Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

55 / 107
怒涛の三日連続更新。多分二度とない。

メカエリチャンは二号機を選びました。あのシルバーが溜まりません。
あと、エゴ二人との会話もありますしね!

さて、決戦続き、どうぞ。私は悪くない。何も悪くない。反省はしない。


第九節『白VS黒』

 

 

「ッ――――!」

 メアリーが狙うのは、弾丸の防御に集中しているメルトだということはすぐに分かった。

 振り下ろされる二本のカトラスを受け止める。

 そのまま弾き飛ばそうとし、力を入れ――

「経験が足りないよ!」

「なっ……!?」

 メアリーはそれに対抗することなく、受け流した。

 バランスを崩し、前に体が崩れていく。

 ながら、追撃はない。既にメアリーはドレイクとヴァイオレットにそれぞれのカトラスで切り込んでいる。

 応戦する二人は、メルトの防御を貫いてくる弾丸に圧され、十全な対処が出来ないでいる。

「ハク!」

「大丈夫、防御を継続して――ッ!?」

 立ち直り、二人の援護に向かおうと振り向いた瞬間、突き出された刃を咄嗟に防御する。

 サーヴァントにも通ずる、体の軽さがなければ今の防御はままならなかっただろう。

 メアリーはこの弾丸の嵐を一切気にしていない。

 それゆえか、三人に対し、たった一人で切り合っている。

 僕はメルトを守るので精一杯で、どうにも攻め切ることが出来ない。

 飛んでくる弾丸を弾いているのはヴァイオレット。実質的に、まともに戦えているのはドレイクだけ。

 それが原因か。メアリーはその小柄さとステータスからは想像だに出来ない苛烈さで以て、有利を勝ち取っていた。

「この……っ、やるじゃないか、そんなナリで!」

「こちとら生粋の海賊だからね! 大儀のあったフランシス・ドレイクとは違うのさ!」

 弾丸が一発、メアリーを貫く。

 しかし、それで彼女が止まることは無い。

 寧ろ、更に速度と力を増し、余計に僕たちを追い詰めていく。

 根性、気力、そういったものでは計れない戦闘能力の増加。

 もしかして――これはメアリーの宝具か。

 常に窮地であったからこそ、『追い詰められるほどに力を増す』宝具。

 ダメージを受ければ受けるほど、メアリーは強化されていく。

 そして、それはその相棒も変わらない。

「ハク! 危ない!」

「え――――づぁっ!」

 脇腹を裂くような痛み。これは――アンの狙撃か!

