Fate/Meltout -Epic:Last Twilight- 作:けっぺん
Zeroイベに続いてプリヤイベ。CCCイベの開始が待たれます。
「――ハクトにメルトリリス、それからブーディカ。で、シラハな。忘れるまで覚えとく」
モードレッドとジークフリートに名乗ると、特に興味なさげにモードレッドは吐き捨てた。
なんというか、随分と粗暴な性格のようだ。
父――母――どちらにせよ、後に親となるのだろうアルトリアとはまったく逆に思える。
「しかし……シラハの魔術は中々のものだな。気配も何もない、遠方への意思送信とは」
『私の魔術じゃないけどね。ムーンセルの機能を使っているだけで』
「なんだ、そうだったのか。あんの
……何やら、その名を呼ぶニュアンスが微妙に悪質だった気がする。
ジークフリートは、いつか出会った時と変わらない。
淡々と、荘厳とした雰囲気を崩さず、誰しもが夢に描くだろう英雄然とした振る舞いを保っている。
「じゃ、モードレッドのご希望通り、キャメロットに戻ろっか。これで目的も達成したし」
ブーディカが踵を返す。
それに付いて行こうとしたが――ジークフリートがそれを止めた。
「お前たち、この国を脅かす者がいる事は理解したが、その居城は突き止めているのか?」
「――――実は、まだなんだよね。マーリンでも見えないトコロ……だから向こうが攻めてくるまでに、戦力を十分にしておこうって魂胆だったんだけど」
そういえば、敵がいるのは知っていたものの、何処にいるのかは聞いていない。
歴代でも有数の千里眼の担い手であろうマーリンをして、視認することが出来ない相手。
アルトリアたちは……不可視の敵が攻めてくるのを待っていたのか。
「で、コソコソ仲間を集めながら籠城してるって訳か。地味なことしてんなぁ……」
「仕方ないって。マーリンに見えなきゃあたしたちにはどうしようも――」
『……ねえ、白斗君、もしかしてこの、正体不明の反応がそれじゃないかな?』
ふと、言葉を挟んだ白羽。確かに、この時代に来て間もない頃にそんなことを言っていた。
ムーンセルですら前例を知らない存在。
「正体不明、だあ? なんだそれ、一番怪しいじゃねえか。真っ先にソレ叩くべきだろ普通」
『いや、如何せん、状況すら知る前だったし……』
「判断は正しい。それで、それは何処にある?」
ジークフリートの問いに、白羽が位置情報を渡してくる。
「……」
「へえ、君たちこんな情報も持ってたんだ。これが解決に繋がれば、それこそお手柄だよ」
この場所――僕たちがブーディカと出会った位置から数キロ西――より、更に西。
未だその反応に動きはない。一点に留まっているようだ。
「……モードレッド?」
複雑な顔つきで位置情報を見るモードレッド。
彼女ならば、この時代のブリテンの地理も分かるだろう。
何か、良い思い出ではないナニカがある場所なのか。
その疑問は、すぐに答えが出される。
「……カムラン。間違いない。その侵略者はカムランに陣取ってる」
「――カムラン」
なるほど、あまり口に出したくはない名前だろう。
なんの皮肉か。その反応は、アーサー王伝説終焉の地に在るらしい。
「チッ……クソ。行くぞ。本当なら今すぐ向かってぶちのめしたいが、まずはキャメロットに行くことからだ」
拳を強く握り込み、苛立ちを隠さないモードレッドは、しかし抑え込んだ。
しかし――
『待って! その方向から何か来てる!
