
軍勢との戦いの勝手は、十二分に知っている。
「退くがいい! 貴様たちに用はない!」
状況に応じて、逐一武器を変更し、大半を手早く片付けていく。
取りこぼした素早い敵は、メルトがその速度でもって貫く。
『その先の大部屋です!』
開け放たれた扉。
中にまで入り込んでいるエネミーたち。
ローマに属するサーヴァントたちを殲滅せんとばかりに、数でもって雪崩れ込む影の群れ。
部屋に走り込み、シャドウサーヴァントの大軍を相手取る英霊たちを視界に入れる。
「むっ……!」
その体躯からは想像もつかない素早さで剣を振るうカエサル。
負傷を気にせず、影の英霊に殴りかかるカリギュラ。
軽い身のこなしで二人のサポートに徹するクレオパトラ。
そして――彼らが守る玉座。
そこには、ひどく衰弱した英霊が座していた。
「彼が……神祖ロムルス?」
淡く輝く隆々とした身体。それは形だけのものではなく、ステータスは非常に高い。
イスカンダルやオジマンディアスと並び、この特異点で頂点に座すサーヴァントに相応しい。
しかし、その余力は最早皆無にも等しかった。
病床に伏し、大量のコードで命を繋いでいるかのように、その肉体には樹木が絡みついている。
状況は読めないが、その体を動かすことが出来ないのは明白。
彼がバビロンに訪れられなかった理由も、この状況に関係しているのだろう。
「ッ、貴方たちは……!」
戦いつつも、此方に視線を向けたクレオパトラが僕たちに気付く。
ひとまず、前方の敵を蹴散らしつつ、彼らに合流する。
「援軍か。助かった――癪だが私たちだけで神祖を守るのにも限界が近付いていてな……!」
胴を守る鎧を纏い、素人目でも一目で名剣だと分かる一振りを持つカエサルは、無数の影の英霊相手に大きな傷も受けていない。
だが、戦況は苦戦と言っていい状況だった。
ただの一つを目指し進軍してくる大勢の敵と、それを守り攻めることの出来ないサーヴァントたち。
そう――彼らは座したロムルスをひたすらに守っているのだ。
「おい、どういう状況なのだこれは。その英霊――ローマの根幹は何故そんなにも弱っている?」
一先ず周囲の敵を蹴散らしつつも、ラーマは彼らに問う。
「……神祖は、一人でこのローマを支えていた存在でな。戦力の拮抗で成立している三国だが、このローマは実のところ戦力が非常に乏しいのだ。大英雄と呼ばれる存在の複数いる二国と異なり、な」
マケドニア領には、イスカンダルの他ラーマがいる。そして、元より国としてこの場に存在していたという、国そのものの強度がある。
エジプト領はオジマンディアスというファラオをトップとして、カルナとクー・フーリンという強大な戦士が存在する。
ローマの英霊たちが、格で落ちるとは思わない。だがこの特異点において、国の成立に重視されるものはその一点なのだろう。
「神祖はこの国を成立させるため、己の身を国に捧げられたのです。命を削り、力で劣るこの国を――成立してしまったこのローマを、過ちであれ存続させるために」
変わり果てたロムルスは、真実、このローマの核なのだ。
他の二国は王を倒したとて、即座に国が破滅するということは無いかもしれないが、ローマは違う。
ラーヴァナが攻め込んだ理由も分かった。この国は、ずっと限界だったのだ。
今のロムルス自身の魔力は、低級サーヴァントにも等しい。
戦うなど到底無理だろう。本来のロムルスならば、ラーヴァナに決して劣らないのかもしれないが……。
「ゆえに! 神祖が命をお使いになる以上、私たちはこれを死守し、下賤な魔性に屈する訳にはいきません! 時の勇者、一騎当千の英霊! 共に戦い、この者共を蹴散らすのです!」
「元より――そのつもりだ!」
理由が理由だ。彼らはここから離れる訳にもいくまい。
まずはこの宮殿に攻め入ってきた敵を倒し、それから外の援護を――
「キャ――ハハハハハハハハ――! いいわ! とてもいい! その啖呵、流石最後のファラオは言うこと違うわ!」
その時、高笑いと共に部屋に入ってくる軍勢が吹き飛んだ。
残骸を踏み台に、遠慮もなく侵入してきた者。誰か、などその声だけで判別がつく。
『……気を付けてください。杯の影響か、魔力が更に高まっています』
肉体の青さは増し、新たに刻まれた赤い文様。
より人外であるという印象を増した豪奢な装飾。
バーサーカーらしい狂笑を浮かべた羅刹に、一斉に警戒を向ける。
「……来たか。余の記憶が正しければ、討ち果たす際に『その悪辣な笑みを二度と見せるな』と言った筈だがな――羅刹王」
「アハ――ええ、覚えているわ。でも貴方に『不快だからシータの名を口に出すな』と言っても聞かないでしょう? それと変わらないんじゃないかしら?」