 二人一組のサーヴァントとして、メアリーのダメージはアンの損傷としてもカウントされる。

 メアリーが傷を受ければ、アンの銃撃も強化される。

 マズい、これは完全に彼女たちの空間だ。メルトが動けない今、このままでは壊滅さえあり得る。

 ならば――この状況を変える。これ以上アンとメアリーが強化される前に、決着をつけるしかない。

「ドレイク! ヴァイオレット! メアリーの足止めを!」

「くっ――何か策があるみたいだね! 割と厳しいけど、少しならやってやるよ!」

「了解しました。迅速に、なすべきことを!」

「逃がさな――!?」

 ヴァイオレットが素早く移動し、メアリーのみを捉える形で眼鏡を外す。

 空間凍結の魔眼。世界さえも魅了させるヴァイオレットのid_esがメアリーの動きを停止させた。

 地上に降りるにおいて、階梯を落としているヴァイオレットでは、完全な固定は叶わない。

 だが、それでも足止めには十分だ。

「メルト、ティーチとアンを倒す! 行くぞ!」

「ええ――行くわよ、ハク!」

 既にメルトは僕の考えを理解していたらしい。

 防御膜を展開したまま、駆けるメルトに追従する。

 膜の防御力は幾分落ちる。飛んでくる弾丸を、或いは弾き、或いは被弾し、それでも致命的な一撃は受けないように、嵐を潜り抜ける。

「なんという蛮勇……! 来ますわよ船長!」

「合点承知! 黒髭の大勝利が世界を救うと信じて! ご愛読ありがとうございました、完! アン氏、メルトリリたんを頼むでござるよ!」

「あら、あの坊やを相手取るんですね」

「拙者がやらずに誰がやる! さっさと倒してメルトリリたんをハーレムに――デュフフフフ!」

「安心しましたわ、いつも通りで!」

 どうにか、連携は崩した。僅かに離れるティーチとアン。メルトを信じ、ティーチに向かう。

「まだ、そんなふざけた事を――!」

「ふざけた気持ちなどこれっぽっちもないですぞ! これが拙者の切実な願いですからな!」

 近距離の不利を悟ったのか、銃をもう一度投げ捨て、付近にいた部下の剣を二本ぶん取って、応戦する。

 剣が受け止められる。腕力の差は比べるべくもない。

 剣の質が上回っていれど、それだけで押し切れるほど、生半な相手ではない。

「生前寄ってきたのは金と冥利に憑かれた女ばかりだった! だからこそ、死後にこの願望を抱いて何が悪い!」

「――――――――ッ」

 望みの女性など、近付いてこなかったのだろう。

 恐怖の象徴だったティーチに平伏した者。財産に目が眩んだ者。多くいただろう。

 だが、それはティーチが心から望んだものではなかった。

 後年に生まれた新たな価値観。現代の遊興に溺れるのは、至極当然のことなのかもしれない。

「そうだ、ハーレムという文化が奇麗だったから憧れた!」

 それまでの何より、力強い一撃だった。

「故に、恥も隠す気持ちもない。これを願望と言わずなんという!」

 相手の剣は業物ではない。

 だというのに、此方の剣が砕かれんばかりの力により、指が折れそうになる。

「この身は海賊だった、ああ、宝と名声に突き動かされてきた。それが苦痛だと思う事も、悪逆と反省する間もなく、ただ走り続けた!」

 だが、僕も何もしていない訳ではない。

 この体の軽さを活かす技量に至ってはいないだろう。

 それでも、少なからず鍛えてきた。英雄に及ばない。当然だ。だが、それでもメルトを守りたいという気持ちがあった。

 それが決して出来ないとしても。メルトの足下にさえ及ばないとしても。

 僕は、メルトのために技術を鍛えてきた。

「だが所詮は海賊だ。そんな稼業では何も叶わない。否、もとより、何が願いなのかも定まらない――!」

 これは、互いの信念をかけた戦いだ。

 ティーチにも願望がある。それは分かった。メルトが、その一端になる。それも分かった。

 だが――だが!

「拙者の信念の邪魔はさせないでござるよ。メルトリリたんは――」

「ッ――――!」

「っと――!?」

 それでも譲れないものがある。

 だって――――

「この意思が目覚めた時から、メルトがいた」

 だって――――

「あの瞬間から僕には、メルトしかいない」

 だって――――

「お前の願望は否定しない。だけど――」

 だって――――!

「メルトは――僕のものだ」

 だって――――最初から僕にとって、メルトという存在は全てだった!

 月の管理を始めたのだって、メルトの願いがきっかけだ。

 誰にも渡さない。この意思も、あの心も、価値観も思い出も全て、僕にとって代えられないものだ。

「――それが、テメエの原動力か」

「ああ、だから……っ!」

 剣戟は勢いを増す。アンは、メアリーはどうなったのか。

 ヴァイオレットは、ドレイクは――メルトは、どうなったのか。

 悔しいが、気にしている余裕はない。今、僕は必至だった。

 目の前の敵と信念を交わすことに、全霊を掛けていた。

「ッ――――」

 切り裂く、切り裂かれる。出来るだけ傷を受けないと意識していても、いつしか捨て身になっていた。

 そうでなければ、届かない。そう思った。

「――だから――――!」

 二本の剣を打ち払う。ボロボロになっていた刃は、しかしまだ武器として辛うじて生きている。

 最後の踏み込みは、あまりにも重かった。

 ようやく、体の痛みを自覚する。思った以上に、傷は多く、深かったらしい。

 それでも、届いた。喉が張り裂けんばかりの宣言と共に、剣を突き出し――

「メルトは渡さない。お前の願望に、メルトを巻き込むな――――ッ!!」

 

 

 その心臓を、力の限り貫いた。

 

 

