Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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プリヤコラボが発表されましたね。
Zeroイベに続いてプリヤイベ。CCCイベの開始が待たれます。


第四節『不穏の向こう』

 

 

「――ハクトにメルトリリス、それからブーディカ。で、シラハな。忘れるまで覚えとく」

 モードレッドとジークフリートに名乗ると、特に興味なさげにモードレッドは吐き捨てた。

 なんというか、随分と粗暴な性格のようだ。

 父――母――どちらにせよ、後に親となるのだろうアルトリアとはまったく逆に思える。

「しかし……シラハの魔術は中々のものだな。気配も何もない、遠方への意思送信とは」

『私の魔術じゃないけどね。ムーンセルの機能を使っているだけで』

「なんだ、そうだったのか。あんの変質ジジイ(マーリン)に及ぶかもしれねえと思ったのに」

 ……何やら、その名を呼ぶニュアンスが微妙に悪質だった気がする。

 ジークフリートは、いつか出会った時と変わらない。

 淡々と、荘厳とした雰囲気を崩さず、誰しもが夢に描くだろう英雄然とした振る舞いを保っている。

「じゃ、モードレッドのご希望通り、キャメロットに戻ろっか。これで目的も達成したし」

 ブーディカが踵を返す。

 それに付いて行こうとしたが――ジークフリートがそれを止めた。

「お前たち、この国を脅かす者がいる事は理解したが、その居城は突き止めているのか?」

「――――実は、まだなんだよね。マーリンでも見えないトコロ……だから向こうが攻めてくるまでに、戦力を十分にしておこうって魂胆だったんだけど」

 そういえば、敵がいるのは知っていたものの、何処にいるのかは聞いていない。

 歴代でも有数の千里眼の担い手であろうマーリンをして、視認することが出来ない相手。

 アルトリアたちは……不可視の敵が攻めてくるのを待っていたのか。

「で、コソコソ仲間を集めながら籠城してるって訳か。地味なことしてんなぁ……」

「仕方ないって。マーリンに見えなきゃあたしたちにはどうしようも――」

『……ねえ、白斗君、もしかしてこの、正体不明の反応がそれじゃないかな?』

 ふと、言葉を挟んだ白羽。確かに、この時代に来て間もない頃にそんなことを言っていた。

 ムーンセルですら前例を知らない存在。

「正体不明、だあ? なんだそれ、一番怪しいじゃねえか。真っ先にソレ叩くべきだろ普通」

『いや、如何せん、状況すら知る前だったし……』

「判断は正しい。それで、それは何処にある?」

 ジークフリートの問いに、白羽が位置情報を渡してくる。

「……」

「へえ、君たちこんな情報も持ってたんだ。これが解決に繋がれば、それこそお手柄だよ」

 この場所――僕たちがブーディカと出会った位置から数キロ西――より、更に西。

 未だその反応に動きはない。一点に留まっているようだ。

「……モードレッド?」

 複雑な顔つきで位置情報を見るモードレッド。

 彼女ならば、この時代のブリテンの地理も分かるだろう。

 何か、良い思い出ではないナニカがある場所なのか。

 その疑問は、すぐに答えが出される。

「……カムラン。間違いない。その侵略者はカムランに陣取ってる」

「――カムラン」

 なるほど、あまり口に出したくはない名前だろう。

 なんの皮肉か。その反応は、アーサー王伝説終焉の地に在るらしい。

「チッ……クソ。行くぞ。本当なら今すぐ向かってぶちのめしたいが、まずはキャメロットに行くことからだ」

 拳を強く握り込み、苛立ちを隠さないモードレッドは、しかし抑え込んだ。

 しかし――

『待って! その方向から何か来てる! 敵性(エネミー)反応だよ!』

「ッ」

 それを阻害する反応が出現する。

 観測の域に引っ掛かり、少しずつ迫ってきている。

「純粋な殺気――人ではないな。これは……」

 ジークフリートが背中の大剣を引き抜き、構える。

 モードレッドもブーディカも同じ。剣を構え、未だ見えぬ敵に備える。

「……メルト」

「ええ。いつでも行けるわ」

 恐らく、少なからず戦闘にはなるだろうと思っていた。