「ッ」
それを阻害する反応が出現する。
観測の域に引っ掛かり、少しずつ迫ってきている。
「純粋な殺気――人ではないな。これは……」
ジークフリートが背中の大剣を引き抜き、構える。
モードレッドもブーディカも同じ。剣を構え、未だ見えぬ敵に備える。
「……メルト」
「ええ。いつでも行けるわ」
恐らく、少なからず戦闘にはなるだろうと思っていた。
戦いから長く離れてはいたが、だからといって衰えはない。
この事件の初戦闘。
その敵は、地上ではなく、空から来た。
「――竜?」
「ワイバーン。竜種としては高いレベルではないが、侮れんぞ」
前脚を持たない竜の一種、ワイバーン。
黒い鱗で全身を包む、僕たちの生きる時代にはいない幻想種だった。
「数は三体か。へっ、面白え。オレが全部仕留めてやるよ」
「落ち着け。お前が如何に強者とはいえ、不要な消耗は避けるべきだ」
ジークフリートの言う通りだ。
モードレッドはアーサー王を打ち倒したことから相当の実力を持っているだろう。
だが、それでも相手は竜。
一体でも危険な存在、当然ながら複数を相手にするものではない。
「幸いサーヴァントが三騎いる。一人一体受け持ち、倒し次第援護に回る……それで良いな」
メルトは月ほどの出力はないまでも、一流のサーヴァントと打ち合えるステータスを有している。
僕も、到底サーヴァントには及ばないが、彼らを補助し、少しなら力となれる。
だが、ジークフリートは数に入れていないようだった。モードレッドとブーディカも、その意見に賛同しているらしい。
まあ、当たり前だ。僕は論外として、メルトも地上に降りる際、意図的にハイ・サーヴァントとしての気配を消している。
僕たちが戦える存在という確信がないのだろう。
「ハク」
「……ああ」
メルトには周囲の警戒を任せ、僕自身は戦いをマスターとして見る。
必要とあらば、僕たちも前線に出る。
「チッ、一人で良いのに……ま、いいや。だったらオレの分をさっさと始末して、お前らの獲物も叩き切ってやる!」
もうすぐ近くにまで迫っていたワイバーンの一体を、雷の魔力を放出して突撃し、迎撃する。
ムーンセルから供給される魔力ならば、多大な魔力消費を伴うこの戦い方も可能だ。
それを知っているのか、知らずに構わずやっているのか。
ともあれ、モードレッドの初撃は狙い違わずワイバーンに直撃する。
剣脊での一撃で叩き落とし、そのまま追い打ちをかける。
「ふっ――!」
「よし、お姉さんも負けてられない、な!」
ジークフリートとブーディカも続く。
黄昏の聖剣で迎え撃ち、牙の一撃を盾で受け止める。
「■■■■■■――――!」
「うるせえ! このトカゲ野郎!」
自分の倍以上もある体格のワイバーンに一切物怖じせず、モードレッドは魔剣を叩きつける。
強靭な鱗は、魔力放出を伴った斬撃でも身の芯まで届かせず、皮膚を焦がすだけに留まる。
流石、最強の幻想種と言うべきか。その耐久力もさることながら、敏捷性も力も英雄と真正面から戦えるレベルだ。
知恵のない種族なのだろう。力任せに爪牙をぶつけてくるだけだが、獣と対峙するより遥かに脅威を感じる。
神話や叙事詩において、無辜の人々を脅かしてきた竜は伊達ではない。
だが、それを相手取るのも、歴史に名を遺した一流の英霊だ。
「このぉ!」
絶え間なく繰り出される爪に守勢であったブーディカだが、力押しの一撃を弾くことで隙を作り、剣を振るう。
一旦距離を置いたワイバーンは、既に剣のリーチにいない。
それでもブーディカに迷いはなく、そのまま剣を振り抜いた。
その一振りは届かず、しかしワイバーンを襲う。
剣から発射された魔力塊。この剣の特性によるものだろう。それは小さな弾丸となり、ワイバーンの眉間に直撃する。
弾丸の術式は、魔術師の基本として習得しているが、威力はそう変わらないように思える。
真名解放もない。敵を確実に穿つ一撃というよりは、牽制に使うものだろう。
「まだまだっ、行くよ!」
二、三と剣を振り、怯んだワイバーンの急所に一つ一つが直撃していく。
モードレッドが弱点など知ったことではないごり押しだとすれば、ブーディカは堅実に、確実に消耗を狙う戦法。
そしてジークフリートは。
「おおッ!」
攻撃を躱すのではなく、受ける。
邪竜の血を浴びたその肉体は生半な攻撃を通さない。
加えて、相手は竜。ジークフリートは叙事詩において、竜殺しを成し遂げた大英雄。その相性差は歴然だ。
彼の信ずる剣もまた、“竜の斬り方”を心得ている。
共に竜殺しのエキスパート。
一閃。他の二体より早く、深く、ジークフリートが相手取ったワイバーンは剣を通した。
振り抜いて、返す刀でまた一撃。