「――――僕の勝ちだ、ティーチ」

「――――ああ。そして、オレの敗北だ」

 勝ちを理解すると同時に、手元から剣は消えていった。

 体から力が抜ける。倒れそうになる体は、しかし、倒れることなく支えられた。

「……ティーチ」

「ったくよぉ……これだから純愛厨ってのは。相容れないったらありゃしない、でござる」

 見上げれば、心底憎く――愉しそうに、笑うティーチの顔があった。

「ここまで、でござるな。アン氏とメアリーたんも、エイリーク氏も、そろそろ限界っぽいし」

「え――――」

 見れば、メアリーがドレイクに袈裟に斬られ、アンはその腹をメルトの脚具に貫かれていた。

 エイリークは、アステリオスとエウリュアレ、そしてアルテミスの連携により霊核を穿たれ、刻一刻と消滅を近付かせながらも奮戦していた。

 どうやら、戦いの趨勢は決まったらしい。

 四人が倒れれば、残るはヘクトールのみ。ヘクトール、は――

「……?」

「紫藤ッ!」

「ッ――――!」

 シンジの声が聞こえた瞬間、ティーチに弾き飛ばされる。

 尻餅をつく。全身の傷に響く激痛に耐えて、目を開くと――

「……かっ……」

「――いやぁ、やっと隙ィ見せたよな、船長」

 驚愕と痛みに顔を歪めるティーチと、その背を槍で貫き笑うヘクトールの姿があった。

「まったく。油断の塊みたいな振りしてその実、用心深く銃を手放しゃしねえ。感心したぜぇ、オジサン」

「お、前……!」

「天才騙る馬鹿より馬鹿を演じる天才のが厄介なのはそりゃ道理だわ。うちの船長もアンタをもうちょっとマトモに評価すりゃあ良いのにな」

 何が起きたのか、暫く理解がつかなかった。

 ヘクトールは間違いなく、ティーチに味方するサーヴァントだった。

 それが、今彼の胸を貫いている状況に、誰しもが目を奪われていた。

「なる、ほど、道理で……しかし、馬鹿でござるかヘクトール氏。この状況で裏切るなどと……」

「なあに、こちとら勝算があってやってることでね。それじゃあ船長、その聖杯(たから)、いただくぜ!」

 引き抜かれた槍。その先にある輝きは――

『――あ、聖杯! なに、黒髭くんが持ってたの!?』

 カグヤもまた、驚きを隠せなかった。

 まさか、ティーチがこの時代の特異点だったのか……!?

「船長!」

「くっ――アン、一緒に!」

 アンとメアリーはヘクトールを敵と定め、ティーチを守るべく走り出す。

 だが――

「残念、死に体で勝てる程、オジサン衰えてないんでね!」

「ッ――」

「ぁ――――!」

 聖杯をその手に取り、片手で振るわれた槍。

 ただ一撃の反撃も許さないまま、ヘクトールはアンとメアリーの霊核を穿った。

「……守勢に徹していた訳だ。あれだけ大人数で攻め切れないなんてね」

 気付けば近くにいたゲートキーパー。

 彼はその表情から余裕を消し、再評価をしたようだった。

 用心深くヘクトールを睨み据える。だが、ヘクトールはゲートキーパーを一瞥もしない。

「ったく。馬鹿に聖杯を預けて終わりを見届けるだけだってのに、どうも狂ったのはアンタのせいだなドレイク。恐るべしは星の開拓者ってか。決まった流れをぶっ壊されたら堪ったもんじゃないっての」

