Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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Q.なんで投稿遅れた?
A.メッチャスパロボしてた。

Q.九月中に四章終わらせるのは?
A.普通に無理。


終幕『第六天魔王』-2

 

 

「失せよ、と言った筈だがな?」

「貴女が世界の敵に回ったならば……僕たちは貴女を倒さなければならない。時代を修復するために」

 魔王と変じた信長は、その瞳を混沌と染めながらも正気が見られた。

 だが、彼女はこの場の全てを敵とすることに躊躇いはない。

 天下を掴んだにも等しい力を得た以上、英霊など相手にならない――そういうことか。

「クッ……良いではないか。これを得ずともどの道わしはいずれ天下に届く。その時期の差じゃろう。先の世が変わることなぞないわ」

 己の最果てを、信長は信じて疑わない。

 彼女は既に見据えているのだ。その先にある天下というものを。

 ゆえにこそ、この地獄を己のものとした。

 空と一体となったこの墨染の炎こそ、その証。

 京の都を掌中に収めた証明たる――天下への狼煙。

「それを邪魔するとあらば、この本能寺の地にて貴様らを討つ」

「ッ、メルト!」

 メルトが広く水膜を張った直後に鳴り響いた銃声。

「持たねえ――!」

 しかし拮抗さえすることなく、容易く膜は貫かれた。

 殺到する閃光は、平等に、全員に襲い掛かる。

 視界に広がった混沌の黒を、死の景色かと一瞬錯覚した。

 ――意識は、ある。

 メルトの守りを簡単に破った弾丸を防いだものが、眼前に広がっていた。

 蠢く黒は、弾丸の波を受け止めると、消えていく。

 紅閻魔が背負っていた、棺へと。

「チッ……神秘殺しか。コイツらでもここまで損傷するとか、やるじゃねえか」

「神の系譜か。神仏であろうと、わしの前に立つならば撃つ。それを成す力が、今のわしにはある」

 ――魔王。信長が自称するそれは、神仏の教えに則るのであれば修行を妨げる煩悩の主を言う。

 それに変じた信長は、神性や神秘に対する特効性能を持っているようだ。

 そうなると――聊か不味いか。

 此方のサーヴァントで、神性の類を有していないのは沖田と段蔵、清姫のみ。

 更に神秘の薄い、魔性などとは縁のない近代の英霊となると、沖田くらいだ。

 単発でメルトの水膜を破るほどの射撃。それを撃ち得る銃が見渡す限りに展開されている。

 全てがあの威力を持っているとなると、とてもではないが守りに入ってなどいられない。

「集まっているのは間違いなく悪手か……なら」

「散開、だネ!」

 今のままでは、あの銃全てが此方に向くことになる。

 ならば分散していた方が、まだそれぞれ対処がしやすいだろう。

「よし、そうと決まりゃ話は早ぇ! オレが防ぐ間に走れ!」

 金時が前に出る。

 信長もそう易々と散開を許してはくれまい。

 動く前に、銃弾の嵐を一度どうにかして防がなければならない。

 その役目を、今度は金時が買って出た。

 得物たる大斧が、その機構の神髄を解放する。

 カートリッジで制御された雷の力。

 そのうち三つを使用し、武器としての限界を超えることで宝具である斧はもう一つの顔を曝け出す。

 単一の相手を粉砕する対人宝具ではなく、一軍に吹き荒れ蹂躙する対軍宝具。

「自ら前に出るか、坂田――!」

「ハッ、この程度の度胸がなくて頼光四天王が務まるかってんだ! それから、オレっちの事はゴールデンって呼べっつったろうがよぉ!」

 数えるのも馬鹿馬鹿しい弾丸。

 それに対して、金時は雷の溜まった大斧を力の限り振り下ろす。

「ぶっ飛ばせ、『黄金衝撃(ゴールデン・スパーク)』ッ!」

 銃弾の嵐と雷の嵐。二つがぶつかり合う。

 それが、此方にとっては戦闘開始の合図。

「私が槍克を!」

「任せる、沖田――!」

 沖田が嵐の間を縫い、書文に迫る。

「呵々! 待ちかねたぞ。存分に殺し合おうか!」

「ッ、おぉ――!」

 縮地を用い、素早く書文を信長から引き離す沖田。

 彼は、彼女に任せるしかない。あとの皆で、信長を倒す。

「メルト、頼む!」

「ええ!」

「セナちゃん! ――行けるかい?」

「……今度は加減、しなくていい?」

「ゥ……あ、アレだね。腰には来ない程度にしてくれたまえヨ?」

 此方の強みは、敏捷性に重きを置いたサーヴァントが多いことだ。

 矢除けに類するスキルは持っていないが、それでも容易く捉えられないくらいの速度がある。

「小細工を――」

「余所見してんじゃねえぞ!」

 雷の壁を突き破り、金時が信長に迫る。

 斧を振り回すことで撒き散らされる雷は弾丸から身を護る鎧となる。

 此方もメルトと共に周囲を跳び、信長の隙を探す。

 一呼吸の間に、金時は信長に詰め寄る。

