Fate/Meltout -Epic:Last Twilight- 作:けっぺん
筆は進みません。邪な考えは駄目。
さて、二章ですが、今話を最終節にしようと思っていたのですが視点変更の多さ、長さがえらいことになるので二節に分けさせていただきました。
今回は前半となります、どうぞ。
『我らは悪!』『我らは混沌!』
『善に抗う者!』『秩序を乱す者!』
『善なるならば!』『救済を食め!』
『我らが同胞は!』『救済の一つを断った!』
『英霊の極みに立ちし者を!』『過ちへと! 敵対へと導いた!』
『なれば我らも同じくしよう!』『救済を断て! この時代を焦土と変えよ!』
『末世への伏線を消し去るのだ!』『この時代諸共に!』
『我らが王はそれを望む!』『善の極致など、我らは許容しないッ!』
+
「……何あれ」
「恐らくは羅刹王の秘中の秘……奥の手という奴だろう。流石に、恐ろしく思うな。あんなものが地上に現界し得るなどと」
通信越しで見るその姿は、足の無い巨人を連想させた。
二つの存在が絡まり一つの形を成している。見るも悍ましい肉塊は、顔らしい部分を縦に裂いて金切声のような叫びを上げている。
多分それは、言葉の意味を理解しようとするだけ馬鹿馬鹿しいものなのだと思う。
「それで、どうする。ダレイオス三世は討伐し、征服王は神殿へ向かった。羅刹たちももういない。我ら軍師の仕事は終わりかね?」
「ええ。それでいいでしょ。後はハクト君がどうにかするわ」
これまたサクラに取り寄せてもらったガムを口に放り込む。
市販の雑なグレープ味は、こういう場所で味わおうとも変化は感じられない。
「信頼している、という訳ではなさそうだが?」
「信頼はしてるわよ。ただ、まあそれ以上に当てつけね。十年くらいかしら、ひっさしぶりに連絡してきたと思ったら、また世界の危機ですって? 巻き込まれるこっちの身にもなれっての」
「しかし、君は彼らの依頼を請け負ったのだろう」
「何もしない訳にもいかないでしょ。私だってレジスタンスやめて十年、何もしてこなかった訳じゃない。地上に返してもらった恩は返すわよ」
どちらも、本心だった。
はじめ、連絡を貰った時は驚いたものだ。
メールを開いてみれば、また力を貸してほしいという、呆れ果てた内容だった。
原因不明の世界の危機がなければこれだけ経っても連絡を寄越さないつもりだったのか――まあそれは置いておくとして。
力を貸すことは吝かではない。何もしなければ世界が終わるというならば、あの時みたいに付き合おうという意思はあった。
けどそれ以上に――文句があったのも事実。
とりあえず再会したら一発殴ってやろうと思ったものの、その気に躊躇いが生まれたのは、彼らの姿を見た時だった。
サーヴァント――メルトリリスは仕方ない。全盛期で召喚される英霊はどれだけ時間が経とうとも肉体に変化はない。
そして、ハクト君もまた、以前のままだった。
これも仕方ないことだ。アバターを変える、霊子体に傷がつく、そうした変化がなければ、月の世界は不老であり不死の世界。
私は今回、以前のアバターを使わず、ありのままの自分を投影して月に来た。
多少は予想出来ていたことだが、一切代わり映えしない月には驚いたものだ。
そして、少しだけ哀れにも感じた。
彼らに時の変化はない。もしくは、自身の時の変化を忘れるほどに、地上の変化に掛かり切りなのだと。
――……まったく、誰もかれも、ここは変わっていないわね。
そう、変わってないのだ。あの時のまま、ハクト君は向こう見ずで、考え無しで、馬鹿な存在。
当たり前のように世界の危機に立ち向かう。
それに対して、時の変化に関する、言いたかった文句など言えるものか。
まあ――代わりに新たな文句が生まれた訳だけど。
「ま、これはテストね。この程度、軍師の力なしで何とか出来なければ、力を貸す価値もないくらい鈍ってるってことよ」
「ほう。あそこまで悍ましい化け物相手が試験とはな」