「ふん……そんな下らぬことが、余にとってのシータと同じ価値観か。相変わらずだ、貴様は余の逆鱗に良く触れる」
一歩前に出て剣を構えるラーマに、よりラーヴァナの笑みは深まる。
天敵である筈なのに。殺し合う敵である筈なのに。
ラーヴァナのその表情は、極限なまでの喜悦に満ちている。
「それより! どうかしら。貴方と戦った時以上の衣装にしたのよ。私がこの国を落とす記念の日だもの!」
「貴様の戦装束になど興味はない。どれだけ貴様が力を蓄えようと、余は貴様を打ち倒す存在! ここに余がある限り、貴様の野望は成就せぬと知れ!」
ラーマは剣先をラーヴァナに突き付け、堂々と宣言する。
残念そうに肩を竦めたラーヴァナ。ラーマにあるのは、敵対するという心持ちのみ。
「……そ。残念。まあ褒められても困るけど。まあ、安心なさい、ラーマ。今回はシータを攫うなんてことはしないわ。正々堂々、改めて、羅刹の王として――叩きのめしてアゲル!」
振り上げられる剣。今の距離は明らかに剣のリーチではない。
警戒を強めるラーマ。それを見て、我慢できないとばかりに笑いが爆発する。
「ギ――――ヒヒヒヒヒハハハハハハハハハハハハッ!! そうだ! それでいい! テメエはオレと戦うだけでいい! オレも国王として戦ってやる! これが、オレの招く時代の終焉! ラーマ、サル共のいねえテメエにどうにか出来るなら、やってみやがれ!」
口調を変化させたラーヴァナの膨れ上がる魔力は、宝具の兆し。
それを止めるべく詰め寄ろうとしたメルトたちだが、ラーヴァナが自身の前に表出させたモノを見て動きを止める。
「あの杯は……!」
「そうだ! あの蔵で頂戴したお宝――これなら申し分ねえ! よく見てやがれ! これこそは地獄の釜、溢れ出すは我らが楽園! 繁栄を! 喝采を! さあ世界を埋め尽くせ、野郎共!」
喉が枯れんばかりの大声で叫ぶラーヴァナの次の瞬間の行動は、一切予測できないものだった。
「
「――――ッ!?」
真名解放。そして同時に――振り上げたその剣で、己の首を断ち切ったのだ。
――この特異点において戦う、誰しもが驚愕を禁じ得なかった。
「ぬぅ……! ありゃあ何なのだ! とは言っても……答える事も出来んか!」
「■■■■■■■■■■――――――――!!」
「そら見たことか。覚えておきたまえマスター。これを不測の事態と言う。さて……どうしたものか」
「……マズいわね。あんな隠し玉は流石に予想してなかったわ……」
「ヌウウウウウウウオオオオオアアアアアアアアアア――――! 負けてなるものか! 戦い、戦い、押し返す! それがスパルタ、だあああああ!」
「ふむ……。急がねばなるまい。これを一々相手取るのは馬鹿らしいぞ」
「その通りです。一刻も早く、あの鬼を討たねばなりますまい」
「これが、切り札なのかい、エリザ。羅刹王とやらの……」
「そうみたいね。詳しい事なんて知らないわ。ただ、中々に凄惨で美しい光景じゃない」
「……へえ」
「アレ、全部撃ち落とせますか?」
「無茶を言う。不可能ではないが、恐らくアレが地上を蹂躙し切る方が早かろう」
「キャスター、戦ってみるかい?」
「五秒と持たんぞ」
空を埋める、青黒い巨大な影。
否――巨大なのではない。あまりにも膨大な数によって、雲の如き影が形成されているだけ。
その一つ一つは、精々が三メートルから五メートルほど。
鋭い爪。反り返った角。硬質化した皮膚の奥で爛々と輝く双眸。
強靭な青黒い肉体。そして、その身の飛行を可能とする巨大な翼。
「――、――、――、――、――、――ッ!」
ドクン、ドクンと、それらの生の証が脈打つ。ある者は――それによって大地が震撼する錯覚さえ抱いた。
羅刹王の宝具によって、羅刹に定義された栄華の魔物。
他の文献、他の神話ではデーモン、蛮神とも称される“魔”は、人を狩るべく、地上へと降り始めた。
+
「あらら。やっぱり、面倒なことになりましたね。どうするんですかコレ」
外を見ながら――タマモさんは呟く。
何かが、外で起きている。
「……どうか、したのですか……?」
「どうやら敵の秘密兵器がお目見えしたようです。これは……獅身獣だけじゃ足りませんねぇ」
そんなにも、凄まじい存在が……。
タマモさんは、部屋に備えられている灯火から、外を覗いているらしい。
弓兵として召喚された影響か、距離はあったが、その内容を見て取ることが出来た。
青い魔。それも単体ではない。小さな灯火から分かる限りでも、十、二十――これがもしかして、この時代全体に……?
