救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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革命学区のおとぎばなし②

「な、なあ苗木さん、何処向かってんだよ」

 

 シロクマを破壊した後、こまるは急に踵を返して歩き始めた。もう一つの出口から地上に向かうと思っていた朝日奈がこまるに尋ねるがこまるは応えず歩く。

 

「おいって!」

「おい、何こまるちゃんに気安くさわってやがるデス?」

 

 朝日奈がこまるの肩を掴もうとするがサンソンが処刑刀を向けてくる。

 

「だって出口からモノクマの音が聞こえたんだもん」

「しかしそれなら我々が……」

 

 と、霧崎が言うがこまるは引き返すつもりはない。

 

「どの程度いるかわかんないしね。体力だって無限じゃないでしょ?」

「それは、そうですが…」

「全くだよ!モノクマリングだってバッテリーは無限じゃないのにあんなにポンポン出て来てさ!」

『まあまあ、モノクマ達だって命令を聞いているだけなんだから~』

「「「───ッ!?」」」

 

 その言葉に全員が自分達の中央を見る。そこには何時の間にかモノクマ仮面と額に穴が空いた白いモノクマの頭を持ったモノクマブラックが居た。そして、赤い左の顔を持ったモノクマの仮面を付けた少年。瞳の形はダンベル型だ。

 

「……………」

「モノクマ仮面様ぁ!」

 

 音無がうっとりとモノクマ仮面を見つめ、しかし一同は警戒しようとする。する、のだが……出来ない。モノクマの仮面を被り、モノクマを連れているというのに、警戒心を持つことが出来ない。

 

「貴様は何者だ」

「ボクはモノクマ仮面!モノクマの王様なのだ!と、言っても外の騒動には関係ないけどね」

「ええ、外の騒ぎはボク達の、正確にはモノクマ仮面の望むことではないですね。とはいえ手を出せない、そういう契約なので。なのであなた方に早急に解決して欲しいんですよ」

「契約、誰と?」

「江ノ島盾子…」

「───ッ!」

 

 次の瞬間ギイィィン!という金属音が響く。音の発生源は霧崎と、モノクマブラックが何時の間にか抜いていた剣だ。

 

「貴様等、やはり絶望の残党か……」

「やだなぁ、違うよ」

「とぼける気か……」

「ボクの交わした契約は、敗北した教え子以外説得しないこと、これだけなんだよね。だから正体を隠すお面を被ってる。で、敗北していない教え子に接触しない代わりにモノクマキッズの洗脳装置を壊しても連鎖爆発を起こさないようにしてもらっているんだ」

「………何だと?」

「本来なら、モノクマキッズの洗脳装置は一人が解放された時点で次が解放されないように設定されているんですよ。ですが、江ノ島盾子の元にその洗脳装置の大元があるため交換条件を出しその機能をボクらに限って停止している」

「ま、待て!話が見えん、江ノ島盾子は生きているのか!?」

 

 モノクマ仮面達の言葉に、まるで江ノ島盾子が生きているかのようにはなす彼等に霧崎が叫ぶがモノクマ仮面は首を傾げる。

 

「ん?生きてないよ?死んでるよ。でもまあ、残された意志とでも言おうか……それが残ってるんだよねぇ」

『死んでるのに意志が残っているなんて怖いよねぇ。幽霊みたい……ゴキブリ並の渋とさだよぉ』

「シロクマ、鏡って知ってる?便利だから使うことをお勧めするよ。二重の意味で」

 

 シロクマの言葉にケラケラ笑うモノクマ仮面。

 霧崎は噂の超高校級の残党だろうかと予想する。このキャラも正体が露見しないように強いられているのだろうか?

 

「と、ところで……なんかあんた達増えてない?そ、その赤いのは誰よ……」

 

 と、腐川が赤いモノクマの仮面を付けた少年を指さす。何処かで見たことがあるような気がする。と、腐川の言葉にモノクマの仮面を付けた少年が胸を張る。

 

「よくぞ訊いてくれた!オレっちは赤い炎をこの身に宿し、悪を滅ぼす炎の戦士、大も──モノクマレッドだーい!」

「ふーん、どっかでみたような………」

「ひぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!怖いの嫌だ怖いの嫌だ怖いの嫌だ怖いの嫌だ………」

「?どうしたの人を見ていきなり怯えて。私、誰かに怯えられるようなことした覚えないんだけどな……」

「「……………」」

「いや、それはどうだろ」

『………………』

 

