救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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感想を切望する!


地獄の中心で愛を叫ぶマモノ④

「………?───ッ!?」

 

 肩に空いた服の穴、肉の穴を呆然と見つめる大門。ジワリと服が赤く染まっていくと脳が漸く神経からの伝達に反応したのか灼熱の鉄球を埋め込まれたかのような激痛が襲う。

 

「あ、ぎゃああああ!?ぎ、いいぃぃ……!痛い、痛い痛い痛いいだい痛い痛いいだいいだいいだい!」

 

 肩を押さえ床を転がる大門。周りが見えず、ステージの橋を超え重力に引かれて落ちる。その際操縦機はがシャン!と音を立てて壊れた。

 

「………………」

 

 マークガイバーを見るが特に変化はない。操縦を失ったら暴走する、などといった仕掛けはなさそうだ。

 

「あれあれ、どうしたの?痛いのは怖くないんじゃなかったの?」

「ひ、ひぎ……うぐぅ!」

 

 落ちた時骨こそ折れなかったものの、心は痛みにより折れたのか大門は近付いてくるこまるを見てズリズリと這うように逃げようとする。まだ立ち上がれないようだ。

 幾ら大人顔負けの超小学生級の体育の時間だろうと歩けなければ少女一人からだろうと逃げられるはずもなく、目の前に膝を曲げられる。

 

「本当はコントローラーに当てるつもりだったんだけど、やっぱり素人が撃たない方が良いね。でも大門君は私にもっと酷いことをしようとしたんだしお互い様だよ。私は謝らない」

 

 そう言ってこまるは片手をあげる。大門がビクリと体を竦ませ目を閉じるが、次にやってきたのは衝撃ではなかった。

 

「………?」

 

 頭を、撫でられていた。労るように優しく……。大門が戸惑いこまるを見つめるとこまるはニッコリと笑みを浮かべた。

 

「ねえ大門君、痛いのは怖い?」

「─ひぎぁ!?」

 

 身体に空いた穴の付近を指でツン、と押され叫ぶ大門。

 

「暗いのは怖い?」

「ひっ!?」

 

 頬を両手で掴まれ、親指が目の直ぐ前にきて震える大門。

 

「お酒臭いのは………無理か。でも、怖いかな?」

「………!」

 

 先程からこまるが言っているのは、大門が先程怖くないと言い切った言葉だ。なら残るのは、後二つ。

 

「死ぬのは怖い?」

「………こ、怖い……」

「殺すのは?」

「……こ、こわ………怖く、ねぇ!」

「ふーん」

 

 大門の言葉にこまるは持っていた拳銃を持ち直し銃口をもつとん、と突き出し大門に握らせる。

 

「ちょ、ちょっとおまる!?あんた、何して……」

「んー、ちょっと実験。邪魔しないでねー」

 

 慌てる腐川だがこまるが片手で制して大門に向き直る。

 

「ん?どったの……?ほらほら魔物ですぞー。殺さなくて良いの?あ、ひょっとして銃持つの初めてだから当てられないかも、って思ってる?解る解る。私も馴れたつもりだったんだけどハッキング銃は電波だからね~、実弾とはまた勝手が違ってたよ」

 

 うんうんと頷くこまる。バカにされていると感じたのか大門が手に力を込める。が、引き金を引けない。

 

「んー?本当にどうしたの?さんざん殺したんでしょ?モノクマ使って、マークガイバー使って……百人?はいけなくても数十人はもう殺しちゃったんじゃないかな?」

「そ、そうだ!オレっちはお前等魔物を殺して……殺、して……何で、何でだよぉ!」

「それはね、君は本当に人を殺したことがないからだよ」

「……………………は?」

 

 ニコニコと未だに笑顔を張り付けているこまるに大門は疑問の声を出す。手の力が、僅かに抜ける。

 

「あんなロボット使ったり、モノクマに命令したり。安全なところからちょっと手元のスイッチを弄るだけ。こんなの全然殺した実感なんてわかないよ。例えば沢山の子供の頭を一気に吹きとばしちゃうボタンがあって、それを押して、戦争が起きても、遠いところで起きたそれは自分が殺したなんて実感が沸かない」

 

 でも、とこまるは言葉を続ける。

 

「この距離は違うよ。撃てば血肉が君の身体にかかる。温もりが失われていく私の身体は、君にもたれ掛かる。嫌でも「死」を認識させられる。それが解っちゃうから、撃てない」

「そ、そんなわけあるか!オレっちは、オレっちはなぁ!お前等魔物を殺したって何とも思わな──」

 

 カプリとこまる銃口を加える。

 

ふぉ()ら、当()やすくしてあ()()よ?」

「………───」

「撃たないの?撃てよ、撃つべき、撃たなきゃ撃とうよ撃ってみよー撃って撃って撃て撃て撃て撃て撃てうてウテ撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て」

「あ、ああ……う、ぁ……」

 

 こまるの言葉に、大門の顔は青く染まっていき銃を持つ手はカタカタ震える。しかし銃口はこまるの口の中、離れない。

 朝日奈と腐川が慌てて二人を引きはがそうと駆け出し、大門が叫んだ。

 

「うああああああああ───ッ!!」

「……え?」

「逃げ、た……?」

 

 しかし大門が取った行動は引き金を引くことではなく、逃走。銃を放り捨て涙を流しながら何度も転んでその度に立ち上がる無様な逃走。その行く手を、モノクマキッズ達が阻む。