いや、それよりも。
あの魔物たちの気配、雰囲気。何故、そんなものがここにまで伝わってくるのか。
姿かたちは変わっていれど、間違いない。悪辣にして自由の化身。蹂躙を愛し、しかし平和に焦がれた、私が良く知る者たち。
「……
「知っているので?」
「ええ……そう。ラーヴァナもまた、召喚されたのですね。この時代を、壊す側に」
彼らが単一のサーヴァントでないことなど明白だ。
ならば、彼らを召喚した者がいる。
彼らを召喚する――しようとする者など、世界の何処を探してもただ一人。
羅刹王ラーヴァナ、彼女だけだろう。
この宝具は恐らく、魔として定義されるものを羅刹と再定義し、眷属として召喚する宝具。
羅刹は人を超える存在――この宝具をもって、決着を付けようとしたに違いない。
「……んー、生前の縁ってのは厄介ですねぇ。たったこれだけで正体にまで行き着きますか」
タマモ・オルタさんたちは、分かっていて隠していたようだ。
……仕方ないか。
私は、彼女に攫われた存在。死にかけた者にトラウマだろう名を聞かせる訳にもいかない――そんな親切だったのだろう。
ファラオ・オジマンディアスは私をこの部屋を貸し与えてくれる程に寛容だ。
タマモさんは、悪女を自称しておきながら、あれやこれやと世話を焼いてくれる。
カルナさんは気難しい……というより、あれは口下手なのだろう。性根は善と分かる。
クー・フーリンさんもまた、よく気に掛けてくれていた。ただ女性が好きなだけ、とも言っていたが……。
この神殿に滞在している時は、ハクトとメルト――呼び捨てで良いと初日に言われた――は毎日のように話相手になってくれていた。
皆が気を使ってくれたのだろう。でも――
「では……ラーマ様は」
「今頃戦っているでしょう……あっ」
「大丈夫です。知っていますよ。ラーマ様がいる――この霊基がそう訴えていましたから」
召喚されたと同時に、私はラーマ様の気配を察知した。
ラーマ様に一目会うために駆け、しかし、道中で暗殺者の毒に倒れた。
それでも、ラーマ様が存命であると、毎日のように確認し――それが、私が死を受け入れていない理由の一つにもなっていた。
「ッ」
「ほらほら、何立とうとしてるんです。もうそれだけですら無茶なんですから、大人しくしてなさい?」
動こうとするだけで、霊核は軋む。
限界などとうに超えている。でも、だけど……まだ死ねない。
「ラーヴァナがいて、ラーマ様が戦っている。なら……私だけがここで寝ている訳には、いきません……!」
「忠告です。囚われのお姫様のままでいなさい。貴女、死にますよ」
「――ありがとう、タマモさん。優しい人。でも、この決断は曲げられない。囚われの身は少々、飽きたのです」
そんな冗談を口にしながらも、起き上がり、寝台から降りる。
久しぶりに自身の足で立つ感覚は、懐かしかった。
「私はこのために召喚された。タマモさん……私も、英霊なんですよ?」
「……はあ。本当に、困りましたねえ。力づくで、なんて言える程強くないですし」
まだ少しだけなら、戦える。
限界のその先を超える必要はあるけれど、そんなこと、ラーマ様ならいとも簡単にやってのける。
今の私は“ラーマ”なのだ。ならばそのくらい、出来なくてどうするのだ。
「……もういいです。好きになさい。何が起きてもしりませんよ。最低限の護衛くらいは付けてあげますから、死なないことです」
「ええ、ありがとうございます」
この部屋から出れば、どうなるか。死は急速に、私を襲うだろう。
此度、ラーマ様に会えなくとも、私はやるべきことを成そう。
その為の力なら――残っている。
「さて……外には魔の群れ。そして安全地帯から抜け出そうとするおバカな姫様が一人。これは私も、怠けている訳にはいかないですか。はー……こんな間違った召喚で使う理由もなかったんですが」
愚痴を吐きながら、タマモさんは手に持つ扇を揺らし、自身の魔力を高める。
宝具の予兆――至極不服といった様子ながらも、その祝詞は歌のように、流麗に紡がれる。
「これなるは死の国、母の国。冷たき熱は嘲笑い、黒き炎は瑞穂の如く。一時地上に闇夜を譲り、この身が照らすは魑魅の国。いざ――来たれよ黒太陽」
真っ黒な魔力が、神殿の上空へ展開していると分かった。
あまりにも悍ましい力ではあるけれど、邪悪とは思えない。
「
たどたどしい真名が紡がれる。
そして、羅刹に対抗する術が――死の国が、顕現した。
ラーヴァナの切り札発動。心臓寄越せ。
対して遂に使用された、タマモ☆オルタの宝具。
そして限界を超え、シータ出陣。決戦らしさが出てきました。
ロムルスに関してですが、現状ローマ領の核にも等しく、彼の死は時代の崩壊にも等しい状況です。
今まで顔を出さなかった理由。活躍させられなくてすまない。
そんなわけで、二章もようやく鯖が出揃いました。もう終盤ですけどね!