救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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革命学区のおとぎばなし①

「ナンマイダブナンマイダブ」

「「ナンマイダブナンマイダブ」」

 

 新月を除いた希望の戦士達が遺影を前に手を合わせブツブツと如何にも子供らしい念仏を唱える。遺影の人物は大門大だ。

 

「ぐすっ…大門くんが可哀想…こんなの酷い…あんまりだよぉ」

「いつも偉そうでバカでエッチでしたけど、基本的には…まぁまぁ良い人でした。壊れたエアコンを直してくれた事もありましたし、イスやテーブルなんかも…」

「あ、それ…直したのボクちんなんだけど」

「とにかく…良い人でした。神様、どうして良い人から先に死んでしまうのですか?」

「いっそ…ボクちんが死ねば良かったよね。実際、そういう空気だもんね。嫌われ者のボクちんが死ねば良かったって空気をボクちんに気付かれないように隠してる空気だもんね。けど、ボクちんはそれに賛成だよ……」

 

 

 

 

 

 ガリガリと何かを噛むような音が部屋の中に響く。

 それは少女が自身の爪を噛む音だ。

 

「モノクマブラック?モノクマ仮面?腕輪をはずしてる?どうでも良い、どうでも良い……何で、何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で……何で彼奴が此処にいる…」

 

 ガリガリと噛まれた爪はボロボロになり、やがて少女は自身の指の皮まで噛み始める。血が流れ口の周りを赤く汚すが少女は目を見開いて画面に映った女性をみる。

 少女とにた髪型、少女に似た顔立ち。

 

「ていうか何で車椅子?何、当て付け?」

「ああ。記録によると彼女は精神的なストレスで足が動かなくなったらしいよ」

「は?ストレス?超高校級のセラピストだった彼奴が……?何に?」

「さあ、そこまでは……」

「……まあ、いいや。のこのこ私の前に現れやがって、殺す。絶対に」

 

 

 

 

 

 もう一つの地下鉄は今のところ罠はない。

 

「う、薄暗くて不気味で…気持ちか沈むわ。それに、この感じだとやっぱり電車は動いてなさそうね」

「でも、ここから線路を歩いていたら街の外には出られるだろ?オレは無理でも、子供達なら……」

「物理的に塞がれてなければね……」

 

 こまるの言葉にぐぅとうなる朝日奈。可能性は十分にある。

 

「でも、出られなくても子供は逃がせるなんて考えるんだね。少し見直した」

「え、あ……いや、実際もう一つの方には罠が張られてたわけだし、ちょっと考えれば……」

「そのちょっとをさっきまでまるっきり考えてなかったわけたけどね。おめでとう、超馬鹿から大バカになれたよ」

「…そっか?照れるぜ」

「け、貶されてんのに気づきなさいよ!」

 

 

 

 

 改札を越えホームに来ると止まった電車があった。やはり動いていないようだ。分かり切ったことではあるが。

 

「やっぱり止まってるかぁ。皆、疲れてないか?こっからかなり歩くぞ」

「大丈夫!」

「が、がんばる!」

 

 

 

 線路沿いに進んでいるとやはりモノクマ達が居た。見張りなのだろう。一直線にこまる達に向かってきたが子供達には手を出さない。

 

「『コワレロ』」

「ヒャーッハッハッハ!」

『くらうでちゅ!』

「え、えい!」

「お、俺だって!」

 

 しかしやたら早いジャンクモノクマや爆弾を投げてくるボンバーモノクマはいないのでハッキング銃と武装車椅子、ジェノサイダーまでいる一同は子供を気遣いながら進む十分な余裕があった。モノクマが子供を狙わないというのも大きいだろうが。

 

「なんか……どんどん暗くなっていくわね、そろそろ引き返した方が良いんじゃない?」

『照明機能がありまちゅから大丈夫でちゅよ』

「使った瞬間また罠の中とかないよね?」

 

 と、そこまで言ったときこまるは振り返りハッキング銃を撃つ。それは背後から接近してきていた盾を持つ二匹のモノクマの盾に当たり弾かれる。

 盾を持ったモノクマ、ガードモノクマはウプププ!と笑いながら接近してきた。

 

『お前、お仕置きだよ!』

『うひゃひゃひゃ!』

「や、やばい!どうする!?」

「こうする……」

 

 こまるが駆け寄るとガードモノクマは盾で押し飛ばそうと速度をあげる。こまるはそれを予想していたかのように横に跳び避けるとハッキング銃を打ち込み同時に足をかけバランスを崩させもう一匹のモノクマに向かって倒す。

 

『さよならー!』

『やめてよ!』

 

 ボン!とガードモノクマの一体が爆発し煙で覆われるガードモノクマが煙を払おうと盾を振り回そうとした時ガシリと盾の上部に手がかけられる。

 

「ばいばい……」

『また来週ー!』

 

