Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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CCCイベントの概要発表。まさかのBBちゃん配布決定。
ニコ生に小倉唯さん出演決定。
いい流れです。次の更新の時には、CCCイベントは始まっているでしょう。
いくぞFGO――ガチャの用意は十分か。


第十六節『青黒き雲霞』

 

 

 ローマの中心。

 巨大な宮殿は、混沌に支配されていた。

「……これは」

 死霊や影の英霊が跋扈する、かつて栄光の象徴であっただろう宮殿。

 そこは最早壊滅しており、人の気配など微塵も感じられなかった。

「サクラ、中には……」

『英霊が三騎……いえ、四騎います。カエサルさん、クレオパトラさん、カリギュラさん……それから、凄く弱い反応が一つあります』

 負傷している……のだろうか。

 英霊とは言え、無敵というわけではない。

 これだけの敵が大挙して押し寄せてくれば、不覚を取ることも十分にありうる。

「ラーヴァナはいないのか。ともあれ、まずはその者たちを助けるとしよう」

 ラーマは先立って、エネミーの群れに切り込んでいく。

「私たちも行くわよ、ハク!」

「ああ!」

 大軍との戦いは、メルトの戦闘方法からして向いたものではない。

 だが、そこをラーマに助けられている。

 伝説からして、万を超える羅刹を相手に単独で勝利を収めたこともある大英雄だ。

 軍勢との戦いの勝手は、十二分に知っている。

「退くがいい! 貴様たちに用はない!」

 状況に応じて、逐一武器を変更し、大半を手早く片付けていく。

 取りこぼした素早い敵は、メルトがその速度でもって貫く。

『その先の大部屋です!』

 開け放たれた扉。

 中にまで入り込んでいるエネミーたち。

 ローマに属するサーヴァントたちを殲滅せんとばかりに、数でもって雪崩れ込む影の群れ。

 部屋に走り込み、シャドウサーヴァントの大軍を相手取る英霊たちを視界に入れる。

「むっ……!」

 その体躯からは想像もつかない素早さで剣を振るうカエサル。

 負傷を気にせず、影の英霊に殴りかかるカリギュラ。

 軽い身のこなしで二人のサポートに徹するクレオパトラ。

 そして――彼らが守る玉座。

 そこには、ひどく衰弱した英霊が座していた。

「彼が……神祖ロムルス?」

 淡く輝く隆々とした身体。それは形だけのものではなく、ステータスは非常に高い。

 イスカンダルやオジマンディアスと並び、この特異点で頂点に座すサーヴァントに相応しい。

 しかし、その余力は最早皆無にも等しかった。

 病床に伏し、大量のコードで命を繋いでいるかのように、その肉体には樹木が絡みついている。

 状況は読めないが、その体を動かすことが出来ないのは明白。

 彼がバビロンに訪れられなかった理由も、この状況に関係しているのだろう。

「ッ、貴方たちは……!」

 戦いつつも、此方に視線を向けたクレオパトラが僕たちに気付く。

 ひとまず、前方の敵を蹴散らしつつ、彼らに合流する。

「援軍か。助かった――癪だが私たちだけで神祖を守るのにも限界が近付いていてな……!」

 胴を守る鎧を纏い、素人目でも一目で名剣だと分かる一振りを持つカエサルは、無数の影の英霊相手に大きな傷も受けていない。

 だが、戦況は苦戦と言っていい状況だった。

 ただの一つを目指し進軍してくる大勢の敵と、それを守り攻めることの出来ないサーヴァントたち。

 そう――彼らは座したロムルスをひたすらに守っているのだ。

「おい、どういう状況なのだこれは。その英霊――ローマの根幹は何故そんなにも弱っている?」

 一先ず周囲の敵を蹴散らしつつも、ラーマは彼らに問う。

「……神祖は、一人でこのローマを支えていた存在でな。戦力の拮抗で成立している三国だが、このローマは実のところ戦力が非常に乏しいのだ。大英雄と呼ばれる存在の複数いる二国と異なり、な」