「あんなの何でもないでしょ。彼らは――私たちは、もっと悍ましい怪物を知ってるわ。それに比べれば可愛いものよ」
ガムを膜のように広げて、息を吹き込んで膨らませつつ思い出す。
あの時起こった戦い。その黒幕たる女性の姿。
最後の戦い、離れていく彼らの姿。
そして――かつての相棒たるサーヴァント。
「……」
どうなっただろう。
同じ特異点に召喚されて、ただの一度も話さなかったサーヴァント。
まだ生きているのだろうか。それとも……。
「……」
やめた。考えても仕方がない。
今回の彼は私を知らない。それが、サーヴァントというものなのだ。
「――さ、終わるまでどうしようかしら。キャスター、貴方はいいの? あの征服王を追ったりしなくて」
「構わないさ。軍師は傍にいるものじゃない。駆け抜ける彼の背中を見る、その行く末を保障する――それが、私の役目だ」
「……ふうん。ま、貴方がそれでいいなら、何も言わないわ」
諸葛孔明とイスカンダルに縁がある。どうにも納得しがたい話だ。
だが、彼の目は嘘を言っているとは思えない。
彼らにあった“何か”は、紛れもなく諸葛孔明の心を動かしたのだ。
その信頼感は、ハクト君が誰かに向ける無節操なものと同じ。
決して揺らぐことのない、確かな絆に思えた。
+
『――――――――――――――――ッ!!』
その叫びは、明確に僕たちに向けて放たれた。
聖杯を利用した、オジマンディアスに仕込んでいた最終兵器。
悍ましい肉塊は、最早太陽王の気配すら感じられない。
『敵性反応はオジマンディアスさんの固有結界を依り代にして現界しています! 神殿を消滅させれば、この世界との繋がりは断たれますが――』
「ッ――難しいな!」
大樹の如き腕が振り下ろされる。
牛若が太夫黒を操り、そのリーチから逃れるも、凄まじい風圧が魔力を伴い、物理的ダメージをも発生させる。
それはメルトが防ぎきるが、何度も対処できるものではない。
恐らく、アレにも霊核は存在するのだろう。
霊核を潰すことと、神殿を消滅させること。どちらも困難極まる。
「ちっ……埒が開かん。一旦離れるぞ!」
「くっ――」
百貌が距離を開ける。確かに、有効打を考える必要がある。
勝算が無いまま戦っても、良くてジリ貧になるだけだ。
「牛若!」
「御意に!」
一先ず、肉塊が届かない距離まで離れると、それは此方を睥睨しながらも動かなくなった。
しかしそれは、未だに此方を敵として見ていると同じ事。
油断すれば何をしてくるか分からない。警戒を続けながらも、策を考える。
「さて、どうするか……」
「どっちが手っ取り早いかしらね。あの神殿一つ溶かしきるのは、今の私だと時間が掛かるわよ」
メルトの宝具であれば、あの神殿を溶解させることは可能だ。
だが本来の出力であればまだしも、制限が掛かっている今の状態だと聊か時間が掛かる。
僕には、あれほどの神殿を破壊する手段はない。
対城宝具に相当する呂布の宝具であっても、あの神殿を崩すことは出来ないだろう。
「ふむ……では、狙いはあちらですか。見るからに魔性の身、一つ私が打って出ます」
太夫黒から降りた牛若が前に出る。
尋常ならざる魔力を帯びた刀は微かに震え、周囲の空気までもを鳴動させている。
「牛若、何か手が?」
「ええ。物は試し。遮那王流離譚が一景、魔を打ち払う薄緑の音色。御覧入れましょう」
それは先程の、有利不利を覆す空間転移と並ぶ牛若の宝具。
――いや、そもそも、それらは一つの宝具か。
牛若丸――後の源義経。日本において知らぬ者無しとも言えるだろう武将。
彼女の伝説は、纏めて一つの宝具として祭り上げられたのだ。
それが『遮那王流離譚』。伝説を基にした奥義の集約にして、牛若の生涯の具現化。
そして、その奥義がまた一つ解放される。
「我がご先祖、源頼光の威風を照覧あれ。悪しき土蜘蛛をも切り払ったこの歌声、醜悪な魔性にはさぞ堪えよう!」
薄緑――かつてその名を「吼丸」としていた頃、所持していた退魔の顕現。
それを発揮したのが自身でなくとも、先祖に匹敵する才能で以て牛若はその神秘を引き出す――!
