Fate/Meltout -Epic:Last Twilight- 作:けっぺん
悲願であったメルトの宝具レベルを無事5にし、全力で楽しんでいます。
何だかひどく懐かしい、何処かで見覚えのある展開を所々に感じ、「わーい公式Meltoutだー」と血反吐をぶちまけながらもプレイしていました。
ともあれ、私のFGOチュートリアル(メルト召喚するまで)はようやく終わったので、少しだけ情報が発表されたアガルタを舞台にした初の本編を楽しみに待つことにします。
ラーヴァナが宝具の真名を解放した瞬間、周囲の――いや、世界の空気が変わった。
その空間が、人の住むモノではなくなったかのように。
「今のは――」
「この雰囲気……ラーヴァナ、貴様――!」
「あら、覚えていてくれたのね。そう、アタシの国の可愛い民よ」
自身で首を落としたラーヴァナは、さも当然のように首元の炎から新たな首を生み出した。
ラーヴァナが使った宝具の性質を、やはりラーマは知っている。
ラーマの尋常ならざる表情は、宝具が凄まじいものであることを確信させる。
『――!? 上空に無数のエネミー反応! 降りてきてます!』
「ッ、配下の召喚宝具……!」
「ご名答ッ! これだけの魔力タンクがあれば、エサにも困らねえ!」
本来、こういった宝具による召喚可能数はマスターの魔力量によって変わるのだろう。
だがラーヴァナが使用しているのは、魔力を貯め込んだ杯だ。
自身が消耗することもなく、ラーヴァナは自身の眷属を大量に召喚せしめた。
杯を使い、神代の魔獣を呼び出していたのは、この杯の性質を試す実験だったのかもしれない。
そしてこの時、魔獣たちとは比べ物にならない、彼女の信じる手駒を呼び出した。
それは、ラーヴァナの決戦の意思表示なのだろう。
「来る――!」
宮殿のあちらこちらが崩壊し、羅刹が流れ込んでくる。
魔力量としては、バシュム等の大型魔獣には及ばない。
だが、人の世界を侵し喰らう羅刹の性質――
あの一体一体に備わっているのは、人の型を持つ者への特効性能――!
「恐れるな! 羅刹と言っても兵に過ぎん、お前たち英霊ならば打ち合える! メルトリリス、ハクトを守れ!」
「言われなくとも、そのつもりよ!」
一番槍が如く、最初に突っ込んできた羅刹をラーマがその一刀で叩き落す。
メルトの素早さに付いてこれる程の速度はない。眉間を突き刺し、メルトは確実に目の前の一体を仕留める。
「神祖をお守りしろ! クレオパトラ、ウラエウスの展開はまだ可能か!」
「はい! 出でなさい、我らが落陽!」
「ヌゥウウウウウアアアアアアア! 潰、す! ローマを侵す、獣の、一切――!」
確かに、ローマに属する英霊三騎も羅刹と同等以上に相手取れている。
だが――
「アッハハハハハハハ! 最高! もっともっと踊りなさい!」
あまりにも量が多すぎる。それに、幾ら羅刹たちと戦ったところでラーヴァナには傷一つ与えることが出来ない。
この拮抗状態はマズい。このままでは、押し切られるのは僕たちだということは明らかだ。
「おのれ、ラーヴァナァ!」
自身が抑えていた三体の羅刹を吹き飛ばし、召喚した弓によりラーヴァナを射撃する。
命中すれば死は逃れられない。
だが、頭に向けて放たれた一矢を、まるで分かっていたかのように回避する。
「アハ――早漏は嫌われるわよラーマ! アタシの愛する羅刹たちとは遊んでくれないのかしら?」
「貴様の魂胆など読めている! 疲弊しきったところにその『
「そんなことしないわよ。だってそんなの、つまらないじゃない。貴方がまた殺してくれるんでしょう? だったら極限まで愉しませてちょうだい!」
チャンドラハース――それもまた、ラーヴァナの宝具か。
その名は月の刃を意味する。ラーヴァナがシヴァより賜った月の剣だ。
ラーマの発言からして、あの剣には遠距離に対応した攻撃方法が存在する。
ラーヴァナは使わないと言っているが、バーサーカーである彼女の発言は信用できない。
羅刹を相手している時に発動されれば一溜まりもないだろう。
「変人め……! チッ……流石に量が多い!」
この量を相手取り、かつラーヴァナにダメージを与えるのは難しい。
ひとまず、この場にいる羅刹だけでもどうにかしなければ。
程なくして次の勢力がやってくるだろうが、それでもラーヴァナと戦う時間が出来る。
サーヴァントたちの消耗は避けたい。守られてばかりではいられない。
「皆、羅刹たちの動き、少しだけでも止めてくれ!」
指示を出しながらも、絆を紡ぎあげる。
この場全てを範囲にするには、僕の技量では足りない。
出来るだけ範囲を制限し、最低限の力で全てを穿つ。
「秘策があるようだな。ならば!」
「ええ――失敗は許されなくてよ!」
「ふん。ハクにここぞの失敗はないわ。いいから素早く言う通りにしなさい」
「くっ、それは安心だ、な――!」
それぞれが、それぞれの手段で羅刹を叩き伏せる。
位置の把握は完了した。いける――呼び起こすは、正義の絆――!