 ハッキング銃の引き金が引かれ光があった瞬間モノクマの内部のプログラムが『大人への攻撃』から『自壊しろ』に書き換えられ、爆発した。

 

「こいつらの動きは単調なんだから、動きなんて簡単に読める。いちいち慌てなくてもいいよ」

「こ、こまるちゃん本当に凄いね」

「まあおまるは彼奴の妹なんだしねぇ」

『兄妹そろって……両親はいったいどんな人達だったでちょうか……』

「……頼もしい背中だな………」

 

 そして、しばらく進んでいると行き止まりに出た。瓦礫が崩れ、此処より先は進めそうにない。

 

「よし戻ろう」

「え、そんなあっさり!?」

「下手に瓦礫を撤去しようとして崩れたら目も当てられないしね……」

 

 確かにその通りだ。無理に進もうとするより戻った方が良いだろう。と、その時。

 

「よっしゃ、ビンゴだべ!言ったろ花音っち、地下からなら逃げら───のあぁ!?子供がいっぱいだべ!」

「ん?」

 

 突然聞こえてきた頭の悪そうな声に振り返るとウニのようなドレッドヘアーの男とギャル風の少女が歩いてきていた。誰だろうか?

 

「あ、あんた……葉隠!何であんたがここに居んのよ!まさか、白夜様を捕まえるような相手にあんたみたいな奴が捕まらなかったっていうの!?」

「うお!腐川っち!え、何で!?」

「腐川さん、あれ何?ウニの化け物?」

「ちょっと葉隠、何なの?知り合いって訳?」

 

 

 

 

 お互いに自己紹介をすませ再び移動を開始する一同。葉隠は希望ヶ峰の一員、一緒にいた仲島花音はこまると同じ要救助民の1人らしい。

 

「はー?こんなイケてない女と同じとかマジあり得ないんですけどー、チョベリバー」

「……男の好みに合わせようと必死でキャラを作ろうとしているのがわかる痛々しいキャラだね。今時そんなギャルいないよ」

「ああん!?」

「うるさい」

「──ッ!?」

 

 こまるは二本の指を仲島に突きつけると仲島は顔を青くして引き下がる。先端恐怖症ではないが、こまるは本当にその指を脳髄まで進めてくる。そう思えた。

 

「けど、通れなかったみたいだべ。どうすっか……」

「希望の戦士全員倒せば?」

「はあ?考えてからいってよね。あんなロボット扱う奴らに勝てるわけ……」

「この子供達は勝って洗脳から救った」

「…………マジ?」

 

 と、仲島が子供達を見ているとザリザリと足音が聞こえた。振り向けばそこにはモニターを抱えたモノクマキッズ達が居た。

 

「じゃ、取り敢えず避難できる場所を探そっか」

「え?その子供達、無視するの……?」

 

 しかしこまるはあっさりその横とを通り過ぎたため腐川達が思わずモノクマキッズを憐れんでしまう。

 

「私って一度クリアしたゲームは二週目からイベントスキップするタイプなんだよね。もちろん気に入っているなら別だけど」

「「────!!」」

 

 と、行ってしまおうとしたこまるに慌ててモノクマキッズの一人が前に立ちはだかり両手を広げて通せんぼうするが、こまるは交わして進もうとする。

 今度は腰に引っ付いてきたのでハッキング銃を突きつける。

 

「知ってる?そのマスク、火薬が入っているの。操られてるって言っても今は単純に『命令を訊く』『大人の死体で遊ぶ』程度だよね?恐怖は残ってるはず……どいて?」

「───!」

 

 バッ!とこまるから距離をとるモノクマキッズ。こまるが再び歩き出すと残りも慌ててついて行く。後ろの方でモニターがつき『あれ?だ、誰もいない……』と言う声が聞こえてきたが戻ってやる者は一人もいなかった。

 

 

 

「あんた、本当に私と同じ人質だったの?信じられないんですけどー」

「やだなぁ、人質だよ?絶望的に無能で絶望的に臆病で絶望的に無価値で絶望的に無意味な私なんてせいぜい優しくて前向きなお兄ちゃんに対する人質ぐらいにしかならないって」

「……………」

 

 こまるの言葉に仲島は眉をひそめる。本心がまるで見えてこない。取り繕うようでは、誤魔化すようでも、かと言って心の底からそう思っているようにも見えない。

 と、そんなことを考えているうちに外が見えてきた。何やら騒がしい。

 

「………?……──っ!」

 

 外を覗き込んだ仲島は目を見開き固まる。訝しんで自分達の目で確認した者達も同様だ。ものすごい数のモノクマとモノクマキッズ達が踊っていたからだ。これでは通れそうにない。

 

「も、戻るわよ……」

「う、うん……」

 

 腐川の声に仲島が戻り、こまるも踵を返そうとしたときだった。不意に爆発音が聞こえてきた。爆発音。モノクマが破壊されたのだろうか?だとしたら誰に?