「吼丸・蜘蛛殺――!」
『――――――――――――――――ッ!!』
空気の振動による不可思議なまでの威圧は、獲物を前に威嚇する蛇を思わせた。
狩られる者へ恐怖を与えるだけの行為。ながら、武人と共にあって魔性を相手取る為に神秘を宿した刀であれば、その鳴動は魔を屠る。
肉塊が全体を軋ませ、悲鳴を上げる。
震えた空気は肉塊に裂傷を生み、血のような液体を噴き出させる。
だが――
「……足りぬ、か。どうやら“魔”の規格に収まらぬ化生らしい」
その神秘を解放し終えた後も、それは健在だった。
裂傷は再生していく。即座に、とはいかないが、この奥義を以て致命傷を与えるには同じ刀があと数振り必要だろう。
牛若が僅かに歯噛みした、その時。
『皆さん! 後方から神殿に向かう反応があります! これは――――』
雷を伴った疾走。振り返れば、その戦車がすぐに見えた。
荒々しく砂を巻き上げ、僕たちから少し離れたところに、征服王は戦車を停める。
「おう、壮健そうだな、時を超えた勇士たち。とは言え、ありゃ何だ。太陽王めの成れの果てにしては性質が違い過ぎよう?」
「聖杯の影響で変質したんだ。アレを倒したい、力を貸してほしい!」
「どの道、どうにかせねば不味い相手だろうに。して! 何処を打ち砕けば良い!」
『本体の霊核か、神殿を破壊してください! そうすれば現界を保てなくなります!』
注意深く肉塊を観察しながら、イスカンダルは問う。
あの人を逸した存在を前に、彼は一切物怖じしていない。
要点を確認すると、一つ頷いた。
「相分かった。であれば、あの肉を削ぎ落とす手数と威力が必要だな。見ての通り再生能力まであると来た。速度かもしくは規格外の一撃か――」
「でしたら、問題ないでしょう」
イスカンダルの考察に答えた、淑やかな声。
傍からではない。それは、天からか。
声の主を探し、天を見上げた瞬間、肉塊の頭上に漆黒の太陽が顕現した。
「あれは――」
そして、その中から飛び出してくる人影。
この特異点において、オジマンディアスが傍に置いていた、知己……のような間柄の女性。
よく分からない理由でここまでやってきた、
「タマモ・オルタ……?」
「はい。私です。さて……我らが領域の王の厄介に集っていただき、まずは感謝を」
降り立ったタマモ・オルタは、粛々と一礼した。
細部まで洗練されたその様には、焦りのようなものは見られない。
「ふむ、太陽王めの軍師か何かか?」
「そのようなものです。さて、ああなってしまってはもう助かりません。完膚までに叩き潰すしか、手段はありません」
「叩き潰すって……その手段が――」
「あります。というか、そのために私が彼を招いたのですから。太陽を堕とした英雄も、この時のためにかの大英雄は残しておいたのでしょう」
「……?」
まるで、この展開を悟っていたかのように、坦々と話す。
既に手は打ってある。或いは、“そうなる事”を確信している。
「ああ、シータさんは既に発ちました。これから起こる事は、神殿内には誰もいないと考えて立ち会いなさいませ」
気掛かりの一つだった少女の不在を先に告げ、タマモ・オルタは肉塊を見上げる。
シータは……ラーマのもとへ向かったのか。
間に合うかは分からない。
限界を迎えるのと、再会、どちらが早いか、僕は知る事が出来ないだろう。
ラーマの頼みを――シータの無事の確認を成せなかった事は心に残るが、こればかりは彼女を信じるしかない。
言葉の後半の真意を考える前に生まれたのは、そんな心配ごとだった。
