救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

110 / 125
スコアガール④

 苗木はふんふんと鼻歌を歌いながら通路を歩く。

 メモリースティックについたモノクマのキーホルダーの紐に指を通しクルクル回しながら、廃棄物置き場まで向かう。

 モノクマのキーホルダーなど持っていたらまず間違いなく見咎められるだろうが、幸いなことに誰ともすれ違っていない。

 

「えっと………この分かれ道どっちだっけ?」

 

 と、苗木は二手に分かれた道を見て固まる。確か右……?いや、左か?と唸っていると足音が聞こえてきたので、慌ててメモリースティックをしまう。

 足音は複数だ。と、右の通路から団体で現れる。

 よく見ると、〝外国人〟も混じった団体だ。

 

「ん?あ、苗木誠!」

「Oh!」

「え、ちょ………!」

 

 1人の日本人が苗木に気づくと、ほかの面々も苗木に駆け寄ってきて、様々な国の感謝の言葉を次々に送ってくる。

 江ノ島を倒した苗木にお礼を言っているのだろうが、苗木はせいぜいサンキューと謝謝ぐらいしか理解できなかった。

 

『皆さん、苗木さんが困ってますよ』

「……ん?」

 

 その『音』を聞いた瞬間、それは言葉となって苗木の脳裏に伝わる。

 

「…大文字さん?」

「こんにちは苗木君。彼らを悪く思わないでくれ」

 

 手を振りながら去っていく集団を後目に、大文字は苗木に謝罪する。

 

「今、何したんです?」

「ミーの編み出した《汎用言語》サ!」

 

 会議の時と違いテンションが高い。これが素なのだろうか?しかし、汎用言語とは何だろうか?あいにく苗木には聞き覚えがない。

 

「どんな国の人間にも母国語として聞こえる言葉サ。ミーはこれで、全世界の言語統一を目指してた」

「敬語に聞こえたのは、ボクの脳が勝手にそう翻訳したからか………ん?『してた』?」

「これはどうも使い勝手が悪くてね。下手したら洗脳や精神の汚染になるかもしれないのサ」

「………洗脳、ねえ………」

 

 大文字の説明に、苗木は興味深そうに呟く。

 暫く何かを考えた後、苗木は大文字に手を差し出す。

 

「まあおかげで助かりました。一応英雄だって自覚はありましたが、思ったより人気だったんですね、ボク。……えっと、大文字さん。差し支えなければ、ボクと『友達』になってくれませんか?」

「構わないよ。ミーとキミは今日からフレンドだ」

「うん。ところで、廃棄物置き場ってどっちだっけ?」

 

 

 

 

 花美は、佐々苗を探して第13支部を歩き回っていた。

 

「全く何処に行ったんだ。そろそろ帰る準備をしなくてはならないというのに。それに、少年も何処に行った?」

「誰か探してるの?良かったら力になるよ?」

「ん?そうか、すまな………」

 

 手伝いを申し出た人物にお礼を言おうとして、花美はビシリと固まる。そこにいたのは人ではなかった。

 丸い体型、丸い耳、熊のような………というか熊のぬいぐるみそのものの見た目で、右半身はかわいらしい白い熊、左半身は白に近い灰色の邪悪な熊。しかし、包帯で隠されている。

 

「も、モノクマ!?」

「はじめまして、ボク『シロクマ』!苗木クンに作られた熊型ロボットなのだ!」

「し………シロクマ?」

「えっへん!」

 

 名前を呼ばれて胸を張るシロクマ。というか今、苗木に作られたと言わなかっただろうか?

 

「なら、少年が何処にいるか知ってるか?」

「うん!知ってるよ!こっちこっち………」

 

 花美が苗木の居場所を尋ねると、シロクマは花美の手を持って歩き出す。フェルト地の、中には綿が入っている感触だ。恐らく骨組みのみがロボットなのだろう。

 しかし、こんなモノ作れたのか彼………。

 

「少年は、超高校級の幸運だったと記憶していたんだが…………」

 

 

 

 シロクマに連れられ歩くこと数分。

 屋上の入り口が見えてきた。どうやら苗木は屋上に居るようだ。ここの屋上なんて………精々電波が良く通る程度しかメリットはないが、誰かに電話しているのだろうか?

 

「はい、そうです。はい……──を、その日に………お願いしますね──先輩……」

 

 屋上の扉を開けると苗木の声が聞こえてきた。あいにく風で良く聞き取れなかったが、やはり誰かに電話していたらしい。

 

「おーい!苗木ク~ン!」

「あ、シロクマ………ん?花美さん」

「やあ少年。誰と話していたんだい?」

「はい、ちょっと昔の先輩と……どうやら生きてたらしくて、番号も変わってなくて良かったです」

「そうか。ところで、私達も何時までもここに長居する訳にも行かない。明後日には帰るから、準備をしてくれないか?」

「はーい………あ」

 

 苗木は花美の言葉に了解し、思い出したように呟く。

 

「明日、時間空いてます?ちょっと、『今後の方針』について色々な人たちと話したいので」

「ん?あ、ああ……わかった」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。