本能的に距離を置こうとしたワイバーンの尾をいとも簡単に切り裂き、落とす。
今の打ち合いだけで敗北を悟ったらしい。一転、ワイバーンは防戦一方となった。
しかし躱そうとするたびに、その速度を勝る聖剣を逃れきれず、自慢の鱗を飛散させていく。
結局、そのワイバーンはもう一度攻勢に転じることなく。
「ッ」
心臓に二撃。そのまま力を失い、地に伏した。
「オラァ!」
モードレッドもまた、決着を付ける。
脳天に叩きつけた魔剣から多大な雷を放ち、絶命させる。
命を奪った確信があったのか、倒れたワイバーンに見向きもせず、ブーディカが相手取る最後の一体に向かう。
確実に疲弊し、最早数分と持つまいといったワイバーンの背に魔剣を突き立て、瞬く間に命を刈り取った。
「おっし。全然物足りないが、これで終わりだな」
「ふぅ……ありがとね、モードレッド。あたしだけだったらジリ貧だったかも」
ブーディカは自身の獲物を奪ったことに恨み言一つ言わず、素直に礼を告げてその頭に手を置く。
「ちょ、おい! ガキ扱いすんな!」
「えー。良いじゃないの。ブリテンの英霊でしょ? あたしの子みたいなものだもん」
その手を振り払い、また置かれ、また振り払いという不毛なやり取り。
一方で三体全て仕留めたことを確認し、ジークフリートは戻ってくる。
「お疲れ様、ジークフリート」
「ああ。どうだった。俺たちは此度の戦い、参ずるに相応しい存在か」
「勿論。是非力を貸してほしい」
頷くジークフリート。その背後、竜を見やる。
「……このワイバーンは、野生なのか?」
「そんな訳ねえよ。亜竜のガキでも、ブリテンの竜はこんな軟弱じゃねえ。竜ってのは一昼夜掛けて討つモンだろ。コイツら、まるで骨と皮だけの死体だよ」
この時代のブリテンに最も詳しいモードレッドの言葉は正しいだろう。
最早諦めたのか、頭を良いようにされている辺り、微妙に恰好が付かないが情報は信頼できる。
しかし……今のワイバーンは曰く、死体の如き呆気なさ、か。
「俺も、油断はならないが然程手強い相手ではないように思える。魂の籠った魔獣の方が幾分強いだろう」
「そうなんだ。ま、どっちにも縁はなかったけど……そこまで強く思えなかったのは確かかな。ローマの将軍のが強かった」
どうやら、彼らをしてそこまで評価の高い敵ではなかったようだ。
「死体って話、間違ってないみたいよ。ほら」
メルトが伏した竜を指す。
「……はぁ?」
三体のワイバーンは、既に朽ち果てていた。
灰のような粒子になって消えていく竜は、明らかにこの世界に在る生物ではない。
発生した異変によって生まれた者であることは間違いないか。
「竜の亡骸か、もしくは亡霊か。何にせよ、碌な性根の能力ではないな」
『でも、こんな能力の使い手って一体……っと、観測範囲にサーヴァント。今の戦いに勘付いたみたい、近付いてきてるよ』
「またか。使い物になると良いけどな」
サーヴァントが来ているようだ。
未だに異変の正体が掴めていない以上、戦力は幾らあっても過剰にはならない。
暫くその場で待機し、サーヴァントを待つ。
『なんだろう、走ってきてるのかな……?』
やがて、見えてくる。
本当に駆けてきているようだ。常人ではありえない速度で草原を疾駆し、接近してくる。
しかし……なんだろうか。
協力意思がある英霊である筈なのに、何処か……
「ッ……」
ある程度の距離で、サーヴァントも立ち止まる。
長い黒髪に、黒の喪服。薄い黒のヴェールと一色で体中を覆う女性だ。
しかし、顔は見えない。耳まで隠す無貌の仮面は、外界との関わりを完全に遮断しているようだった。
そして、両手で持っているのは瘴気に覆われた武器。
あれは……大剣か。だがその大きさは、凡そあの体格の女性が扱うものではない。
「……――」
「お前は……」
その雰囲気から、察してしまう。
モードレッドたちも同じ。その手から剣を離さない。
彼女は決して、協力意思があって近付いてきた味方ではなく――
「――Sieeeeeeeeeeeeeeeee――――――――ッ!!」
喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げ、サーヴァントの魔力は爆発する。
「チッ……!」
モードレッドが対応する。
とにかく抑えようとしたようだが、対するサーヴァントもまた武器を振るう。
「Sieeeeeeeaaaaaaaarrrr――――!!」
「この……寄りによって螺子飛んだバーサーカーかよっ!」
数合の剣戟。モードレッドは攻め切ることが出来ず、距離を置いて一旦戻ってくる。
「ちょっと、話し合いとか……」
「話して通じる奴じゃねえよ。コイツは敵だ。さっさと吹っ飛ばすのが正解なんだよ」
敵……!?