そして、心の整理をようやく終えた時だった。
一つ、二つ、三つ。
恐らくはタマモ・オルタが待っていたのだろう、途轍もない威力の援護が肉塊を爆散させたのは。
+
――そして、観測する。
神話の激突。その一幕を。
「はっ――――!」
「オォ――――ッ!」
刹那に鳴り響く金属音は、一つ二つではない。
積み上げられる激突は百、千を超えようと決着を告げる事なく、苛烈さを増していく。
瞬きの間に、矢は五本放たれる。
神速で以て槍が打ち払い、反撃の炎が噴き上がる。
それを見越して放たれていた特別な一矢は炎を相殺し、衝突の跡を貫いて矢が敵の首を狙い駆けていく。
矢は渾身の力で叩き落され、周囲に炎熱を迸らせ――
「どうした。オレの首を獲った一矢ほどの威力が感じられんぞ。あの時の激情を以てすれば、今の矢でオレの腕一本は奪えただろう」
「今の貴様に、あの時の呪いは無いだろう。であれば同じ手は通用しないと考えたまで。そのような挑発に乗る私とは思わないことだ」
「……挑発のつもりはなかったのだがな。まあ、オレもあの時の矢を二度と受ける理由はないが」
「それでいい。嘲りも未練も残させん。今度こそ、貴様に何の差も無き状態で勝利する。施しも、授かりも、理由にはさせん!」
十分の一秒とて掛からない速度で、アルジュナが放った矢はカルナにまで届く。
見越した一撃だ。打ち払い、爆熱で加速したカルナはアルジュナに肉薄する。
心臓目掛けて突き出された槍。対処する側はアルジュナになる。
この距離では矢は効果を成さない。だが、それで敗北するようでは、カルナを相手に一分と持つまい。
体を逸らすと同時にアルジュナは槍を蹴り、軌道を曲げる。
隙は生まれない。追撃を許さぬとばかりにカルナが放出した炎により、アルジュナは距離を開けざるを得なくなる。
願ってもないことだ。
アルジュナは弓兵。距離を開く事は、アルジュナにとって有利を生むことに外ならない。
矢を番えて念じるは、必殺にして必中の奥義。
――望むところだ。
カルナもまた、分かり切っていたように応じる。
自身のそれは、英霊になって尚引き摺る呪いによって「実力が上の敵」には使用出来ない。
だが、自身はアルジュナには劣っていない。そも、平等な戦いで二人が最後まで比べ合った事などないのだから、差を見出せよう筈もない。
故に――
『
二人の奥義は一切威力を落とすこともなくぶつかり合い、どちらが勝る事もなく爆発する。
「ッ――!」
「ふっ――!」
そんな事は分かっていた。これで決着しては、宿敵とは呼べない。
命運を分けるのは、この激突に怖じる事なく、どういった行動を起こすか。
アルジュナはこの爆発が二人を隔てようとも、カルナの姿を逃す事はない。
その千里眼は宿敵を完全に捉えている。放たれた矢は、爆発で威力を僅かも衰えさせることなく、カルナの首目掛けて飛んでいく。
対するカルナの魔力放出は、防御に使われる。
極小の太陽を以て矢を焼き尽くし、残った炎熱をそのまま射出する。
跳躍で回避したアルジュナは、更に追撃を行おうとして――
『――――――――――――――――ッ!!』
その大魔の咆哮を耳にした。
「……今のは」
カルナは僅か、そちらに意識を移している。
ならば問題はあるまい、と自身も目を向ける。
千里眼を以てしても、それを目にすることは出来ない。
だが――その魔性の居場所は、その咆哮だけで察知した。
「オジマンディアスの果て。或いはこの時代の果てか。慣れない事をするものだ。変じたとて、悪に立つ者ではあるまいに」