 銃弾を雷で相殺し、数発をその身に受けながらも斧を振りかざす金時。

 怪力スキルも相まった凄まじい筋力は到底信長が受け止められるものではない。

 だが――

「――甘いわ」

「ッ!」

 斧は信長に届くことはなかった。

 信長を守るように伸びた墨染の手。

 強度で勝っているのか、力での粉砕が困難なのか、その手には罅も入っていない。

 金時を嘲笑うようにカタカタと音を鳴らしながら、信長の頭上の髑髏の口が広がる。

「むっ……いかんゴールデン!」

 吐き散らされた黒い炎を咄嗟に避けることのできなかった金時を助けたのは、彼を押しのけるように割って入ったキャットだった。

 その手から飛び出した十枚ほどの術符が炎熱を、風を、吹雪を巻き起こす。

 それらが拮抗している僅かな間にキャットは金時を連れ距離を取る。符による防御が破られた時には、既に二人は安全圏に逃れていた。

「ッ――キャット、アンタ……!」

「なに、童謡にもあろう。猫は炬燵で丸くなる、元来熱に強いもの。気にするなワン」

 いや――キャットは躱し切れてはいない。

 着物の背部は焼け落ち、特徴であった狐の尾は一部焦げていた。

「……全部が全部凶器みたいね。さっさと決着をつけるわ。魔力を惜しまないで、ハク」

「――ああ。一気に行くよ、メルト!」

 銃弾に捉えられないよう素早く動き回りながらも、メルトは自身の神髄を解放していく。

 本来、自身が最も輝く瞬間として、絶対的な勝利を確信しているときしか使わない宝具。

 それをこの、戦いが始まり間もない、相手の本領も未だ見えない段階で使うというのは異例の事だった。

 だが、それもやむを得ないほどに、この敵はメルトと相性が悪い。

 一刻も早く決着をつけるべき相手だ。

 そのために、僕もまた己が持つ最高火力を用意する。

 メルトの宝具と、その力。二つを同時に使用することによる魔力の消費は甚大なものだ。

 ゆえにこそ、ここに二人の全力をぶつけるのだ。

「はっ!」

 段蔵は素早い動きで弾丸を躱し、手首から放たれる散弾で信長を牽制する。

 アサシンはピエールの指示のもと、海獣たちを伴って動く。

 極小の海となった海獣たちは銃弾に耐え凌ぐ耐久力でもって、母を守り、その主を守っていた。

「チッ……この剣が届かなきゃ話にならねえ! 清ちゃん、宝具、使えるか!?」

「使えますけど……考えなしでどうにかなるものでもありませんわ。きっと間もなく、使うべき時が来る筈です」

 刀一つで弾の雨を迎撃し、清姫を守る紅閻魔。

 その剣速は沖田に勝るとも劣らないが、やがて限界は訪れよう。

 清姫の視線が此方に向けられていることに気付いた。

 彼女は、此方が有効打を与えることを信じている。

 そしてそれを決定的にすることこそが、自身の役割だと。

 ならば彼女の信頼に応えるべく、この攻撃を綻びなく成功させるまで。

「頼むわよ、ハク!」

「ああ――!」

 聖骸布による拘束が解かれる。

 降り立ったのは、魔王の眼前。

 後退したキャット、金時との間に立ち、表出させた槍を信長に向ける。

 まるで的にでもなりに来たかと、そう思われたかもしれない。

 だが、あの無数の銃を一身で受けるつもりはない。たとえそうだとしても、この瞬間は負けられない。

 ――信長の背後に立ったメルト。これは、僕たち二人の最大をぶつける瞬間なのだ。

「――『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!」

「――『弁財天五弦琵琶(サラスヴァティー・メルトアウト)』!」

 それが挟撃だと悟った信長は、僅かに対応が遅れた。

 しかしそれでも行動は早い。黒炎を自身に纏わせ、手と髑髏が彼女を覆い盾になる。

 その上で前方、後方に等しく展開された銃で以て、二つを迎撃した。

 耳を劈くような轟音は、何度使用しても慣れることはない。

 大いなる神殺しの槍。同じくして神をも殺す魔王に、その最大限の力が発揮されることはない。

 だが、そうであってもこの槍は僕が持つ最大火力の絆。

 それにメルトの全てを溶かす大波。

 最後には両者がぶつかることになれど、その間のものが存在してはいられない。

 そう確信を持って、この力を解放した。

 ――だが。

「……ふん」

 対峙する魔力が爆発的に増大する。

 二つの宝具を貫き、伸びてくる閃光。

「ッ――――――――!」

 その反撃を認識したのは、頬を掠めるものと脇腹を抉るもの、二つの痛みを自覚したがためだった。

「づ……っ、メル――」

 此方が貫かれたということは、メルト側も同じことになっている可能性がある。

 確かめる手段はない。ともかく、反対側に盾を展開しなければ。

 そう思った時、眼前が輝いた。

 確信する。それは間違いなく、僕の命を奪い去るに足るものだと。

 躱すことは不可能だ。その思考を体に反映させる前に、あの光は脳天を貫く。

 次の瞬間の、避けられない死――

 