「
それは、聖杯戦争の最中に戦い、月の裏側で助けられた串刺公の宝具。
悪を断つ正義の槍。
羅刹が人の正義を侵す魔性であれば、この上なく有効な一撃となる――!
『■■■■■――――!』
『――――――――――――――――!!』
『■■■■■■■■■■■■ッ!』
突き出された槍が羅刹たちを貫いていく。
獲物の悉くを絶命させ、羅刹の串刺平原が作り上げられる。
「――――」
「ほう、やるではないか。趣味は悪いが、有効な殲滅方法だ」
「僕の趣味じゃ……いや、今はラーヴァナを!」
これで全てが解決したわけではない。
寧ろ、此処からだ。
今の内にラーヴァナを少しでも追い詰めないと……!
「――なるほど。そっちのボーヤ、馬鹿正直に剣振るうだけじゃないのね。んー……可愛いからって残しておいたのは失策だったかしら。やっぱりそういうのに足下すくわれるのかしらねえ」
相変わらず、喜悦を顔に張り付けたままながら、ラーヴァナの声色は低い。
何となくだが、分かる。
今この瞬間、ラーヴァナは喜びを感じていない。
「面白くない」という感情を、表情以外の全てから発している。
「これだけ可愛いなら、ボーヤを苗床にすればよかったかしら。ねえラーマ、どう思う?」
「知らん。だが、ハクトに手を出してみるがいい。メルトリリスの逆鱗に触れるだろうよ」
「ハッ! あんな華奢な娘を恐れてたら羅刹王の名が泣くわ。アタシが恐れるのはただ一人、ラーマ、貴方だけよ」
当然ながら、ラーヴァナにとっての天敵はラーマなのだろう。
だが、ラーヴァナがラーマに対して抱いているものは、殺意でも、戦意でも、恐怖でもない。
何故か――もっと、好ましいものに思える。
「さて、と。ここに招いた皆は死んじゃったし、少しだけアタシも踊りましょうか。ねえ、それがお望みなんでしょう、愚かな人間たち」
数で言えば、此方に大きな有利がある。
だというのに、ラーヴァナは絶対的な勝利を疑っていない。
「その選択、後悔しないことだ。このラーマは貴様を打ち倒す者――信ずる仲間がいる今、万に一つも負けはない!」
「ハ――ハハハハハッ! 良い啖呵だ! それでこそラーマ、それでこそ英雄! 行くぜ、一撃二撃でくたばるんじゃねえぞ!」
高笑いしたラーヴァナは、次の瞬間ラーマに突っ込んだ。
杯を片手に持ちながらも、それは手数には関係ない。
周囲に浮かせた剣全てが、彼女の手のようなもの。
メルトやカエサルが援護をしても、それらがラーヴァナに攻撃を通さない。
「おおおおおおおぉぉぉ!」
「ヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャ――! そうだ! 今のテメエはオレだけ見てりゃあいい! 全力をぶつけてきやがれ!」
右手に握る剣に合わせて浮いた二本の剣を操ることで、ラーマの剣技に渡り合うラーヴァナ。
一本の剣でラーマはそれに対応している。
その様子は、とても現実とは思えない。
山をも打ち砕くのではと思う程の膂力の応酬。
一撃一撃が大地を震撼させる。
「ふむ。これは、私たちが出るだけ無駄か?」
「いや……あの手数全部がラーマに向かうのはまずい。少しでも負担を減らそう」
今の状況、僕たちに出来るのはそれくらいだ。
ラーヴァナの弱点は、ラーマが一番よく知っている。
ともなれば、僕たちはそれを突くために、ラーマを援護する。
「行くわよ――合わせてハク!」
「ああ!」
メルトの動きに合わせ、弾丸や盾を展開する。
当然、それは浮いた剣に対応されるが、それでいい。
その分ラーマに余裕が出来る。それでも、可能であればラーヴァナに攻撃を通せるように。