「あれが何か分かるのか、カルナ」
「この可能性を考慮しておけと言われていただけだ。そして――この結末に至ったら全てを差し置いて制止せよ、とな」
「――何?」
アルジュナにとって、それは聞き捨てならない事だろう。
カルナは今、信念を賭してアルジュナと戦っている。
余事に目を向ける事など許されない。まして、自身との戦いを差し置くなどと――
「落ち着けアルジュナ。オレは貴様との戦いを捨てはせん。だが――これはこの特異点において奇妙な縁を結んだ妹との契約でな」
「……妹、だと?」
「共通した、兄と仰いだ者がいる。そして、世界に個として自身を刻んだのはオレが先。つまりオレが兄だと思うのだが……違うか?」
「待て。いや、待て。何の話だ」
話の見えないアルジュナは困惑している。
この男は気でも触れたのか。何処かずれた無意識な心配はカルナも気にも留めない。
「ふっ、どちらが先かなど些事か。ともかく、オレにも義理がある。少しの間、待っているがいい」
言いながら、カルナはその槍に魔力を込める。
それは、この戦いにおけるどんな一撃よりも神気を感じさせるもので――
「――貴様、まさか」
「なに、これを使ったとて、貴様に退屈はさせん。元々、これはオレの力ではない。互いの武芸をぶつけるならば、これの使用は相応しくあるまい」
元々戦いに、この力を使用するつもりはなかったと、カルナは言ってのけた。
カルナが有する最大火力だ。二人の因縁に決着をつけるに足る威力を持っている。
だが、それを自身の力ではないと数に入れなかった。槍を使うべきは、アルジュナではなくもう一つの縁であると。
「……ふん」
その、一切虚偽のない瞳と言葉に何を思ったのか。
アルジュナはその時自身の行動に、不思議しか感じられなかった。
「……アルジュナ?」
「勘違いするな。貴様にだけ切り札を捨てられては平等ではない。それでは、どれだけ完全な勝利を収めようとも私は満たされん」
カルナの隣に並び立つ。
決して、互いの意識は同じ方向を向かない。
アルジュナにとって、カルナが感じている縁もこの時代の危機も、遥か遠方の気配の正体もどうでも良い。
ただ、この戦いは平等でなければならない。
「例えば、貴様に追い込まれたとして。私は咄嗟にこの真名を詠むかもしれん。それで逆転をしても夢見が悪いだけだ。貴様が己の理由でそれを捨てるならば、私も自身の理由で我が切り札を捨てるまで」
「……そうか。気を遣わせるな」
「いらぬ言葉だ。早急に済ませるぞ。私にとっては元々、どうでも良い事だ」
アルジュナはその右手に、自身が持つ最大の奥義を紡ぎ上げる。
カルナは纏っていた鎧を燃やし尽くし、巨大な紫電の槍を顕現させる。
「神性領域拡大。空間固定。神罰執行期限設定――全承認」
「最早、戦場に呵責無し。我が父よ――赦したまえ」
マハーバーラタにおいても、その二つの宝具が同時に解き放たれたことはなかった。
だが、この異質な特異点にあって初めて、二つは共に真価を発揮する。
同じ敵に向けて、ではない。
二つが一つとなった大魔であれば、片方ずつをどれだけ多く呑み込めるか――二人は、無意識にそんな競争意識を持っていた。
「シヴァの怒りを以て、汝の命を此処で断つ」
「インドラよ、鎧の代償、今こそこの地に刻み込もう」
互いの規格外のエネルギーは、今か今かと解き放たれる瞬間を待っている。
誰が狙いであろうとも、関係はない。
担い手が己を操れるとあらば、全力で応じるのが自身の役目だと――――!
