普段笑みを絶やさない苗木が明らかに『怒り』を露わにしたのを見て、それほど江ノ島盾子が好きなんですねとカムクラは呟き、聖原は苗木に感情があったのかと驚愕し、怒りを向けられた柊は思わず後ずさる。が、苗木が顔を手で隠しどけると、何時もの苗木の表情に戻っていた。
「やあごめんごめん。ちょっとムカつく発言があってね」
「……は、はあ………苗木さんは絶望も受け入れていると伺っていましたが」
「受け入れてるよ、『絶望』は」
苗木は柊の言葉を笑顔で暗に否定する。椅子を一つ引いて両手で示したのは、座ってくれと言う意思表示だろう。柊が席に着くと、苗木達も席に座った。
「それで、柊さんは何が目的なの?」
「あ、はい……では説明しますと、《超高校級の絶望》というのは」
「それは知ってるよ。超高校級の才能を持ちながら、世界のためではなく絶望を振りまくために才能を使ってる連中でしょ?」
「ええ。都市伝説のようなもので、確認はされていませんが」
だろうね、と苗木は〝カムクラ〟をチラリと見る。カムクラは素知らぬ顔で柊を観察していた。そりゃ一々反応しないかと苗木も視線を柊に戻す。聖原は興味がないのか船を漕いでいる。
「で?その絶望(笑)が何の用か聞きたいんですけど?殲滅される絶望を味わいたいなら、宗方さんに頼んでください」
「いえ、私は『ある人物』を絶望させたいからあなた方に協力するのです」
「……それが宗方さんなら文句はないけどねぇ……」
はぁ、と苗木はツマラナそうにため息を吐く。もちろん聞かれない程度に小さくとだが……。
「そのためにも、宗方さんの絶望を皆殺しという目標を挫折させ、あなたの絶望の更正させる方法が好ましいのです」
「で?それであなたはボクにどういった益をもたらしてくれるんですか?」
「《カムクラプロジェクト》に関するデータです」
「何それ知ってるんですけど」
「凡人を天才にする方ではなく、途中凍結した〝ゼロから天才を作る方〟もですか?」
その言葉に、ようやく苗木は柊に興味を持った。カムクラを見るが特に何の反応も示していない。既に知っているのだろう。ならば、あの時言った『もう一つ』の意味もわかる。
その凍結されたもう1人のカムクラになる予定だった存在を見に来たのだろう。自分と同じ全ての才能を持つ超人相手なら、退屈せずに済むだろうから。まあ、予想外の苗木の登場で必要なくなったみたいだが。
「……ゼロからってラノベにありがちな状態から作られたのって、デザイナーベイビーですか?」
「……【ロボット】です……」
「…………なんと?」
「ロボットですよ。超高校級のメカニック、プログラマー、神経学者、生物学者、解剖学者、精神科etc.etc.……様々な分野の超高校級の才能持ちが集まり作り上げた、極めて人間に近く人間を越えたロボット……」
苗木はプログラマーと言う単語に一瞬反応したが、別に先輩の中にいてもおかしくないと思い直す。しかしロボット、ロボットとは………。
「意味ないじゃないですか。結局人間じゃないんじゃ、人間を天才にする計画とは別物ですもん」
「だから凍結したんです」
「当時の評議会は馬鹿の集まりですか?……って、その話が今出てくるって事は……」
「ここにあります。元々絶望殲滅の戦力として回収されたそうですが起動しなくて……ですがあなたは、希望ヶ峰学園で幾つか重要な書類を持ってきてますよね?その中にあったり……あるいは幸運で適当にいじれば動くのでは、と……」
前者の理由はともかく後者は適当だな。運任せて………。
確かに苗木は希望ヶ峰学園から大量の重要書類を持ってきてはいるが、重要書類の内容を理解する知識を得るのを優先していたから、重要書類の全てを見ているわけではない。
第6支部の第4倉庫の奥。そこにあった『隠し扉』を通り、4人は地下に向かう。
絶望の残党に利用されたら困るから隠し部屋を使っているクセに、扉さえ見つければ簡単に入れるとは……。
「不用心だな」
「宗方さんに言われても、脳筋無能ボクサーは『いざとなったら俺がぶっ壊す』と訳の分からないことを……」
聖原の非難に柊は不機嫌そうに返す。ぶっちゃけ柊が好意を寄せているのが丸わかりの宗方だって、絶望の残党と自称絶望が紛れて、しかもすぐ側に居ることを気づけない無能なのだが……。
そして数分降りると扉が現れる。
「この奥です」
柊が扉を開けると、飛び込んできたのは〝眠る少女〟。
いや、あれが『超高校級のロボット』なのだろう。極めて人間に近いと言われるだけあり、ともすれば息遣いが聞こえる錯覚すら覚えそうだ。
超高校級のイラストレーターか芸術家でもデザインしたのか、顔立ちはとても整っている。
「彼女が、《希望ヶ峰共同製作No.000》です」
しかしこのロボット何処かで見たような気がする。苗木が首を傾げている間に、カムクラが少女のヘッドホン……に見えるパーツからケーブルを引き出しパソコンに接続すると、起動させるためにプログラムを弄るが……。
「………ダメですね。このパソコンではスペックが低すぎます」
「というか超高校級でもない一般職員が動かせるなら苦労しないわ」
苗木は気づいてないのかと呆れながら、カムクラの行動に呆れたように言う柊を白い目で見つめる。
「それでは苗木さん。取り敢えず、適当にいじってみてください」
「適当にってねぇ………」
はぁ、とため息を吐きながら少女に近づいていく苗木。と、何か懐かしいような、前にもやったような感覚を思い出す。
そして、ああ…と呟いた。
「『魅例』、起きて……」
ピッ、ブウゥゥゥンと音を立て、少女の瞼が持ち上がる。キュウウ、キュイイと、まるでカメラのピントを合わせるような音が止まると、少女はゆっくり顔を持ち上げ苗木を見つめる。
『おはようございます、〝マスター〟』
人間に近いと言うだけあり、あらかじめ表情の一つとしてプログラムされただけであろう笑顔も、まるで人間のそれだった。
希望ヶ峰魅例 期生無し あえて言うなら超高校級のロボット
日向が被験者になったカムクラプロジェクトの前のカムクラプロジェクトによって制作された全才能持ち。ただし完全ではなくカムクラに劣る。
駆懸瑠さんのキャラ