 

「な、何だよ……どけ、どけよぉ!退いてくれ!」

「………ん?」

 

 希望の戦士であるはずの大門の命令に従わないモノクマキッズ達。異変はそれだけではない。モーターの駆動音を響かせマークガイバーが動き出していた。

 

「な、何なんだよ!?何が、どうなって………」

「マークガイバー造ったのってモナカちゃんだよねー?お仕置きじゃないの、逃げ出した勇者に……」

「も、モナカ……ちゃん……何で、違う……違うんだよ、逃げたんじゃなくて………オレっちは勇者で……希望の戦士で…………だから、だか……ら?」

 

 思考が纏まらないのか呆然と立ち尽くす大門。マークガイバーは彼の眼前に迫り、ドリルの腕を持ち上げる。

 

「あ、あぶねえ!」

『いけまちぇん!』

 

 朝日奈と月光ヶ原が慌てて駆け寄ろうとするがモノクマキッズ達に遮られる。そして、マークガイバーが腕を振り下ろ───

 

ガィン!………ポンポンポン

 

 そうとした瞬間マークガイバーの腕に何かが高速で激突する。マークガイバーやモノクマキッズ、こまる達が振り返るとそこにはピッチングマシンの横に立つバッター用ヘルメットを被ったモノクマ、バッターモノクマとモノクマの仮面を被った人間、モノクマ仮面が立っていた。

 

「ごー!バッターモノクマ!」

『わっくわっくどっきどっき!』

 

 モノクマ仮面の号令にバッターモノクマは回転を始める。その回転にあわせて大量の球硬式のボールがマークガイバーに向かって放たれ硬そうだった滑らかなボディーがドンドンへこんでいき、とうとう外装がはずれそれでも続く硬式雨に内部も細かいパーツもドンドン壊されていき完全に沈黙した。

 

「キャハハ!」

 

 しかし今度はモノクマキッズ達が直接大門に襲いかかる。しかし──

 

「ツマラナイ」

 

 何時の間にか現れた黒スーツ姿のモノクマの仮面を付けた長髪男が大門の横に現れ、モノクマキッズ達の仮面が全て()()される。子供達は戸惑うように周囲を見渡していた。

 

「良くやったモノクマブラック!後で鮭をあげよう?え?いらない?熊なのに?」

「何も言ってませんが、確かにいりませんね。用事は済みました。行きますよ……」

「そうだね。やい!希望ヶ峰、その子供達は勝った報酬にプレゼントしてやろう!ま、勝手にプレゼントするからボクもモノクマに狙われるかもだけど。シクシク王様なのに……」

「そのためのハッキング装置でしょう。襲われることなどまずあり得ませんよ」

「そりゃー半径百メートル以内のモノクマもモノクマキッズもボクらの制御下だけどさー」

 

 モノクマ仮面はそういうと大門の前に立つ。

 

「うわ!?」

 

 そして、ヒョイと大門を肩で担ぐと歩き出した。

 

「お、おろそ!おろせよー!」

「後でねー。んじゃ、そう言うことで!」

「モノクマは大人のみ襲うように設計されているので、安心してで歩いても良いですよ。もっとも、一人で出歩けば再び洗脳されるでしょうが」

 

 唖然とする朝日奈達を置いていって、モノクマ仮面達は嵐のように去っていった。残されたのは現状を理解できていない子供達だけだ。

 

 

 

 

 子供達を引き連れ地上にあがると先程まで瓦礫に埋まっていた地下鉄の入り口が通れるようになっていた。これもモノクマ仮面の仕業だろうか?

 

「よし!今度はあっちから行こうぜ!」

「朝日奈君さー、脳みそ詰まってる?何で罠があったばかりなのに罠を疑わないの?」

「……え?」

「朝日奈君って、絶望的にアホだねー」

「うぐ!」

 

 こまるの満面の笑みから放たれた言葉に傷つく朝日奈。しかしショックとは別に、何か胸の奥が熱くなっているのは彼の名誉のために気にしないでおこう。

 

「あ、あの……僕達、これからどうなるんですか?」

「………ま、クソガキも子供の楽園を作るって名目がある以上こっちの方が下手は打てないか」

「お姉さん?」

「地上は今ね、モノクマっていう君達のお兄さんやお父さんを殺そうとする悪ーいクマで溢れてるの。お姉さん達と一緒に、安全なところを探して隠れよっか」

「う、うん!」

「わ、解った!」

 

 こうして、子供達を連れこまる達は移動することになった。

 

 

 

 

「しかし随分と惨いことをしますね。彼女を彼女たらしめる本質、それを認識できなくするなど」

「キチンと絶望させてあげたかったからね。きっとあの世でも喜んでると思うんだ」

「あの世、ですか。あるかどうかは知りませんが、彼女は生きてますよ?」

「本質を失っているならもう別人だよ。別人なら、死んだも当然だ」

 

 モノクマ仮面はそう言ってつまらなそうに寝転がるのだった。

 

「そういえば、未来機関の姫咲礼歌が、先程これを機に十神白夜を亡き者にしようと島に乗り込みあっさり捕まってましたよ」

「んー、七海先輩が悲しむかなー。ま、捕まってんなら殺されないでしょ。ほっとこほっとこ」




【速報!】
二章からは空白編で登場させることが出来なかった読者様の考えたキャラが出て来ます。
全てではないのであしからずご了承お願いします。

それと活動報告にモノクマ仮面の歌を募集しています
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