 マケドニア領には、イスカンダルの他ラーマがいる。そして、元より国としてこの場に存在していたという、国そのものの強度がある。

 エジプト領はオジマンディアスというファラオをトップとして、カルナとクー・フーリンという強大な戦士が存在する。

 ローマの英霊たちが、格で落ちるとは思わない。だがこの特異点において、国の成立に重視されるものはその一点なのだろう。

「神祖はこの国を成立させるため、己の身を国に捧げられたのです。命を削り、力で劣るこの国を――成立してしまったこのローマを、過ちであれ存続させるために」

 変わり果てたロムルスは、真実、このローマの核なのだ。

 他の二国は王を倒したとて、即座に国が破滅するということは無いかもしれないが、ローマは違う。

 ラーヴァナが攻め込んだ理由も分かった。この国は、ずっと限界だったのだ。

 今のロムルス自身の魔力は、低級サーヴァントにも等しい。

 戦うなど到底無理だろう。本来のロムルスならば、ラーヴァナに決して劣らないのかもしれないが……。

「ゆえに! 神祖が命をお使いになる以上、私たちはこれを死守し、下賤な魔性に屈する訳にはいきません! 時の勇者、一騎当千の英霊! 共に戦い、この者共を蹴散らすのです!」

「元より――そのつもりだ!」

 理由が理由だ。彼らはここから離れる訳にもいくまい。

 まずはこの宮殿に攻め入ってきた敵を倒し、それから外の援護を――

「キャ――ハハハハハハハハ――! いいわ! とてもいい! その啖呵、流石最後のファラオは言うこと違うわ!」

 その時、高笑いと共に部屋に入ってくる軍勢が吹き飛んだ。

 残骸を踏み台に、遠慮もなく侵入してきた者。誰か、などその声だけで判別がつく。

『……気を付けてください。杯の影響か、魔力が更に高まっています』

 肉体の青さは増し、新たに刻まれた赤い文様。

 より人外であるという印象を増した豪奢な装飾。

 バーサーカーらしい狂笑を浮かべた羅刹に、一斉に警戒を向ける。

「……来たか。余の記憶が正しければ、討ち果たす際に『その悪辣な笑みを二度と見せるな』と言った筈だがな――羅刹王」

「アハ――ええ、覚えているわ。でも貴方に『不快だからシータの名を口に出すな』と言っても聞かないでしょう? それと変わらないんじゃないかしら?」

「ふん……そんな下らぬことが、余にとってのシータと同じ価値観か。相変わらずだ、貴様は余の逆鱗に良く触れる」

 一歩前に出て剣を構えるラーマに、よりラーヴァナの笑みは深まる。

 天敵である筈なのに。殺し合う敵である筈なのに。

 ラーヴァナのその表情は、極限なまでの喜悦に満ちている。

「それより! どうかしら。貴方と戦った時以上の衣装にしたのよ。私がこの国を落とす記念の日だもの!」

「貴様の戦装束になど興味はない。どれだけ貴様が力を蓄えようと、余は貴様を打ち倒す存在! ここに余がある限り、貴様の野望は成就せぬと知れ!」

 ラーマは剣先をラーヴァナに突き付け、堂々と宣言する。

 残念そうに肩を竦めたラーヴァナ。ラーマにあるのは、敵対するという心持ちのみ。

「……そ。残念。まあ褒められても困るけど。まあ、安心なさい、ラーマ。今回はシータを攫うなんてことはしないわ。正々堂々、改めて、羅刹の王として――叩きのめしてアゲル!」

 振り上げられる剣。今の距離は明らかに剣のリーチではない。

 警戒を強めるラーマ。それを見て、我慢できないとばかりに笑いが爆発する。

「ギ――――ヒヒヒヒヒハハハハハハハハハハハハッ!! そうだ! それでいい! テメエはオレと戦うだけでいい! オレも国王として戦ってやる! これが、オレの招く時代の終焉! ラーマ、サル共のいねえテメエにどうにか出来るなら、やってみやがれ!」

 口調を変化させたラーヴァナの膨れ上がる魔力は、宝具の兆し。

 それを止めるべく詰め寄ろうとしたメルトたちだが、ラーヴァナが自身の前に表出させたモノを見て動きを止める。

「あの杯は……!」

「そうだ! あの蔵で頂戴したお宝――これなら申し分ねえ! よく見てやがれ! これこそは地獄の釜、溢れ出すは我らが楽園! 繁栄を! 喝采を! さあ世界を埋め尽くせ、野郎共!」