「滅びへと導け――
「空前絶後、終わらせろ――
破壊神によって齎された光球が奔る。
雷神が与えた紫電の閃光が迸る。
そして、同時に着弾する宝具はもう一つ――――
+
――わたしは、あまりにも、分かっていなかった。
自身が召喚したサーヴァントの力を、あまりにも、信用出来ていなかった。
信頼はしていた。わたしの召喚に応じてくれたのだから、きっとわたしを手助けしてくれる。そう、思っていた。
ただ、それでも、そのサーヴァントのステータスは平均的だった。
「――――」
「さて、と。ボクの出番はここまでだ。君の両親も少し助けた。十分だろう?」
わたしのサーヴァント――ゲートキーパーは、一切感慨も持たず、戦の終了を宣言した。
周囲に残る悪魔はいない。ラーヴァナは戦いの末消滅し、悪魔を生み出していた宝具の効果も切れたと聞いた。
だが――それよりも前に、この辺り一帯の悪魔は一匹残らず殲滅された。
彼一人の宝具によって。
「……なんと」
「……凄いな。ここまでか」
「よもや……これほどの英霊がいるとは」
ゲートキーパーは、ただの一歩も動いていない。
動かずして発動した宝具は、悪魔を遥かに凌駕する制圧力でもって、全滅を成したのだ。
「――これが、貴方の宝具ですか」
「そうさ。ボクの武器庫――普段の宝具とは少し違うみたいだけどね」
基本的に、サーヴァントの宝具は一つ。
強力な英霊で二つか三つ、大英雄が最適なクラスに据えられればその上もあるようだが、彼はそんな枠組みに入らなかった。
一体幾つ、宝具を放っただろう。
近接武器を射出するという本来とは違う使い方なれど、それら一本一本は確実に敵を貫き、その命を奪っていった。
人を超える悪魔を物ともせず、百を超える武器でもって彼らを一蹴した。
「……凄いです。ここまでのサーヴァントだったとは」
これで終わり、興味を無くしたように、ゲートキーパーは椅子を召喚し、腰かけた。
「それで、良いのかい? 君はこの時のために残っていた英霊だろう?」
「……そうであったな」
羿が前に出る。
彼は、大英雄アーラシュに後を託され、残っていた。
彼が残った理由。それを、ようやく理解する。
「……太陽が変じたか。であれば、儂がここにいるのも道理であった」
「……何か、手が?」
「うむ。我が友に託されたゆえな。恐らくは今の状況をどうにかしろと、大方そういう事だろうよ」
太陽王オジマンディアスの変質。
ここからは視認できないが、遠見の魔術で捉えている。
悍ましい肉塊に相対して、お父さまとお母さまも攻めあぐねているらしい。
「なるほど。君は太陽を落とした英霊だった。うってつけな訳だ」
「真実の太陽を射落とした訳ではない。アレはあくまで日輪の神鳥だったのだがね――とはいえ、それを言い訳に失敗する訳にもいかないか」
苦笑しつつも、羿は矢を番える。
羿――太陽を落とした英雄。
同時に上った十の太陽のうち、九つを射落とした規格外の弓兵。
その英霊が宝具とするのであれば、その射法以外考えられまい。
「――空に太陽は二つといらず、地に落ちたる以上猛威を潜めぬならば害悪以外の何物でもなし。必要以上の陽光は、世界の敵なり!」
カリオストロも、キャスターも、真剣な表情でその一矢を見届けんとする。
わたしは、信じていた。願っていた。
羿の宝具が、あの最後の敵に痛打を与えてくれることを。
お父さまを、お母さまを援けてくれることを。
「――
イスカンダル、タマモ・オルタ(恐らく)参戦。
そしてカルジュナと羿の宝具が解放です。
次話で二章を終えさせていただきます。
ところで、最近ツイッターではローズとノートの共依存というよく分からないイフ関係が構築されています。なんだこれ。