 戦いから長く離れてはいたが、だからといって衰えはない。

 この事件の初戦闘。

 その敵は、地上ではなく、空から来た。

「――竜?」

「ワイバーン。竜種としては高いレベルではないが、侮れんぞ」

 前脚を持たない竜の一種、ワイバーン。

 黒い鱗で全身を包む、僕たちの生きる時代にはいない幻想種だった。

「数は三体か。へっ、面白え。オレが全部仕留めてやるよ」

「落ち着け。お前が如何に強者とはいえ、不要な消耗は避けるべきだ」

 ジークフリートの言う通りだ。

 モードレッドはアーサー王を打ち倒したことから相当の実力を持っているだろう。

 だが、それでも相手は竜。

 一体でも危険な存在、当然ながら複数を相手にするものではない。

「幸いサーヴァントが三騎いる。一人一体受け持ち、倒し次第援護に回る……それで良いな」

 メルトは月ほどの出力はないまでも、一流のサーヴァントと打ち合えるステータスを有している。

 僕も、到底サーヴァントには及ばないが、彼らを補助し、少しなら力となれる。

 だが、ジークフリートは数に入れていないようだった。モードレッドとブーディカも、その意見に賛同しているらしい。

 まあ、当たり前だ。僕は論外として、メルトも地上に降りる際、意図的にハイ・サーヴァントとしての気配を消している。

 僕たちが戦える存在という確信がないのだろう。

「ハク」

「……ああ」

 メルトには周囲の警戒を任せ、僕自身は戦いをマスターとして見る。

 必要とあらば、僕たちも前線に出る。

「チッ、一人で良いのに……ま、いいや。だったらオレの分をさっさと始末して、お前らの獲物も叩き切ってやる!」

 もうすぐ近くにまで迫っていたワイバーンの一体を、雷の魔力を放出して突撃し、迎撃する。

 ムーンセルから供給される魔力ならば、多大な魔力消費を伴うこの戦い方も可能だ。

 それを知っているのか、知らずに構わずやっているのか。

 ともあれ、モードレッドの初撃は狙い違わずワイバーンに直撃する。

 剣脊での一撃で叩き落とし、そのまま追い打ちをかける。

「ふっ――!」

「よし、お姉さんも負けてられない、な!」

 ジークフリートとブーディカも続く。

 黄昏の聖剣で迎え撃ち、牙の一撃を盾で受け止める。

「■■■■■■――――!」

「うるせえ! このトカゲ野郎!」

 自分の倍以上もある体格のワイバーンに一切物怖じせず、モードレッドは魔剣を叩きつける。

 強靭な鱗は、魔力放出を伴った斬撃でも身の芯まで届かせず、皮膚を焦がすだけに留まる。

 流石、最強の幻想種と言うべきか。その耐久力もさることながら、敏捷性も力も英雄と真正面から戦えるレベルだ。

 知恵のない種族なのだろう。力任せに爪牙をぶつけてくるだけだが、獣と対峙するより遥かに脅威を感じる。

 神話や叙事詩において、無辜の人々を脅かしてきた竜は伊達ではない。

 だが、それを相手取るのも、歴史に名を遺した一流の英霊だ。

「このぉ!」

 絶え間なく繰り出される爪に守勢であったブーディカだが、力押しの一撃を弾くことで隙を作り、剣を振るう。

 一旦距離を置いたワイバーンは、既に剣のリーチにいない。

 それでもブーディカに迷いはなく、そのまま剣を振り抜いた。

 その一振りは届かず、しかしワイバーンを襲う。

 剣から発射された魔力塊。この剣の特性によるものだろう。それは小さな弾丸となり、ワイバーンの眉間に直撃する。

 弾丸の術式は、魔術師の基本として習得しているが、威力はそう変わらないように思える。

 真名解放もない。敵を確実に穿つ一撃というよりは、牽制に使うものだろう。

「まだまだっ、行くよ!」

 二、三と剣を振り、怯んだワイバーンの急所に一つ一つが直撃していく。

 モードレッドが弱点など知ったことではないごり押しだとすれば、ブーディカは堅実に、確実に消耗を狙う戦法。

 そしてジークフリートは。

「おおッ!」

 攻撃を躱すのではなく、受ける。

 邪竜の血を浴びたその肉体は生半な攻撃を通さない。

 加えて、相手は竜。ジークフリートは叙事詩において、竜殺しを成し遂げた大英雄。その相性差は歴然だ。

 彼の信ずる剣もまた、“竜の斬り方”を心得ている。

 共に竜殺しのエキスパート。