「デオン! サンソン!」

「おぉっと、ご生憎、相手している暇はないんでね――!」

 シンジが命じた二騎のサーヴァントすら見ることなく、ヘクトールは行動する。

 その行先は――エウリュアレ。

「きゃ!?」

「うぉっ!?」

 アルテミスの弓を、本人たちごと弾き飛ばし、

「ぉおおおおおお――ッ!!」

「隙だらけだな!」

「ッッッ!!」

 アステリオスの斧を潜り抜け、すれ違いざまにその背を切り裂き、

「アステリオス――きゃあ!」

「美女と野獣ってか。だが、舐めるなよ怪物。能無しバーサーカー程度に遅れは取らねえよ」

 エウリュアレを聖杯を持つ腕で抱え、船から落ちた。

「なっ……」

「下に船が!」

 この時のために、仕掛けてあったのだろう。

 小舟に乗り、此方の反撃がある前にヘクトールは離れていく。

 アレを今すぐ終えるほど、どちらの船も小回りが利く状態ではない。

 そして――静寂が満ちた。

 気付けば、辺りにいた筈のティーチの部下はいない。ティーチの魔力が尽きたからだろう。

「ふん……トロイの木馬、ってか。小癪でござるな。敵国の作戦の癖に……ゲホッ……」

「……とっとと逝きなよ黒髭。どうあれアンタらの負けだ。アイツより先に、ハクトがその心臓取ったんだろ?」

「ふっ……その通り、だがこれで勝ったと思うなよBBA! 拙者は何度でも、蘇り――」

「はいはい。そんな怨念間に合ってるから。先に地獄に行ってな。悪党は悪党らしく、惨めに清々しく消えるのが最高の末路だ。そしたら、アンタを存分に笑ってやるよ」

 カトラスを収めたドレイクが、ティーチに歩み寄る。

 ヘクトールがいなくなった今、黒髭海賊団は全員が死に瀕していた。

 先程まで戦っていた悪名高い海賊は、今まさに消えようとしている。

 そして、彼に付き従った船員たちも、また同時に。

 初めに、エイリークが。そして、その姿を見届けたティーチも、現界を解れさせていく。

「なら、満足したと死ぬしかないか。最後に同業者に笑われるんならそれもまた本望! あ、だが首は刎ねられてやらねえですぞ」

「おうよ、その首持っていきな。そんだけ目立つ髭があるなら、地獄で再会した時目立つだろ?」

「はっ――そうかいそうかい! 誰より尊敬した女が、誰より焦がれた海賊が、この首残してくれるってさ! ハハ、ハハハハハッ!」

 致命傷なんて気にしないかのように、腹を抱えて笑うティーチ。

 その体を粒子と散らしながらも、彼は心底愉快そうだった。

「アン氏! メアリーたん! エイリーク氏! 乙でござった! ……で、アンタ、ハクだっけ?」

「……その呼び方はやめてほしい」

「あ、そ。まあ、それはともかく。……あんな宣言したなら、手放すんじゃねえぞ? もしそうなったら地獄から這い上がってでも、テメエをぶち抜いてやる」

 ――それは、本気の宣告だった。

 言われるまでもない。彼の願望を、自分勝手な行動で断ったのだ。

 殺害予告くらい構わない。そんなこと、する筈がないのだから。

「……分かってる。メルトは、絶対に離さない」

「なっ……一体何言ってるのよハクは……! さっきの大声も……」

「ハハハハハハハハ! リア充爆発しろ! と、怨嗟を吐いて黒髭は消えるのだった! さらば、海賊! 黒髭は死ぬぞ!」

 そんな、最後までどこか愉快な言葉と共に、エドワード・ティーチは消えた。

 ――少し、ずるいと思った。

 最後まで恨みしかない敵として、彼は在らなかった。

 もう一度、今度は味方として話してみたいなどと、思ってしまうなんて。

「……はぁ。一人だけ、満足して死ぬんだもんなぁ」

「付き合わされましたわね。まあ、居心地が最悪だったわけではありませんが」

「アン、メアリー……」

 そして、ティーチに付き従った二人組の女海賊も、また逝く。

「ラカムよりマシでしたから。まあ……少しは良い思い出になりましたわね」

「うん。最後まで戦ってくれたことには、ほんのちょっとだけ、感謝かな」

 生前の、臆病な船長と比べてか。

 それまで辛辣に対応していながらも、最後にそんな評価を下して、二人は同時に消滅する。

「……船が崩れます。戻りましょう」

 ヴァイオレットが先導する。

 持ち主のいなくなった船は、主と同じように消えていく。

 このままでは全員海に落ちる。そんな間抜けな末路は、避けなければ。

「――えう、りゅあれ」

「……アステリオス」

 ……エウリュアレが攫われた。その事に大きなショックを受けているのは、アステリオスだけではない。

 ヴァイオレットもまた、悲痛な面持ちだった。

 無事であると信じよう。絶対に助け出そう。

 次の目的は決まった。ヘクトールを追いかけること。そして、エウリュアレを助けること。

 大海原の戦いは終わらない。否、ここからが本番なのかもしれない。




黒髭、アンとメアリー、エイリークはこれにて退場となります。エイリークお前何してた。
エイリークに関しては生存ルートも無くはなかったのですが、この先も活躍的には微妙だったので没に。すまない。
ところで、FGOの二次創作作品が一番少ないのってエイリークじゃないですかね。

さて、大事な場面でパロディぶっこんでシュールになっていますが、本人たちはとても真面目です。
ハクにはパロディとか分からないので、滅茶苦茶恥ずかしいこと言ってます。なんだこいつ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。