首を断っても死なない彼女の不死性の秘密は、やはり判然としない。
だが、ラーマはそれを知っている。知っていて、戦っている。
ならば僕たちがラーヴァナにダメージを与えることも、その打倒手段を成立させる要因になりうる。
「……チッ、お呼びじゃねえってのに……邪魔してんじゃねえよォ!」
「しまっ――!」
激情と共に射出される剣は、着地したメルトの隙を突いた。
大丈夫だ。メルトは動けなくとも、僕は動ける。
盾の複数展開。防げはしなくても、勢いを弱められればいい。
「メルト!」
破壊されている時間で、メルトを抱いて軌道の外へと飛ぶ。
だが、剣は真っ直ぐ飛ぶだけではない。その軌道は曲がり、執拗に追ってくる。
「ッ――」
「問題ないわ、グッジョブよ、ハク!」
追撃を防いだのは、メルトの水の膜。
宝具でさえ防ぎきる護りは、剣一本では物ともしない。
「相変わらず無茶するわね……助かったけど、私の心臓に悪いわ」
「ごめん。だけど――まだ!」
「殺し合いの最中にイチャイチャしてんじゃねえぞテメエら――!」
メルトの跳躍で、飛来してきた三本を回避する。
追撃は――ない――?
「――――ハクト! メルトリリスッ!」
「なっ――」
ラーマの叫びが聞こえ、視線を移せば、ラーヴァナが持つ剣が思い切り振り上げられていた。
ラーマ自身は十本もの剣で動きを封じられている。
輝きを増す剣。それは紛れもなく、真名解放の予兆。
離れたところにいるカエサルたちでは、止められない。
狙いは、僕たちか――いや、まさか全員――
どの道、これでは誰も防げない――!
「灼け! 引き裂け!
剣が振り下ろされると同時、光が強くなる。
それが最高潮に達し、何やら光の性質が変化した、その寸前――
「――――
別の宝具が、解放された。
全方向に広がる閃光の斬撃を、悉く防ぎきる防壁。
僕たちも、ラーマも、カエサルたちも、全員がその壁によって、剣の餌食を免れた。
この場にいる、これほどまでの防御宝具の使い手。
まさか――
「――ロムルス!」
玉座から立ち上がり、手に大樹が如き形状の深紅の槍を持った帝国神祖。
彼が、助けてくれたのか。
「――テメエ、死にぞこないが――!」
「何処を見ている! 貴様は余のみを見るのだろう!」
対応しようとしたラーヴァナだが、ラーマにそれを止められる。
自身を襲っていた剣全てを打ち払い、ラーヴァナが吹っ飛ぶ程の一撃が叩き込まれる。
「神祖! そのお体で無茶をなさるな!」
カエサルの言う通り、ロムルスの衰弱は著しい。
自身の領域の核となり続けていた体は限界を超え、霊核を破壊せずとも消滅は近い。
そんな時に戦えば、余計に死は近くなる。
「……ローマを守る。それこそが、
「しかし……」
「我が子らよ。あの大魔もまた、ローマである。ローマの過ちは
しかし、断固としてロムルスはその行動を否定しない。
奇妙な口調だが……そこには、確かな信念が感じられる。
「案ずるな。我が子ら。ネロを縛る原罪に比べれば、児戯にも等しい。人ならざる魔性の悪、ローマが受け入れずして、誰が受け入れようか」
あの羅刹王をも受け入れる、懐の広さ。
ローマそのものともいえる器量は、最早理解の埒外だった。
「ッ、この……やってくれるじゃない。アタシの渾身の一撃を防ぐなんて。神祖サマは空気を読まないわね」
「全ては、我が子とその友を守らんがため。羅刹の長よ、お前もまた、ローマは愛するだろう」
「お断りね。アタシの国はランカーだけ。それもまたローマだとでも?」
「然り。全てはローマに通ずる。ゆえに、遍くをローマは内包する。善も、悪も」