 一閃。他の二体より早く、深く、ジークフリートが相手取ったワイバーンは剣を通した。

 振り抜いて、返す刀でまた一撃。

 本能的に距離を置こうとしたワイバーンの尾をいとも簡単に切り裂き、落とす。

 今の打ち合いだけで敗北を悟ったらしい。一転、ワイバーンは防戦一方となった。

 しかし躱そうとするたびに、その速度を勝る聖剣を逃れきれず、自慢の鱗を飛散させていく。

 結局、そのワイバーンはもう一度攻勢に転じることなく。

「ッ」

 心臓に二撃。そのまま力を失い、地に伏した。

「オラァ!」

 モードレッドもまた、決着を付ける。

 脳天に叩きつけた魔剣から多大な雷を放ち、絶命させる。

 命を奪った確信があったのか、倒れたワイバーンに見向きもせず、ブーディカが相手取る最後の一体に向かう。

 確実に疲弊し、最早数分と持つまいといったワイバーンの背に魔剣を突き立て、瞬く間に命を刈り取った。

「おっし。全然物足りないが、これで終わりだな」

「ふぅ……ありがとね、モードレッド。あたしだけだったらジリ貧だったかも」

 ブーディカは自身の獲物を奪ったことに恨み言一つ言わず、素直に礼を告げてその頭に手を置く。

「ちょ、おい! ガキ扱いすんな!」

「えー。良いじゃないの。ブリテンの英霊でしょ? あたしの子みたいなものだもん」

 その手を振り払い、また置かれ、また振り払いという不毛なやり取り。

 一方で三体全て仕留めたことを確認し、ジークフリートは戻ってくる。

「お疲れ様、ジークフリート」

「ああ。どうだった。俺たちは此度の戦い、参ずるに相応しい存在か」

「勿論。是非力を貸してほしい」

 頷くジークフリート。その背後、竜を見やる。

「……このワイバーンは、野生なのか?」

「そんな訳ねえよ。亜竜のガキでも、ブリテンの竜はこんな軟弱じゃねえ。竜ってのは一昼夜掛けて討つモンだろ。コイツら、まるで骨と皮だけの死体だよ」

 この時代のブリテンに最も詳しいモードレッドの言葉は正しいだろう。

 最早諦めたのか、頭を良いようにされている辺り、微妙に恰好が付かないが情報は信頼できる。

 しかし……今のワイバーンは曰く、死体の如き呆気なさ、か。

「俺も、油断はならないが然程手強い相手ではないように思える。魂の籠った魔獣の方が幾分強いだろう」

「そうなんだ。ま、どっちにも縁はなかったけど……そこまで強く思えなかったのは確かかな。ローマの将軍のが強かった」

 どうやら、彼らをしてそこまで評価の高い敵ではなかったようだ。

「死体って話、間違ってないみたいよ。ほら」

 メルトが伏した竜を指す。

「……はぁ?」

 三体のワイバーンは、既に朽ち果てていた。

 灰のような粒子になって消えていく竜は、明らかにこの世界に在る生物ではない。

 発生した異変によって生まれた者であることは間違いないか。

「竜の亡骸か、もしくは亡霊か。何にせよ、碌な性根の能力ではないな」

『でも、こんな能力の使い手って一体……っと、観測範囲にサーヴァント。今の戦いに勘付いたみたい、近付いてきてるよ』

「またか。使い物になると良いけどな」

 サーヴァントが来ているようだ。

 未だに異変の正体が掴めていない以上、戦力は幾らあっても過剰にはならない。

 暫くその場で待機し、サーヴァントを待つ。

『なんだろう、走ってきてるのかな……?』

 やがて、見えてくる。

 本当に駆けてきているようだ。常人ではありえない速度で草原を疾駆し、接近してくる。

 しかし……なんだろうか。

 協力意思がある英霊である筈なのに、何処か……

「ッ……」

 ある程度の距離で、サーヴァントも立ち止まる。

 長い黒髪に、黒の喪服。薄い黒のヴェールと一色で体中を覆う女性だ。

 しかし、顔は見えない。耳まで隠す無貌の仮面は、外界との関わりを完全に遮断しているようだった。

 そして、両手で持っているのは瘴気に覆われた武器。

 あれは……大剣か。だがその大きさは、凡そあの体格の女性が扱うものではない。

「……――」

「お前は……」

 その雰囲気から、察してしまう。

 モードレッドたちも同じ。その手から剣を離さない。

 彼女は決して、協力意思があって近付いてきた味方ではなく――

 