何故。この時代に召喚されている英霊は、皆この異変を解決すべく降り立った者の筈だ。
それが、まさか敵対するなど……
「ハク、冷静に。元凶側に意思があるなら、英霊を起用することも考えられる可能性よ」
「だけど……」
此方が異変を止めるのに、英霊の力を借りたように。
異変もまた、英霊に助力を受けている――可能性としてはあり得る話だ。
しかし、理屈では分かっていても、信じがたいものではある。
またしても、英霊と敵対しなければならないなどと。
「――――!」
「この狂犬が……!」
「――待て、モードレッド!」
剣を前に構え、強大な魔力を発現させようとしていたモードレッドをジークフリートが制止する。
注意を促すようなものではなく、それ以上の必死さが見えた。
かつて、月の裏側で彼と共に戦った時も、これほど必死さを表すことはなかった。
「あ? 何だよ」
「……すまない。剣を収めてくれ。よもや、このようなことがありうるとは……」
ジークフリートの声は苦し気だった。
声は運命を呪うように重く、敵に対し戦闘意思を持たないように剣は下ろし。
「やはり、英霊となってもラインの呪いは健在か。しかし、何も彼女まで蝕むことはないだろうに……!」
狂戦士は駆けてくる。
ジークフリートの言葉など聞こえていないように、躊躇いなく振るわれる剣。
受け止めるも、そこから攻めに転じることはなく。
担い手の悲痛の理由を周囲に証明するように、聖剣の黄昏が相手の瘴気を僅かに晴らす。
「同じ、剣……?」
瘴気の間から見えた黒染めの剣は、色こそ違えどジークフリートと同じだった。
竜殺しを成し遂げた聖剣。その名も高き『
担い手の死ぬ度に、転々と新たな持ち主を選び、その性質を聖剣に魔剣に変えていった剣。
「まさか、あのサーヴァント……」
性質から、あの聖剣を宝具として持つ英霊は複数いよう。
だが、その中でもジークフリートがあれほどに動揺する相手ともなれば、一人に絞られる。
「言葉は聞こえないか? 目を閉じ、耳を塞ぎ、お前はそう在ってしまった。全て、俺の浅慮さが原因だ……」
「Sieee……!!」
「すまない、過ちがための復讐が、お前を狂気に駆り立てた。俺の責任、だが……お前が死して尚、過ちを駆け続けるならば……」
「……e、g……」
ニーベルンゲンの歌において、主要となる人物。
手段を択ばず盲目的に、暗殺された夫の復讐を果たしたブルグントの姫君。
「俺は、それを正す――クリームヒルト!」
「Sie、g……f、rie、d……!」
夫の名は、ジークフリート。
暗殺された彼を殺したハーゲンの殺害に、その後の生涯を賭した復讐鬼。
バーサーカー、クリームヒルト。セイバー、ジークフリート。
ここに、最も望まれないだろう形で、二人の邂逅は果たされた。
オリ鯖、バーサーカーのクリームヒルトです。FGOでも度々語られている、ジークフリートの奥さんですね。
オリ鯖は今後もガンガン出てきます。
キャラを立てられるかは知りません。頑張ります。
また、敵にもサーヴァントがいることがハクたちに判明しました。
竜やら何やら倒してれば解決するなんて甘っちょろいことはない。