「ヒャハハハハハハハハハハッ! だったらコイツらも受け入れられるんだろうな! 集え野郎共!」
ラーヴァナの呼び声に応じ、大量の羅刹が雪崩れ込んでくる。
「ッ!」
ここまでの数は予想外だ。
これを薙ぎ払うとなると、可能なのはカルナかガウェインの宝具か。
だが、この短時間で展開は――
「無論。羅刹もまた、
そんな葛藤をしている間にもロムルスは槍を掲げた。
ラーマでさえ対処しきれないだろう羅刹の群れに恐れることもなく。
その眼に誇りさえも浮かばせて。
ローマ最大の英雄として、この状況を打開する真名を解き放つ。
「
その瞬間、圧倒的な質量が顕現した。
あれなるは、建国の槍。ローマを象徴する、国造りの大樹。
それはローマの現在であり、ローマの過去であり、ローマの未来。
ローマという国の全てが、樹木の奔流となって羅刹を呑み込んだ。
「は――――?」
味方を躱すように操られた大樹は、ラーマの傍にいるラーヴァナを見逃した。
ゆえに、ラーヴァナは、集った羅刹の群れ全てが等しく、芥のように呑まれていく様を見た。
「……」
呆然とその様を見届けた羅刹の王。
対して、神祖に相応しい、圧倒的な力を見せつけたロムルスは――
「ふ……」
「神祖!」
「神祖様!」
「お、おぉぉ……!」
二度の宝具解放により力を使い果たし、消滅していった。
核がいなくなったことで、ローマ領域の崩壊が始まるだろう。
しかし、ロムルスの意思が残っているかのように、大樹は脈動を続ける。
生ける国そのものたるローマ。神祖が消えても、その偉大性は一切変わらない。
「……勝手に死にやがった。オレが野郎共の復讐さえ果たす前に。ああ、ここまで不愉快なのは久しぶりだ」
静かながら、憤怒を煮え滾らせるラーヴァナ。
彼女は横暴で野蛮だが、民を想っているのだろう。
自分たちが侵略者であろうとも――民がなんの役目も果たさずに死んでいくのは、耐えられないのだ。
「まあ、いい。ロムルスが死んだならば、後は何も考えずにテメエらを殺しゃあいい」
「ふむ。意外と落ち着いているなラーヴァナ。激情に任せて殴りかかってくると思ったが」
「お望みとあらば、やってやるよ。今度こそ、手は抜かねえ。野郎共もまだ残ってる。全員、此処に召集を――」
「フ――ハハハハハハハハハハハ! 余裕がないではないか羅刹王! それで我らの同盟を破ろうとは、大口にも程があるぞ!」
その憤怒を嘲笑い、必要以上の大声が辺りを支配する。
「この、声は……」
「どうしてここに……」
そんな疑問を、再び笑い飛ばす声の主は、天空より宮殿の屋根を灼いて降臨する。
「何、気紛れという奴だ! 案ずるな、地上に在ってファラオに不可能なし。万物万象が我が手中に在る限り、全ては余の思うままよ!」
現れるは、黄金の船。
太陽を背にした姿は、神々しさすら感じさせる。
「……気紛れは良いけれど、来るならもっと早く来たらどうかしら。明らかに絶好の機会に向けて控えていたような様子だけれど」
「それもファラオの甲斐性よ! 余とてこの世界に集った覇王。その魔性を一度嘲笑ってやらねば気が済まぬ!」
全員が見上げる中、最強のファラオは太陽船より宮殿に降りる。
「……テメエ」
「名を知ってから逢うのは初だな、羅刹王。壮健そうで何よりだぞ?」
苛立ちを隠さないラーヴァナに対し、降臨したファラオ――オジマンディアスは不敵に笑った。
ロムルスはこれにて退場となります。たった二話でしたがお疲れ様でした。
そして、特異点の終わりに向けたカウントダウンはより明白に。
更にここにきておいしいところを奪ってオジマンディアス参戦。
崩壊するローマを舞台に、戦いは佳境に入ります。