「――Sieeeeeeeeeeeeeeeee――――――――ッ!!」

 

 喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げ、サーヴァントの魔力は爆発する。

「チッ……!」

 モードレッドが対応する。

 とにかく抑えようとしたようだが、対するサーヴァントもまた武器を振るう。

「Sieeeeeeeaaaaaaaarrrr――――!!」

「この……寄りによって螺子飛んだバーサーカーかよっ!」

 数合の剣戟。モードレッドは攻め切ることが出来ず、距離を置いて一旦戻ってくる。

「ちょっと、話し合いとか……」

「話して通じる奴じゃねえよ。コイツは敵だ。さっさと吹っ飛ばすのが正解なんだよ」

 敵……!?

 何故。この時代に召喚されている英霊は、皆この異変を解決すべく降り立った者の筈だ。

 それが、まさか敵対するなど……

「ハク、冷静に。元凶側に意思があるなら、英霊を起用することも考えられる可能性よ」

「だけど……」

 此方が異変を止めるのに、英霊の力を借りたように。

 異変もまた、英霊に助力を受けている――可能性としてはあり得る話だ。

 しかし、理屈では分かっていても、信じがたいものではある。

 またしても、英霊と敵対しなければならないなどと。

「――――!」

「この狂犬が……!」

「――待て、モードレッド!」

 剣を前に構え、強大な魔力を発現させようとしていたモードレッドをジークフリートが制止する。

 注意を促すようなものではなく、それ以上の必死さが見えた。

 かつて、月の裏側で彼と共に戦った時も、これほど必死さを表すことはなかった。

「あ? 何だよ」

「……すまない。剣を収めてくれ。よもや、このようなことがありうるとは……」

 ジークフリートの声は苦し気だった。

 声は運命を呪うように重く、敵に対し戦闘意思を持たないように剣は下ろし。

「やはり、英霊となってもラインの呪いは健在か。しかし、何も彼女まで蝕むことはないだろうに……!」

 狂戦士は駆けてくる。

 ジークフリートの言葉など聞こえていないように、躊躇いなく振るわれる剣。

 受け止めるも、そこから攻めに転じることはなく。

 担い手の悲痛の理由を周囲に証明するように、聖剣の黄昏が相手の瘴気を僅かに晴らす。

「同じ、剣……?」

 瘴気の間から見えた黒染めの剣は、色こそ違えどジークフリートと同じだった。

 竜殺しを成し遂げた聖剣。その名も高き『幻想大剣(バルムンク)』。

 担い手の死ぬ度に、転々と新たな持ち主を選び、その性質を聖剣に魔剣に変えていった剣。

「まさか、あのサーヴァント……」

 性質から、あの聖剣を宝具として持つ英霊は複数いよう。

 だが、その中でもジークフリートがあれほどに動揺する相手ともなれば、一人に絞られる。

「言葉は聞こえないか? 目を閉じ、耳を塞ぎ、お前はそう在ってしまった。全て、俺の浅慮さが原因だ……」

「Sieee……!!」

「すまない、過ちがための復讐が、お前を狂気に駆り立てた。俺の責任、だが……お前が死して尚、過ちを駆け続けるならば……」

「……e、g……」

 ニーベルンゲンの歌において、主要となる人物。

 手段を択ばず盲目的に、暗殺された夫の復讐を果たしたブルグントの姫君。

「俺は、それを正す――クリームヒルト!」

「Sie、g……f、rie、d……!」

 夫の名は、ジークフリート。

 暗殺された彼を殺したハーゲンの殺害に、その後の生涯を賭した復讐鬼。

 バーサーカー、クリームヒルト。セイバー、ジークフリート。

 ここに、最も望まれないだろう形で、二人の邂逅は果たされた。




オリ鯖、バーサーカーのクリームヒルトです。FGOでも度々語られている、ジークフリートの奥さんですね。
オリ鯖は今後もガンガン出てきます。
キャラを立てられるかは知りません。頑張ります。

また、敵にもサーヴァントがいることがハクたちに判明しました。
竜やら何やら倒してれば解決するなんて甘っちょろいことはない。
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