 

「うわ、すっご……」

 

 振り返り見ればモノクマ達を蹂躙する三つの影。しかもこまる達のようにモノクマに有効となる武器を使っているわけではない。各々が用いているのは刃物だ。

 処刑刀で的確に首を切り裂いている金髪碧眼の少女。

 短刀でモノクマを解体していく和服の女性。

 日本刀を振るう眼帯をした老け顔の男性。

 

「あー、そういえば彼奴等も来てたわねー」

「リィアっち!遠野っち!霧崎っちだべ!これで勝てる!」

 

 その圧倒的な戦闘能力に唖然としている一同。希望ヶ峰所属の者達とこまるだけは驚いてはいなかったが葉隠はテンションが上がっていた。

 

「む、葉隠か?」

「相変わらず騒がしいね、まだ敵が潜んでいるかもしれないんだから静かに」

「まあまあ、やっと合流できたのデスから喜びましょう。ん?十神君はどちらデス?」

 

 

 踊っていたモノクマ達は殲滅したとはいえ地上では目立つと地下を移動することにした一同。こまるは希望ヶ峰所属らしい三人のうち一人に頭を悩ませていた。

 

「こまるちゃんはどんな歌が好きなのデスか?」

 

 キラキラと笑顔を向けてくる少女………いや、少年。女装しているらしい。そして、何やこまるに惚れている。

 会ったこともない相手に写真で見た時惚れたらしい。つまり内面も知らず。容姿を見て。実に鬱陶しい。

 

「おいサンソン、こまるさんが困っているだろ。少しは遠慮を覚えろ、初対面だろ」

「え?その……鬱陶しく感じてたデス?」

「うん。超ウザイ」

「………………」

 

 こまるの言葉落ち込むサンソン、遠野も顔がひきつっていた。

 

「まあまあ。しかし流石苗木副理事長の妹さんだ。こんな時でも落ち着いておられる。私もその精神面を見習わなくては」

「流石っていうか、やっぱりって感じよね……てか、こんなのが増えたら手に負えないわよ」

 

 霧崎の言葉に腐川が補正すると月光ヶ原も頷く。

 

「あ、また来た」

 

 と、進んでいると再びガードモノクマが隊列を組んでやってきた。が、希望ヶ峰の戦士たちに盾ごと切り裂かれた。

 

 

 

 

「ん?何か聞こえないか?」

 

 不意に遠野が呟く。耳を澄ませてみれば確かに聞こえてきた。

 駆け出す戦闘員達。こまるも続くとモノクマが複数でシーツをまとった何者かを蹴っていた。

 

『やめてよー!暴力反対、いじめはカッコ悪いよ~君達の拳は、誰かを傷つけるためじゃなくて、誰かを守るためあるんじゃないかなー!』

 

 どうやら布にシーツを被った何者かはモノクマを説得しようとしているらしい。

 

「貴様等!その者から離れろ!」

 

 そのモノクマ達も即座に霧崎に両断される。観戦していたモノクマキッズたちもそれをみると一目散に逃げ出した。

 

「大事はないかね?」

 

 と、霧崎はシーツをめくる。中にいたのは、モノクマだった。しかし左半身が白に近い灰色でモノクマ特有の禍々しい左目を包帯で隠している。

 

「モノクマがモノクマを、いじめてた?」

「可哀想に、きっといじめられ子なんだべな」

「いや何同情してんのよ、同情してんのよ!?」

 

 と、周囲の者達が警戒する中白いモノクマが動く。

 

「ぷはぁ!し、死ぬかと思ったぁ!」

「…ひいいいいっ!」

「しゃ、喋った!?」

「ありえねー!」

『あっ、怖がらないで!大丈夫、ボクは怪しいクマじゃないから!むしろ、優しいクマなんだよオセロでも、隅っこは相手に取らせてあげるタイプだし…』

 

 友好的な態度で接する白いモノクマだったが腐川が指を指し叫ぶ。

 

「お、おまる!何してんの、早く撃ちなさい!」

『ま、待ってー!撃たないでー!話せば解るからーっ!』

「うん。『コワレロ』」

『やめてよー!』

「……あれ?」

『ぼ、ボクはAIが搭載されてるタイプだから、電波によるハッキングは効きにくいんだ……』

「じゃあ実弾でいっか……」

 

 ダンダンダン!と三発の銃声が響き白いモノクマの額、腹、足元の床に穴が空く。

 

『この兄にして、この妹あり……なんで、両親は普通だったんだろ……』

 

 白いモノクマはそういい残し、倒れて爆発した。




リィア・アンリ・サンソン 処刑人 霧ヶ峰リョクさま
遠野式 殺人鬼 輝様
霧崎一 剣士 テルメン(白)様
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