 

 ――それを防いだのは、信長が操る炎と同じ、墨の如き黒だった。

 

 

 その何かは僕を襲う筈だった光を全て受けて、過ぎ去っていく。

 視界が開ける。蜂の巣の如く、穴だらけになった僕たちの宝具の跡。

 そして、メルト側を同じくして守る、正しく赤い炎の色。

 黒と赤、二つは空を遊弋し、信長を挟むように僕とメルトの前に舞い降りた。

「キミ、は……」

「昨日ぶりだな、人間。いつまで経ってもこの世界が直らないから、仕方なく助けに来てやったぞ」

 世界を構成する神秘の一。

 今の信長にも匹敵する凄まじい魔力。

 それは地獄の一角に付き従っていたまつろわぬ神――黒き竜だった。

「心底どうでも良かったがな。龍馬は夜明けを望んでいた。だから手を貸してやる」

 あまりに大きな助力だった。

 彼女――お竜は楔となる主を失った宝具。その体はもう長くは存在できないだろう。

 だが、地獄の一人として選ばれながらもこの世界の修復を願った主のために、彼女はここに来てくれた。

「……しかし、お竜さんのアイデンティティだったんだが。竜がもう一人いるなんて聞いていないぞ」

「え……?」

 お竜の不満は、信長の奥に向けられている。

 彼女と同じく、反対側でメルトを守るために現れた炎。

 それはお竜ほどではないものの、高い神秘をもった蛇竜。

「本当に間もなくとは……わたくしだって、出来れば使いたくはありませんでした。ですがマスターの危機。躊躇ってもいられませんわ」

「――清姫?」

「ええ。かつて抱いた思いの丈、此度はマスターを守らんために。これがわたくしの宝具、『転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)』です!」

 安珍清姫伝説において、自身に嘘をついた僧侶安珍を清姫は何処までも追いかけた。

 その果ては、想いで竜へと変じた清姫が、安珍を焼き殺すという結末で終わる。

 あれはその宝具の再現。

 想いだけで幻想種へと変わる、規格外の宝具だった。

「ハク!」

「メルト!」

 清姫の陰を通り、メルトが駆けてくる。

 メルトには大きな傷はないが、僅かに掠り傷が見られた。

 回復させつつ、信長から距離をとる。ひとまず、態勢を整えなおそう。

「ハク、貴方の怪我の方が……」

「僕は大丈夫。メルトは、まだ戦える?」

「私も、問題ないわ。ただハク、貴方は無理は禁物よ」

 信長が纏う炎は、僅かに解れていた。

 僕たちの最大火力をぶつけてようやくこれだけ。

 状況は絶望的だが、それは敗北と直結するものではない。

 お竜と、宝具を解放した清姫。

 少なからず状況は好転しただろう。

「……まだ折れぬか。道理が分からぬとはまこと厄介なものよ」

 呆れた様子の信長は、此方を一切脅威だと思っていない。

 天下を掴むための、邪魔であるだけの障害。

 それに敗北する可能性など、万に一つもあり得ない、と。

「これではもう少しあ奴にやらせた方が良かったか。相変わらず、仕事の早い男よ」

 その目が動いた先は、先程沖田が書文と戦うために離れていった方向。

 まさか――という焦燥を抱き、振り向いた時、

「ッ、ぁ……! も、もう少し、優しく出来ないんですか……!?」

「それが出来る状況じゃないっしょ! あんな化け物、相手に、さ……!」

 僕たちのすぐ傍に、転がるように走り込んできた二人。

「沖田、鈴鹿……!?」

 信長に付いていったものの、合流してから姿を見せていなかった鈴鹿。

 彼女は身を挺して沖田の危機を救ったのだろう。

 一点、心臓を穿たれた彼女は、その体を光と散らしながらも沖田を抱えていた。

 沖田は傷自体は小さいが――刀の刃が中ほどから折れている。

 馬鹿な。そう時間は経っていない。

 これだけの短時間で、二人のサーヴァントに痛打を与えた神槍は、凶暴に笑いながら歩いてきていた。

「これで終わりではなかろう? そら、立て。儂はまだまだ物足りんぞ」

 餓狼が戻ってきた。沖田たちは、戦闘を続行できない。

 最後の地獄は神域の業を以て、より大きな絶望を生み出した。




お竜さん参戦。そして清姫も宝具発動でダブルドラゴンです。
しかし沖田さんと鈴鹿が戦闘不能に。これ無理ゲーじゃね?

四章はあと二話の予定です。
リアルが少々立て込んでいるのもあり、また遅れるかもです。
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