 こまるの言葉に音無と腐川が微妙な顔をして朝日奈が引きつり月光ヶ原は無言でこまるを見た。

 

「それで、そのモノクマ仮面は何故我々に接触したのデス?」

「現在大人達が隠れている秘密基地の場所を教えにきたのさ!そこに、他の希望ヶ峰の職員もいるよ」

「マジか!よっしゃ、皆行くべ!」

 

 と、葉隠が賭だそうとしたが仲島が足を引っかけ転ばす。

 

「素直に信じてんじゃないわよバカ」

「信じてくれないの?悲しいよ…シクシク」

「団長!元気だせって!」

「それもそうだね!ボクは広い心の持ち主だから場所だけ教えて立ち去るよ…」

 

 モノクマ仮面はそう言うと断られることも予想していたのか地図を置いてパンパンと手を叩く。ブルルル!とエンジン音を響かせバイクに乗ったリーゼントのモノクマが現れる。取り巻きのようなリーゼント無しのモノクマは二体。モノクマ仮面はリーゼントのモノクマのバイクに乗りモノクマブラック達は残りのモノクマのバイクになる。

 

「よっしゃー!ライダーモノクマ、出発進行だーい!」

「頑張ってねー!」

 

 ねー!ねー!ねー……エコーを響かせながら去っていくモノクマ仮面達。こまるは地図を拾うと歩き出した。

 

 

 

 地図に従い下水道に入った一同。

 

「橋が、ない……」

「向こうのハンドルを回せば橋がかかるっぽいね。腐川さん、ジェノサイダーってジャンプ力高かったよね?」

「や、やればいいんでしょ……」

「流石腐川っちだべ。便利な女だべな…」

「葉隠、あんたマジチョベリバー」

 

 

 

「地図によるとここだね……」

「し、信用するのデスか?」

「うん……」

 

 こまるは梯子を登っていくとシャッターを見つける。モノクマはいない。梯子の下に向かって手を振り問題ないと合図すると残りのメンバーと子供達が上がってくる。

 その間、レバーを動かすとシャッターが上がっていく。

 霧崎が何が出てきても良いようにシャッターの前で構える。残りの戦闘員は下でモノクマを警戒している。

 が、特に何か出てくることもなくシャッターが開いた。

 

「前より多いなぁ……」

「貯水庫、ですか……確かに地下で広大な場所、隠れるのにもってこいですね……」

「なんだ、新入りか……う、うわぁ!こ、子供だぁ!」

「!?子供だって!?」

「見つかったのか!?」

「ま、待て!モノクマがいないぞ、俺らでも殺せる!」

「ッ!」

 

 大人達の殺意に子供達が怯える。霧崎が剣を構えるが振るおうとは出来ない。と、その時──

 

「やめなさい!」

「───!?」

 

 ビリビリと空気が震えるような声が響く。特にでかい声であったわけではない、ただ、周囲を威圧する何かがあった。

 振り返ればそこにいたのは艶やかな黒髪を持った少女。

 

「こ、小間森さん………」

 

 大人達はその少女の登場に狼狽える。

 

「小間森さん……」

「ん?あ、霧崎くん?」

「こ、小間森さん……いくらあなたが俺らを助けてくれた希望ヶ峰の人間だったとしても、子供達は……」

「この子供達はモノクマヘッドを付けてないわ。それに、モノクマだって連れていない。まずは話を聞きましょう。いやなら、私も新条ちゃんも出て行く」

「ッチ、勝手にしろ!」

 

 と、大人達は引き下がった。

 

「ごめんね皆。嫌な思いさせちゃって……」

「あなた、誰?」

「私は小間森愛子!元超高校級の保育士よ!」

「………高校?あ、お兄ちゃんと同い年なのかな、その見た目で」

「彼女は私より年上です」

「………へ?」

「よろしくね!」

 

 ニコリと笑顔で手を差し伸べてくる小間森。こまるもその手を握り返す。と、そこへ新たに影が近づいてきた……

 

「おい、どう言うことだ小間森!なんでガキ共がここにいやがる!」

「灰慈くん……」

「こいつらはモノクマと一緒に大人を殺す悪魔だぞ!殺せ、今すぐ!」

「いや!」

「いや、って……お前なぁ!お前だって、モノクマに襲われてたろうが!」

「私は例え腕がもがれて心臓が潰されても内臓を抉られても子供を愛することを止めるつもりはないの!」

「──っ!この、狂人が………!」

 