 喉が枯れんばかりの大声で叫ぶラーヴァナの次の瞬間の行動は、一切予測できないものだった。

 

悪鬼羅刹よ、楞伽の城にて狂い嗤え(ランカーヴァターラ)ッ!!」

 

「――――ッ!?」

 真名解放。そして同時に――振り上げたその剣で、己の首を断ち切ったのだ。

 

 

 

 ――この特異点において戦う、誰しもが驚愕を禁じ得なかった。

 

 

「ぬぅ……! ありゃあ何なのだ! とは言っても……答える事も出来んか!」

「■■■■■■■■■■――――――――!!」

 

 

「そら見たことか。覚えておきたまえマスター。これを不測の事態と言う。さて……どうしたものか」

「……マズいわね。あんな隠し玉は流石に予想してなかったわ……」

 

 

「ヌウウウウウウウオオオオオアアアアアアアアアア――――! 負けてなるものか! 戦い、戦い、押し返す! それがスパルタ、だあああああ!」

 

 

「ふむ……。急がねばなるまい。これを一々相手取るのは馬鹿らしいぞ」

「その通りです。一刻も早く、あの鬼を討たねばなりますまい」

 

 

「これが、切り札なのかい、エリザ。羅刹王とやらの……」

「そうみたいね。詳しい事なんて知らないわ。ただ、中々に凄惨で美しい光景じゃない」

 

 

「……へえ」

「アレ、全部撃ち落とせますか?」

「無茶を言う。不可能ではないが、恐らくアレが地上を蹂躙し切る方が早かろう」

「キャスター、戦ってみるかい?」

「五秒と持たんぞ」

 

 

 空を埋める、青黒い巨大な影。

 否――巨大なのではない。あまりにも膨大な数によって、雲の如き影が形成されているだけ。

 その一つ一つは、精々が三メートルから五メートルほど。

 鋭い爪。反り返った角。硬質化した皮膚の奥で爛々と輝く双眸。

 強靭な青黒い肉体。そして、その身の飛行を可能とする巨大な翼。

「――、――、――、――、――、――ッ!」

 ドクン、ドクンと、それらの生の証が脈打つ。ある者は――それによって大地が震撼する錯覚さえ抱いた。

 羅刹王の宝具によって、羅刹に定義された栄華の魔物。

 他の文献、他の神話ではデーモン、蛮神とも称される“魔”は、人を狩るべく、地上へと降り始めた。

 

 

 +

 

 

「あらら。やっぱり、面倒なことになりましたね。どうするんですかコレ」

 外を見ながら――タマモさんは呟く。

 何かが、外で起きている。

「……どうか、したのですか……?」

「どうやら敵の秘密兵器がお目見えしたようです。これは……獅身獣だけじゃ足りませんねぇ」

 そんなにも、凄まじい存在が……。

 タマモさんは、部屋に備えられている灯火から、外を覗いているらしい。

 弓兵として召喚された影響か、距離はあったが、その内容を見て取ることが出来た。

 青い魔。それも単体ではない。小さな灯火から分かる限りでも、十、二十――これがもしかして、この時代全体に……?

 いや、それよりも。

 あの魔物たちの気配、雰囲気。何故、そんなものがここにまで伝わってくるのか。

 姿かたちは変わっていれど、間違いない。悪辣にして自由の化身。蹂躙を愛し、しかし平和に焦がれた、私が良く知る者たち。

「……羅刹(ラークシャサ)