 睨み合う大人の(見た目は)少女。しかし少女は怯えることはない。

 

「子供を受け入れるわけねーだろ!なあ、皆!」

「そ、そうだ!」

「その通りだ!」

 

 と、灰慈と呼ばれた男に同調する声があちら此方であがる。

 

「……あのさぁ……」

「なんだお前!文句あるのか!」

「これあげる。簡単に組み立てたもので悪いけど」

 

 ガポ!とこまるは一人の大人にモノクマヘッドを被せる。その大人は取ろうと暴れていたが唐突に固まり、俯いたと思った突然顔を上げる。 

 

「アハハハハ!」

 

 そして笑うと突然近くの大人に殴りかかる。こまるがモノクマヘッドを蹴ると繋ぎが甘かったのかバラバラに崩れて散らばった。

 

「………なんだ、今……何しやがった」

「何って、洗脳?これに洗脳装置ついてるみたいなの……」

「洗脳……だと?」

「うんうん。子供達はこれで洗脳されてるんだよ。塔和シティ産のこのヘルメットでねぇ……」

「……あ?」

「いやだからこれ、塔和グループ製なんだって。ほら、チップも入ってる。ん、どうしたの?人の話聞いてるの()()灰慈さん?」

 

 こまるが笑顔で言うと灰慈の顔がどんどん青くなっていく。そして、周囲は疑念の目を灰慈に向ける。

 

「凄いですねぇ。ただのボンボンから一日でレジスタンスなんてカッコイい組織のリーダーですよ。憧れちゃうな~、出世の秘訣はなんですか?」

「な、なんだてめぇ……オレを疑ってやがんのか!?」

「はい?いえ、別に。あなたみたいな臆病で力を手に入れれば直ぐに調子に乗る男がこんな大それた事すると思ってなんかいませんよぉ。私は、ですけどね」

「………………」

「こまるちゃん……」 

 

 周囲から曝される疑念や憎悪の目に顔を青から紫に変えた灰慈。こまるに向けられた視線は恐怖、畏怖、絶望。そんな感情を与えたこまるを見て音無はうっとり頬を染める。と、不意に灰慈は月光ヶ原に視線を向ける。

 

「───てめぇ……」

「──ッ!」

 

 ビクリと月光ヶ原の身体が強ばり無表情だった月光ヶ原の顔が歪む。

 

「てめぇ……てめぇのせいだ!モナカの世話はてめぇがしてたんだろ!一体どんな教育してやがった!?」

 

 と、月光ヶ原の髪を掴み顔を寄せる。

 

「ごめ、ごめん……なさい………ごめんなさい、()()()……」

「そ、その声で喋んな!モナカ思い出してムカつくんだよぉ!」

「──っ!」

 

 と、灰慈は月光ヶ原は地面に向かって投げ飛ばす。

 

「それになんだぁ、その車椅子は……お前まで足に怪我でもしたか?はっ!本当に仲のいい姉妹だなぁ」

「ゆる、ゆるして……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「喋んなって言ってんだよぉ!」

 

 と、灰慈が月光ヶ原を蹴りつけようとするがこまるが地面に落ちていた石を拾い頭を殴る。血の付いた石を放り捨て倒れた灰慈の顔を踏みつけるとグゲ!と叫んだ。

 

「いきなりなにしてんの?殺すよ?」

「こ、こいつだ!オレは関係ねぇ、モナカとずっと一緒にいたのは此奴なんだ、此奴が全ての原因なんだよ!」

「あはは。おもしろいね灰慈さん。今更、貴方の言葉を信じる人間なんてどれだけいると思うの?」

「………………」

 

 ただでさえ疑念の目が向けられていた中で突然の暴行だ。子供達に向けられていたはずの憎悪は何時しか灰慈に向けられていた。

 

「ねえ、誰かこの人、閉じこめておいてくれない?」

「あ、ああ……」

「お、おい……なぁ待てよ……お前等、冗談だろ?オレより、そのガキの言葉を信じるってのかよ、なぁ!?」

 

 必死に叫ぶ灰慈だったが複数の男に押さえつけられ縛られ、連れて行かれた。こまるは笑顔から無表情になると眠いから寝る、と近くの大人に個室を案内してもらう。

 

「あ、あのこまるちゃん……良かったら一緒に……」

「………………」

 

 こまるは無視して個室の扉を閉めた。




小間森愛子 保育士 まめまめ7
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