「知っているので?」

「ええ……そう。ラーヴァナもまた、召喚されたのですね。この時代を、壊す側に」

 彼らが単一のサーヴァントでないことなど明白だ。

 ならば、彼らを召喚した者がいる。

 彼らを召喚する――しようとする者など、世界の何処を探してもただ一人。

 羅刹王ラーヴァナ、彼女だけだろう。

 この宝具は恐らく、魔として定義されるものを羅刹と再定義し、眷属として召喚する宝具。

 羅刹は人を超える存在――この宝具をもって、決着を付けようとしたに違いない。

「……んー、生前の縁ってのは厄介ですねぇ。たったこれだけで正体にまで行き着きますか」

 タマモ・オルタさんたちは、分かっていて隠していたようだ。

 ……仕方ないか。

 私は、彼女に攫われた存在。死にかけた者にトラウマだろう名を聞かせる訳にもいかない――そんな親切だったのだろう。

 ファラオ・オジマンディアスは私をこの部屋を貸し与えてくれる程に寛容だ。

 タマモさんは、悪女を自称しておきながら、あれやこれやと世話を焼いてくれる。

 カルナさんは気難しい……というより、あれは口下手なのだろう。性根は善と分かる。

 クー・フーリンさんもまた、よく気に掛けてくれていた。ただ女性が好きなだけ、とも言っていたが……。

 この神殿に滞在している時は、ハクトとメルト――呼び捨てで良いと初日に言われた――は毎日のように話相手になってくれていた。

 皆が気を使ってくれたのだろう。でも――

「では……ラーマ様は」

「今頃戦っているでしょう……あっ」

「大丈夫です。知っていますよ。ラーマ様がいる――この霊基がそう訴えていましたから」

 召喚されたと同時に、私はラーマ様の気配を察知した。

 ラーマ様に一目会うために駆け、しかし、道中で暗殺者の毒に倒れた。

 それでも、ラーマ様が存命であると、毎日のように確認し――それが、私が死を受け入れていない理由の一つにもなっていた。

「ッ」

「ほらほら、何立とうとしてるんです。もうそれだけですら無茶なんですから、大人しくしてなさい?」

 動こうとするだけで、霊核は軋む。

 限界などとうに超えている。でも、だけど……まだ死ねない。

「ラーヴァナがいて、ラーマ様が戦っている。なら……私だけがここで寝ている訳には、いきません……!」

「忠告です。囚われのお姫様のままでいなさい。貴女、死にますよ」

「――ありがとう、タマモさん。優しい人。でも、この決断は曲げられない。囚われの身は少々、飽きたのです」

 そんな冗談を口にしながらも、起き上がり、寝台から降りる。

 久しぶりに自身の足で立つ感覚は、懐かしかった。

「私はこのために召喚された。タマモさん……私も、英霊なんですよ?」

「……はあ。本当に、困りましたねえ。力づくで、なんて言える程強くないですし」

 まだ少しだけなら、戦える。

 限界のその先を超える必要はあるけれど、そんなこと、ラーマ様ならいとも簡単にやってのける。

 今の私は“ラーマ”なのだ。ならばそのくらい、出来なくてどうするのだ。

「……もういいです。好きになさい。何が起きてもしりませんよ。最低限の護衛くらいは付けてあげますから、死なないことです」

「ええ、ありがとうございます」

 この部屋から出れば、どうなるか。死は急速に、私を襲うだろう。

 此度、ラーマ様に会えなくとも、私はやるべきことを成そう。

 その為の力なら――残っている。

「さて……外には魔の群れ。そして安全地帯から抜け出そうとするおバカな姫様が一人。これは私も、怠けている訳にはいかないですか。はー……こんな間違った召喚で使う理由もなかったんですが」

 愚痴を吐きながら、タマモさんは手に持つ扇を揺らし、自身の魔力を高める。

 宝具の予兆――至極不服といった様子ながらも、その祝詞は歌のように、流麗に紡がれる。

「これなるは死の国、母の国。冷たき熱は嘲笑い、黒き炎は瑞穂の如く。一時地上に闇夜を譲り、この身が照らすは魑魅の国。いざ――来たれよ黒太陽」

 真っ黒な魔力が、神殿の上空へ展開していると分かった。

 あまりにも悍ましい力ではあるけれど、邪悪とは思えない。

黒天日光天照奇々怪々(ぶらっくさん・おぶ・ひゃっきやこー)――ここに顕現」

 たどたどしい真名が紡がれる。

 そして、羅刹に対抗する術が――死の国が、顕現した。




ラーヴァナの切り札発動。心臓寄越せ。
対して遂に使用された、タマモ☆オルタの宝具。
そして限界を超え、シータ出陣。決戦らしさが出てきました。
ロムルスに関してですが、現状ローマ領の核にも等しく、彼の死は時代の崩壊にも等しい状況です。
今まで顔を出さなかった理由。活躍させられなくてすまない。
そんなわけで、二章もようやく鯖が出揃いました。もう終盤ですけどね!
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